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審決分類 |
審判 補正却下不服 取り消す H7 |
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管理番号 | 1308359 |
審判番号 | 補正2015-500003 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-12 |
確定日 | 2015-09-29 |
意匠に係る物品 | 産業制御機器用監視表示器 |
事件の表示 | 意願2014- 21780「産業制御機器用監視表示器」において,平成27年2月13日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)9月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「産業制御機器用監視表示器」とし,その物品に表示される画像の部分について意匠登録を受けようとするものであって,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面(以下,「願書添付図面」という。)に表されたとおりのもので,「正面図中,一点鎖線内が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願の意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)としたものである。 2.手続の経緯及び平成27年2月13日付けの手続補正 原審は,平成26年12月26日付け(平成27年1月6日発送)で,拒絶の理由の通知をした。 その拒絶の理由は,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとするもので,具体的には,本願の願書の【意匠に係る物品の説明】欄には,物品の機能や操作方法等に関する説明がなく,表示画面に表された画像が液晶表示器のどのような機能のために用いられるものか,操作用の画像の場合には操作方法が不明で,意匠を正確に理解することができず,本願意匠は具体的でなく,工業上利用することができる意匠に該当しない,とするものである。 この拒絶の理由の通知に対して,出願人は,平成27年2月13日付けで意見書と同時に手続補正書を提出した。この手続補正書において補正されたのは,以下の2点である。 (1)願書の【意匠に係る物品の説明】の変更 出願当初の記載内容「本願意匠は,産業制御機器用監視表示器の初期画像である。」の後に,「当該産業機器に電子的に接続された本物品は,当該機器を通電させることで,(事前に設定済した)機器可動部の可動位置を多角的(軸の移動方向および軸の回転角度)に表示させることができるものである。」を追加する内容の変更をした。 (2)願書添付図面の【使用状態正面図】の削除 出願当初の願書添付図面に記載した【使用状態正面図】を削除した。 (なお,出願人は,上記の手続補正書の提出と同時に,出願当初の願書添付図面に記載した【使用状態正面図】と同じ図を,【意匠の特徴】の説明図として追加した特徴記載書を再提出した。) 原審は,平成27年3月27日付け(平成27年3月31日発送)で,この手続補正書による補正を却下すべきものと決定した。その理由は,次のとおりである。 すなわち,上記手続補正書により願書の「意匠に係る物品の説明」欄の記載を補正し,本願物品は,本願物品と電気的に接続された産業機器の,事前に設定された機器可動部の可動位置を多角的に表示させることができるものである旨を明らかにしたが,出願当初の願書の「意匠に係る物品の説明」欄には,「本願意匠は,産業制御機器用監視表示器の初期画像である。」としか記載されておらず,また,出願当初の図面のうち,「正面図」及び「使用状態正面図」のいずれの図も,本願物品のどのような機能を果たすために必要な表示であるか不明で,上記補正後の「意匠に係る物品の説明」欄の記載内容を導き出すことができない。 したがって,「意匠に係る物品の説明」欄の補正後の記載は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず,また,当該欄の記載は,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼすものであることから,上記手続補正書による補正は,出願当初の願書の記載の要旨を変更するものである。 3.請求人の主張 請求人は,要旨以下のとおり主張した。 本願意匠の願書の「意匠に係る物品」は「産業制御機器用監視表示器」とするものであり,本願物品と電気的に接続された産業機器の表示であることは,『この意匠の属する分野における通常の知識に基づくことなく導き出すことは可能。』 また,出願当初の「使用状態正面図」には「X,Y,Z」の文字があらわれており,かつ,「正面図」には「(部分意匠として意匠登録を受けようとする部分ではないものの)X」の文字より機器可動部の可動位置を多角的に表示させることも,『この意匠の属する分野における通常の知識に基づくことなく導き出すことは可能。』 補正後の「意匠に係る物品の説明」欄の記載内容を導き出すことは,『この意匠の属する分野における通常の知識に基づくことなく導き出すことは可能。』と確信。 原査定は覆されてしかるべきと確信。よって,請求の趣旨のとおり,意願2014-021780について,平成27年 2月13日付でした補正に対して,平成27年 3月27日(起案日)になした補正の却下の決定を取り消す,との審決を求める。 4.当審の判断 当審は,願書の【意匠に係る物品の説明】の欄に,「当該産業機器に電子的に接続された本物品は,当該機器を通電させることで,(事前に設定済した)機器可動部の可動位置を多角的(軸の移動方向および軸の回転角度)に表示させることができるものである。」を追加し,出願当初の【意匠に係る物品の説明】の内容を変更した補正については,以下の理由により,出願当初の願書の記載及び願書添付図面の記載を総合すれば十分に想定され得る範囲のものである,と判断する。 本願の願書の【意匠に係る物品】の欄には,出願当初より「産業制御機器用監視表示器」と記載されていた。また,出願当初の願書添付図面の【正面図】には,その表示画面の略中央に、一点鎖線で囲われた内に部分意匠として意匠登録を受けようとする部分として表された,細い水平な線状とその線状の左寄りに当該線状の上に中心がある複数の同心円等から成る図形が表されているだけでなく,当該一点鎖線の枠の左には,破線によって「X1」と表されていた。 また、出願当初の願書添付図面の【使用状態正面図】には,画面上方には「X1」「Y1」「Z1」「C1」「B1」の文字とそれぞれの文字の横に「0.000」の数字が表されており,画面下方中央やや右寄り部位には,「X1」の文字と,その文字の右横に,願書添付図面の【正面図】に実線で表された図形と略同様の図形が表され,その下には,「X1」と図形の組みと同様のものが「Y1」「Z1」として、合わせて3つ表されていた。その他、画面上には「工具補正量」「座標系」等の表示も表れていた。 これらの出願当初の願書の記載及び願書添付図面の記載から,本願意匠に係る物品は,少なくとも,工具を使用して多軸加工を行う機械の制御機器用の監視表示器であり,使用される工具の位置及び角度を表示するものであることは,出願当初から十分に推認できるものであった(明らかであった)と認められる。 そこで,【意匠に係る物品の説明】の欄に出願当初から記載されていた「本願意匠は,産業制御機器用監視表示器の初期画像である。」の後に,平成27年2月13日付け手続補正で追加された内容,すなわち「当該産業機器に電子的に接続された本物品は,当該機器を通電させることで,(事前に設定済した)機器可動部の可動位置を多角的(軸の移動方向および軸の回転角度)に表示させることができるものである。」という内容が,出願当初に想定しうる内容かどうかについて見てみると,「当該産業機器に電子的に接続された本物品は」という点については,「産業機器」は「産業制御機器」より広汎な表現であるものの,出願当初からの「本願意匠は,産業制御機器用監視表示器の初期画像である。」と併せれば,依然として「産業機器」のうちの「産業制御機器」が本願意匠に係る物品の使用対象の物品であると言えるから,内容が変更されているとまでは言えない。また,複数の機器を「電子的に接続」することは,様々な物品分野で行われている。 そして,「可動位置を多角的(軸の移動方向および軸の回転角度)に表示させることができる」ことについては,前述の【正面図】の表示画面中には破線で表され,意匠登録を受けようとする部分ではないものの,「X1」の文字、【使用状態正面図】の記載内容の画面上方には「X1」,「Y1」「Z1」「C1」「B1」の文字とそれぞれの文字の横に「0.000」の数字が表されている点等から想定しうる内容である。 したがって,【意匠に係る物品の説明】の補正は,出願当初の願書の記載及び願書添付図面の記載から十分に想定しうる範囲のものであると言える。 次に,願書添付図面から【使用状態正面図】を削除する補正については,【使用状態正面図】はあくまで本願意匠の使用の状態を示すものであって、本願意匠の形態は,出願当初の【正面図】及び【意匠の説明】によって表されており、これらの記載はこの【使用状態正面図】を削除する補正によって何ら変更されていないから、出願当初に表された本願意匠(部分意匠)の形態を変更するものではない。 すると,当該手続補正書でなされた補正は,出願当初の願書の記載及び願書添付図面を総合すれば十分に想定され得る範囲のものと言え,その補正は,出願当初の願書の記載及び願書添付図面の記載を総合して認識し得る意匠に係る物品の理解を助けるための図(参考図:使用状態を表した正面図)に表された内容を,文章に置き換えて「意匠に係る物品の説明」の欄に記載したものであり,意匠の内容を実質的に変更したものとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであって,この手続補正は,出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものとはいえず,従って,原審の,平成27年2月13日付け提出の手続補正書を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした決定は,取り消しを免れない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-09-14 |
出願番号 | 意願2014-21780(D2014-21780) |
審決分類 |
D
1
7・
-
W
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加、中村 遥子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
本多 誠一 久保田 大輔 |
登録日 | 2015-11-27 |
登録番号 | 意匠登録第1540716号(D1540716) |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 松井 重明 |