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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1306426 
審判番号 不服2015-1923
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-30 
確定日 2015-09-30 
意匠に係る物品 浴室用いす 
事件の表示 意願2013- 28192「浴室用いす」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)11月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば意匠に係る物品を「浴室用いす」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下の意匠である(別紙第2参照)。
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2011年 3月 7日
受入日 特許庁意匠課受入2011年 3月18日
掲載者 株式会社リッチェル
表題 ハユール 腰かけTH:株式会社リッチェル
家庭用品
掲載ページのアドレス http://house.Richell
.co.jp/view.html?gi
d=33432に掲載された「浴室用いす
」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ22076937号)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「浴室用いす」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「浴室用いす」である。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
両意匠には,以下の共通点が認められる。
(A)全体形状が内部を中空状の略角丸四角錐台形状とし,各側壁に倒立U字状の切り欠き部を有し,切り欠き部以外の側壁で四本の脚部を構成している。
(B)切り欠き部は,下方へいくにつれて漸次幅広になっている。
(C)座面部は孔部を有する中央部付近に向かってなだらかに窪み,座った時に背中側となる座面後部が正面視で略弧状に隆起している。

(2)差異点
一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。
(a)座面後部の隆起部について
(a-1)隆起部の高さ
本願意匠の隆起部の高さ:全体の高さは,約1:13である。これに対して,引用意匠は斜視方面の写真であるため各部の高さが正確に表されていないものの,仮に背面側最下端からいすの頂部までを全体の高さとすると,引用意匠の隆起部の高さ(座面最後方部からいすの頂部までの高さ):全体の高さは約1:4である。
(a-2)隆起部の形状
正面から見て,本願意匠の隆起部の形状は略扁平の弧状であるのに対して,引用意匠の隆起部の形状は略弓状の弧状である。また,右側面から見て,本願意匠の隆起部の先端は丸み状であるが,引用意匠の隆起部の先端は先尖り状であると推認できる。
(b)切り欠き部の高さについて
本願意匠では,正面から見た切り欠き部の高さ:座面の高さが約2:3であり,右側面から見たその比が約3:5である。これに対して,引用意匠では,正面から見た切り欠き部の高さ(前方の両脚下端を結んだ線から切り欠き部頂部までの距離):座面の高さ(前方の両脚下端を結んだ線から正面側の座面の稜線までの距離)は約7:11であり,右側面から見たその比も同じである。すなわち,本願意匠では,切り欠き部の高さの座面の高さに占める割合が正面と右側面とで異なっているが,引用意匠では同じである。
(c)切り欠き部の上部の形態について
正面の切り欠き部の上部の形態が,本願意匠では大きく湾曲した略円弧状であるのに対し,引用意匠では,中央がやや平坦で,その左右がアール状になった形状である。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠は,共に「浴室用いす」であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)及び(B)で指摘した構成態様,具体的には,全体形状が内部を中空状の略角丸四角錐台形状とし,各側壁に倒立U字状の切り欠き部を有して切り欠き部以外の側壁で四本の脚部を構成し,当該切り欠き部が下方へいくにつれて漸次幅広となっている態様については,浴室用いすの物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)及び(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,共通点(C),すなわち,座面部は孔部を有する中央部付近に向かってなだらかに窪み,座面後部が正面視で略弧状に隆起している構成態様についても,浴室用いすの物品分野において,本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,共通点はいずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

3 形態の差異点の評価
一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a),具体的には,座面後部の隆起部について,引用意匠の座面後部の隆起部が本願意匠のそれよりも大きく,形状も異なる点を検討する。
浴室用いすの物品分野の意匠において,背もたれの有無は,腰の悪い者や体の大きな者に訴求する要素の一つとして紹介されており,例えば,引用意匠の販売用ウェブサイト(別紙第3参照)においては,「背もたれサポート付きの快適な座り心地」という宣伝文句を用いて背もたれを有することを需用者に訴えかけている。このことから,座面後部の隆起の程度及び形状は,使用者の腰を支える背もたれ部の態様に関わるものとして,需要者が浴室用いすを選択する際に,特に注意を払うものであると考えられる。
そして,両意匠の隆起の程度の差及び形状の相違は,一見して気がつく差異であって,両意匠の美感を異にしているというべきであるから,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(c),すなわち,正面の切り欠き部の上部の形態について,本願意匠では大きく湾曲した略円弧状であるのに対し,引用意匠では,中央がやや平坦で,その左右がアール状になった形状としている点は,需要者が気が付く差異であって,両意匠の美感を異にしているというべきであり,差異点(c)は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼす。
また,差異点(b),すなわち,本願意匠では切り欠き部の高さの座面の高さに占める割合が正面と右側面とで異なっているが,引用意匠では同じである点については,本願意匠においては,切り欠き部の高さが異なることにより,引用意匠と比較して変化のある感を有しており,この美感の差異も,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているといえる。
そうすると,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,差異点(b)及び(c)も,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしており,差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きく,両意匠の共通点を凌駕するものであるということができる。

4 小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,これに対して,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を凌駕し両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-09-03 
出願番号 意願2013-28192(D2013-28192) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古賀 稔章清野 貴雄 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
小林 裕和
登録日 2015-10-16 
登録番号 意匠登録第1537829号(D1537829) 
代理人 神保 欣正 

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