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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1306415 
審判番号 不服2015-8410
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-07 
確定日 2015-09-15 
意匠に係る物品 壁板 
事件の表示 意願2014- 2906「壁板」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)2月13日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「壁板」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を願書に添付された図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由の要旨は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年3月21日に受け入れた内国カタログ「外壁材総合カタログ2008 (寒冷地域用2008年2月発行)」 第191頁所載の「装飾外壁パネル」(板木目16:ASボワブラウン)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC20001420号)であって,その形態は,同カタログの写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1 意匠の認定
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「壁板」である。

イ 形態の基本的構成態様
本願意匠は,全体が横長矩形状板体であって,表面には左右方向に伸びる直線状溝部を等間隔に複数本形成し,それらの各溝部の間に挟まれた部分を,表面を木目模様とした横長矩形状の板体(以下,「矩形状区画部」という。)を正面視左右方向に隙間無く連続して配したような形態としたものである。

ウ 形態の具体的態様
本願意匠は,
(ア)意匠全体の正面視縦横比を約2:15とし,表面の直線状溝部を3本形成して,
(イ)表面模様は,全体として浮造り様の曲線状横筋木目模様の上に,鋸目仕上げのような僅かな直線状縦筋模様が重なるように形成されており,
(ウ)木目模様がはっきり表された矩形状区画部と,木目模様が潰れたように表された矩形状区画部が混在し,また,隣接する矩形状区画部の木目模様が連続していないものであって,
(エ)表面の色彩を,全体として濃茶色ではあるが,矩形状区画部ごとに僅かに異なるものとし,また,全体的に色彩の濃淡による色むらが表れているものである。

(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は,「装飾外壁パネル」である。

イ 形態の基本的構成態様
引用意匠は,全体が横長矩形状板体であって,表面には左右方向に伸びる直線状溝部を等間隔に複数本形成し,それらの各溝部の間に挟まれた部分を,表面を木目模様とした矩形状区画部を正面視左右方向に隙間無く連続して配したような形態としたものである。

ウ 形態の具体的態様
引用意匠は,
(ア)引用意匠の写真版は部分的に拡大した写真であり,この写真版からは意匠全体の大きさを認識することができないが,同ページに記載されたこの写真版で表された製品の説明によれば,引用意匠は意匠全体の正面視縦横比を約3:20としており,
(イ)表面模様は,浮造り様の曲線状横筋木目模様であり,
(ウ)木目模様はすべての矩形状区画部ではっきり表れており,また,隣接する矩形状区画部の木目模様は連続したものであって,
(エ)表面の色彩を,色むらのない濃茶色としたものである。

2 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比
(1)両意匠の共通点
上記両意匠の認定に基づき,両意匠の共通点を以下に列挙する。
(A)本願意匠の意匠に係る物品は「壁板」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「装飾外壁パネル」であるから,両意匠は,意匠に係る物品が共通する。
(B)両意匠は,全体が横長矩形状板体であって,表面には左右方向に伸びる直線状溝部を等間隔に複数本形成し,それらの各溝部の間に挟まれた部分を,表面を木目模様とした矩形状区画部を正面視左右方向に隙間無く連続して配したような形態とした基本的構成態様が共通している。

(2)両意匠の相違点
両意匠の相違点は以下のとおりである。
(a)本願意匠は,意匠全体の正面視縦横比を約2:15としているのに対し,引用意匠は同比を約3:20としている点が相違する。
(b)本願意匠は,表面の直線状溝部を3本形成しているのに対して,引用意匠は,引用意匠の写真版が部分的に拡大した写真であるために,表面に形成された直線状溝部の本数が不明である点が相違する。
(c)本願意匠の表面模様は,全体として浮造り様の曲線状横筋木目模様の上に鋸目仕上げのような僅かな直線状縦筋模様が重なるように形成されているのに対し,引用意匠の表面模様は,浮造り様の曲線状横筋木目模様のみであって,直線状縦筋模様は存在しない点が相違する。
(d)本願意匠は,木目模様がはっきり表された矩形状区画部と,木目模様が潰れたように表された矩形状区画部が混在し,また,隣接する矩形状区画部の木目模様が連続していないものであるのに対し,引用意匠は,木目模様はすべての矩形状区画部ではっきり表れており,また,隣接する矩形状区画部の木目模様は連続したものである点が相違する。
(e)本願意匠は,表面の色彩を,全体として濃茶色ではあるが,矩形状区画部ごとに僅かに異なるものとし,また,全体的に色彩の濃淡による色むらが表れているものであるのに対し,引用意匠は,表面の色彩を,色むらのない濃茶色としたものである点が相違する。

3 類否判断
両意匠の意匠に係る物品は共通しているから,以下,両意匠の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価する。

(1)共通点の評価
共通点(B)の,全体が横長矩形状板体であって,表面には左右方向に伸びる直線状溝部を等間隔に複数本形成し,それらの各溝部の間に挟まれた部分を,表面を木目模様とした矩形状区画部を正面視左右方向に隙間無く連続して配したような形態とした両意匠の基本的構成態様が共通している点は,請求人主張のとおり,両意匠が属する物品分野においては従来から採用されているありふれた態様に係る共通点であり,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。

(2)相違点の評価
まず,相違点(a)の,本願意匠は意匠全体の正面視縦横比を約2:15としているのに対し,引用意匠は同比を約3:20としている点については,両意匠が属する物品分野においては,その意匠の特徴を主として表面の形態に表すことが一般的であること,及びこの種の物品は,使用時には縦横に複数枚配置して使用するために,1枚の意匠の縦横比について看者が注意することはほとんどないことから,上記程度の正面視縦横比の相違は,看者の注意を強く惹くことはない僅かな相違であるということができ,この相違点(a)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
次に,相違点(b)の,本願意匠は表面の直線状溝部を3本形成しているのに対して,引用意匠は表面に形成された直線状溝部の本数が不明である点については,上述のとおり,この種の物品は,使用時には縦横に複数枚配置して使用するため,看者は複数枚配置した状態の視覚的印象を注意するのであって,壁板1枚あたりに形成された直線状溝部の本数にはほとんど注意することがないといえることから,この相違点(b)が両意匠の類否判断に与える影響も大きいものとはいえない。

しかし,相違点(c)ないし相違点(e)は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
すなわち,相違点(c)の,本願意匠の表面模様は浮造り様の曲線状横筋木目模様の上に鋸目仕上げのような僅かな直線状縦筋模様が重なるように形成されているのに対し,引用意匠の表面模様は,浮造り様の曲線状横筋木目模様のみであって,直線状縦筋模様は存在しない点,及び相違点(d)の,本願意匠は木目模様がはっきり表された矩形状区画部と,木目模様が潰れたように表された矩形状区画部が混在し,また,隣接する矩形状区画部の木目模様が連続していないものであるのに対し,引用意匠の木目模様はすべての矩形状区画部ではっきり表れており,また,隣接する矩形状区画部の木目模様は連続したものである点については,いずれも壁板の分野において看者が最も注意する表面形態の相違であって,本願意匠は,木目模様に加えて直線状縦筋模様を施すことによってざらついた古木感を醸しだし,木目模様が不連続となるように並べたことで手工芸品のような暖かみのある古めかしい視覚的印象を与えている一方,引用意匠は,鋸目仕上げのような縦筋模様もなく,また木目模様が連続するように並べたことで,機械製作されたような,新しく整然とした視覚的印象を与えており,これらの相違点は看者に異なる印象を強く与えていることから,相違点(c)及び相違点(d)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
そして,相違点(e)の表面に施された色彩の相違については,本願意匠の色彩が,木目模様の色彩としては自然の風合いをほとんどそのまま表現したようなものであり,とりたてて特徴的な色彩ではないから,色彩の相違ということのみでいえば,この相違点(e)が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものとはいえないが,看者は表面の色彩のみを取り出して意匠を観察することはなく,上記相違点(c)及び相違点(d)とあいまった形態をその意匠の特徴として捉えるものと考えられ,そうすると,この相違点(e)は,相違点(c)及び相違点(d)が両意匠の類否判断に与える影響をさらに増進させる効果を発揮しているといえる。

(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,形態の基本的構成態様も共通しているものの,形態の具体的態様はいずれも相違しており,とりわけ相違点(c)ないし相違点(d)があいまって看者に与える視覚的効果は極めて大きく,両意匠の基本的構成態様が看者に与える共通の印象を凌駕しているため,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができない意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

したがって,本願は登録すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-09-02 
出願番号 意願2014-2906(D2014-2906) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
久保田 大輔
登録日 2015-10-23 
登録番号 意匠登録第1538582号(D1538582) 
代理人 木村 豊 
代理人 小川 稚加美 
代理人 西川 惠清 
代理人 田中 康継 

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