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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 J7
管理番号 1305032 
審判番号 不服2015-5834
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-30 
確定日 2015-07-21 
意匠に係る物品 背もたれ用マッサージ具 
事件の表示 意願2014- 163「背もたれ用マッサージ具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,2013年7月15日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴って,2014年(平成26年)1月8日に出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「マッサージ背もたれ」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙参照)。


第2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,形状が相互に一致せず,一の意匠を特定することができないので,具体的ではなく,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない,というものであって,具体的には,「本願意匠は,マッサージ背もたれに係るものですが,背もたれ全体の形状について,正面図では,中央が最も広く,上方が細く,下方が中程度の幅となる形状であるのに対し,背面図では下方が最も広く,中央と上方の幅がほぼ変わらない形状となっており,その形状が相互に一致せず,一の意匠を特定することができませんので,具体的ではありません。」としたものである。


第3 本件請求人が主張する本願意匠が登録されるべき理由

本件請求人が2015年(平成27年)3月30日に提出した審判請求書記載の,本願意匠が登録されるべき理由要旨は次のとおり。

本願意匠の正面図及び背面図の輪郭形状が相互に一致していないのは,正面図及び背面図の作図における投影方法を誤り,物品との距離が有限であるカメラで撮影した画像を基に作成されたためである。
なお,意匠に係る物品が「マッサージ背もたれ」に比較的近いと考えられる「クッション」,「椅子の背もたれクッション」において,既に登録されているものとして,意匠登録1507865号(クッション),意匠登録1499529号(クッション),意匠登録1315277号(椅子の背もたれクッション)がある。これらの意匠登録の図面は,いずれも写真に基づくCG描画にて作成されているが,いずれの登録意匠も各図のシルエットが整合していないことは明らかであり,その不整合の程度は,本願意匠の正面図及び背面図のシルエットの不整合の程度と比べても大きなものである。
それにもかかわらず,これらの意匠登録出願は,意匠が具体的であると判断され,登録されており,その理由を推測すると,クッションや背もたれというような物品は,多くの需要者が日常的によく知っているものであって,対応する図のシルエットが必ずしも正確に整合していなくても,例えば,「正面の有限距離の視点から投影した図」及び「背面の有限距離の視点から投影した図」の情報から,観察者の過去の経験に基づいて,頭の中で物品の三次元形状を構築することが可能であると考えられる。
その場合の三次元形状というのは,各部分の正確な寸法比率を把握するという程のレベルは要求されず,クッションや背もたれであれば,観察者が実際に使用した状況を想像し,他のクッション又は背もたれとの違いや,そのクッション又は背もたれの独特な形状的特徴を理解することができる程度にシルエットが認識されれば十分であると思料する。その程度の基準で判断されたからこそ,上記3つの意匠は,意匠が具体的でないと認定され拒絶されることなく,登録に至ったものと推認されるとすれば,本願意匠は,少なくとも前記3つの登録意匠と同程度の判断が認められてしかるべきだと考える。つまり,本願意匠の図面は,正面図又は背面図に記載不備を有していたとしても,「その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断した場合に合理的に善解し得る場合」(審査基準21.1.2)に該当し,意匠が具体的であると認められるものである。
また,「視の実践-視覚文化概論(”Practice of Looking: An Introduction to Visual Culture”,リサ・カートライト,マリタ・スターケン共著(2008))」には,「システム又は機構の組に関する透視画法は,空間における物体を,あたかも観察者から窓や枠を通して見られているかのように表示してきた。透視画法では,物体の大きさやディテールは,観察者の仮想位置からの相対距離に応じて描かれる。」という記述があり(151頁),この記述は,カメラで捕らえた正面視及び背面視における意匠の像の間の変形を引き起こすことが避けられなかった,ということも意味し,なぜならば,正面視及び背面視において捉えられた意匠の大きさやディテールは,カメラの仮想位置から物体までの相対距離に応じて,全く異なるからであり,このことは,数百年前の当業者にとっても常識であった。
加えて,本願意匠と同一の意匠は,日本以外の9カ国(台湾,香港,韓国,アメリカ,EU,カナダ,インド,オーストラリア,ロシア)に出願され,既に登録されている。
以上のとおり,この意匠登録出願の意匠は,意匠が具体的なものであると認められるため,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当し,登録されるべきものと確信する。


第4 当審の判断

[A]原査定の当否

1 本願意匠の正面図と背面図の整合性について
正投影図法においては,正面図と背面図に表された意匠の輪郭線は左右対称に表れるはずであるが,本願の願書に添付された図面を見てみると,正面図と背面図とは,そこに表された本願意匠の輪郭線が左右対称に表れていない(以下,この状態を「不整合」という。)。
なお,当審では,前記請求人の主張を踏まえて,本願意匠の図面は,カメラで撮影した画像(写真)を基にCGで作成された図面であると認定して,以下,検討を行うこととする。

2 写真に基づいてCGで作成された図面について
意匠法第6条第2項の規定では,図面に代えて写真(以下,「図面代用写真」という。)を提出することができるとされている。カメラで撮影した写真では,物体がカメラ位置からより遠距離にあるものは縮小し,透視図法(審判請求書では「透視画法」と記載されているが,当審の判断では「透視図法」と記載する。)によって作成された図のように撮像され,これを回避することは不可能である。他方で,意匠法施行規則様式第6備考8及び9は,立体を表す図面を,正投影図法,等角投影図法,又は斜投影図法によって作成する旨を定めており,透視図法によって図面を作成することは認めていない。そして同規則様式第7備考4により,図面代用写真を提出する場合は,正投影図法に基づく正面図,背面図,左側面図,右側面図,平面図及び底面図(以下,「基本六面図」という。)を作成しなければならないところ,写真で現された意匠がカメラによる撮像である以上,上述のとおり,各図間の不整合が生じることになる。また,物体を撮影する角度を正確にして撮影することは非常に困難であるから,物体を六方向から撮影した場合,撮影角度のズレから,各図に不整合が生じることは多々あり得る。
したがって,図面代用写真で構成される基本六面図の写真間に上記理由による不整合が存在していても,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて具体的な一の意匠の形態を直接的に導き出せるのであれば,その意匠は拒絶されるべきではない。
そして,写真に基づいてCGで作成された図面についても,上記理由による不整合を修正加工しない限り,図面代用写真で構成された基本六面図に表れる不整合が残されたままであるから,写真に基づいてCGで作成された図面の扱いは,上記の図面代用写真による基本六面図の扱いと同様とすべきである。

3 請求人の主張の妥当性について
審判請求書によって主張された本願意匠が登録されるべき理由は,以下のとおり,いずれも妥当性がない。

請求人は,写真に基づいてCGで作成された図面の各図に不整合が生じていても登録されている意匠があることを提示及び指摘し,その登録された理由として,「多くの需要者が日常的によく知っているものであるため,観察者の過去の経験に基づいて,頭の中で物品の三次元形状を構築することが可能であった」ことを挙げている。また,請求人は,「視の実践-視覚文化概論(”Practice of Looking: An Introduction to Visual Culture”,リサ・カートライト,マリタ・スターケン共著(2008))」という文献の「透視画法では,物体の大きさやディテールは,観察者の仮想位置からの相対距離に応じて描かれる。」という記述を引用し,この記述は,「カメラで捕らえた正面視及び背面視における意匠の像の間の変形を引き起こすことが避けられなかった」ことを意味していることを,一般論として主張しており,これを善解すれば,写真を基にCGで作成された図面により表された本願意匠にも,この一般論が適用されるべきであるから,正面図及び背面図が不整合となることは避けられなかった旨を主張していると解される。

そこで,請求人が提示した3つの登録意匠について見てみると,それらの登録意匠の図面に見られる不整合はいずれもカメラからの距離の差や撮影角度のズレによるものであり,これは,「2 写真に基づいてCGで作成された図面について」で述べたように,写真に基づいてCGで作成された図面では当然に想定できる種類及び程度の不整合であって,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいてこれらの図面を総合的に判断すれば,一の意匠の形態を特定できるものであるから,この図面の不整合によって拒絶されるべきではないと判断されたものと推測される。
しかし,本願意匠の図面は,正面図及び背面図以外の他の図を見てみると,正面図の最も横幅が広い部分である上下方向略中央付近の左右端部の前後方向の位置と,下端縁部の左右端部の前後方向の位置は,側面から見たときには本願意匠の縦幅の約1/5しか離れていないから,本願意匠の正面図,及び背面図それぞれに表された,上下方向略中央付近の左右端部間の横幅の長さと下端縁部の横幅の長さの比の不整合の程度は,カメラからの距離の差や撮影角度のズレのみによっては生じ得ない程大きなものであると認められる。
したがって,本願意匠は,請求人が提示した3つの登録意匠とは事情が異なり,また,本願意匠の正面図と背面図の不整合は,写真に基づいてCGで作成された図面では回避できない種類及び程度の不整合であるとは言えないから,前記請求人の主張は妥当ではない。

また,請求人は,我が国以外の9カ国・地域に本願意匠を出願し,すでに登録されている旨主張している。この主張を善解すれば,請求人は,同様の不整合を含む図面であっても,他の国・地域では登録されているのだから,我が国でも登録されて然るべきとの主張であると解される。
しかし,出願意匠の登録可否判断は,出願された国・地域が個別に定める意匠保護のための法令等に基づいて判断され,そして,国・地域が個別に定める意匠保護のための法令等は国・地域ごとに異なるから,この点についての請求人の主張には理由がない。

4 本願意匠が意匠法第3条第1項柱書きの規定に該当するか否かについて
そこで,当審において,本願意匠が意匠法第3条第1項柱書きの規定に該当するか否かについて,改めて検討する。

まず,本願意匠の正面図について見てみると,正面図の形態は背面図を除く他の図とはほぼ整合しており,次に背面図について見てみると,背面図の形態は,正面図を含む他の図と整合していない。意匠の形態を認定するにあたっては,一般的によく見られる態様に近しいものであれば,一般的知識をもって推認することが妥当であるが,本願意匠のようにあまり一般的ではない新規な態様である場合には,整合している図が多い方を採用する前提に基づいて認定を行うことが合理的であるといえることから,本願意匠の図面は,他の図と整合していない背面図のみが誤りであると考えるのが妥当である。
なお,本願意匠の背面図に誤りが生じたのは,背面図に表れた形態から判断すると,背面側を撮影する角度に大きな誤りがあり,かつその写真を基にCGで図面を作成する際の加工作業に誤りがあったものと推察される。

そうすると,正投影図法により作成された背面図に表された本願意匠の輪郭は,正面図に表された本願意匠の輪郭と整合しているはずであり,また,背面図表面に表れる凹凸形状や孔部の態様も,正面図に表れる凹凸形状や孔部に対応した位置,形状であると推認できることから,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当該図面を総合的に判断すると,本願意匠の正面図及び背面図の間に不整合が存在するとしても,一の意匠を特定することができるものであるといえ,意匠法が規定する工業上利用することができる意匠に該当するから,原査定は誤りであるというほかない。

したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当し,原査定に係る拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

[B]その他の審理及び経緯

1 当審による審理
当審が,先行意匠調査等を行った結果を基に更に審理した結果,本願意匠の意匠に係る物品は,「マッサージ背もたれ」であるが,これは意匠法第7条に規定する意匠法施行規則別表第一に表された物品の区分,又はそれと同程度の区分による物品の区分によらないものと判断した。したがって,本願意匠は,意匠法第7条の規定により意匠登録をすることができない。

2 手続補正書,及びそれに対する当審による審理
しかし,審判請求人は,本件審判の請求の後,平成27年6月26日に手続補正書を提出し,願書の「意匠に係る物品」の欄の記載を,「背もたれ用マッサージ具」に変更する補正を行った。
そして,当審がこの補正について審理した結果,「背もたれ用マッサージ具」は,意匠法第7条に規定する意匠法施行規則別表第一に表された物品の区分と同程度の区分によるものであると判断した。

3 小括
よって,上記手続補正書の補正により,意匠法第7条の拒絶の理由は解消されたので,本願意匠は意匠登録を受けることができるものとなった。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書きの規定により意匠登録を受けることができる意匠に該当し,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-07-08 
出願番号 意願2014-163(D2014-163) 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (J7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 大峰 勝士 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
久保田 大輔
登録日 2015-09-18 
登録番号 意匠登録第1536118号(D1536118) 
代理人 服部 雅紀 
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