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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) E0
管理番号 1306440 
判定請求番号 判定2014-600039
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2015-11-27 
種別 判定 
判定請求日 2014-08-25 
確定日 2015-10-08 
意匠に係る物品 ペット用ブラシ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1194483号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 甲第2号証により示されたイ号意匠は,登録第1194483号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 手続の経緯
平成 7年12月12日 特許出願(特願07-349962号)
平成 9年 6月17日 出願公開(特開平9-154624号)
平成15年 7月28日 特許法第44条第1項の規定による特許出願(特願2003-202241号)
平成15年 7月28日 意匠法第13条第1項の規定による意匠登録出願(意願2003-21709号)
平成15年11月21日 意匠権の設定の登録(登録第1194483号)
平成26年 8月25日 本件判定請求(本件判定請求人)
平成26年11月 4日 答弁書提出(本件判定被請求人)
平成27年 8月21日 弁駁書提出(本件判定請求人)

第2 請求の趣旨及び理由
1.請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,甲第2号証によって示されたイ号意匠は,登録第1194483号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求め,要旨,以下のとおり主張した。

2.請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人である山本文雄は,本件判定請求に係る登録意匠「ペット用ブラシ」(甲第1号証)の意匠権者である。
一方,本件判定の被請求人(株式会社ペッツルート)が現在販売を継続しているイ号意匠(甲第2号証,商品名「ソフト毛とりまるコーム」)は,本件登録意匠に係る物品「ペット用ブラシ」と同一の物品であって,
本件登録意匠の部分意匠の形態に類似する形態を有するため,本件登録意匠の範囲に属すると考える。
そこで,請求の趣旨のとおり,特許庁に対し判定を求める。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
平成7年(1995年)12月12日出願(意願2003-21709)
平成15年11月21日登録(登録1194483号)

(3)本件登録意匠の説明
ア.本件登録意匠の意匠に係る物品は,「ペット用ブラシ」である。
イ.本件登録意匠の形態は次のとおりである。
A:取っ手部は,正面図で,略長方形状の形態で,右側面図で,略五角形。
B:ピン並設部は,正面図で,直線状の取っ手部の一辺にピンを平行に複数本併設。
C:ピン部は,正面図で,付設面から他方に向かい伸延する。
D:ピン部は,右側面図において全てのピンが直線的に伸延し,途中からやや右手方向に傾斜を持つ。
E:ピン部は,右側面図で,先端部が,ブラシ本体側に向かうヘアピンカーブを描いている形態。

(4)イ号意匠の説明
ア.イ号意匠に係る物品は,「ペット用ブラシ」である。
イ.イ号意匠の形態は次のとおりである。
A’:取っ手部は,正面図で,略ひょうたん型で,右側面図で,一方が隆起している。
B’:ピン並設部は,取っ手部の緩やかなカーブを描く一辺に,ピンを平行に複数本併設。
C’:ピン部は,付設面から他方に向かい伸延。
D’:全てのピンが直線的に伸延する。
E’:ピンの先端部が,ブラシ本体側に向けてヘアピンカーブを描いている。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
ア.本件登録意匠とイ号意匠の形態の共通点
共通点(ア)全てのピンが,付設面から他方に向かい伸延する。
共通点(イ)ピンの先端部が,ヘアピンカーブを描いている。
イ.本件登録意匠とイ号意匠の形態の相違点
相違点(ア)ブラシ取っ手部の形状において,本件登録意匠が略長方形,イ号意匠が略ひょうたん型で,形態が異なる。
相違点(イ)ピンの並設部の辺の形態において,本件登録意匠が直線形,イ号意匠が円弧形で,形態が異なる。
相違点(ウ)ピンの形態において,本件登録意匠が中途で屈曲形状を持っているのに対し,イ号意匠は屈曲形状を持たない。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
ア.本件登録意匠の部分意匠を請求する形態と,当該部分意匠に相当するイ号意匠の形態の比較検討
イ.部分意匠に相当する形態の相違点
本件登録意匠の部分意匠を請求する形態であるB,C,D,Eの形態は,イ号意匠の形態B’,C’,D’,E’に相当する。そこで,これらの形態の構成ごとに比較して検討する。
まず,本件登録意匠のBとイ号意匠のB’は,ピンが併設されている辺の形態について,本件登録意匠は「直線の辺」であるのに対し,イ号意匠は「円弧状の辺」である点において相違する。
ここで,クシに関するピン並設部の辺の形状は,従来から,甲第3号証が示すとおり,凸円弧型,凹円弧型,直線型など多くの形状が存在する。
一方,イ号意匠のピン並設部の並設辺は,公知の形態である凸円弧型であるから,殊更イ号意匠が持つ特徴的な形態ではなく,需要者の注意を引く意匠の要部とは成り得ない。また,ピンの並設辺の形状を直線とするか円弧型とするかは,通常考え得る範囲内の形状の選択であり,需要者の注意を引く部分ではない。
そして,請求人は先行する登録意匠の調査を独自に行った。その結果,「ペットの抜け毛を取り除くためのくし」に関する物品の区分において,ピンの並設辺の形状を円弧型とする意匠は,甲第5及び6号証として既に公知の形状であった。
したがって,調査結果からも,B’のピン並設部における略円弧状の辺は殊更特徴のある形態ではなく,需要者の注意を引く形態ではない。

また,本件登録意匠のDとイ号意匠のD’は,ピンの形状が途中で若干の角度で屈曲しているか,屈曲しないかの相違である。
しかしながら,かかるピン部の屈曲の有無は,本件登録意匠においては僅かな屈曲の角度でありピン部全体の形態に占める面積は極小であり,需要者の注意を引く要部とは成りえない。
また,イ号意匠のD’の屈曲を持たないピン部の形状は,甲第4号証の掲載図面(赤丸)が示す形状に表れている形状である。よって,イ号意匠に係る製品が発売されたと推察される平成25年6月頃には,D’の形状が公知の形態であったことは明らかである。
よって,屈曲形状を持たないピン部形状は既に公知の形状であるから,需要者の注意を殊更引く構成ではない。よって,屈曲の有無は意匠の類否判断において,重視すべき意匠の要部にならない。
ウ.部分意匠に相当する形態の共通点
まず,本件登録意匠のCとイ号意匠のC’は,全てのピンが並設面から他方に向かい伸延する形態において共通する。
また,本件登録意匠のEとイ号意匠のE’は,ピンの先端部が,ブラシ本体側に向けてヘアピンカーブを描く形態において共通する。
ここで,EとE’は,需要者の注意を最も引く意匠の要部である。また,かかるヘアピンカーブの形状を持つ公知意匠は,本件登録意匠の出願前に意匠に係る物品である「ペット用ブラシ」の分野には存在しなかった。
一方,請求人は,先行意匠調査を実施した。その結果,本件登録意匠の出願前にかかる意匠の分野においては,ピン部が直線である登録意匠が存在するものの(甲7及び8),本件登録意匠のようにヘアピンカーブを描いているものは存在しなかった。
したがって,E及びE’は意匠の要部であり,需要者の注意を最も引く形態である。
この点,イ号意匠はその製品包装台紙の物品包装面において,ピン先端部のヘアピンカーブ形状を「毛が飛び散りにくい」,「まとまる!」などの宣伝文句を併記し,需要者に対しヘアピンカーブの形態の特徴を殊更強調する拡大写真の表示がある(甲9)
更には,ヘアピンカーブの形態の特徴を拡大図のイラストにより表し,また,「”まるコームのまるい形のピンは肌にやさしく,ペットが気持ちいいしなりがあります”」との宣伝文句とともに,「この丸み!」,「パッと!」など表現をヘアピンカーブ部の拡大写真とともに強調した写真を掲出している(甲10)。
このような被請求人の宣伝手法から,被請求人においてもE’のヘアピンカーブの形態が,イ号意匠の最も特徴的な形状であり,需要者の注意を引く形態であることを,認識していたことの証左である。
かかる事実は,被請求人が本件登録意匠の形態の特徴点を認識し,これをイ号意匠に採用する一方,構成B’及び構成D’の形状を本件登録意匠の構成B及び構成Dの形状と異なる形状として,意匠全体の形態を本件登録意匠と異なるものと成らしめ,狡猾に本件登録意匠の範囲から逃れるための形状を創作したものである。
エ.本件登録意匠が部分意匠登録であることの配慮
本件登録意匠は部分意匠登録であるから,部分意匠登録として判定請求人が意匠登録を受けようとする部分は,意匠登録を受けようとする部分以外の部分の形態に影響を受けることなく,部分意匠の形態の保護を認めることが部分意匠制度の趣旨である。
したがって,イ号意匠の構成C’及びE’は,本件登録意匠の部分意匠を請求する構成C及びEに類似する形態であるから,イ号意匠は本件登録意匠の範囲に包含されると考えることが妥当である。
オ.先行公知意匠と本件登録意匠の権利範囲
本件登録意匠の出願日である平成7年12月12日以前に,意匠に係る物品「ペット用ブラシ」の分野において,本件登録意匠と共通する意匠の構成を持つ公知意匠は,判定請求人が調査を実施した結果存在しないことが判明した。
この事実からも,本件登録意匠のC及びEは需要者の注意を引く意匠の要部であり,かかる要部の形態をそのまま若しくは若干の形状変更を行い,C’及びE’としたイ号意匠は,本件登録意匠の部分意匠に類似する意匠であることは火を見るより明らかである。

(7)むすび
以上のとおり,被請求人は本件登録意匠の形態の特徴点,すなわち,本件登録意匠のC及びEを認識し,これらをイ号意匠に採用する一方,イ号意匠の他の構成を変更することにより意匠全体としては本件登録意匠と非類似の形状として,狡猾に本件登録意匠の範囲から外れることを意図する意匠の形状である。
しかしながら,かかる被請求人の行為は,部分意匠制度の制定趣旨に照らし許されるべきではない。
イ号意匠は,本件登録意匠の形態の特徴点であるC及びEをそのまま取り込んでいるものであるから,イ号意匠は本件登録意匠の部分意匠の登録意匠の範囲に属するものであることは明らかである。
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠の範囲に属するとの判定を求める。

3.証拠方法
(1)イ号意匠が,被請求人の実施にかかるものである,との証明に関するもの
イ号意匠に係る物品の販売時における写真を甲第11号証として提出する。

(2)本件登録意匠の先行周辺意匠に関するもの
先行意匠調査結果を甲第4,5,6,7及び8号証として提出する。

第3 被請求人の答弁
1.答弁の主旨
イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。

2.答弁の理由
(1)はじめに
判定請求人が,イ号意匠として提出する甲第2号証において,イ号意匠の形態を表す写真中には,説明のための囲み線,指示線などが重なって不明瞭であり,イ号意匠そのものが特定されたものではない。当該甲第2号証は参考図としては認められるが,判定請求人は,イ号意匠本来の形態を提出されたい。

(2)本件登録意匠とイ号意匠との対比
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「ペット用ブラシ」とした意匠の,部分意匠に関するものである。
他方,イ号意匠は,物品「ペット用ブラシ」に係るものである。
ア.両意匠の共通点
(ア)多数のピンが取手部の先端辺に平行に併設されている点。
(イ)各ピンが取手部付設面から他方に向かい延設されている点。
(ウ)各ピンが軸部の先端をカギ状に湾曲されている点。
イ.両意匠の相違点
(ア)本件登録意匠においては,ピンが正面視で水平状に併設されているのに対して,イ号意匠ではピンが円弧状に併設されている点。
(イ)本件登録意匠においては,各ピンの軸部が付設面から鉛直方向に伸びた後に中途で斜めに傾斜してなる「く」字状とし,ピン全体として「?」字状とされた形態であるのに対して,イ号意匠では付設面からストレートに傾斜し,ピン全体として倒置「し」字状である点。
(ウ)本件登録意匠においては,各ピンが基端側から先端側に至るまで同径で細い形態であるのに対して,イ号意匠では基端側が扁平でかつ基端側から先端側に向けて先細りの形態である点。
(エ)本件登録意匠においては,各ピンが取手部に直接付設されている形態であるのに対して,イ号意匠では各ピンが基台部を介して取手部に付設されている点。

(3)両意匠の共通点についての検討
ア.多数のピンが取手部の先端辺に平行に並設されてなる形態は,この種物品の分野において周知の形態である。(乙3?7)
イ.各ピンが取手部の付設面から他方に向かい延設されてなる形態も,この種物品の分野において周知の形態である。(乙2?7)
ウ.ピンの軸部の先端がカギ状に湾曲されてなる形態は,本件登録意匠の出願前に(乙2)に記載されて公知となっている。
この点,判定請求人は,ピンの先端部がヘアピンカーブの形状を持つ公知意匠は,本件登録意匠の出願前において「ペット用ブラシ」の分野には存在しなかったなどとし,需要者の注意を最も引く意匠の要部である旨主張する。しかし乙第2号証のみならず,乙第4,6,7及び8号証は,いずれも本件登録意匠と機能を同一とするものであり,ピンの先端を略半円形に湾曲させてカギ状とされた形態は,本件登録意匠の出願前から周知の形態である。
エ.以上から,これらの共通点に係る形態は,ありふれた形態に過ぎないもの,又は,両意匠のみに共通する特徴的な形態とはいえないものであり両意匠の類否判断を決定付けるものとはなりえない。

(4)両意匠の相違点についての検討
ア.本件登録意匠においてはピンが取手部先端辺に水平状に並設されているのに対して,イ号意匠はピンが取手部先端辺に円弧状に並設されている。その結果,ピンの先端側においても本件登録意匠では水平状であるのに対して,イ号意匠では円弧状に視認されて明らかに異なる印象を与えるものである。
イ.上述「ア.」の結果,左側面視において,本件登録意匠においては手前のピンに背後のピンが重なって隠れてしまうのに対して,イ号意匠は手前のピンに背後のピンが山なりに連なって視認されるもので,両者は明らかに異なる印象を与えるものである。殊に,イ号意匠においては多数のピンの軸部が全体として傾斜した壁面のように見て取れるものである。
ウ.本件登録意匠においては,ピン軸部が中間に屈曲部を形成して「く」字状とし,ピン全体として「?」字状とされた極めて特徴的な形態とされている。これに対してイ号意匠ではピン軸部は中間にそのような屈曲箇所のない形態で,ピン全体として倒置「し」字状のストレートな印象を与えるもので両者は全く異なる印象を与えるものである。
エ.本件登録意匠は,ピンが基端側から先端側に至るまで同径の細い針金状の単純な形態であるのに対して,イ号意匠は,ピンが基端側で扁平状とされかつ基端側から先端側に向かうにつれて先細りとなる形態であり,彼此相違点が美感に与える影響は無視できないものである。
オ.本件登録意匠においてはピンが取手部に直接付設されているのに対して,イ号意匠では基台部を介して取手部に付設されてなる形態であるため,頑丈な印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
カ.以上のとおり,両意匠の相違点は明らかであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといわざるを得ない。

(5)本件登録意匠の権利範囲
本件登録意匠は,「ペット用ブラシ」について登録されたものであるが,その後に登録された周辺意匠として乙第8,9号証がある。これら登録意匠は,何れも本件登録意匠と同様にピンの先端をカギ状に湾曲し,軸部に屈曲部を有する形態のものであるが,本件登録意匠とは独立の意匠として登録されている。これらの周辺登録意匠は,ピンの軸部の太さや屈曲箇所の位置など僅かな相違点があるだけで本件登録意匠と非類似と認められて登録されたものと考えられる。このことから,本件登録意匠の権利範囲は極めて狭いものと判断される。
なお,本件登録意匠は取手部を除く部分の部分意匠であり,取手部の形態によって権利範囲が限定されるものではないとしても,取手部は部分意匠として登録を受けようとする部分との関係ではその位置,大きさ,及び範囲等を示すものであって,本件登録意匠の取手部と取手部を除く部分の比率は略1:1であるのに対し,イ号意匠のそれは略1:3であり,その相違は無視できないものと判断される。
また,多数のピンの付設の態様がいかなる形態であっても権利範囲に含まれると解することはできないものである。すなわち,本件登録意匠においては,ピンの取手部への付設態様は水平状であるところ,ピンの取手部への付設態様が例えば凸弧状,凹弧状,三角形状や半円形状の場合にまでその権利範囲に含まれると解することは広きに失するといわざるを得ない。

(6)むすび
以上のとおり,本件登録意匠とイ号意匠の共通点は,ことごとく周知である一方,その相違点は,顕著で,その美感も明らかに全く異なるものであって,両意匠が類似するものとは到底考えられない。
よって,答弁の趣旨のとおり,属しない,との判定を求める。

3.証拠方法
(1)本件登録意匠とイ号意匠の対比に関するもの
乙第1号証:本件登録意匠 意匠登録第1194483号公報の写し
別紙第1:商品名「ソフト毛とりまるコーム」の意匠写真
別紙第2:本件登録意匠とイ号意匠の対比参考図

(2)本件登録意匠の周辺意匠に関するもの
乙第2号証:実開平7-39403号公報の写し
乙第3号証:実開平6-9446号公報の写し
乙第4号証:米国特許第3491725号特許明細書の写し
乙第5号証:実開昭51-46783号公報の写し
乙第6号証:ハヤシ株式会社の総合カタログ「BEAUTY CLUB series」(1995年5月発行)の写し
乙第7号証:ハヤシ株式会社のカタログちらし「BEAUTY CLUB series NEW 新製品ラインアップ」(1995年8月発行)の写し
乙第8号証:意匠登録第1471351号公報の写し
乙第9号証:意匠登録第1423770号公報の写し

第4 判定請求人による判定請求弁駁書
1.弁駁の内容
ア.請求人は,被請求人が提出した判定請求答弁書に対し,次のとおり弁駁する。
乙第2号証における「家畜のブラシ器具」の「熊手」に相当する形態は,ブラシの柄から単調かつ直線的に伸びた先端のみがカギ状を構成するに過ぎない単純なカギ状形態である。
一方,本件登録意匠は,取っ手部から伸延する部材がブラシ部のほぼ真ん中より外側に向かって傾斜(スロープ)を持ちつつ湾曲する特殊な形態のカギ状である。そもそもカギ状の形態が異なるのである。
したがって,乙第2号証の単純なカギ状をもって,本件登録意匠のカギ状を特徴的な形態とはいえないとする答弁書の主張は,本件登録意匠のカギ形態の認定を明らかに誤ったものであり理由がない。
また,乙第4,6及び7号証が有するブラシ先端の形態はカギ状ではあるが,そもそもカギ状を形成するブラシ部はピン状ではなく,フラットな板材を用いたピンであるとともに,カギ状は取手先端辺から外方向に向かい直線的に伸延しカギ状を形成する。かかる部材を用いた結果,ピン部の存在感が突出した印象を需要者に与える。
したがって,乙第4,6及び7号証が有するくし先端部のカギ状をもって,本件登録意匠のカギ状を特徴的な形態とはいえないとする答弁書の主張は,本件登録意匠のカギ状形態の認定を誤ったものであり理由がない。

なお,答弁書は乙第8号証を引用し本件登録意匠の先端部のカギ状は周知若しくは公知と断定するが,乙第8号証は平成25年6月10日に発行された登録公報に掲載された形態であって,本件登録意匠の出願日である平成7年12月12日の後の発行であるから,本件登録意匠のカギ状の形態に対し,周知若しくは公知性を主張する理由とは成り得ない。

イ.以上のとおりであるから,ピンの先端部が本件登録意匠のようにブラシ取付け辺から傾斜を持ちつつ伸延し更に湾曲するというカギ状の特徴は,答弁書が指摘する乙第2,4,6及び7号証が示す単調なカギ状であるヘアピン形態とは明らかに異なるから,「特徴的な形態とはいえない」と答弁書が断定する理由はない。

第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1194483号の意匠)は,その願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「ペット用ブラシ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたもので,「実線で表された部分が部分意匠として意匠を受けようとする部分(判定注;以下「本件部分」という。)である。」としたものである。(別紙第1参照)

すなわち,本件部分は,多数のピンを略板状の取っ手部上辺に設けたペット用ブラシである本件登録意匠中の,取っ手部を除いた,多数のピン部分であって,その形態は次のとおりである。
(1)ピン並設部分は,正面視で,直線状であって,そこに,ピンを1列にして,左右に多数並べて設けている。
(2)ピンは全て同大同形状であって,取っ手の並設面から,正面視で垂直方向に延伸している。
(3)ピンは,下端から垂直方向に延伸し,途中で屈曲して,背面方向に傾斜している。
(4)ピンは,側面視で,先側がヘアピンカーブを描いて,背面側から正面側に向かっている。
(5)「(3)及び(4)」の結果,ピンは,側面視で,略「?」字状である。
(6)ピンは,下端から先端に至るまで同径の細い線材様である。

2.イ号意匠
イ号意匠は,甲第2号証及び判定請求答弁書別紙第1に示されたものであって,商品名を「ソフト毛とりまるコーム」と称する「ペット用ブラシ」であって,その形態は,甲第2号証及び判定請求答弁書別紙第1に示されたとおりのものである。(甲第2号証のみ別紙第2参照)
なお,本件部分と対比して,類否判断の対象となる部分は,引用意匠における本件部分に相当する部分(以下「イ号部分」といい,本件部分と併せて「両部分」という。)であり,その部分は,多数のピンを略板状の取っ手部上辺に設けたペット用ブラシであるイ号意匠中の,多数のピン部分であって,その形態は次のとおりである。
(1)ピン並設部分は,正面視で,凸円弧状であって,そこに,ピンを1列にして,左右に多数並べて設けている。
(2)ピンは全て同大同形状であって,取っ手の並設面から,正面視で垂直方向に延伸している。
(3)ピンは,下端から背面方向に傾斜して延伸している。
(4)ピンは,側面視で,先側がヘアピンカーブを描いて,背面側から正面側に向かっている。
(5)「(3)及び(4)」の結果,ピンは,側面視で,斜倒「し」字状である。
(6)ピンは,下端が前後に長い扁平(へんぺい)状で,先端に向けて徐々に先細りの形態である。

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)を対比すると,意匠に係る物品については,共に「ペット用ブラシ」である。

(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両部分は,共にペット用ブラシの,ペットの毛をとかすピン部分である。
両部分の位置は,共にブラシの取っ手部の先端であり,その大きさと範囲は,本件部分は,ブラシ全体の約2分の1を占めるものであって,イ号部分は,約4分の1を占めるものである。

(3)両部分の形態
両部分の形態については,主として以下の共通点と相違点が認められる。
ア.共通点
(A)ピン並設部分に,ピンを1列にして,左右に多数並べて設けている。
(B)ピンは全て同大同形状であって,取っ手の並設面から,正面視で垂直方向に延伸している。
(C)ピンは,側面視で,先側がヘアピンカーブを描いて,背面側から正面側に向かっている。

イ.相違点
(a)正面視におけるピン並設部分について,本件部分は,直線状であるのに対して,イ号部分は,凸円弧状である点
(b)側面視におけるピンの態様について,本件部分は,下端から垂直方向に延伸し,途中で屈曲して,背面方向に傾斜し,かつ,ヘアピンカーブを描いて,背面側から正面側に向かっており,その結果,全体で略「?」字状であるのに対して,イ号部分は,下端から背面方向に傾斜して延伸して,ヘアピンカーブを描いて,背面側から正面側に向かっており,その結果,全体で斜倒「し」字状である点
(c)ピンの形態について,本件部分は,下端から先端に至るまで同径の細い線材様であるのに対して,イ号部分は,下端で前後に長い扁平状で,先端に向けて徐々に先細りの形態である点
(d)ピン部全体の形態について,それぞれのピンが(b)の形態を持ち,かつ,ピンが(a)により,直線状又は円弧状に連続的に並設していることから,全体として,本件部分は,「?」字状の直線的な面を呈するのに対して,イ号部分は,「し」字状のアーチ状曲面を呈する点

4.類否判断
イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,検討する。
(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共に「ペット用ブラシ」であって,一致している。

(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能は,共にペット用ブラシのピン部分であるから,一致している。
両部分の位置は,共にペット用ブラシの先端にあるピン部分であるから一致し,大きさ及び範囲は,いずれもペット用ブラシにおいてありふれた範囲内のものである。

(3)両部分の形態
ア.共通点の評価
共通点(A)及び同(B)については,この種物品分野においてありふれており,両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点(C)については,ありふれていると言える程ではなくとも,本件登録意匠の出願前より存在する態様(乙4ないし乙7)であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ.相違点の評価
相違点(a)については,その結果,多数並んだ同大同形状のピンの,ヘアピンカーブ状のピン上端部が,本件部分においては,直線状であるのに対して,イ号部分は,凸円弧状となる態様の相違につながり,この相違は,直接ペットに触れる部分の相違であって,その態様の相違から得られる効果の相違が認識できるものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(b)については,本件部分が,ピン部のほぼ真ん中より外側に向かって傾斜(スロープ)を持ちつつ湾曲する特殊な形態と知覚するものであるのに対して,イ号部分は,単調かつ直線的に伸びた単純な形態と知覚するものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(c)については,ピンのしなり具合が異なり,その結果使用時の力の入れ具合や,効果の違いにつながる形状の相違であるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(d)については,大きな面積を視認するところの,具体的な形状の相違であるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
上記のとおり,両部分の形態について,相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれよりも大きいから,両部分の形態は類似するといえない。
したがって,両意匠の意匠に係る物品は一致し,両部分の用途及び機能が一致し,両部分の位置が一致し,両部分の大きさ及び範囲はこの種物品分野においてありふれた範囲内のものであるが,両部分の形態は類似しないから,両意匠は類似しない。

5.結び
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2015-09-28 
出願番号 意願2003-21709(D2003-21709) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (E0)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 吉田 佳代子松田 光太郎斉藤 孝恵 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 橘 崇生
清野 貴雄
登録日 2003-11-21 
登録番号 意匠登録第1194483号(D1194483) 
代理人 安田 敏雄 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 中村 知公 
代理人 安田 幹雄 
代理人 前田 大輔 
代理人 朝倉 美知 
代理人 片桐 務 
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