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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1306435 |
審判番号 | 不服2015-8656 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-11 |
確定日 | 2015-10-13 |
意匠に係る物品 | 衛生マスク |
事件の表示 | 意願2013- 28039「衛生マスク」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成25年(2013年)11月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「衛生マスク」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由の要旨は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁発行の公開特許公報記載の特開2011-125494【図6】に表された本願部分に相当する部分(以下,「引用部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1 意匠の認定 (1) 本願意匠 ア 本願意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「衛生マスク」である。 イ 本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 本願部分は,衛生マスク本体部(以下,「本体部」という。)の左右両端縁部付近に配設されたポケット部分(以下,背面視左側のポケット部分を「左ポケット部」,背面視右側のポケット部分を「右ポケット部」,両ポケット部分を「左右ポケット部」という。),及び下端縁部付近に配設されたポケット部分(以下,「下ポケット部」という。)である。 また,本願部分の用途及び機能については,願書及び願書に添付された図面には明確な記載はないが,願書に添付された図面の【下部折り返し片を開いた状態のA-A線参考拡大端面図】,【サイドギャザー片を開いた状態のC-C’部参考拡大図】,及び【使用状態を示す参考側面図】を,衛生マスクの分野における通常の知識に基づいて見てみると,上記各ポケット部は,本願意匠の使用時には左右ポケット部及び下ポケット部を外側に開くことによって本体部の左右端縁部及び下端縁部に発生する本体部と顔面との隙間を無くし,呼気の外部流出と外気の内部流入を遮断する効果を高めることができるものと推認できる。 ウ 本願部分の形態の基本的構成態様 左右ポケット部は略縦長矩形状,下ポケット部は略横長矩形状であって,左ポケット部は左側(外側)の端縁部,右ポケット部は右側(外側)の端縁部,下ポケット部は下側(外側)の端縁部が,それぞれ本体部の左右端縁部及び下端縁部付近に固着され,各ポケット部が開閉可能となっているものである。 エ 本願部分の形態の具体的態様 (ア)本体部縦幅より僅かに縦幅が短い左右ポケット部が,下ポケット部の左右端部寄りの部分を覆っており, (イ)下ポケット部の縦幅を本体部縦幅の約1/4とし,左右ポケット部の横幅を下ポケット部の縦幅の約3/4としたものである。 (ウ)また,左右ポケットの上下端縁部,及び下ポケットの左右端縁部が本体部に固着されているか否かについては,願書及び願書に添付された図面からは明確に表されていないが,「使用状態を示す参考側面図」に表された各ポケット部が開いている態様から,左右ポケットの上下端縁部,及び下ポケットの左右端縁部は,本体部に固着されているものと推認できる。 (2) 引用意匠 ア 引用意匠の意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は,「マスク」である。 イ 引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 引用部分は,本体部の左右両端縁部付近に配設された左右ポケット部,及び下ポケット部であって,使用時に,左右ポケット部及び下ポケット部を外側に開くことによって本体部の左右端縁部及び下端縁部に発生する本体部と顔面との隙間を無くし,呼気の外部流出と外気の内部流入を遮断する効果を高めることができるものである。 ウ 引用部分の形態の基本的構成態様 左右ポケット部は略縦長矩形状,下ポケット部は略横長矩形状であって,左ポケット部は左側(外側)の端縁部,右ポケット部は右側(外側)の端縁部,下ポケット部は下側(外側)の端縁部が,それぞれ本体部の左右端縁部及び下端縁部付近に固着され,各ポケット部が開閉可能となっているものである。 エ 引用部分の形態の具体的態様 (ア)本体部横幅と同横幅の下ポケット部が,左右ポケット部の下端寄りの部分を覆っており, (イ)下ポケット部の縦幅を本体部縦幅の約7/18とし,左右ポケット部の横幅を下ポケット部の縦幅の約3/7としたものであって, (イ)各ポケット部の内側の端縁部を,小さな鋸刃のような波形状に形成し, (ウ)下ポケット部の左右の下端部付近に,下ポケット部の左右端縁部の縦方向略中央から内側に向かって下方に傾斜するように,本体部と下ポケット部を結合する帯状結合部(以下,「帯状結合部」という。)を形成したものである。 2 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比 (1)両意匠の共通点 上記両意匠の認定に基づき,両意匠の共通点を以下に列挙する。 (A)本願意匠の意匠に係る物品は「衛生マスク」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「マスク」であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (B)本願部分と引用部分(以下,「両意匠部分」という。)は,ともに本体部の左右端縁部付近に配設された左右ポケット部,及び下ポケット部であって,使用時には,左右ポケット部及び下ポケット部を外側に開くことによって本体部の左右端縁部及び下端縁部に発生する本体部と顔面との隙間を無くし,呼気の外部流出と外気の内部流入を遮断する効果を高めることができるものであるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲並びに用途及び機能は共通する。 (C)左右ポケット部は略縦長矩形状,下ポケット部は略横長矩形状であって,左ポケット部は左側(外側)の端縁部,右ポケット部は右側(外側)の端縁部,下ポケット部は下側(外側)の端縁部が,それぞれ本体部の左右端縁部及び下端縁部付近に固着され,各ポケット部の内側が開閉可能となっている基本的構成態様が共通する。 (2)両意匠の相違点 次に,両意匠の相違点を以下に列挙する。 (A)本願部分は,本体部縦幅より僅かに縦幅が短い左右ポケット部が,下ポケット部の左右端部寄りの部分を覆っているのに対し,引用部分は,本体部横幅と同横幅の下ポケット部が,左右ポケット部の下端寄りの部分を覆っている点が相違する。 (B)本願部分は,下ポケット部の縦幅を本体部縦幅の約1/4とし,左右ポケット部の横幅を下ポケット部の縦幅の約3/4としているのに対し,引用部分は,下ポケット部の縦幅を本体部縦幅の約7/18とし,左右ポケット部の横幅を下ポケット部の縦幅の約3/7としている点が相違する。 (C)本願部分は,各ポケット部の内側の端縁部を直線状に形成しているのに対し,引用部分は,同箇所を小さな鋸刃のような波形状に形成している点が相違する。 (D)本願部分は,下ポケット部の左右の下端部付近に本体部との結合部を設けていないのに対し, 引用部分は,同箇所に,下ポケット部の左右端縁部の縦方向略中央から内側に向かって下方に傾斜するように,帯状結合部を形成している点が相違する。 3 類否判断 両意匠の意匠に係る物品,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲,並びに両意匠部分の用途及び機能は共通しているから,以下,両意匠の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価し,判断する。 (1)共通点の評価 共通点(C)の,左右ポケット部は略縦長矩形状,下ポケット部は略横長矩形状であって,左ポケット部は左側(外側)の端縁部,右ポケット部は右側(外側)の端縁部,下ポケット部は下側(外側)の端縁部が,それぞれ本体部の左右端縁部又は下端縁部付近に固着され,各ポケット部の内側が開閉可能である形態とした基本的構成態様は, 引用意匠の公開前には見られない引用意匠の特徴的な構成態様であり,この構成態様が共通する本願意匠との類否判断に及ぼす影響はそれなりにあるといえるものの,その構成態様自体がシンプルなものであること,及び衛生マスクの分野においては,マスクと顔面の隙間を無くすために,ポケット部を本体部の左右上下の各端縁部に用いることは従来からよく見られる手法(例えば,平成23年(2011年)10月6日に発行された公開特許公報 特開2011-194067所載の【図1】ないし【図14】及び関連する記載に表されたマスクの意匠(参考意匠1:別紙第3),特許庁意匠課公知資料番号第HH24408823の衛生マスクの意匠(参考意匠2:別紙第4),平成24年(2012年)8月30日に発行された公開特許公報 特開2012-161370所載の【図1】,【図12】及び関連する記載によって表されたマスクの意匠(参考意匠3:別紙第5),並びに平成23年(2011年)8月25日に発行された公開特許公報 特開2011-160944所載の【図1】及び関連する記載によって表されたマスクの意匠(参考意匠4:別紙第6))であることから,この共通点(C)が両意匠部分の類否判断に与える影響は一定程度にとどまり,この共通点のみをもって両意匠部分の類否判断を決定するには至らないものである。 (2)相違点の評価 相違点(B)の,本体部縦幅と下ポケット部の縦幅の比,及び下ポケット部縦幅と左右ポケット部横幅の比の相違は,両意匠部分全体として見たときには僅かな程度の相違であるから,この相違点(B)が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。 また,相違点(C)の,各ポケット部の内側の端縁部を直線状としているか小さな鋸刃のような波形状としているか相違は,本願部分のようにポケット部の内側の端縁部を直線状とすることは,特に特徴的な造形を施したものとはいえないこと,及び従来から普通に見られ(例えば,参考意匠1ないし参考意匠3),本願意匠の特徴的な形態であるとはいえないから,この相違点(C)が両意匠部分の類否判断に与える影響も小さい。 しかし,相違点(A)及び相違点(D)の各相違点は,以下の理由により,両意匠部分の類否判断に与える影響は大きいものであるといえる。 まず,相違点(A)の,左右ポケット部と下ポケット部との配置関係の相違について,本体部の縦幅の約7/18を占める下ポケット部の全面が表れた引用部分は,下ポケット部の縦幅の約3/7の横幅でしかない左右ポケットの一部が下ポケット部によって隠されていることもあいまって,下ポケット部の存在感が看者に与える印象は大きい一方,本願部分は,本体部の縦幅の約1/4の縦幅でしかない下ポケット部の一部が左右ポケット部によって隠され,下ポケット部の縦幅の約3/4の横幅の左右ポケット部の全体が表れていることから,下ポケット部と左右ポケット部が同列の存在感を看者に与えているから,この相違点(A)は,看者に異なる印象を与えるものである。 そして,相違点(D)の,下ポケット部の左下及び右下部分の帯状結合部の有無の相違は,マスクを装着する際にその相違は特に顕著に表れるものであり,すなわち,引用部分は,使用時にはこの帯状結合部があることによって,帯状結合部より上側の略横長ホームベース状部分のみが開いた形態になるのに対し,本願部分はこのような結合部が無いために,下ポケット部より上側の略長方形状部分がすべて開くものであって,この相違点(D)は,看者に全く別異の印象を与えるものである。 (3)小括 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,両意匠部分は位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び大きさが共通しており,さらに,形態の基本的構成態様が共通しているものの,その形態の共通点が両意匠部分の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるのに対して,形態の相違点(A)及び相違点(D)が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きく,形態の共通点及び相違点を総合的に評価すると,形態の各相違点,特に相違点(A)及び相違点(D)があいまって生じる視覚的効果が,共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせていることから,本願部分は引用部分と類似せず,両意匠は類似しない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができない意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 したがって,本願は登録すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-09-28 |
出願番号 | 意願2013-28039(D2013-28039) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
久保田 大輔 江塚 尚弘 |
登録日 | 2015-10-23 |
登録番号 | 意匠登録第1538400号(D1538400) |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |