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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) J7
管理番号 1307395 
判定請求番号 判定2014-600046
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2015-12-25 
種別 判定 
判定請求日 2014-09-16 
確定日 2015-11-19 
意匠に係る物品 皮膚刺激器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1467652号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠は,登録第1467652号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求趣旨及び請求理由
1.請求主旨
イ号図面およびその商品詳細説明(被請求人のホームページ上)に示す意匠は,登録第1467652号意匠及びこれらに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。
以下,意匠登録第1467652号の意匠を「本件登録意匠」という。

2.請求理由
(1)判定請求の必要性
本件判定請求人(ピー・エス・アイ カンパニー リミテッド)は,本件判定請求に係る登録意匠「皮膚刺激器」(甲第1号証)の意匠権者である。
本件判定被請求人(クルールラボ株式会社)が現在販売しているイ号意匠(甲第2号証)の皮膚刺激器(イ号物件)は,本件登録意匠の意匠権を侵害するものであるので,本件判定請求人は,平成26年7月1日付けで意匠登録第1467652号の侵害行為の差止請求の件の警告書(甲第3号証)を本件判定被請求人に送付した。
これに対して,本件判定被請求人は,「イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨を,回答書(甲第4号証)において主張するので,特許庁による判定を求める。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成24年9月19日(意願2012-022621号)
登録 平成25年3月22日(登録第1467652号)

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,別紙登録第1467652号の意匠公報の【意匠に係る物品の説明】に記載されているように,意匠に係る物品を「皮膚刺激器」とし,その形態の要旨を,次の通りとする。
i)基本的な構成態様は,全体がグリップ部とヘッド部とからなり,グリップ部は,細長くて先端が丸く後端が先端よりも幅が狭くて丸くなっている流線型の平面形状を有し,断面形状が略楕円形を有しており,ヘッド部は,円形の平面形状を有し,皮膚と接する面と,グリップ部と接続される部分とを有しており,皮膚と接する面と反対側がグリップ部と先端側に接続されている。
ii)具体的な構成態様は,グリップ部の表面(ヘッド部が取り付けられている面と反対側の面)に,内部に複数のピラミッド形状が整列して形成された透明なウィンドウが設けられており,透明なウィンドウを取り囲むように縁(製品ではメッキの縁)が設けられており,グリップ部の周縁およびヘッド部が取り付けられている面には操作ボタンが配置されており,ヘッド部の皮膚と接する面には,中央に超音波振動子が設けられた1つの円形のヘッド,円形のヘッドの周囲に配置されたゴムシーリング,円形のヘッドを取り囲むように配置された高周波を伝達するための4つのヘッド,4つのヘッドの間にそれぞれ2つずつ配置された発光ダイオード,および,ヘッド以外の部分を覆う半透明のウィンドウが存在しており,ヘッド部の側面には等間隔で,略楕円形の窪み(4個のヘッドを固定するボルトを保護している)が4つ形成されている。

(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は,イ号図面およびその商品詳細説明(被請求人のホームページ上)に記載されているように,意匠に係る物品を「皮膚刺激器」とし,その形態の要旨を,次の通りとする(甲第2号証参照)。
i)基本的な構成態様は,全体がグリップ部とヘッド部とからなり,グリップ部は,細長くて先端が丸く後端が先端よりも幅が狭くて丸くなっている流線型の平面形状を有し,断面形状が略楕円形を有しており,ヘッド部は,円形の平面形状を有し,皮膚と接する面と,グリップ部と接続される部分とを有しており,皮膚と接する面と反対側がグリップ部と先端側に接続されている。
ii)具体的な構成態様は,グリップ部の表面(ヘッド部が取り付けられている面と反対側の面)に,内部に複数のピラミッド形状が整列して形成された透明なウィンドウが設けられており,ウィンドウ内の円形内に操作用のボタンが4つ配置されており,透明なウィンドウを取り囲むようにメッキの縁が設けられており,ヘッド部の皮膚と接する面には,中央には超音波振動子が設けられた1つの円形のヘッド,円形のヘッドの周囲に配置されたゴムシーリング,円形のヘッドを取り囲むように配置された高周波を伝達するための4つのヘッド,4つのヘッドの間にそれぞれ2つずつ配置された発光ダイオード,および,ヘッド以外の部分を覆う半透明のウィンドウが存在しており,ヘッド部の側面には等間隔で,略楕円形の窪み(4個のヘッドを固定するボルトを保護している)が4つ形成されている。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
i)両意匠の共通点
a)両意匠は,意匠に係る物品が「皮膚刺激器」で一致している。
b)基本的な構成態様において,全体がグリップ部とヘッド部とからなり,グリップ部は,細長くて先端が丸く後端が先端よりも幅が狭くて丸くなっている流線型の平面形状を有し,断面形状が略楕円形を有しており,ヘッド部は,円形の平面形状を有し,皮膚と接する面と,グリップ部と接続される部分とを有しており,皮膚と接する面と反対側がグリップ部と先端側に接続されている。
c)具体的な構成態様において,グリップ部の表面(ヘッド部が取り付けられている面と反対側の面)に,内部に複数のピラミッド形状が整列して形成された透明なウィンドウが設けられており,透明なウィンドウを取り囲むように縁(メッキの縁)が設けられており,ヘッド部の皮膚と接する面には,中央には超音波振動子が設けられた1つの円形のヘッド,円形のヘッドの周囲に配置されたゴムシーリング,円形のヘッドを取り囲むように配置された高周波を伝達するための4つのヘッド,4つのヘッドの間にそれぞれ2つずつ配置された発光ダイオード,および,ヘッド以外の部分を覆う半透明のウィンドウが存在しており,ヘッド部の側面には等間隔で,略楕円形の窪み(4個のヘッドを固定するボルトを保護している)が4つ形成されている。
ii)両意匠の差異点
a)グリップ部の長さが,本件登録意匠は,ヘッド部の約2倍であるのに対し,イ号意匠は,ヘッド部の2倍よりも短い点。
b)グリップ部の透明なウィンドウに,本件登録意匠は,操作用のボタンが存在しないのに対し,イ号意匠は,操作用のボタンが配置されている点。
c)グリップ部の周縁およびヘッド部が取り付けられている面に,本件登録意匠は,操作ボタンが配置されているのに対し,イ号意匠は,ボタンが存在しない点。
d)グリップ部とヘッド部の接続部分が,本件登録意匠は,接続部の中心がヘッド部の中心と同軸であり,ヘッド部よりも少し径が小さくなっているのに対し,イ号意匠は,接続部の中心とヘッド部の中心はずれており,ヘッド部よりも大幅に径が小さくなっている点。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
i)本件登録意匠に関する先行周辺意匠
・甲第6号証(意匠登録第1379005号公報)(写)
・甲第7号証(意匠登録第1302609号公報)(写)
・甲第8号証(意匠登録第1244833号公報)(写)
・甲第9号証(意匠登録第1412611号公報)(写)
ii)本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠の創作の要点について述べれば,この種物品における意匠上の創作の主たる対象は,グリップ部の表面およびその形状の構成態様,およびヘッド部の表面の構成態様にあることは明らかで,本件登録意匠については,他に見られないグリップ部の全体形状および表面形状,および,使用時に皮膚と接する機能上も重要な部分である,ヘッド部の皮膚と接する面の形状の態様が相侯って,本件登録意匠全体の基調を表出している。
iii)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
そこで,本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに,
a)両意匠の共通点は,基本的な構成態様に関しては,流線型のグリップ部および円形の平面形状を有するヘッド部の態様が共通しており,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。また,具体的な構成態様に関しては,グリップ部の表面に,内部に複数のピラミッド形状が整列して形成された透明なウィンドウおよびウィンドウを取り囲む縁が設けられている点は,他には見られない形態であり,使用者が一番目にする部分であり,さらに,ヘッド部の皮膚と接触する面における,2種類のヘッド,LED,半透明のウィンドウの設置が全て共通している点は,従来の肌刺激器には無い形態であり,2種類のヘッドの機能(高周波を伝達する機能および超音波振動子)およびLEDの機能(光を放射する機能)も全て共通していることから,両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
b)両意匠の差異点のa)については,グリップ部の長さが多少異なるだけで流線型の形状自体は類似であることから,特段顕著な差異といえず,類否の判断に与える影響は微弱であり,差異点b),c)についても,この種の物品においてボタンの位置および形状は簡単に変更可能であって,本件登録意匠の要部ではないことから,この点においても特段顕著な相違といえず,類否の判断に与える影響は微弱であり,差異点d)についても,グリップ部とヘッド部の接続部分の形状等が多少異なるだけであり,本件登録意匠の左右側面図においてのみ差異が確認できるものであり,実際に肌刺激器を使用している状態では,差異を認識することが少ないことから類否の判断に与える影響は微弱である。
c)以上の認定,判断を前提として両意匠を全体的に考察すると,両意匠の差異点は,類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって,共通点を凌駕しているものとはいえず,それらが纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は,その結論を左右するまでには至らないものである。

(7)むすび
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに属する意匠の範囲に属するので,請求の主旨どおりの判定を求める。

3.証拠方法
(1)甲第1号証(本件登録意匠公報)(写)
(2)甲第2号証(イ号図面およびその商品詳細説明)
(3)甲第3号証(日本意匠登録第1467652号の侵害行為の差止請求の件に関する警告書の写し)
(4)甲第4号証(回答書)
(5)甲第5号証(イ号意匠が,被請求人の実施に係るものである,との証明に関する資料:被請求人のホームページの「CELLBEAUTE CAVI」に関する箇所のプリントアウト)
(http://www.couleur-labo.co.jp/item/cellbeaute-cavi)
(6)本件登録意匠の先行周辺意匠に関するもの
・甲第6号証(意匠登録第1379005号公報)(写)
・甲第7号証(意匠登録第1302609号公報)(写)
・甲第8号証(意匠登録第1244833号公報)(写)
・甲第9号証(意匠登録第1412611号公報)(写)

第2 被請求人の答弁
1.答弁の趣旨
イ号意匠は,登録第1467652号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。

2.答弁の理由
(1)イ号意匠の特定
請求人提出の甲第2号証の写真のみではイ号意匠が必ずしも明確でないので,説明する。被請求人の実施する意匠は,意匠登録第1512249号(乙第1号証)に開示された意匠のヘッド部の円形面にLED発光部を付した形状を有し,それに色彩及び模様を加えたものである。なお,甲第2号証に示された写真は被請求人の実施する意匠に係るものであることを認める。以下,前記披請求人の実施する意匠がイ号意匠であるとして答弁する。請求人が他の意匠がイ号意匠であると主張するのであれば,そのイ号意匠を6面図等により明確化されたい。

(2)主位的主張
イ号意匠が,意匠登録第1467652号意匠及びそれに類似する意匠の範囲に属するとの請求人の主張は,請求人独自の見解に基づくものであって,本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると,イ号意匠は本件登録意匠及びそれに類似する意匠の範囲に属しない。
本件登録意匠は意匠に係る物品を「皮膚刺激器」として登録されたものである。また,部分意匠として登録されたものではない。してみれば,本件登録意匠及びそれに類似する意匠の範囲は,意匠に係る物品である「皮膚刺激器」全体の形態によって判断されるべきである。登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に基づいて行うものとされ(意匠法第24条第2項),意匠審査基準にも「両意匠の形態における各共通点及び差異点についての個別評価に基づき,意匠全体として両意匠の全ての共通点及び差異点を総合的に観察した場合に,需要者(取引者を含む)に対して異なる美感を起こさせるか否かを判断する。」と記されている。
本件登録意匠とイ号意匠をそれぞれ一見すれば,意匠に係る物品全体の外観形状が大きく相違するので,共通点及び差異点を個別に比較するまでもなく,非類似である。実際被請求人は,意匠登録第1512249号(乙第1号証)として,全体形状の意匠について意匠登録を受けている。本件登録意匠とイ号意匠とが意匠に係る物品全体の形状において非類似であることは明白である。イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

本件登録意匠とイ号意匠とは,請求人の主張のとおり「全体がグリップ部とヘッド部からなり,グリップ部は,細長くて先端が丸く後端が先端よりも幅が狭くて丸くなっている流線型の平面形状を有し,断面形状が略楕円形状を有しており,ヘッド部は,円形の平面形状を有し,皮膚と接する面と,グリップ部と接続される部分とを有しており,皮膚と接する面と反対側がグリップ部と先端側に接続されている。」点において共通する。しかし,請求人の主張する上記形態は,本件登録意匠の出願日前の2007年には遅くとも販売されていた製品「スリムソニックスパ」(乙第2号証第2ページ右上)も有していたものである。してみれば,本件登録意匠は上記形態のみを特徴とするものではない。上記形態が共通であることのみをもって本件登録意匠とイ号意匠とが類似であるとの判断とはならず,他の部分を含む物品全体の形態に基づいて判断すべきである。本件登録意匠とイ号意匠とは,需要者(取引者を含む)に対して異なる美感を起こさせるものであり,意匠に係る物品全体の形状が非類似であることは明白である。

(3)予備的主張
以上に基づけば,これ以上の詳細な検討をするまでもなく,イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないが,以下,予備的に検討する。
(3.1)本件登録意匠の基本的構成態様について
請求人は,本件登録意匠の基本的構成態様について,「全体がグリップ部とヘッド部からなり,グリップ部は,細長くて先端が丸く後端が先端よりも幅が狭くて丸くなっている流線型の平面形状を有し,断面形状が略楕円形状を有しており,ヘッド部は,円形の平面形状を有し,皮膚と接する面と,グリップ部と接続される部分とを有しており,皮膚と接する面と反対側がグリップ部と先端側に接続されている。」と認定している(判定請求書6(3)i))。
乙第2号証第2ページのとおり,請求人の主張する本件登録意匠の基本的構成態様は,本件登録意匠の出願前に公知であったものである。なお,本件登録意匠の出願日前の2011年には遅くとも販売されていた「プラチナソニックス」(乙第3号証第2ページ上),本件登録意匠の出願日前に意匠公報の発行された登録意匠第1412610号(乙第4号証)も,同様の形態を有している。請求人の主張する本件登録意匠の基本的構成態様は,意匠に係る物品を「皮膚刺激器」とするとありふれたものである。これのみをもって基本的構成態様とすることは失当である。グリップ部及びヘッド部に含まれる独創的な形態の部分,あるいはグリップ部とヘッド部の相対的な位置関係をも考慮して基本的構成態様を定めるべきである。
被請求人は,請求人の主張する要素を基本的構成態様に含めることに異存はない。しかし,請求人の主張に加えて以下も本件登録意匠の基本的構成態様に含まれる。「グリップ部は,ヘッド部の幅のおよそ2倍の長さを有し,平面視において長さ方向の一端がヘッド部の周縁に近く,他端側のヘッド部幅とおよそ同じ長さがヘッド部から突出していること」。この特徴は,乙第1号証乃至乙第4号証に示された意匠にはない本件登録意匠の特徴であり,ヘッド部から大きく突出したグリップ部が,固有の美観を有し,看者の注意を惹きつける。
イ号意匠は,グリップ部がヘッド部からわずかに突出しているが,突出の度合いが本件登録意匠と大きく異なり,需要者の視覚を通じて起こさせる美観が大きく相違する。イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

(3.2)具体的構成態様における両意匠の共通点及び差異点について
請求人は,本件登録意匠とイ号意匠との共通点が意匠の要部であり,差異点が類否の判断に与える影響は微弱である旨を主張する(判定請求書(5)本件登録意匠とイ号意匠の比較説明,(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明)。グリップ部とヘッド部の相対的な位置を含めて総合的に観察した場合に本件登録意匠とイ号意匠とが意匠に係る物品全体の形状において非類似であることに鑑みれば,グリップ部又はヘッド部の一部のみを個別に抽出して論ずることは不要であるが,請求人がかかる議論をしているので,以下,判定請求書に沿ってコメントする。

(i)共通点
a)意匠に係る物品について
本件登録意匠に係る物品は「皮膚刺激器」であり,イ号意匠に係る物品は「美容マッサージ器」である。物品が相違するが,被請求人は物品が類似であることに異存がない。

b)全体がグリップ部とヘッド部からなり,グリップ部は,細長くて先端が丸く後端が先端よりも幅が狭くて丸くなっている流線型の平面形状を有し,断面形状が略楕円形状を有しており,ヘッド部は,円形の平面形状を有し,皮膚と接する面と,グリップ部と接続される部分とを有しており,皮膚と接する面と反対側かグリップ部と先端側に接続されている。」点について
この構成は共通であることは認める。しかし,上述のとおり,ありふれた形態である。看者にとって既視の形状であり,看者の注意を強く惹くものではない。

c)グリップ部の表面に内部にピラミッド形状が形成された透明部分が設けられている点について
本件登録意匠の出願日前の2011年には遅くとも販売されていた製品「ジュエルエピ」(乙第5号証)は,グリップ部の表面に内部にピラミッド形状が形成された透明部分が設けられている。意匠に係る物品が「脱毛器」であり「皮膚刺激器」とは異なるが,美容目的で皮膚に当接させる機器である点で共通であり,皮膚刺激器においてグリップ部の表面に内部にピラミッド形状が形成された透明部分を設けることは容易である。してみれば,グリップ部の表面に内部にピラミッド形状が形成された透明部分が設けられているか否かは,グリップ部の表面に設けられた模様のバリエーションの範囲の微細な差異である。
「ジュエルエピ」におけるピラミッド形状は大きく,本件登録意匠と美観が相違するとも考えられる。しかし,ピラミッド形状の大きさによって美観が相違するのであれば,横方向に5個のピラミッドが設けられた本件登録意匠と,その3倍近い14個のピラミッドが設けられたイ号意匠との間においてもピラミッド形状の大きさが相違して美観が相違することとなる。実際,判定請求書に添付された資料1を見ても,本件登録意匠の実物の写真は各々のピラミッド形状の三角形部分が見えて三角形が並べられた意匠と把握され,イ号意匠は各々のピラミッド形状が全体として1つの四角形に見えて小さな四角形が並べられた意匠と把握される。本件登録意匠とイ号意匠とのピラミッド形状は,需要者の視覚を通じて起こさせる美観が相違するものである。
また,スマートフォンであるiPhone4のケースにピラミッド形状のものが用いられていた(乙第6号証)。iPhone5が本件登録意匠の出願日の直後の2012年9月21日に発売開始されており,iPhone4用のケースは本件登録意匠の出願前から販売されていたと考えられる。表面の透明部分の有無にかかわらず,ピラミッド形状が本件登録意匠の出願前から広く用いられており,本件登録意匠のピラミッド形状部分は,創作性を持った形態ではなく,グリップ部の表面に施された模様として選択されたものと考えることが相当である。
なお,請求人は,下記グリップ部とヘッド部の接続部分の形状について,「実際に肌刺激器を使用している状態では,差異を認識することが少ないことから類否の判断に与える影響は微弱である」(判定請求書6(6)iii)c))と主張する。してみれば,グリップ部表面も,実際にグリップ部を握って皮膚刺激器を使用している状態では見えづらいので,差異を認識することが少ないことから類否の判断に与える影響は微弱なはずである(本件登録意匠においてはヘッ下部のグリップ部に連接する箇所が2本の指の間に挟みづらいほど太く,グリップ部を握って使用する)。

d)ヘッド部表面の形態について
乙第4号証(底面図参照)によって,ヘッド部表面の円周に沿って配置された4つのヘッドが公知である。請求人の主張する要素のうち4つのヘッド以外のものは円形であり,4つのヘッドのみが不整形であるので,4つのヘッドが看者の注意を強く惹く。また,他の要素はいずれも物品の機能を実現するための必然的な形態である。本件登録意匠もイ号意匠も,ヘッド部表面の形態においては乙第4号証によって公知となった意匠から創作容易な範囲である。
請求人は,円形のヘッドの周囲の設けられたゴム部材及びLEDにおいて本件登録意匠とイ号意匠とが共通であり,その共通点が意匠の類否判断に重要である旨を主張する。被請求人は,かかるヘッド部全体に対して小さな面積の部分が美観に与える影響は小さいと考えるが,念のため,本件登録意匠の出願前から公知であったことを指摘しておく。
ゴム部材については,本件登録意匠の出願日前の2007年に販売されていた製品「セル・ボーテ バイパー」(乙第2号証第3ページ)において,円形のヘッドの周囲に化粧液等が機器に流入することを防ぐために用いられている。「セル・ボーテ バイパー」は被請求人の販売した商品であり,被請求人が請求人よりも先にゴム部材を使用していた。
LEDについては,本件登録意匠の出願日前に販売されていた製品「TP007」(乙第7号証第2ページ上)に用いられていた(乙第7号証における「紅光」はLEDが発光するものである)。乙第7号証は2012年のカタログであり,2011年には印刷されていた。実際の印刷日について疑念がある場合に備え,被請求人とTP007製造会社とのメール(乙第8号証)を示す。2008年において,「TP007」の製品符号が製造会社によって用いられている。
以上,請求人の主張する共通点について,共通であることは認めるが,本件登録意匠出願前から知られていた機能を実現するためのありふれた形態である。需要者の注意を強く惹くものではない。
なお,請求人は,下記グリップ部とヘッド部の接続部分の形状について,「実際に肌刺激器を使用している状態では,差異を認識することが少ないことから類否の判断に与える影響は微弱である」(判定請求書6(6)iii)c))と主張する。してみれば,ヘッド部表面も,実際に皮膚刺激器を使用している状態では見えないので,差異を認識することが少ないことから類否の判断に与える影響は微弱なはずである。

e)4個のヘッドを固定しているボルトの保護部について
ボルトを露出さないための保護部は,各種物品において従来から存在し,ありふれたものである。

(ii)差異点
a)グリップ部の長さについて
請求人は,長さの差異のみを示し,位置の差異を示していない。しかし,本件登録意匠は平面視においてグリップ部の中心がヘッド部の外側又は周縁に存在してグリップ部のおよそ半分がヘッド部から突出するのに対し,イ号意匠は平面視においてグリップ部の中心がヘッド部の中央付近に存在してグリップ部がヘッド部からあまり突出しない。需要者は,肌に当接させるヘッド部を中心に見るので,グリップ部がヘッド部から突出していることは美観に大きく影響する。グリヅプ部の位置を無視して長さのみを論じた請求人の主張は失当である。
また,仮に長さのみを見るとしても,本件登録意匠の平面視におけるグリップ部は細長い印象を与え,イ号意匠の平面視におけるグリップ部は卵形の印象を与える。この差異は需要者の視覚を通じて起こさせる美観に十分な影響を与える程度に大きい。

b)イ号意匠においてグリップ部の表面中央に配置された操作ボタンについて
請求人は,共通点として「内部にピラミッド形状が形成された透明部分」をあげ,その形態が意匠の要部であることを主張している。してみれば,その要部の中央付近に配置された操作ボタンが看者の注意を惹くことは自明である。操作ボタンの有無は,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に大きく影響する。

c)本件登録意匠においてグリップ部のヘッドが取り付けられた側に配置された操作ボタンについて
グリップ部のヘッドが取り付けられた側は,目に付きづらい箇所であり,グリップ部のヘッドが取り付けられた側に配置された操作ボタンの有無が需要者の視覚を通じて起こさせる美観にあまり影響を与えないことは認める。

d)グリップ部とヘッド部の接続部分の形状について
請求人は,接続部の中心とヘッド部の中心が同軸か否か及び径の変化の度合いのみを取り上げ,「形状等が多少異なるだけ」と主張する。しかし,イ号意匠は,接続部の中心とヘッド部の中心が非同軸であるため,グリップ部とヘッド部の接続部分が側面視非対称形状である(乙第1号証の左側面図を参照)。この点,本件登録意匠は,接続部の中心とヘッド部の中心が同軸であるため,グリップ部とヘッド部の接続部分が側面視対称形状である。
請求人は,例えば店頭に展示されたときに看者の注意を強く惹くかかる形状の差異を,意図的に無視している。
また,イ号意匠は,乙第1号証の左側面図と背面図とを対比すれば自明であるとおり,グリップ部とヘッド部の接続部分の断面の形状は,細長い。この点,本件登録意匠は,グリップ部とヘッド部の接続部分の断面の形状は,(真円形状ではないが)いずれの方向からみても太い。イ号意匠は細長い形状によって,判定請求書の資料1第3ページに示されたように,接続部を2本の指で挟むようにして物品を把持して使用することが可能なものである。本件登録意匠ではそれができない。使用時にどのように把持するのかは使用感に大きく影響するので,美観のみならず機能においても,本件登録意匠とイ号意匠とは大きく相違する。
なお,請求人の「実際に肌刺激器を使用している状態では,差異を認識することが少ないことから類否の判断に与える影響は微弱である」との主張については,上述のとおり,グリップ部表面及びヘッド部表面との間で矛盾する主張である。請求人がこの主張をするのであれば,グリップ部表面及びヘッド部表面について,共通点が類否の判断に影響を与えるとの主張を取り下げられたい。

(iii)類否の考察
a)共通点について
上述のとおり,請求人の主張する共通点は,いずれも本件登録意匠の出願時において公知のありふれたものである。看者の注意を強く惹くものではない。

b)差異点について
上述のとおり,差異点は,(c)を除き)需要者の視覚を通じて起こさせる美観に影響を与えるものである。本件登録意匠とイ号意匠とは非類似である。
なお,本件登録意匠とイ号意匠とが意匠に係る物品全体の形状において非類似であるので,被請求人は,これらの差異点のみを根拠として本件登録意匠とイ号意匠とが非類似であると主張するものではない。これらの差異点にかかる被請求人の主張は,予備的なものである。

c)全体的な考察
本件登録意匠とイ号意匠とは意匠に係る物品全体の形状において非類似である。請求人が個別に抽出した共通点及び差異点についても,差異点が需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響は,共通点が需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響を凌ぐものである。本件登録意匠とイ号意匠とは非類似である。

(4)結論
以上のとおり,請求人の主張は,本件登録意匠とイ号意匠とが意匠に係る物品全体の形状において非類似であることを意図的に無視し,グリップ部又はヘッド部の一部のみを個別に抽出して具体的構成態様を論じているものである。そして,具体的構成態様の議論においても,本件登録意匠の出願時において公知のありふれたものを共通点として挙げ,本件登録意匠とイ号意匠とが類似であるとの主張を行っているものである。請求人の主張が失当であることは明らかである。

3.証拠方法
(1)乙第1号証(意匠登録第1512249号公報)(写)
(2)乙第2号証(ティノス2007春夏号リビング:表紙,「スリムソニックスパ」掲載ページ及び「セル・ボーテ バイパー」掲載ページ)(写)
(3)乙第3号証(ティービューティー2011 SUMMER:表紙及び「プラチナソニックス」掲載ページ)(写)
(4)乙第4号証(意匠登録第1412610号公報)(写)
(5)乙第5号証(ミュー株式会社のホームページの「ジュエルエピ」に関する箇所 http://www.mymiu.co.jp/news_release/2011/03/post-5.htmlのプリントアウト)
(6)乙第6号証(【楽天市場】【iPhone4ケース】のホームページ
http:// item.rakuten.co.jp/paprika-1936/i010/のプリントアウト)
(7)乙第7号証(Taiphone2012カタログ:
表紙及び「TP007」掲載ページ)(写)
(8)乙第8号証(台風電機工業有限公司から被請求人へのメール)(写)

第3 判定請求人による判定請求弁駁書
イ号意匠の認定にあたり,当審は請求人に対して弁駁書を提出して本体部とヘッド部の結合部の態様について明確にするよう求めたが,提出されなかった。
なお,被請求人は答弁書において,イ号意匠は意匠登録第1512249号の意匠を一部改変した(装飾を施すとともに,ヘッド部の皮膚接触面に発光ダイオードランプを加えた)実施品であるが,他の意匠がイ号意匠であると主張する場合は,そのイ号意匠を6面図等により明確化されるよう,請求人に対して求めていた。

第4 当審の判断
1.本件登録意匠の認定
本件登録意匠(意匠登録第1467652号)は,平成24年(2012年)9月3日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴って,平成24年(2012年)9月19日に意匠登録出願されたものであり,その願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「皮膚刺激器」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり(別紙第1参照),具体的には以下のとおりのものと認められる。

(1)意匠に係る物品について
高周波や超音波を利用して皮膚に刺激を与え,美肌や血行の改善を図るための「皮膚刺激器」であり,使用にあたっては,本体部を握り,ヘッド部の正面(前面)を直接肌に当てるものである。

(2)意匠全体の基本的な構成態様について
グリップ部を兼ねた背面視略細長逆雫(しずく)形状の本体部(以下「本体部」ともいう。)の正面側上端寄りに,正面から見て径の大きさが本体部の長手方向の長さの約2分の1の略円盤形状のヘッド部(以下「ヘッド部」ともいう。)が結合され,全体が側面視略逆L字状になるよう構成したものであり,ヘッド部の径は本体部の横幅よりも大きく,背面視においてヘッド部の左右端部がはみ出して見える。
また,本体部については,正面の下方と左右両側の上下方向中間付近に操作部を備え,背面には広範囲に装飾が施され,ヘッド部については,正面に複数の電極部と発光ダイオードランプ部が設けてある。

(3)各部の具体的な態様について
(3-1)本体部について
(ア)本体部の形状は,背面が縦横比を約3対1とする略細長逆雫(しずく)形状であり,その上半部は上端の弧状部を除き左右幅がほぼ同幅であり,下半部は下端の弧状部に向かって漸次先細りするものであり,背面側はやや薄い,正面側は厚みのある凸湾曲面状とし,全体がやや丸味のある形状である。
(イ)操作部の態様について,まず正面下部の操作部は,平坦状とし,二重線で表れている正面視縦長の略隅丸長方形の内側に,同じく二重線で表れている正面視縦長の略隅丸長方形の領域が上端寄せで配され,その内側を上下に4分割して操作ボタンとし,その各境界線中央部に横長の長円形部が表れている。次に左右両側の操作部は,いずれも平坦状とし,正面視右側の操作部は縦方向に広狭2つの略倒台形部が少し離れて設けられ,下方の幅広の略倒台形状部は上下に2分割されている。一方正面視左側の操作部は縦長の略隅丸長方形部が一つ表れている。
(ウ)背面の装飾は,背面周囲に帯状余地部(縁部)を設けてその内方に背面外形状より一回り小さい略相似形状の広範囲に表れており,表面の透明部材を透して,内部の縦横に多数整列させた四角錐形状の小さな突起部の集団が格子状模様として表れている。四角錐形状の突起部の個数は,横方向が最大5個,縦方向が最大19個である。
(エ)その他,背面の上端寄りにスピーカー部を備え,また,下端部のやや正面寄りに凹状の電源ケーブル接続部,下端部にコ字形環状の係止部を備えている。更に,正面の左右両側寄りに一対の上下方向に細長く延びた略楕円形状の線が表れている。

(3-2)ヘッド部について
(ア)正面は,中央にヘッド部の正面横幅の約2分の1の径の大きさからなる円形の突出した電極部を設け,その周囲の正面縁沿いに湾曲帯状の突出した電極部を等間隔に4つ配置するとともに,この4つの電極部の間に円形状の発光ダイオードランプ部を2つずつ配置し,電極部以外の部分は透明部材(半透明の素材を含む。)により覆われている。この透明部材は周縁が平底面視では凹弧状,左右側面視では凸弧状,つまり,周縁の厚みが側面視緩やかな波状に形成され,更に,周縁は前方が側面視凹弧状に内方へ傾斜し,透明部材は全体として扁平な台座形状となっており,その上面は正面視円形状,周縁は正面視僅かに縦長の楕円形状である。
(イ)周側面は,前方寄りが扁平な略円柱形状であり,後方寄りが本体部との結合部へ向けて凹弧状に窄まる扁平な略円錐台形状である。この窄まる態様は,平面視左右対称,側面視上下対称であるが,左右の凹弧状部が上下の凹弧状部よりも大きく窄まっている(左右が約50%窄まり,上下が約20%窄まっている)。
(ウ)後方寄りの周側面には等間隔に4つの略円形の小さな凹部が形成されている。

(3-3)本体部とヘッド部との結合部(以下「結合部」ともいう。)の態様について
結合部は,本体部から僅かに台座状に突出しており,側面視縦幅と平面視横幅の比率を約2対1とするものであり,平面視横幅は,本体部のそれの約3分の2の長さである。

2.イ号意匠の認定
(1)意匠に係る物品について
意匠に係る物品について,請求人は請求書において「皮膚刺激器」とし,被請求人は答弁書において「美容マッサージ器」としているが,本物品は,高周波や超音波を利用して皮膚に刺激を与え,美肌や血行の改善を図るためのものであり,使用にあたっては,本体部とヘッド部との結合部に指を通しつつヘッド部の側面を握り,ヘッド部の正面を直接肌に当てるものであるから,当該相違は単なる表現上の相違に過ぎず,当審においては「美容マッサージ器」と認定する。

(2)形態について
形態は請求書とともに甲第2号証として提出された図(画像)に表されたとおりとしたものであり(別紙第2参照),具体的には以下のとおりのものである。
なお,イ号意匠の認定(特に結合部の態様の認定)にあたっては,被請求人が答弁書で述べているように,イ号意匠は,被請求人が答弁書において乙第1号証として示した被請求人の意匠登録第1512249号の意匠(イ号意匠の元となる被請求人の登録意匠)(別紙第3参照)に装飾や発光ダイオードランプを加えた実施品と認められることから,適宜,別紙第3の意匠を考慮しつつ認定する。また,本件登録意匠との対比のため,以下,本件登録意匠の図面の向きに合わせてイ号意匠を認定する。

(2-1)意匠全体の基本的な構成態様について
背面視略縦長楕円形状の本体部(以下「本体部」ともいう。)の正面側上端寄りに,使用状態において指通し部となる柱形状の結合部(以下「結合部」ともいう。)を介して,正面から見て径の大きさが本体部の長手方向の長さの約4分の3の略円盤形状のヘッド部(以下「ヘッド部」ともいう。)が間を空けて結合され,全体が側面視略倒コ字状に表れたものであり,ヘッド部の径は本体部の横幅よりも大きく,背面視においてヘッド部の左右端部がはみ出して見えるものである。
また,本体部については,背面の中央やや下方に操作部を備え,その周囲は広範囲にわたり装飾が施され,ヘッド部については,正面に複数の電極部と発光ダイオードランプ部が設けてある。

(2-2)各部の具体的な態様について
(2-2-1)本体部について
(ア)本体部の形状は,背面が縦横比を約2対1とする略縦長楕円形状であり,その上方から下方へ全体的に漸次先細りするものであり,背面側はやや薄い,正面側は厚みのある凸湾曲面状とし,全体がやや丸味のある形状である。
なお,背面視縦横比は乙第1号証(別紙第3)の意匠と一致する。
(イ)操作部は,本体部背面の曲面に沿って平坦状に設けられた略円形状の領域に,その中心及び周囲に余地部を残して放射状に4分割し,扇状の各区画を操作ボタンとしたものである。
(ウ)背面の装飾は,背面周囲に帯状余地部(縁部)を設けてその内方に背面外形より一回り小さい略相似形の広範囲に表れており,表面の透明部材を透して,内部の縦横に多数整列させた四角錐形状の小さな突起部の集団が格子状模様として表れている。四角錐形状の突起部の個数は,横方向が最大14個,縦方向は中央の列で見れば途中操作部で途切れているが,操作部から上方が13個,操作部から下方が7個である(なお,操作部の領域も含めて並べたと仮定すれば,縦方向は最大で36個並ぶ。)。
(エ)下端部のやや正面寄りに凹状の電源ケーブル接続部を備えている。

(2-2-2)ヘッド部について
(ア)正面は,中央にヘッド部の正面横幅の約2分の1の径の大きさからなる円形の突出した電極部を設け,その周囲の正面縁沿いに湾曲帯状の突出した電極部を等間隔に4つ配置するとともに,この4つの電極部の間に円形状の発光ダイオードランプ部を2つずつ配置し,電極部以外の部分は透明部材により覆われている。この透明部材は周縁が側面視凹弧状に傾斜した正面視略円形状の扁平な台座形状となっている。
(イ)周側面は,前方寄りが扁平な略円柱形状であり,後方寄りが側面視上端寄りに片寄って窄まる態様とし,窄まり方は平面視においては両側が対称形の緩やかな略S字状に(約85%)窄まり,側面視においては両側が非対称形の略S字状に(約50%)窄まっている(下側が上側の約4倍大きく窄まっている。)。
なお,平面視態様の窄まり方の大きさについては,甲第2号証(別紙2)の1枚目に記載された斜視図における結合部の根元付近に現れている影の幅から推認したものであり,乙第1号証(別紙第3)の意匠とも一致する。
(ウ)後方寄りの周側面には等間隔に4つの略円形の小さな凹部が形成されている。

(2-2-3)結合部の態様について
結合部は,側面視縦幅,平面視横幅及び高さの比率を約5対2対2とする柱形状であり,平面視横幅は本体部のそれの約4分の1の長さである。
なお,この比率を求めるにあたり,平面視における結合部の横幅については,甲第2号証(別紙第2)の1枚目に記載された斜視図の結合部の根元付近に現れている影の幅から推認したものであり,この比率は,乙第1号証(別紙第3)の意匠とも一致する。

(3)色彩について
本体部は,背面周囲の帯状余地部(縁部)及び操作部をシルバー調の色彩,装飾部を茶系色,その他の面を白色とし,ヘッド部は,電極部をシルバー調の色彩,透明カバー部や発光ダイオードランプ部を除くその他の面を白色とし,結合部は白色とするものである。

3.本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)の対比
(1)意匠に係る物品について
本件登録意匠は「皮膚刺激器」,イ号意匠は「美容マッサージ器」としたものであるが,両意匠ともに,高周波や超音波を利用して皮膚に刺激を与え,美肌や血行の改善を図るためのものであり,使用状態についても,当該物品の持ち方が相違するとしても,両意匠ともに手に持って使用するものであるから,意匠に係る物品は,共通する。

(2)形態について
(2-1)共通点
(A)背面視縦長で全体がやや丸味のある本体部の正面上方に,正面視円形の略円盤形状のヘッド部が結合され,ヘッド部の径は本体部の横幅よりも大きく,背面視においてヘッド部の左右端部がはみ出して見えるものである。
(B)本体部の背面には装飾が施されており,その態様は,背面周囲に帯状余地部(縁部)を設け,その内方に背面外形より一回り小さい略相似形の広範囲に表れており,表面の透明部材を透して,内部の縦横に多数整列させた四角錐形状の小さな突起部の集団が格子状模様として表れている。
(C)ヘッド部の正面は,中央にヘッド部の正面横幅の約2分の1の径の大きさからなる円形の突出した電極部を設け,その周囲の正面縁沿いに湾曲帯状の突出した電極部を等間隔に4つ配置するとともに,この4つの電極部の間に円形状の発光ダイオードランプ部を2つずつ配置し,電極部以外の部分は透明部材により覆われている。この透明部材は細部に相違が認められるものの全体として扁平な台座形状となっており,その上面は正面視円形状である。
(D)ヘッド部周側面は,前方寄りが扁平な略円柱形状であり,後方寄りが結合部に向けて窄まる態様である。
(E)下端部のやや正面寄りに凹状の電源ケーブル接続部を備えている。

(2-2)相違点
(a)意匠全体の基本的な構成態様について,本件登録意匠は,背面視略細長逆雫(しずく)形状の本体部の正面側上端寄りに,正面から見て径の大きさが本体部の縦方向の長さの約2分の1の略円盤形状のヘッド部が結合され,意匠全体が側面視略逆L字状に表れたものであるのに対して,イ号意匠は,背面視略縦長楕円形状の本体部の正面側上端寄りに,柱形状の結合部を介して,正面から見て径の大きさが本体部の縦方向の長さの約4分の3の円盤形状のヘッド部が間を空けて結合され,意匠全体が側面視略倒コ字状に表れたものである。
(b)本体部の形状について,その背面から見た形状が,本件登録意匠は,背面が縦横比を約3対1とする略細長逆雫(しずく)形状であり,その上半部は上端寄りの円弧部を除き左右幅がほぼ同幅であり,下半部は下端に向かって漸次先細りするものであるのに対して,イ号意匠は,背面が縦横比を約2対1とする略縦長楕円形状であり,その上方から下方へ全体的に漸次先細りするものである。
(c)本体部に備えてある操作部は,その位置について本件登録意匠が,正面下部及び左右両側に配しているのに対して,イ号意匠が,背面中央のやや下方(装飾部の内側)に配しており,その態様についても本件登録意匠の正面下部の主たる操作部が長方形領域内を上下に4分割したものであるのに対して,イ号意匠は円形の領域を放射状に4分割したものである。
(d)本体部背面に施された装飾の具体的な態様について,四角錐の突起部の大きさは本件登録意匠の方が大きく,その突起部の個数は,イ号意匠の方が多い。
(e)ヘッド部周側面の具体的な態様について,本件登録意匠は,周側面の前方寄りは扁平な略円柱形状であり,後方寄りは本体部との結合部へ向けて凹弧状に窄まる扁平な略円錐台形状とし,この窄まる態様は,平面視左右対称,側面視上下対称であるが,左右の凹弧状部が上下の凹弧状部よりも大きく窄まっている(左右は約50%窄まり,上下は約20%窄まっている)ものであるのに対して,イ号意匠は,後方寄りが側面視上端寄りに片寄って窄まる態様とし,窄まり方は平面視においては両側が対称形の緩やかな略S字状に(約85%)窄まり,側面視においては両側が非対称形の略S字状に(約50%)窄まっている(下側が上側の約4倍大きく窄まっている。)。
(f)結合部の態様について,本件登録意匠は,本体部から僅かに台座状に突出しており,側面視縦幅と平面視横幅の比率を約2対1とするものであり,平面視横幅は,本体部のそれの約3分の2の長さであるのに対して,イ号意匠は,側面視縦幅,平面視横幅及び高さの比率を約5対2対2とする柱形状であり,平面視横幅は,本体部のそれの約4分の1とするものである。
(g)色彩について,本件登録意匠は,図面に色彩が付されていないものであるのに対して,イ号意匠は,本体部は背面周囲の帯状余地部(縁部)及び操作部をシルバー調の色彩,装飾部を茶系色,その他の面を白色とし,ヘッド部は電極部をシルバー調の色彩,透明カバー部や発光ダイオードランプを除くその他の面を白色とし,結合部(指通し部)は白色とするものである。
(h)その他,本件登録意匠は,本体部正面の左右両端寄りに一対の上下方向に細長く延びた略楕円形状の線状部分が表れ,また,本体部背面の上端寄りにスピーカー部を備え,本体部下端にコ字形環状の係止部を備えているのに対して,イ号意匠にこれらの態様は見られない。

4.共通点と相違点の評価
以下,共通点及び相違点が存在する物品の形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。
(1)共通点の評価
共通点(A)は,意匠全体の基本的な構成態様を特定の方向から見た大まかな態様の共通点に過ぎず,意匠全体の基本的な構成態様の骨格となるものではないから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。
共通点(B)は,本体部背面の装飾に関するものであるが,多数の四角錐形状の突起部を縦横に密に整列させた態様は,目に付きやすい部位に広範囲に表れているものであるが,乙第6号証によって示されているように,物品に施す装飾の態様として目新しいものではなく,仮に,背面周囲の帯状余地部(縁部)や透明部材との組合せに特徴が認められたとしても,それは,意匠全体から見れば,部分的な特徴に止まるものであるから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。
共通点(C)は,ヘッド部の正面の態様に関するものであるが,ヘッド部の正面(皮膚と接触する面)は,看者の注意を惹く部位ではあるものの,正面中央に円形の突出した電極部を設けたもの(参考意匠1,別紙第4参照),正面縁沿いに湾曲帯状の突出した電極部を等間隔に4つ設けたもの(参考意匠2,別紙第5参照),正面縁沿いに複数の発光ダイオードランプ部を設けたもの(参考意匠3,別紙第6参照)が,いずれも本件登録意匠の出願前,かつ,イ号意匠の実施前に発行された意匠公報に記載されており,目新しいものとは言えず,仮に,これらを組合せて,電極部以外を透明部材によって覆った態様に特徴が認められたとしても,それは,意匠全体から見れば,部分的な特徴に止まるものであるから,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。
共通点(D)は,ヘッド部周側面の形状に関するものであるが,極めて大まかな態様の共通点に過ぎず,具体的に見れば相違点(e)として記載したとおり,後方寄りの窄まる態様が大きく異なっており,共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点(E)は,細部に係るものであり,看者の注意を惹くものではないから,共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

そうすると,共通点(A)ないし(C)については一定の評価はできるものの,意匠全体から見れば,未だ部分的な共通点に止まり,その他の共通点もいずれも細部に関するものであるから,共通点を総合したとしても両意匠の類否判断を決するものとはならない。

なお,請求人は請求書において,基本的な構成態様に関して,流線形の本体部及び円形の平面形状を有するヘッド部の態様が共通しており,当該共通点は両意匠の類否判断に大きな影響を与える旨主張するが,当該共通点は大まかに捉えた態様であって,全体の基本的な構成態様の骨格となるものではないから,請求人の主張は採用することができない。また,各部の具体的な態様についても,本体部背面に施された装飾の態様に関して,帯状余地部(縁部)の内方に四角錐形状の突起部を多数整列させた装飾部を透明部材が覆う態様とした共通点は,他には見られない形態であって,使用者が一番目にする部分であり,更に,ヘッド部の正面(皮膚と接触する面)の態様に関して,電極部と発光ダイオードランプ部の形状及び配置態様が共通している点は,従来の肌刺激器には無い形態であり,両意匠の類否判断に大きな影響を与える旨主張するが,両共通点は,前記共通点(B)及び(C)の評価で述べたとおりであり,共通点を総合したとしても両意匠の類否判断を決するものとはならないから,請求人の主張は採用することができない。

(2)相違点の評価
相違点(a)は,意匠全体の基本的な構成態様に関するものであるが,意匠全体を側面視略逆L字状としたものと側面視略倒コ字状としたものとでは,基本的な構成態様が大きく異なっており,どちらの構成態様についても,この種物品分野の意匠として本件登録意匠の出願前,かつ,イ号意匠の実施前に発行された刊行物に記載されている態様(側面視略逆L字状の態様は参考意匠4(別紙第7参照),側面視略倒コ字状の態様は参考意匠1(別紙第4参照))であったとしても,どちらもそれぞれの意匠全体の形状を特徴付けるものであるから,相違点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(b)は本体部の形状に関するものであるが,特に背面視長手方向の長さの相違は,操作部の配置態様を含めた意匠全体の基本的な構成態様に影響を与えるものであるから,相違点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することができない。
相違点(c)は,操作部の位置及び態様に関するものであるが,操作部は意匠全体に対して占める割合が大きくないとしても,看者の注意を惹く部分であり,その相違は目立つものであるから,相違点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
相違点(d)は,本体部背面に施された装飾の四角錐形状突起部の大きさと個数に関するものであるが,両意匠ともに密に多数整列されていることから,意匠全体から見ればその相違はさほど目立たず,相違点(d)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(e)は,ヘッド部周側面の具体的な形状に関するものであるが,後方寄りの窄まる態様が大きく異なり,相違点(f)と相俟って意匠全体の基本的な構成態様に影響を与えるものとなるから,相違点(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
相違点(f)は,結合部の態様に関するものであるが,本件登録意匠は使用時においてもほとんど目立たないものであるのに対して,イ号意匠は柱形状として目立ち,指通し部となる目に付きやすい部位であり,意匠全体の基本的な構成態様が側面視略逆L字形状か,それとも側面視略倒コ字形状かという認定に影響を与えるものであるから,相違点(f)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(g)は,色彩の有無に関するものであるが,イ号意匠のように,シルバー調の色彩の電極部は一般的に見られるものであり,また,装飾部に他の部分とは異なる色彩を施したものや,操作部や特定の部位の縁部をシルバー調の色彩としたものは目新しいものではなく,単に部位ごとに塗り分けた程度のものと認められ,相違点(g)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(h)は,細部に関するものであり,看者の注意を惹くものではないから,相違点(h)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

そうすると,両意匠の相違点は,特に相違点(a)と相違点(b),(c),(e)及び(f)が相俟って,そしてその余の軽微な相違点も合わせると,両意匠について視覚的に異なる印象を看者に与えるものである。

なお,請求人は請求書において,相違点として本体部の長さの相違を挙げ,本体部の長さが多少異なるだけで流線型の形状自体は類似であるから,当該相違は顕著な相違と言えず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい旨主張するが,この点については,前記相違点(b)の評価で述べたとおりであり,また,相違点として本体部に設けられた操作部の位置の相違を挙げ,この種物品において操作ボタンの位置及び形状は簡単に変更可能であって,本件登録意匠の要部ではないことから,当該相違は顕著な相違と言えず,当該相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい旨主張するが,この点については,前記相違点(c)の評価で述べたとおりであり,更に,相違点として結合部の形態の相違を挙げ,形状等が多少異なるだけであり,本件登録意匠の左右側面図においてのみ相違が確認できるものであり,実際に肌刺激器を使用している状態では相違を認識することが少ないことから,当該相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい旨主張するが,この点については,前記相違点(f)の評価で述べたとおりであり,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい,あるいは軽視することができないものであるから,請求人の主張はいずれも採用することができない。

5.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,その形態においては,共通点は部分的なものであって,両意匠の類否判断を決するものとはならず,一方,意匠全体の基本的な構成態様が大きく相違し,各部の具体的な態様にも相違が認められ,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,両意匠に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,両意匠は類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2015-11-11 
出願番号 意願2012-22621(D2012-22621) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (J7)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 八重田 季江 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 正田 毅
江塚 尚弘
登録日 2013-03-22 
登録番号 意匠登録第1467652号(D1467652) 
代理人 金子 宏 
代理人 ▲吉▼川 俊雄 
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