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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1306430 |
審判番号 | 不服2015-9419 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-21 |
確定日 | 2015-10-13 |
意匠に係る物品 | 包装用缶 |
事件の表示 | 意願2014- 5226「包装用缶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)3月12日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「包装用缶」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(本願の出願前発行の刊行物に掲載された意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用された意匠は,特許庁特許情報課が2001年5月25日に受け入れた,2001年4月10日発行のドイツ意匠公報の第7巻第1669頁に所載の「包装用瓶」(特許庁意匠課公知資料番号第HH13038517号)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第3 当審の判断 以下,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するか否かについて,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が引用意匠に類似するものであるか否かを検討し,判断する。 1.両意匠の共通点及び相違点の認定 (1)両意匠の共通点の認定 意匠に係る物品については,本願意匠が「包装用缶」であり,引用意匠が「包装用瓶」であり,ともに包装用の容器であるから,共通する。 物品の形態については,ともに胴部の約50%の径の大きさの口部が短く突出した縦長の略有底円筒状の容器であって,口部は外周にネジ山が刻まれ,肩部は傾斜し,胴部は下端部寄りを除いて一定幅の縦長の円筒状とし,胴部の下端寄りは窄まり,底面部には凹部が形成された,物品全体の基本的な構成態様が共通するとともに,肩部の中間付近にその全周にわたり段差が表れている点が共通している。 (2)両意匠の相違点の認定 物品の形態について,主に,以下の(ア)ないし(エ)の点が相違する。 (ア)口部について,その外周に形成されたネジ山の態様が,本願意匠は,筋状凸部が途切れずに螺旋状に表れているのに対して,引用意匠は,環状凸部の上方に複数の傾斜する筋状凸部が表れている。 (イ-1)肩部について,その高さの容器全高に占める割合が,本願意匠は15%であるのに対して,引用意匠は25%である。 (イ-2)肩部について,段差を有するその具体的な態様が,本願意匠は,下半部が胴部上端から側面視凸弧状の逆おわん型に窄まり,その上端から上半部は下半部の弧状の流れを断ち切るように側面視やや垂直気味の僅かな立ち上がり部を設け,その立ち上がり部の上端はR状に面取りされ,口部下端へ向けて僅かに側面視凹弧状に窄まるものであって,上半部と下半部の境界は側面視水平な直線として表れているのに対して,引用意匠は,側面視凸弧状に窄まる大小の逆おわん型が上下二段で表れており,その境界は側面視緩やかな凹弧状とし,胴部上端から口部下端に向けて側面視緩やかな波状の曲線を描きながら窄まる態様となっている。 (ウ-1)胴部について,その高さの容器全高に占める割合が,本願意匠は約75%であるのに対して,引用意匠は約65%である。 (ウ-2)胴部について,胴部下端寄りの窄まった部分の高さ(幅)の胴部全高に占める割合が,本願意匠は約5%であるのに対して,引用意匠は約15%である。 (エ)底部について,凹部の態様が,本願意匠は扁平円柱状の凹部が形成され,その底面が弧状に窪んでいるのに対して,引用意匠は単に弧状に窪んでいる。 2.両意匠の共通点及び相違点の評価 以下,相違点が存在する物品の形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。 (1)両意匠の共通点の評価 共通点は全体を大まかに捉えたものであり,両意匠に共通する物品全体の基本的な構成態様についても当該物品分野の意匠において一般的なものであって,看者の注意を特に惹くものではない。また,肩部の段差も具体的に見れば相違点(イ-2)で述べたとおり相違するものである。したがって,共通点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。 (2)両意匠の相違点の評価 相違点(ア)は,口部外周に形成されたネジ山に関するものであり,細部にかかるものであるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 相違点(イ-1)及び(ウ-1)の,肩部及び胴部の各々の高さの容器全高に占める割合の相違については,両意匠のどちらの比率も当該物品分野の意匠においてありふれたものと言える範囲のものであるが,本願意匠は長い胴部が強調されたもの,一方引用意匠は肩部が強調されたもの,という異なる印象を看者に与えるものであるから,相違点(イ-1)及び(ウ-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。 相違点(イ-2)は,段差を有する肩部の具体的な態様に関するものであるが,その相違は肩部全周にわたるものであって,目に触れやすい箇所におけるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 相違点(ウ-2)は,胴部下端部寄りの窄まった部分の高さ(幅)の胴部全高に占める割合に関するものであるが,引用意匠の窄まり方に特徴があり,本願意匠のありふれた態様のものとは異なる印象を与えるので,相違点(ウ-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。 相違点(エ)は,底部に形成された凹部に関するものであるが,部分的であり,通常目に触れにくい箇所におけるものであるから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,両意匠の相違点は,特に相違点(イ-1)及び(ウ-1)と相違点(イ-2),及び相違点(ウ-2)が相俟って,そしてその余の軽微な相違点も合わせると,両意匠に視覚的に異なる印象を与えるものと言える。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,その形態においては,共通点は概括的なものであって,両意匠の類否判断を決するものとはならず,一方,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,両意匠に異なる美感を起こさせるものである。 したがって,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-09-25 |
出願番号 | 意願2014-5226(D2014-5226) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小柳 崇 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 正田 毅 |
登録日 | 2015-10-23 |
登録番号 | 意匠登録第1538706号(D1538706) |
代理人 | 吉田 正義 |
代理人 | 今枝 弘充 |
代理人 | 梅村 裕明 |