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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L2 |
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管理番号 | 1304020 |
審判番号 | 不服2014-17252 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-01 |
確定日 | 2015-07-17 |
意匠に係る物品 | 水路用ブロック |
事件の表示 | 意願2012- 29830「水路用ブロック」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成24年(2012年)11月16日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「水路用ブロック」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁が平成24年(2012年)3月12日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1435690号(意匠に係る物品「側溝用ブロック」)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) なお,引用意匠は,実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であるとしたものであるが,破線部分も含めて特定される形態のものである。 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「水路用ブロック」で,引用意匠は,「側溝用ブロック」であるが,両意匠は,いずれも地面に掘った溝に設け,複数連結して側溝や水路を構築するためのものであり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 (1)共通点 (A)全体を,上面が開口している左右対称状の,正背面が略U字状の,略直方体状のブロックとし,略U字状の凹部内側の底部左右に傾斜面を設け,正面側の凹部内側の縁に沿って帯状の突出部を凹字状に設けて嵌合部(以下,この嵌合部を「雄型嵌合部」という。)とし,背面側の当該雄型嵌合部の輪郭に合う位置において,背面側の凹部外側に帯状の突出部を設け,その内側に段差状に凹部内側の縁に沿って帯状の凹状部を設けて嵌合部(以下,この嵌合部を「雌型嵌合部」という。)を形成している点, (B)正面側の雄型嵌合部の周側面において前端寄りに沿って細い帯状のシール部材が設けられている点, (C)嵌合部の外側底部を隅丸形状としている点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)嵌合部の上端部の態様について,(ア-1)本願意匠は,正面側の雄型嵌合部の上端部が上面端部と側面の壁部端部から連続し,正面において左右外側に突出して突出部の上端部が略Γ(ガンマ)字状と略逆Γ字状であるのに対して,引用意匠は,雄型嵌合部の突出部の上端部が左右の壁部より一段下がっている点,(ア-2)背面側の雌型嵌合部の上端部について,本願意匠は,突出部の上部が左右の壁部より一段下がっているのに対して,引用意匠は,上端部が上面端部と側面の壁部端部から連続し,背面において内側に突出して突出部の上端部が略Γ字状と略逆Γ字状である点,(ア-3)突出部の左右上端部の下辺の形状について,本願意匠は,正面側の雄型嵌合部の上端部の突出部の下辺が水平状に表れるのに対して,引用意匠は,背面側の雌型嵌合部の上端部の突出部の下辺が内側に向かって楔状に傾斜し,略N字形状と略逆N字形状である点,(ア-4)本願意匠は,正面側の雄型嵌合部の上方部に小型円筒形の凹状部を有し,背面側の雌型嵌合部の上方部に小型円筒形の凸状部を有しているのに対して,引用意匠は,嵌合部の上方部に何も有していない点, (イ)側面視した壁部の態様について,本願意匠は,縦横比が約1:0.9で略正方形状であるのに対して,引用意匠は,縦横比が約1:0.55で縦長長方形状である点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,全体を,上面が開口している,正背面が略U字状の,略直方体状のブロックとし,凹部の内側の底部左右に傾斜面を設け,正面側の凹部内側の縁に沿って帯状の突出部を凹字状に設けて雄型嵌合部とし,背面側の当該雄型嵌合部の輪郭に合う位置における,背面側の凹部外側に帯状の突出部を設け,その内側に段差状に凹部内側の縁に沿って帯状の凹状部を設けて雌型嵌合部を形成した態様は,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)についても,正面側の雄型嵌合部の周側面において前端寄りに沿って細い帯状のシール部材を設けている態様が共通しているが,細部に係る態様で目立つものとはいえない態様であるうえ,他の水路用ブロックの意匠にも見られる,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 また,共通点(C)についても,嵌合部の外側底部を隅丸形状とした態様が共通しているが,この種の物品分野においては,普通に見られるありふれた態様であって,特徴のないものといえ,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,これらの共通点が両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)嵌合部の上端部の態様について,差異点(ア-1)については,雄型嵌合部の違いは,部分的なものではあるが,需要者の注意を強く惹く部分に係るものであって,正面側の雄型嵌合部の上端部が上面端部と側面端部から連続し,正面において左右外側に突出して突出部の上端部が略Γ字状と略逆Γ字状である本願意匠と,雄型嵌合部の突出部の上端部が左右の壁部より一段下がっている引用意匠とでは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。次に,差異点(ア-2)の背面側の雌型嵌合部の上端部についても,差異点(ア-1)と同様に,突出部の上部が左右の壁部より一段下がっている本願意匠と,上端部が上面端部と側面の壁部端部から連続し,背面において内側に突出して突出部の上端部が略Γ字状と略逆Γ字状である引用意匠とでは,明確に異なり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。また,差異点(ア-3)の突出部の左右上端部の下辺の形状について,部分的な差異ではあるが,突出部周囲の印象に影響を与えるもので,下辺を水平状としている本願意匠と,楔状に傾斜し,略N字形状と略逆N字形状である引用意匠とでは,両意匠を正背面から見た場合の印象が異なり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。そして,差異点(ア-4)については,小型円筒形の凹状部と凸状部を有する本願意匠と,凹状部も凸状部も有さない引用意匠とでは,その印象が明らかに異なるもので,その差異は無視することができず,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の側面視した壁部の態様については,この種の水路用ブロックのサイズは様々なものがあり,その側面視した壁の形状もバリエーションが認められるところではあるが,略正方形状の横幅のある本願意匠の態様は,縦長である引用意匠の態様とは,その印象が明らかに異なり,需要者に別異な印象を与えるものであり,その差異は,需要者の注意を惹く部分といえることから,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-07-07 |
出願番号 | 意願2012-29830(D2012-29830) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 宮田 莊平 |
登録日 | 2015-08-21 |
登録番号 | 意匠登録第1533957号(D1533957) |
代理人 | 永田 良昭 |
代理人 | 西村 弘 |
代理人 | 大田 英司 |
代理人 | 永田 元昭 |