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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1307389 |
審判番号 | 不服2015-5534 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-24 |
確定日 | 2015-10-06 |
意匠に係る物品 | 天井埋込み灯 |
事件の表示 | 意願2014- 247「天井埋込み灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)1月9日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「天井埋込み灯」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠法第9条第1項の規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,平成25年(2013年)7月5日に意匠登録出願(意願2013-015343)をし,その後,審査を経て意匠登録をすべき旨の査定がなされて,平成26年(2014年)4月18日に意匠権の設定の登録がなされ,同年5月26日に日本国特許庁が発行した意匠公報に掲載された意匠登録第1497801号の意匠であって,その出願の願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品が,「天井埋込み灯」であり,形態は,願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「天井埋込み灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「天井埋込み灯」であって,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2) 形態 本願意匠と引用意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (2-1)共通点 基本的構成態様として, (A)全体は,概ね,左右方向に長く,上下の長さは僅かである略細長扁平直方体であり,その上面を取り付け面とし,底面に照光部を設け,四囲を極細長板状体で囲むように形成したもので,底面においては,前後方向中央部で底面よりも突出する位置に長手方向全長ほぼ一杯に渡る細幅の略蒲鉾状の透光照明カバー部を配し,その透光照明カバー部を前後に挟むように隣接して,外側下方に傾斜する反射板を断面視ハの字状に両脇に配し,上面においては,前後方向中央部長手方向全長ほぼ一杯に渡る細幅の直方体状の覆い部を,その下方に位置する略蒲鉾状の透光照明カバー部背面を覆う態様に上面より突出する位置に配している点。 具体的構成態様として, (B)長手方向ほぼ一杯に配した細幅の略蒲鉾状の透光照明カバー部について,両脇に配した一つの反射板の幅より僅かに細幅のものであり,透光照明カバー部の突出程度は,その円弧面が四囲の極細長板状体縁部の下端より下方に突出している点。 (C)平面視による全体の縦横高さ比について, 本願意匠も引用意匠も,約5:27:1である点。 (D)その周囲縁部は,前後方向には両反射板面から僅かに水平方向に屈曲して平坦面を成した後,垂直方向に屈曲して極細長板状体に形成したもので左右方向にも細幅の平坦面を形成し,底面において,周囲に細枠状平坦縁部を形成している点。 (2-2)相違点 具体的構成態様として, (ア)略蒲鉾状の透光照明カバー部態様について 本願意匠は細幅の略蒲鉾状の透光照明カバー部側面において長手方向全長に渡る溝状の湾曲凹部を形成しているのに対し,引用意匠は,側面を中央から下方外側に向けた傾斜面に形成している点。 (イ)反射板部の態様について 本願意匠は,縁部は,前後方向中央の略蒲鉾状の透光照明カバー部設置上側から直ちに傾斜する反射板を形成しているのに対して,引用意匠は,該縁部に細幅の水平面を形成している点。 (ウ)側面からみた,高さ方向の各部比率について, 細幅直方体状覆い部(突出分),極細幅板状部,略蒲鉾状の透光照明カバー部(突出分)は,本願意匠は,約3:1:2であるのに対して, 引用意匠は,約3:2:1であり,引用意匠が極細幅板状部についてやや幅広で略蒲鉾状の透光照明カバー部の突出部が僅かであるのに対し,本願意匠がやや極細幅板状部について幅狭で略蒲鉾状の透光照明カバー部の突出部がやや多めのものである点。 (エ)上面態様について 本願意匠にはないが,引用意匠には,略蒲鉾状の透光照明カバー部背面を覆う細幅直方体状覆い部に小孔部を左右等間隔に3つ配し,その内中央のものが円孔,左右端のものが長円孔である点。 2.類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態については,以下のとおりである。 (1)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また,具体的構成態様としてあげた共通点(B)も,この種天井埋込み灯においては,細幅の略蒲鉾状の透光照明カバー部が反射板の幅よりも細幅のものは,本願出願前によく見受けられることから,看者の注意を惹くものとはいえず,細幅の略蒲鉾状の透光照明カバー部の円弧面が四囲の極細長板状体縁部の際より外側に突出しているものも,本願出願前に見受けられることから,この点が,看者の注意を惹くものとはいえない。共通点(C)の全体の縦横高さ比についても両意匠のような縦横高さ比の態様のものは,この種,天井埋込み灯の分野において,よく見られる態様であって,この点も両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいものとはいえない。また,共通点(D)についても周囲に細枠状水平縁部を設けることは天井埋込み灯の分野においてはごく普通によく見受けられるものであるからこの点についても看者の注意を惹くものとはいえない。よって,共通点(A),(B),(C)及び(D)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は共に小さく,共通点全体があいまって生じる効果を考慮したとしても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)相違点の評価 これに対して,両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は,相違点(ア)については,細幅の略蒲鉾状の透光照明カバー部側面における態様であるが,取付け時及び使用時においても観察でき,照明具として最も目に付く照光部の透光照明カバー部の態様であり,側面も,看者が注視する部位であるから,側面部が湾曲凹部であるか,傾斜面を形成するものであるかの相違は,類否判断に及ぼす影響は大きい。相違点(イ)については,反射板部の態様であって,本願意匠は,透光照明カバー部を設置した下側から,透光照明カバー部際より直ちに傾斜する反射板が形成されているのに対して,引用意匠は,透光照明カバー部脇に細幅の水平面を形成した後に,傾斜する反射板が形成されている点であるが,この水平面の有無は,取付け時にも使用時にも観察可能な照光部の透光照明カバー部脇における部位ではあるが,その反射板部の水平面部は細幅で,連なる傾斜面部との傾斜差も僅かであって,看者の目を惹くほどの面態様の変化とまではいえず,類否判断に与える影響は小さい。また,相違点(ウ)は,高さ方向の細幅直方体状覆い部(突出分),極細幅板状部,略蒲鉾状の透光照明カバー部(突出分)比についてであって,引用意匠が極細幅板状部についてやや幅広で略蒲鉾状の透光照明カバー部の突出部が僅かであるのに対し,本願意匠がやや極細幅板状部について幅狭で略蒲鉾状の透光照明カバー部の突出部がやや多めのものである点は,側面からの各部の僅かな比率差によるものではあるが、外観から十分観察できるものであり,十分目に付く照光部の差異であって,この点は類否判断に一定の影響を与えるものである。相違点(エ)については,略蒲鉾状の透光照明カバー部背面を覆う細幅直方体状覆い部の小孔部の有無であるが,取付け側の設置後は埋込まれて見えなくなる部分でもあり,この種物品分野でよく見られる取付け用小孔部の有無であって,類否判断に影響を与えるものとはいえない。そして,(イ)及び(エ)の相違点が類否判断に与える影響がさほどのものでないとしても,相違点(ア)が類否判断に与える影響は大きく,相違点(ウ)については類否判断に一定以上の影響を与えるものであって,それら相違点(ア)ないし(エ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として別異のものと印象づけるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第9条第1項の最先の出願人に係る意匠に該当しないとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-09-18 |
出願番号 | 意願2014-247(D2014-247) |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 清野 貴雄 |
登録日 | 2015-11-06 |
登録番号 | 意匠登録第1539528号(D1539528) |
代理人 | ポレール特許業務法人 |