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審決分類 審判 査定不服   取り消して登録 H7
管理番号 1306406 
審判番号 不服2014-21428
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-23 
確定日 2015-08-19 
意匠に係る物品 携帯用コンピューター用ディスプレイ 
事件の表示 意願2013- 14296「携帯用コンピューター用ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,2012年12月28日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成25年(2013年)6月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯用コンピューター用ディスプレイ」とし,その形態を願書に添付した図面に表されたとおりとし,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。参考各図においては,薄墨を付した部分以外の部分が,意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)(別紙第1参照)

2.原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとするものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁意匠課が2012年(平成24年)12月21日に受け入れ,その掲載日(公知日)を2012年(平成24年)12月17日と確認したところの,日本エイサー株式会社がインターネットに掲載した,表題を『ICONIA W510 |概要』とするページ(掲載ページのアドレスhttp://www.acer.co.jp/ac/ja/JP/content/model/NT.L0KSJ.001)に所載の「携帯情報端末機」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ24055853号)の本願意匠に相当する部分(以下,「引用意匠部分」という。)の意匠であって,その形態は,同サイト掲載ページの写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.当審の判断
(1)両意匠の対比
意匠に係る物品について,本願意匠に係る物品は「携帯用コンピューター用ディスプレイ」であり,引用意匠に係る物品は,「携帯情報端末機」であって,表現は異なるが,本願の願書の意匠に係る物品の説明の欄には「本物品は,ノート型の携帯用コンピューター用のディスプレイである。本物品は,キーボードと一体にして使用できる他,単体で,例えば,メディア再生機,メディアストレージデバイス,コンピューター等としても使用することができる。」と記載されており,また,引用意匠の掲載ページには,キーボードドックに接続して使用するディスプレイ機能としての態様等も現されていることから,両意匠に係る物品は,その用途及び機能において共通しており,類似する物品であると認められる。

両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,両意匠部分とも,携帯できる大きさの横長長方形表示画面及びその四周を囲む枠の上面部分であって,用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,共通している。

形態については,主として以下のとおりの共通点及び相違点がある。
(なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

まず,共通点として,
(A)全体の外形は,平面視で隅丸横長長方形状であり,横長長方形表示画面の上下左右を囲む周囲枠(以下,「周囲枠」,また各辺を「上枠」「下枠」「左枠」「右枠」又は「左右枠」という。)のうち,上枠及び左右枠の三方の枠を細幅とし,横長長方形の長辺にあたる下枠を,他の枠の数倍の幅を持つ広幅のものとした点,

一方相違点として,
(あ)上枠と左右枠の幅について,
本願意匠は,上枠が左右枠より広幅であるのに対して,
引用意匠は,上枠と左右枠は略等幅である点,

(い)枠面の傾斜等について,
本願意匠は,周囲枠の上面全面が,平坦な表示画面に対して面取り状の傾斜面を形成しており,細幅の上及び左右枠はやや急傾斜,広幅の下枠はやや緩傾斜として,端部にエッジが立っているのに対して,
引用意匠は,周囲枠の上面全面が,平坦な表示画面と面一状に連続する平坦面を形成しており,端部に丸みがある点,
等がある。

(2)両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,共に,これ自体で情報端末機として使用し,またキーボード等を接続して使用する携帯型の機器であり,需用者は,これをビジネスや学業等で使用する一般の人々であると認められる。
そして,この種物品の意匠において需用者の注意を惹くのは,通常観察される平面方向ないし斜視方向から観察する場合の,表示部を中心とした意匠全体の態様の視覚的効果のみならず,ノート型として開閉して使用する際や,キーボードに接続するに際して,需用者の指先が触れ,その視線を引き寄せることが多いと認められる枠部の,側面視も含めた態様における視覚的効果であると認められる。

共通点と相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を意匠全体として比較し,検討すると,共通点(A)は,全体の構成に関するものであるが,この種物品において,横長長方形表示画面の上下左右を枠とし,全体の外形を平面視で隅丸横長長方形状とした構成態様はごく普通の態様であり,また,上枠及び左右枠の三方の枠を細幅とし,横長長方形の長辺にあたる下枠を,他の枠の数倍の幅を持つ広幅のものとした態様は,薄板状の携帯型の電子機器における表示画面の大きさを三方の細縁によって強調しつつ,片側長辺のみ広幅とすることによって,机上等において,キーボード等に接続し斜めに立てて使用する際の接続部位を瞬時に視認しうる態様としたものであり,看者に共通感を与えるものであるが,この態様自体は,2013年2月25日発行の意匠公報記載の意匠登録第1463068号(意匠に係る物品,太陽光発電機用ターミナル)にも見られるように,引用意匠が公然知られる以前に公然知られた態様であるから,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まると言わざるを得ず,類否判断を決定付けるまでには至っていない。

これに対して,相違点(あ)及び同(い)は,この種物品の意匠の創作の要部であり,最も目に付きやすい部位の具体的な造形についてのものであるから,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
すなわち,上枠と左右枠の幅についての相違点(あ)により,看者は,本願意匠を看るときには,四周のうちで最も広幅な下枠に注目するものの,上枠と左右枠の微妙な幅の違いにも注目するため,本願意匠からは安定感の中にも若干の変化を看取するのに対して,引用意匠を看るときには,下枠の広幅に注目するのみで,引用意匠からは単純,シンプルな安定感を看取することとなり,相違点(あ)が看者に与える視覚的効果は異なるから,相違点(あ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,枠面の傾斜についての相違点(い)により,本願意匠は,周囲枠の上面全面が,平坦な表示画面に対して面取り状の傾斜面を形成しており,また,四周枠のうち,細幅の上及び左右枠はやや急傾斜,広幅の下枠はやや緩傾斜として,それぞれ側面視で一定厚みまでの傾斜面を形成していて手になじみやすく,また端部にエッジがたっているためシャープな印象を与える造形となっているが,引用意匠は,周囲枠の上面全面が,平坦な表示画面と面一状に連続する平坦面を形成しているため,全体に薄板の平坦面としてシンプルな印象を与え,また,端部の丸みは,外形の隅丸の丸みと相俟って柔らかい印象を与えるものとなっていて,相違点(い)が看者に与える印象は異なっており,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,相違点(あ)及び同(い)が相まった視覚的効果を考慮すると,相違点は,意匠の主要部においてそれぞれ一定の具体的造形差を表出して異なる視覚的効果を生み出しているから,それらを総合すれば,もはや相違点が共通点を凌駕して類否判断を支配していると言わざるを得ない。


以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も共通するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度に止まるのに対して,相違点のそれは,類否判断に支配的影響を及ぼしており,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕して類否判断を支配しているから,意匠全体として,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

4.むすび
したがって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審においてさらに審理した結果,本願について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-08-04 
出願番号 意願2013-14296(D2013-14296) 
審決分類 D 1 8・ 131- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 本多 誠一
渡邉 久美
登録日 2015-10-02 
登録番号 意匠登録第1536543号(D1536543) 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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