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審決分類 審判    L2
管理番号 1304033 
審判番号 無効2014-880002
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-01-30 
確定日 2015-08-03 
意匠に係る物品 側溝ブロック 
事件の表示 上記当事者間の登録第1327617号「側溝ブロック」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録意匠,すなわち,本件意匠登録第1327617号の意匠は,平成19年(2007年)4月6日に意匠登録出願(意願2007-9154。以下「本願」という。)されたものであって,審査を経て平成20年(2008年)3月21日に意匠権の設定の登録がなされ,同年4月21日に意匠公報が発行され,その後,当審において,概要,以下の手続を経たものである。

・本件審判請求 平成26年1月30日
・審判事件答弁書提出 平成26年7月 4日
・口頭審理陳述要領書(請求人)提出 平成27年5月18日
・口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 平成27年5月25日
・口頭審理 平成27年6月 8日


第2 当事者が提出した証拠
請求人は,以下の甲第1号証ないし甲第12号証を,審判請求書の添付書類として提出した。
甲第1号証 株式会社カイエーテクノが平成14年に発行した
「コンクリート二次製品総合カタログ」(審判請求書
第4頁第11行目?第14行目。以下,単に
「総合カタログ」という。)において,
「コンクリート二次製品 総合カタログ」と中央上に
記載された頁,第108頁,第160頁及び
「株式会社カイエーテクノ」と中央上に記載された頁
(当審では,甲第1号証について,提出された写しを
原本として扱う。以下,「総合カタログ」として
頁番号が記された書証についても同様に扱う。)
甲第2号証 意匠登録第1064700号の類似意匠登録第1号の
意匠公報の写し
甲第3号証 意匠登録第1110012号の意匠公報の写し
甲第4号証 特開2004-156252号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第5号証 特開2002-339444号の公開特許公報(抜粋)
の写し
甲第6号証 意匠登録第949972号の類似意匠登録第1号の
意匠公報の写し
甲第7号証 意匠登録第1199371号の意匠公報の写し
甲第8号証 「総合カタログ」第49頁
甲第9号証 特開平5-340066号の公開特許公報の写し
甲第10号証 「株式会社ホクエツのカタログ」(審判請求書第7頁
第9行目?第12行目)とされた書証において,
「ホクエツ」と最下部に記載された頁,第82頁及び
「株式会社ホクエツ」と最上部に記載された頁(この
頁の右下に「H14.9」の記載がある。)
(当審では,甲第10号証について,提出された写し
を原本として扱う。)
甲第11号証 意匠登録第1277823号の意匠公報の写し
甲第12号証 意匠登録第1274952号の意匠公報の写し


第3 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は,請求の趣旨を
「登録第1327617号意匠の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由を,要点以下のとおり主張し(平成27年5月18日付け「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。),その主張事実を立証するため,「第2」に掲げた証拠を提出した。

1 意匠登録無効の理由の要点
(1)本件登録意匠は,本件意匠の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠,具体的には,甲第1号証の第108頁に掲載された製品名「SLB-A(紋様)」の意匠(以下「甲1意匠」という。)に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は,本件意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が公然知られた模様等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。

2 本件意匠登録を無効とすべき理由(1)
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「側溝ブロック」とし,その形態は次のとおりである。
ア 基本的構成態様
(A)管体は,横長で断面略四角形の角柱状体であって,その内部中央に長手方向に貫通する大きな水路を設けたものである。
イ 具体的態様
(B)管体は,上記水路の底面と両側壁を形成する逆門形の本体ブロックと,当該本体ブロックの開口両端面に連結されており当該水路の天井面を形成する頂版ブロックとから構成されている。
(C)管体の水路の底面は平面で,当該水路の両側壁は互いに対向するように当該底面に対して垂直に形成されている。また,管体の水路の天井面は,上記底面と平行に対向するように上記頂版ブロックの下面によって平面に形成されている。
(D)管体の上部を構成する頂版ブロックの上面(以下,天板という)は,その幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている。すなわち,横断面形状が大きく開くV字形をしている。
(E)天板の幅方向中央には,内部の水路まで垂直に貫通する2つのスリットが長手方向に離れて形成されており,それぞれのスリットにはグレーチンクが介装されている。
(F)天板の全面には,凹凸模様が形成されている。
(G)本体ブロックの両外壁面は,下方にゆくにつれてゆるやかに横に張り出すように形成されている。
(H)頂版ブロックの両外壁面の長手方向中央および本体ブロックの両外壁面の端付近には,それぞれ接続および吊り用インサートが設けられている。
(I)頂版ブロックの外壁面に2つの側面排水孔(断面円形)が内部の水路に貫通するように下向き斜めに形成されている。
(J)天板及び接続及び吊り用インサートを除く管体外面は平坦面である。
(2)甲1意匠
甲1意匠の形態は,次のとおりである。
ア 基本的構成態様
(a)管体は,横長で断面略四角形の角柱状体であって,その内部中央に長手方向に貫通する大きな水路を設けたものである。
イ 具体的態様
(b)管体は一体物である。
(c)管体の水路の底面は,その幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている。そして,この水路の両側壁は互いに対向して垂直に形成されている。また,管体の水路の天井面は,上記底面と対向するように平面に形成されている。
(d)管体の上面(以下,天板という)は,その幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている。すなわち,横断面形状が大きく開くV字形をしている。
(e)天板の幅方向中央には,内部の水路まで垂直に貫通する4つのスリットが形成されている。
(f)天板の全面には,凹凸模様が形成されている。
(g)管体外壁面の長手方向の両端付近には,それぞれ接続および吊り
用インサートが設けられている。
(h)管体の外壁面のうち水路の天井面を越えない高さ部分(ストレート部分)は当該水路の内壁面と平行になるように形成されている。
(i)管体の外壁面のうちストレート部分を越える高さ部分は当該ストレート部分から僅かに突出するように形成されている。
(j)天板及び接続および吊り用インサートを除く管体外面は平坦面である。
(3)先行周辺意匠の摘示
ア 管体について,本件登録意匠と同様に,横長で断面略四角形の角柱状体であってその内部中央に長手方向に貫通する大きな水路を設けたものは,以下の例が存在し,本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)意匠登録第1064700号の類似意匠登録第1号 意匠に係る物品「暗渠ブロック」の意匠(甲第2号証)
イ 管体について,本願登録意匠と同様に,逆門形の本体ブロックと頂版ブロックとから構成されたものは,以下の例が存在し。本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)意匠登録第1110012号 意匠に係る物品「側溝ブロック」の意匠(甲第3号証)
(イ)特開2004-156252号公報の図1の意匠(甲第4号証)
ウ 管体の水路について,本願登録意匠と同様に,その底面は平面,両側壁は垂直,天井面は底面と平行に平面に形成されているものは,以下の例が存在し,本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)甲第2号証の意匠
エ 管体の天板について,本願登録意匠と同様に,その幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられたものは,以下の例が存在し,本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)甲第3号証の意匠
オ 天板の幅方向中央に2つのスリットが長手方向に離隔形成されているものについては,以下の例が存在し,本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)特開2002-339444号公開公報の図1,3,4及び図6,14,17の意匠(甲第5号証)
カ 天板に凹凸模様が形成されているものは,以下の例が存在し,本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)甲第2号証の意匠
(イ)甲第5号証の意匠
(ウ)意匠登録第949972号の類似意匠登録第1号 意匠に係る物品「暗渠用ブロック」の意匠(甲第6号証)
(エ)意匠登録第1277823号 意匠に係る物品「側溝用ブロック」の意匠(甲第11号証)
(オ)コンクリート2次製品(側溝)の大手メーカーである株式会社ホクエツの製品カタログ(平成14年9月)の82頁に記載の「POINT1 表面・美観の向上 表面をタイル模様としたことにより街の景観に溶け込み,美観を向上させる」との記載とイラスト(甲第10号証)
キ 管体の両外壁面について,本願登録意匠と同様に,下方にいくにつれてゆるやかに横に張り出すように形成されているものは,以下の例が存在し,本願意匠登録の出願前から公然知られている。
(ア)総合カタログの49頁の「FL L型水路・農業土木事業協会型」の意匠(甲第8号証)
(イ)意匠登録第1274952号の意匠(甲第12号証)
ク 管体の外壁面の上部に側面排水孔が内部の水路に貫通するように下向き斜めに形成されているものは,以下の例が存在し,本件登録意匠の出願日前から公然知られています。
(ア)意匠登録第1199371号 意匠に係る物品「暗渠ブロック」の意匠(甲第7号証)
(4)本件登録意匠と甲1意匠の対比
ア 意匠に係る物品は,両意匠ともに「側溝ブロック」に関するものであり,用途・機能が共通するので同一乃至類似である。
イ その形態については,以下の共通点と差異点が認められる。
【共通点】
(ア)管体は,横長で断面略四角形の角柱状体であって,その内部中央に長手方向に貫通する大きな水路を設けたものであるとした基本的構成態様は,両意匠ともに共通する。
(イ)本件登録意匠の管体は,底面幅:高さ=1:1.4と比較的背高である。先行意匠も底面幅:高さ=1:1.6と背高であり,この点共通する。
(ウ)天板が幅方向中央に向けてゆるやかに低くなるように勾配が設けられている点,及び,天板の全域に凹凸模様が形成されている点,は両意匠ともに共通する。
(エ)管体の両外壁面の端付近に接続及び吊り用インサートが設けられている形態は.両意匠ともに共通する。
(オ)天板並びに接続及び吊り用インサートを除く管体外面は平坦面である。
【差異点】
(カ)本件登録意匠では.管体が本体ブロックと頂版ブロックとの組み合わせから形成されているのに対し,先行意匠では管体は一体物である。
しかし,本件登録意匠では,本体ブロックと頂版ブロックとが,異なる素材で形成されているわけでもなく。また,相違する色彩で着色されているわけでもない。また,逆門形の本体ブロックの開口部と頂版ブロックとは外壁面同士を面一に合わさるように密着されているので,外観は一体物であるかのように見える。
(キ)本件登録意匠では,管体の水路の底面は平面であるのに対し,先行意匠では水路の底面は幅方向中央に向かうにつれてゆるやかに低くなる形態とされているので,あたかも当該水路の底面が平面でその両脇が大きく丸面取り形状とされたように見える。一方,本件登録意匠では,管体の水路の底面は真正の平面でその両脇の角部が大きく丸面取り形状とされているので,両水路は看者に共通した印象を与える。
(ク)本件登録意匠では,管体の外側面が一平面状に形成されているのに対し,先行意匠では管体の上部部分が横に僅かに張り出している形態とされている。
(ケ)本件登録意匠では,天板の幅方向中央部に水路に貫通する排水孔(長孔)が長手方向に2つ離れて形成されているのに対し,先行意匠では同様な排水孔(長孔)が長手方向に4つ離れて形成されている。
(コ)本件登録意匠では,頂版ブロックの外壁面に2つの側面排水孔(断面円形)が内部の水路に貫通するように下向き斜めに形成されているのに対し,先行意匠では側面排水孔がない。
(サ)本件登録意匠では,接続及び吊り用インサートは本体ブロックの両外壁面のみならず頂版ブロックの両外壁面にも設けられている(合計8個)。これに対し,先行意匠では接続及び吊り用インサートは管体の外壁面の両脇に設けられている(合計4個)。
(5)本件登録意匠と甲1意匠との類比
ア 両意匠の類比を検討すると,基本的構成態様は共通するとともに,管体が背高であるとの特徴を有しているのも共通している。
イ 上記(カ)の管体が一体物か否かについては,構成部品(本体ブロック,頂版ブロック)が色彩や組合せ位置の形状等によって判然と区別されているものではないので,類比判断に与える影響は微弱である。
ウ 上記(キ)については,本件登録意匠の水路の底面の形状は先行意匠の水路の底面と同視できるので,類比判断に与える影響は微弱である。
エ 管体の上部が横に張り出しているかいないかについては,張り出し長さが僅かであるとともに張り出した外端面もありふれた形状(平坦面)であるので,類比判断に与える影響は小さい。
オ 天板排水孔の数と設置位置の差異については,断面形態がほぼ同一であること,長手方向中央に対して対称に配置されていて共通するシンメトリーな美を感じさせること,を考慮すれば。類比判断に与える影響は微弱である。また,側面排水孔は,外から目視され難い態様で設置されているので類比判断に与える影響は微弱である。
なお,天端排水孔にグレーチンクが介装されているかいないかは,グレーチンクが天端排水孔内に完全に隠れてしまうものであるし,当該孔を保護するためにだけ使用される機能的物品であるので類比判断に与える影響は微弱である。
カ 接続及び吊り用インサートは,管体(本体ブロック。頂版ブロック)を接続及び吊り上げるときにのみ使用される物品に係る意匠であるので,類比判断に与える影響は微弱乃至は無視できるものである。
キ 天板の凹凸模様が若干相違することについて
側溝は,その物品の性質上,公共の構造物で車道と併設されることがほとんどである。屋内でじっくり観察されるようなものではない。また,見る距離や角度もいろいろである。そのため,細部に拘ることなく大づかみに抱いた印象が類比判断に大きな影響を及ぼすことになると思料する。本件登録意匠では,数多くのタイル(凸片)が少し間隔が開いたモザイク紋様という印象を看者に与えるように思われる。
そうすると,看者は,同じく天板にモザイク紋様が形成された甲第1号証の意匠に対して本件登録意匠と共通した美観を感じると思料する。すなわち,本件登録意匠と甲第1号証の意匠とは類似する。
(6)小括
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり。その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

3 本件意匠登録を無効とすべき理由(2)
(1)仮に本件登録意匠は甲1意匠に類似していないとしても,当業者が甲第1号証の意匠と公然知られた模様等に基づいて容易に創作をすることができたものである。
(2)公然知られた模様等
甲第8,12号証 逆門型側溝において,外側面が下方にいくに
したがってゆるやかに横に張り出した形態
甲第3,4,12号証 管体が,本体ブロックと頂版ブロックとから
形成されている
甲第5号証 本体ブロックの水路の底面が平面
甲第4,12号証 本体ブロックの外壁面と頂版ブロックの外壁
面とが面一
甲第2,3,5,11号証 天端排水孔の存在と形態
甲第7号証 天端排水孔の存在と形態,側面排水孔の存在
と形態
甲第11号証 天板を幅方向中央で2つの領域に分け,各領
域に複数(2つ)の図柄が一定の順序で並
べられている
(3)創作容易性の判断について
ア 甲第8,12号証の意匠が存在しているもとでは,本件登録意匠の本体ブロックの外壁面を下方にいくにしたがってゆるやかに横へ張り出した形態としたことに特段の創作はない。
イ 甲第3,4,12号証の意匠が存在しているもとでは,管体を逆門型の本体ブロックと頂版ブロックとを連結して形成したことに特段の創作はない。
ウ また,本体ブロックの外壁面と頂版ブロックの外壁面とが面一の形態としたことについては,甲第4,12号証の意匠の存在下では特段の創作ではない。
エ 管体の水路の底面を平面としたことについては,甲第5号証の意匠の存在下では特段の創作ではない。
オ なお,天端排水孔・側面排水孔の個数や配置位置についても,これらは排水量によって自然に決定されるものであり,甲第2,3,5,7,11号証の意匠の存在下では特段の創作ではない。
(4)天板に形成された凹凸模様(パターン)について
ア 天板に凹凸模様を形成するのが流行
平成14年頃から街の美観向上のために側溝の表面に凹凸模様(パターン)を形成することが本格的に流行し出した(甲第10号証のPOINT1)。
イ 本件登録意匠の天板の凹凸模様について
(ア)細長い形状の物品は,その長手方向に視線が走る傾向にある。
(イ)細長い長方形状の天板をその長手方向に眺めてみると,その幅方向中央に凸部が存在せずに凹部のみの帯状部分が当該天板の全長にわたって存在することが認識できる。なお,凸部は平面視多角形(正方形等)をしている。
(ウ)この帯状部分を境にして凸部が存在する領域が左右に存在している。
(エ)両領域には数多くの凸部が全域にわたって存在しているので,看者は全体的に賑やかな印象を受ける。
(オ)各領域に存在する凸部は,ばらばらに配置されているのではなく,いくつかが寄せ集まって小さな図柄を形成し,それらの図柄が天板長手方向に一定の順序で並んでいるのが認識できる。
ウ 甲第11号証の天板の凹凸模様
(ア)細長い長方形状の天板をその長手方向に眺めてみると,その幅方向中央に凸部が存在しない帯状部分が当該天板の全長にわたって存在することが認識できる。なお,この帯状部分には細長い天端排水孔が2つ形成されている。
(イ)この帯状部分を境にして凸部が存在する領域が左右に存在している。なお,凸部は平面視四角形(正方形,長方形)をしている。
(ウ)両領域には,数多くの凸部がそれぞれの全域にわたって存在しているので,看者は全体的に賑やかな印象を受ける。
(エ)各領域に存在する凸部は,ばらばらに配置されているのではなく,いくつかが寄せ集まって小さな図柄を形成し,それらの図柄が天板長手方向に一定の順序で並んでいるのが認識できる。
エ 甲第2号証の天板の凹凸模様
(ア)細長い長方形状の天板をその長手方向に眺めてみると,その幅方向中央に平面視長方形の凸部が当該天板の長手方向に帯状に整列しているのが認識できる。なお,他の凸部も平面視長方形(正方形も含む)だが,大きさがそれぞれ異なる。
(イ)この帯状の部分によって,看者には天板領域が当該領域を基準にして2つに分かれているように見える。
(ウ)両領域には,数多くの凸部がそれぞれの全域にわたって存在しているので,看者は賑やかな印象を受ける。
(エ)各領域に存在する凸部は,ばらばらに配置されているのではなく,いくつかが寄せ集まって小さな図柄を3個形成し,それらの図柄(G10,G20,G30)が天板長手方向に一定の順序で並べられているのが認識できる。なお,他方の領域に並べられている図柄(G11,G21,G31)は,一方の領域の図柄(G10,G20,G30)をそれぞれ図紙上で半回転させた形状となっている。
(オ)なお,甲第2号証の天板と同様な凸部配置の甲第5号証の意匠では目地が広く取ってあるので,これに倣って甲第2号証の天板でも目地幅を広げることは簡単だと思われる。
オ なお,原図をもとにタイル(凸部)でパターンを作成する方法としては,本件登録意匠出願前に,次の方法が公知であった。
甲第9号証:特開平5-340066号公報「モザイクタイルシートの形成方法」
カ したがって,上述した背景(甲第11,2号証等)の存在下では,本件登録意匠の天板の凹凸模様は特段の創作ではない。
(5)小括
したがって。本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

4 平成27年5月18日付け「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)本件登録意匠の天端部の模様部分は「GBX」を模様化した凹凸であると答弁書第11頁?第12頁で主張されているが,歩道を歩く人や車道を車両等で走行する人又は需要者にとっては認識できないと思料する。
(2)凹凸は雨水が天端排水孔に円滑に流れ込むように,その凹み部分が出口のない雨水溜まりになってはいけないという物理的制約のもとに創成されたものであること,加工しやすさから3種類のパターンの模様の繰り返しからなっていることは,じっくりと眺めた場合には認識できると思料するが,凹凸の境界部分に線引きされないことがほとんどである(通常は日光の明暗の差のみ)施工現場では単に繰り返された凹凸が形成されているという認識を与える。


第4 被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は,答弁書を提出し,答弁の趣旨を
「本件審判請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し,その理由を,要点以下のとおり主張した(平成27年5月25日付け「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。

1 意匠法第3条第1項第3号違反について
(1)請求人は,甲1意匠を理由として本件登録意匠について意匠法第3条第1項第3号違反の無効理由を主張している。そして,先行意匠として甲第2号証乃至12号証を摘示し,差異点が与える影響は微弱であると主張している。しかし,後述するとおり,本件登録意匠と甲1意匠は,両意匠の差異点が共通点を大きく凌駕しており,類似するものではない。
ア 本件登録意匠の構成
(ア)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は「側溝ブロック」である。
(イ)本件登録意匠の構成
【基本的構成態様】
(A)内部に断面略四角形の水路を設けた長手方向に連続する暗渠型側溝ブロックであって,
(B)水路の底面と両側壁を形成する逆門型の本体部と,本体部の開口部に連結される天端部とが,別部材で構成されている。
【具体的構成態様】
(C)天端部の上面は幅方向の中央に向かって緩やかな下向きの勾配を有し,大きく開いている略V字型である。
(D)本体部の内壁面は垂直で互いに平行であるとともに,底面は水平で,天端部の底面と互いに平行であり,内壁面から底面にかけての内側角部は角丸となっている。
(E)本体部の外壁面は,上方から略中央までは垂直に構成されているが,略中央から下面にかけて広がるように構成されている。
(F)天端から内部の水路まで垂直に貫通する角丸長方形の天端排水孔が,幅方向の略中央に,長手方向に2箇所設けられており,内部にグレーチンクが介装されている。
(G)天端部側面から内部の水路まで斜めに貫通する縦長楕円の側面排水孔が2箇所設けられるとともに,側面排水孔にフィルターを設けるための略正方形の切欠きが設けられている。
(H)本体部長手方向の両端部には,側溝ブロック同士を接続する際に緩衝材となるパッキンを配置するためのスリットが一周に亘って設けられている。
(I)側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の吊り金具取付孔が天端部及び本体部の側面略中央に1箇所ずつ設けられている。
(J)本体部長手方向の側面両端部には,側溝ブロック同士を接続するためのボルト用孔が設けられている。
(K)天端面の長手方向端部に連続する凸部が設けられるとともに,これらの凸部の間に,図案化された「GBX」の文字が凸部で2段に表されることにより,凹凸による模様が構成されている。
イ 甲1意匠の構成
(ア)本件登録意匠の意匠に係る物品
甲1意匠の意匠に係る物品は「側溝ブロック」である。
(イ)甲1意匠の構成
【基本的構成態様】
(A)内部に断面略四角形の水路を設けた長手方向に連続する暗渠型側溝ブロックである。
(B)天端部と水路を構成する本体部は一体成型されている。
【具体的構成態様】
(C)天端面は幅方向の中央に向かって緩やかな勾配を有するところ,外側の勾配が中央側の勾配よりも小さい。
(D)本体部の内壁面は垂直で互いに平行であるとともに,水路の底面が幅方向中央に向けて低くなるように勾配が設けられている。
(E)本体部の外壁面は垂直に構成されていると共に,天端面は本体部よりも張り出して構成されている。
(F)天端面から内部の水路まで垂直に貫通する角丸長方形の天端排水孔が,幅方向の略中央に,長手方向に4箇所設けられている。
(G)本体部長手方向の両端部には,側溝ブロック同士を接続する際に緩衝材となるパッキンを配置するためのスリットが一周に亘って設けられている。
(H)側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の接続用・吊り金具取付ボルト孔が側面両端部に設けられている。
(I)天端面には,四角形の模様が全面に亘って施されている。
ウ 本件登録意匠と甲1意匠は非類似である
(ア)共通点
上述した構成に基づいて対比すると,本件登録意匠と甲1意匠の基本的な構成態様はいずれも,
(A)内部に断面略四角形の水路を設けた長手方向に連続する暗渠型側溝ブロックである。
また,具体的構成態様において,
(B)天端面は幅方向の中央に向かって緩やかな勾配を有する。
(C)本体部の内壁面は垂直で互いに平行である。
(D)天端面から内部の水路まで垂直に貫通する角丸長方形の天端排水孔が,幅方向の略中央に設けられている。
(E)本体部長手方向の両端部には,側溝ブロック同士を接続する際に緩衝材となるパッキンを配置するためのスリットが一周に亘って設けられている。
(F)側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の接続用ボルト孔が側面両端部に設けられている。
(イ)差異点
上述した構成に基づいて対比すると,本件登録意匠と甲1意匠の差異点は,以下のとおりである。
基本的構成態様について,
(A)本件登録意匠では,天端部と本体部とが別部材で構成されているが,甲1意匠においては天端部と本体部とが一体成型である。
具体的構成態様において,
(B)本件登録意匠では,天端の上面は幅方向の中央に向かって緩やかな勾配を有し,大きく開いている略V宇型であるが,甲1意匠においては,途中で勾配が切り替わっており,外側の勾配が中央側の勾配よりも小さい。
(C)本件登録意匠では,本体部の底面は水平で,天端面と互いに平行であり,内壁面から底面にかけて内側は角丸となっているのに対し,甲1意匠においては,水路の底面が幅方向中央に向けて低くなるように勾配が設けられている。
(D)本件登録意匠では,本体部の外壁面は,上方から略中央までは垂直に構成されているが,略中央から下面にかけて広がるように構成されているが,甲1意匠においては,側溝ブロックの側面の外壁は垂直に構成されているとともに,天端面は本体部よりも張り出して構成されている。
(E)本件登録意匠では,天板から内部の水路まで垂直に貫通する天端排水孔が,幅方向の略中央に,長手方向に2箇所設けられており,その内部にグレーチンクが介装されているのに対し,甲1意匠においては,天端面から内部の水路まで垂直に貫通する天端排水孔が,幅方向の略中央に,長手方向に4箇所設けられており,グレーチンクは介装されていない。
(F)本件登録意匠では,天端部側面から内部の水路まで斜めに貫通する縦長楕円の側面排水孔が2箇所設けられるとともに,側面排水孔にフィルターを設けるための略正方形の切欠きが設けられているが,甲1意匠においては,側面排水孔やフィルターを設けるための切欠きは設けられていない。
(G)本件登録意匠では,本側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の吊り金具取付孔が天端部及び本体部の側面略中央に1箇所ずつ設けられているとともに,接続用のボルト孔が側面両端部に設けられているが,甲1意匠においては,側溝ブロックの設置の際に用いるための円形の接続用・吊り金具取付ボルト孔が側面両端部に設けられている。
(H)本件登録意匠では,天端面の長手方向端部に連続する凸部が設けられるとともに,天端面が幅方向に二分割されるように天端排水孔以外の中央部にも凸部が長手方向に設けられ,これらの凸部の間に,図案化された「GBX」の文字が凸部で表されることにより,凹凸による模様が構成されているが,甲1意匠では,天端面には,四角形の模様が全面に亘って施されている。
(ウ)本件登録意匠と甲1意匠は非類似である
本件要郎は天端面の模様,本体部の形状,天端排水孔・側面排水孔の位置及び形状,側面排水孔の入り口に設けられる切欠きの形状,パッキン用スリットの形状の組み合わせにある。
本件登録意匠及び甲1意匠はいずれも,側溝ブロックであり,本体部は地中に埋設される暗渠型側溝ブロックである。この種の製品は専門業者が施工するという使用態様を考慮すれば,需要者を施工業者や流通業者まで含めてとらえるべきであり,施工方法や排水性に影響を及ぼす部位の具体的態様まで注意を惹くので,類否判断に大きな影響を与えるものである。
そして,本件物品のカタログなどには全体の形状が記載されているとともに,本体部の形状は施工時に関係するため,側溝ブロックの天端面だけでなく,地中に埋設される本体部分に係る形状も要部として把握されるべきである。
甲1意匠は本件登録意匠とこれらの各形状において多くの差異点を有する一方,共通点は先行意匠に開示されている。したがってこれら差異点は共通点をはるかに凌駕するから,被告製品は,本件登録意匠と美感を具にするものであり,本件登録意匠に類似するものではない。

2 意匠法第3条第2項違反について
請求人は甲1意匠と甲第2乃至12号証に記載の公然と知られた模様等に基
づいて容易に創作することができる旨,主張している。しかしながら,本件登録意匠の天端に施された模様はどこにも存在していないし,本体部の形態が同一のものも存在していない。さらに,本体部の外壁面は,上方から略中央までは垂直に構成されているが,略中央から下面にかけて広がるように構成されている意匠はどこにも開示されていない。
しかも本件登録意匠の模様部分は「GBX」をブロックのような凸模様で表現したものであり,甲第2乃至12号証に記載の公然と知られた模様等から,当業者が容易に創作できるような模様ではない。
したがって,本件登録意匠の天端面の模様は,公然と知られていないデザインであるし,上述したように,本体部の形態についても甲1意匠と本件意匠は大きく異なっているので,たとえ甲1意匠と甲第2乃至12号証を組み合わせても,本件登録意匠は創作できない。したがって,請求人の主張は誤りである。

3 まとめ
以上のように,本件登録意匠と甲1意匠は非類似であり,意匠法第3条第1項第3号には該当しない。また,甲1意匠と先行意匠から容易に創作することはできないから,意匠法第3条第2項にも該当しない。したがって,本件登録意匠には無効理由は存在しないことは明らかである。

4 平成27年5月25日付け「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)請求人は,本件登録意匠の天端部の模様部分について,「歩道を歩く人や車道を車両等で走行する人又は需要者にとっては認識できない」旨反論しているが,この主張には根拠がなく,また,「GBX」を認識できるか否かが,意匠の類否判断や創作性の判断にどのような影響を与えるのかが明らかにされていないので,意味不明な主張であるといわざるを得ない。
むしろ,本件登録意匠の当該模様部分は既存のデザインでないことは明白であるから,本件登録意匠が創作容易でないことは明らかである。
(2)請求人は,凹凸が3種類のパターンの模様の繰り返しからなっていることは「施工現場では単に繰り返された凹凸が形成されているという認識を与える」旨反論しているが,この主張には根拠がなく,意匠の類否判断や創作性の判断にどのような影響を与えるのかが明らかにされていないので,意味不明な主張であるといわざるを得ない。
むしろ,本件登録意匠の当該模様部分は既存のデザインでないことは明白であるから,本件登録意匠が創作容易でないことは明らかである。


第5 口頭審理
当審は,本件審判について,平成27年(2015年)6月8日に口頭審理を行った。(平成27年6月8日付け「第1回口頭審理調書」)


第6 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「側溝ブロック」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,意匠に係る物品の説明によれば,「天端部分には凹凸による模様が設けられている。該凹部に雨水が集水され,長孔(排水孔)を通って排水される。」としたものである。(別紙第1参照)
本件登録意匠の形態は,以下のとおりである。
ア 全体が,内部に流路が形成された横長略角筒状の管状体であって,側面視略矩形状のものである。
イ 流路の側面視形状について
流路の側面視形状は略縦長長方形状であり,左上と右上の隅は直角状であるが,左下と右下の隅は略弧状である。
ウ 管状体側面の形状について
管状体側面の縦幅は横幅よりもやや大きく,上部の横長長方形状部が,下方の略倒コ字状部の上端面と接合して一体となったものであり,その接合線が水平状に表されている。略倒コ字状部の左端部及び右端部は,管状体の上下方向中央やや上から下端にいくにつれて厚みが次第に太くなり,両端の稜線が裾広がり状に外方に漸次膨らんでいる。また,流路の外側に,二重線状のパッキン受け部が表されている。
エ 管状体上面について
左側面から見た上面が,両端から中央にかけてごく僅かに傾斜している。そして,平面から見て,上下端に2列の横長筋状部が左右両端に亘って形成され,中央にも横長筋状部(以下「中央横長筋状部」という。)が左右両端に亘って形成されている。中央横長筋状部の下方には,「GBX」の字体を模した凹凸模様が右方向に5回繰り返して形成されており,その上方には,下方の凹凸模様と点対称になるように,反転した「GBX」の字体を模した凹凸模様が左方向に5回繰り返して形成されている。「G」の字体を模した凸部,「B」の字体を模した凸部及び「X」の字体を模した凸部の大きさは,ほぼ同じである。
また,平面視略扁平トラック形状の天端排水孔が,上面の左右対称の位置に,中央横長筋状部内に2個配されており,天端排水孔には,内部に3枚の格子板を有するグレーチングが嵌合されている。
オ 管状体正面について
上端寄りに,ウで指摘した接合線が左右両端に亘って水平状に形成されている。その接合線の上方で左右対称の位置に,略円形状の側面排水孔が2個配されており,その周囲には,略正方形状の区画部が形成されている。また,接合線の中央上下と,管状体正面の左右両端寄りの合計4箇所に,小円形孔が形成されている。
カ 管状体の構成について
正面から見て,管状体の横幅は,縦幅の約2.5倍である。

2 無効理由の要点
請求人が主張する本件意匠登録の無効事由は,本件登録意匠が,意匠登録出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠(以下「甲1意匠」という。)に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので,同項柱書の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,同項柱書の規定によって,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由1」という。),及び,本件登録意匠が,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,同項柱書の規定によって,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由2」という。)である。

3 無効理由1の判断
本件登録意匠が,甲1意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。
(1)甲1意匠
甲第1号証(別紙第2参照)によれば,甲1意匠は,意匠に係る物品が「側溝ブロック」であり,その形態は,以下のとおりである。
ア 全体が,内部に流路が形成された横長略角筒状の管状体であって,側面視略矩形状のものである。
イ 流路の側面視形状について
流路の側面視形状は略隅丸正方形状であり,底面が略扁平V字状に形成されている。
ウ 管状体側面の形状について
管状体側面の縦幅と横幅はほぼ同じで,管状体は一体成形されたものである。管状体の左端部及び右端部は,管状体の上から約1/4の位置から上端にかけて,テーパー状段差を経て肉厚になっており,両端の稜線が外方に膨らんでいる。また,流路の外側に,二重線状のパッキン受け部が表されている。
エ 管状体上面について
左側面から見た上面が,両端から中央にかけて僅かに傾斜している。そして,平面から見て,多数の矩形状の小区画部が略レンガ状に全面に敷設され,上下5列に構成されている。中央3列の小区画部は略正方形状であり,上端及び下端の列の小区画部は略横長長方形状であって,その縦幅は,中央3列の小区画部の縦幅よりも若干小さくなっている。
また,平面視略扁平トラック形状の天端排水孔が,左右対称状に間隔を空けて,中央列内に4個配されており,その横幅は小区画部の横幅よりもやや大きい。
オ 管状体正面について
管状体正面のほぼ全体が平坦状であり,上端寄りに,ウで指摘したテーパー状段差面の稜線が二重線状に表されている。また,管状体正面の左右両端寄りの2箇所に,小円形孔が形成されている。
カ 管状体の構成について
正面から見て,管状体の横幅は,縦幅の約4倍である。
(2)本件登録意匠と甲1意匠の対比
本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)は,共に「側溝ブロック」であるから意匠に係る物品が共通し,形態については,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 共通点
(A)全体が,内部に流路が形成された横長略角筒状の管状体であって,側面視略矩形状のものである。
(B)流路の態様について
流路の側面視形状は略矩形状であり,左下と右下の隅は略弧状である。
(C)管状体側面の態様について
流路の外側に,二重線状のパッキン受け部が表されている。
(D)管状体上面の態様について
左側面から見た上面が,両端から中央にかけて傾斜している。また,平面視略扁平トラック形状の天端排水孔が,上下方向中央に,左右対称状に複数個配されている。
(E)管状体正面の態様について
管状体正面の左右両端寄りの2箇所に,小円形孔が形成されている。
イ 差異点
(a)流路の形状について
本件登録意匠の流路の側面視形状は略縦長長方形状であり,左上と右上の隅は直角状であるが,甲1意匠では略隅丸正方形状であって,左上と右上の隅は略弧状であり,底面が略扁平V字状に形成されている。
(b)管状体側面の形状について
(b-1)縦横比と一体成形の有無
本件登録意匠では,管状体側面の縦幅が横幅よりもやや大きく,上部の横長長方形状部が,下方の略倒コ字状部の上端面と接合しており,その接合線が水平状に表されているのに対して,甲1意匠では,管状体側面の縦幅と横幅はほぼ同じで,管状体は一体成形されたものである。
(b-2)左右両端部の厚みの変化
本件登録意匠では,略倒コ字状部の左端部及び右端部が管状体の上下方向中央やや上から下端にいくにつれて厚みが次第に太くなり,両端の稜線が裾広がり状に外方に漸次膨らんでいるのに対して,甲1意匠では,管状体の左端部及び右端部が管状体の上から約1/4の位置から上端にかけて,テーパー状段差を経て肉厚になっており,両端の稜線が外方に膨らんでいる。
(c)管状体上面の形状について
(c-1)上面の凹凸模様
本件登録意匠では,平面から見て,上下端に2列の横長筋状部があり,中央には中央横長筋状部が配されて,その下方には,「GBX」の字体を模した凹凸模様が右方向に5回繰り返して形成されており,その上方には,反転した「GBX」の字体を模した凹凸模様が左方向に5回繰り返して形成されている。
これに対して,甲1意匠では,多数の矩形状の小区画部が略レンガ状に全面に敷設されており,中央3列の小区画部は略正方形状であり,上端及び下端の列の小区画部は略横長長方形状である。
(c-2)左側面から見た両端から中央にかけての傾斜の程度
左側面から見た両端から中央にかけての傾斜の程度は,甲1意匠の方が本件登録意匠に比べて大きい。
(c-3)天端排水孔の個数とグレーチングの有無
本件登録意匠では,天端排水孔が,中央横長筋状部内に2個配されており,天端排水孔には,内部に3枚の格子板を有するグレーチングが嵌合されているのに対して,甲1意匠では,小区画部の中央列内に4個配されており,グレーチングは嵌合されていない。
(d)管状体正面の形状について
(d-1)接合線とテーパー状段差面の稜線
本件登録意匠では,正面上端寄りに,接合線が左右両端に亘って水平状に形成されているのに対して,甲1意匠では,テーパー状段差面の稜線が二重線状に表されている。
(d-2)側面排水孔の有無
本件登録意匠では,上記接合線の上方で左右対称の位置に,略円形状の側面排水孔が2個配されており,その周囲には,略正方形状の区画部が形成されているのに対して,甲1意匠にはそのような側面排水孔と区画部はない。
(d-3)中央の小円形孔の有無
本件登録意匠では,上記接合線の中央上下の2箇所に小円形孔が形成されているが,甲1意匠では,管状体正面中央に小円形孔はない。
(e)管状体の正面視縦横比について
正面から見て,本件登録意匠の管状体の横幅は,縦幅の約2.5倍であるが,甲1意匠では約4倍である。
(3)両意匠の類否判断
ア 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共に「側溝ブロック」であるので,両意匠の意匠に係る物品は同一である。
イ 側溝ブロックの物品分野の意匠の類否判断
側溝ブロックの使用状態(設置状態)においては,上面を除くほとんどが地中に埋められているので,その点では看者はその露出した上面について側溝ブロックを観察することとなるといえるが,側溝ブロックの取引者は,側溝ブロックの全体形状を全方向から観察し,設置やメンテナンスの観点から,各部の構成態様についてくまなく注意を払うことになる。したがって,側溝ブロックの物品分野の意匠の類否判断においては,露出する上面についての構成態様のみではなく,全体形状や各部の構成態様の全てを評価し,かつそれらを総合して意匠全体として形態を評価する。
ウ 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)ないし(E)で指摘した構成態様については,側溝ブロックの物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。具体的には,共通点(A)ないし(D)の構成態様は,意匠登録第1110012号「側溝ブロック」の意匠(甲第3号証。別紙第3参照。)に見られるものであり,共通点(E)の構成態様も,側溝ブロックの物品分野の意匠においてごく普通に見られるものである。したがって,共通点(A)ないし(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。
エ 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,管状体側面の形状について,縦横比と一体成形の有無に関する差異点(b-1)は,管状体が一体成形された甲1意匠と比較して,本件登録意匠における上部の横長長方形状部とその下方の略倒コ字状部とが接合した態様は,看者が一見して気が付くものであり,管状体側面の縦横比の差異とあいまって,看者の注意を惹くというべきであるから,差異点(b-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,左右両端部の厚みの変化に関する差異点(b-2)は,両意匠における厚みの変化は全く異なるものであり,下方の両端稜線が裾広がり状に外方に漸次膨らんでいる本件登録意匠と,上部のみが肉厚になっており,上部の両端稜線が外方に膨らんでいる甲1意匠とでは,看者に異なる視覚的印象を与えることは明らかであるから,差異点(b-2)が両意匠に別異の美感をもたらすというほかなく,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
請求人は,甲1意匠の上部の肉厚について,「管体の上部が横に張り出しているかいないかについては,張り出し長さが僅かであるとともに張り出した外端面もありふれた形状(平坦面)であるので,類比判断に与える影響は小さい。」と指摘するが,両意匠は,単に上部の張り出しの有無について差異があるのではなく,本件登録意匠では下方が膨らみ,甲1意匠では上部が膨らんでいるという点に差異があるのであるから,看者に与える視覚的印象の相違は顕著であるというべきであり,上部の肉厚の有無のみを強調する請求人の指摘を首肯することはできない。
また,差異点(c-1)については,使用状態において露出する上面の態様に関する差異であり,本件登録意匠の「GBX」の字体を模した凹凸模様と,甲1意匠の多数の小区画部による略レンガ状模様は,看者に異なる美感を与えているというべきであるから,差異点(c-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
請求人は,上面の凹凸模様の差異について,「本件登録意匠では,数多くのタイル(凸片)が少し間隔が開いたモザイク紋様という印象を看者に与えるように思われる。そうすると,看者は,同じく天板にモザイク紋様が形成された甲第1号証の意匠に対して本件登録意匠と共通した美観を感じると思料する。」と指摘する。
しかし,本件登録意匠の凹凸模様は,単なるモザイク模様ではなく,「GBX」の字体を模した凹凸模様であり,G,B,Xの字体であることを看者が認識できること,及びそのようなG,B,Xの字体が甲1意匠の凹凸模様には含まれていないことから,両意匠の凹凸模様が共通した美観を感じるとの請求人の指摘を首肯することはできない。
そして,側面排水孔の有無に関する差異点(d-2)についても,側面排水孔の存在は,側溝ブロックの用途及び機能に関わるものであって,設置やメンテナンスの観点からも重要なものであるから,側溝ブロックの取引者は側面排水孔の存在とその形状について注意を払うこととなり,更に側面排水孔の周囲の態様についても注意を払うこととなる。そうすると,本件登録意匠に見られる,周囲に略正方形状の区画部を伴った略円形状の側面排水孔は看者に一定の美感を与えているというべきであり,側面排水孔の周囲の態様に関する差異点(d-1)とあいまって,差異点(d-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
請求人は,「側面排水孔は,外から目視され難い態様で設置されているので類比判断に与える影響は微弱である。」と指摘するが,前記イで述べたとおり,側溝ブロックの取引者は側溝ブロックの全体形状を全方向から観察することから,設置態様を殊更重要視する請求人の指摘を首肯することはできない。
他方,差異点(a)で指摘した,流路の側面視形状について,左上と右上の隅が直角状であるか略弧状であるかの差異,及び底面が略扁平V字状に形成されているか否かの差異は,側溝ブロックの物品分野の意匠においては,様々な形状の流路があること,及び平坦状と略扁平V字状の底面形状のどちらもありふれていることから,看者がその差異を特に注目することはないので,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,差異点(c-2)及び(d-3)については,左側面から見た両端から中央にかけての傾斜の程度には様々なものがあり,また小円形孔の位置や個数にも様々なものがあることから,看者がその差異を特に注目することはないので,差異点(c-2)及び(d-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。さらに,差異点(c-3)及び(e)についても,天端排水孔の個数やグレーチングの有無はまちまちであって,管状体の正面視縦横比にも様々なものがあるから,看者がその差異を特に注目することはないので,差異点(c-3)及び(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

そうすると,(b),(c-1),(d-1)及び(d-2)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,その余の差異点の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,両意匠の共通点を凌ぐものであるということができる。
オ 小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,これに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するということはできない。
したがって,本件登録意匠は,甲1意匠に類似する意匠ではないので,請求人が主張する無効理由1には,理由がない。

4 無効理由2の判断
本件登録意匠が,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるか否かについて検討する。
(1)請求人の主張
請求人の主張は,概略以下のとおりである。
ア 本件登録意匠の本体ブロックの外壁面を下方にいくにしたがってゆるやかに横へ張り出した形態としたこと,管体を逆門型の本体ブロックと頂版ブロックとを連結して形成したこと,本体ブロックの外壁面と頂版ブロックの外壁面とが面一の形態としたこと,管体の水路の底面を平面としたこと,及び天端排水孔・側面排水孔の個数や配置位置については,甲第2号証,甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証,甲第7号証,甲第8号証,甲第11号証及び甲第12号証の意匠の存在下では特段の創作ではない。
イ 甲第11号証の天板の凹凸模様では,凸部がばらばらに配置されているのではなく,いくつかが寄せ集まって小さな図柄を形成し,それらの図柄が天板長手方向に一定の順序で並んでいるのが認識できる。
また,甲第2号証の天板の凹凸模様でも,凸部がばらばらに配置されているのではなく,いくつかが寄せ集まって小さな図柄を3個形成し,それらの図柄(G10,G20,G30)が天板長手方向に一定の順序で並べられているのが認識できる。なお,他方の領域に並べられている図柄(G11,G21,G31)は,一方の領域の図柄(G10,G20,G30)をそれぞれ図紙上で半回転させた形状となっている。
なお,甲第2号証の天板と同様な凸部配置の甲第5号証の意匠では目地が広く取ってあるので,これに倣って甲第2号証の天板でも目地幅を広げることは簡単だと思われる。
ウ 原図をもとにタイル(凸部)でパターンを作成する方法は,本件登録意匠出願前に公知であった(甲第9号証)。
エ したがって,上述した背景(甲第11,2号証等)の存在下では,本件登録意匠の天板の凹凸模様は特段の創作ではない。
(2)甲第11号証の意匠の管状体上面について
請求人が提出した甲第11号証(別紙第4参照)の意匠の管状体上面を次のとおり認定する。
左側面から見て上面は略平坦状であり,平面から見て,上下端に1列の横長筋状部が左右両端に亘って形成され,中央にも中央横長筋状部が左右両端に亘って形成されている。中央横長筋状部の下方には,「横長長方形凸部の上下に二つの正方形凸部が配置された凹凸模様」と「二つの正方形凸部の上下に横長長方形凸部が配置された凹凸模様」の組み合わせが右方向に8回繰り返して形成されており,その上方にも,同じ凹凸模様が同様に形成されている。
また,平面視略横筋状の天端排水孔が,上面の左右対称の位置に,中央横長筋状部内に2個配されている。
(3)甲第2号証の意匠の管状体上面について
請求人が提出した甲第2号証(別紙第5参照)の意匠の管状体上面を次のとおり認定する。
左側面から見て上面の左側略2/5は中央に向けて下方に傾斜しており,右側略3/5も中央に向けて下方にごく僅かに傾斜している。そして,平面から見ると,11個の小さい長方形状凸部に囲われた中央寄りの正方形状凸部(以下「中央正方形状凸部」という。)が左から右に4個千鳥状に配されている。左から2番目と一番右の中央正方形状凸部の中央には,略扁平トラック形状の天端排水孔が設けられている。中央正方形状凸部の間には二つの横長長方形凸部が横に並んで配されており,その上方及び下方には正方形状凸部が上下対称に配されている。
(4)本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠の形態は前記1で,甲1意匠の形態は前記3(1)で,それぞれ認定したとおりのものである。
そこで,本件登録意匠の特徴と認められる形態,すなわち,管状体上面に「GBX」の字体を模した凹凸模様を形成した点について検討すれば,このような形態は,甲第11号証及び甲第2号証には存在しない形態であり,また,甲第5号証及び甲第9号証の意匠並びに甲1意匠にも存在しない形態であるから,当業者が,これらの意匠に基づいて本件登録意匠の管状体上面の凹凸模様を容易に創作できたということはできない。
また,原図をもとにタイル(凸部)でパターンを作成する方法が本件登録意匠出願前から公然知られていたとしても,その方法は,単にタイルパターンを作成する技術的方法をいうにすぎず,本件登録意匠に見られる「GBX」の字体を模した具体的な凹凸模様の創作容易性を証するものではないから,そのような背景技術に基づいて本件登録意匠が創作容易であるということはできない。
次に,上記(1)アで摘示した請求人の主張については,本件登録意匠の略倒コ字状部の左端部及び右端部が,管状体の上下方向中央やや上から下端にいくにつれて厚みが次第に太くなり,両端の稜線が裾広がり状に外方に漸次膨らんでいる形状が本件登録意匠に固有のものであり,請求人が上記(1)アで摘示した甲号証には表されていないので,上部の横長長方形状部と下方の略倒コ字状部が面一致状に接合した形状,流路の側面視底面形状を平坦状にした形状,及び天端排水孔と側面排水孔を2個ずつ配した形状がありふれているとしても,本件登録意匠が創作に容易されたということはできない。
(5)小括
そうすると,本件登録意匠は,請求人が提出した証拠に基づいて,当業者が容易に創作することができたものとすることはできない。
したがって,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に創作することができた意匠とは認められず,無効理由2には,理由がない。


第7 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効理由1及び無効理由2いずれにも理由はなく,本件登録意匠を無効とすることはできない。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-22 
出願番号 意願2007-9154(D2007-9154) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (L2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 橘 崇生 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
小林 裕和
登録日 2008-03-21 
登録番号 意匠登録第1327617号(D1327617) 
代理人 羽鳥 亘 
代理人 中村 希望 
代理人 岡野 正義 
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