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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201426812 審決 意匠
不服201313124 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D4
管理番号 1308362 
審判番号 不服2015-11339
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-16 
確定日 2015-11-09 
意匠に係る物品 湯たんぽの蓋 
事件の表示 意願2014- 6262「湯たんぽの蓋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)3月25日にされた意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「湯たんぽの蓋」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と,その他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

「本願意匠は,意匠に係る物品を『湯たんぽの蓋』とするもので,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,図面に表されているとおり,蓋全体の内,中央近傍の部分であり,その形態は,表面が略平滑面状に成形され,裏面が短円柱状に下向きに突出しているものであって,かつ,蓋の表面及び裏面の中央に,円形の小孔が設けられたものです。
ところで,本願意匠が属する物品分野においては,表面及び裏面の中央に円形の小孔を設けることは,例えば,下記公知意匠1や公知意匠2に表されているとおり,極々一般的に行われていることから,ありふれた造形手法であると認められます。
そうすると,本願意匠は,下記公知意匠3のうち,本願意匠に相当する部分の形態をほとんどそのまま用い,これに僅かな変更を加え,前記ありふれた造形手法に基づき,単に,表面及び裏面の中央に円形の小孔を設けたにすぎないものであって,当業者であれば容易に創作できたと認められます。

【公知意匠1】 (別紙第2参照)
昭和12年実用新案出願公告第011883号
【第1図】及び【第2図】において表された
湯「タンポ」用栓の意匠

【公知意匠2】 (別紙第3参照)
昭和53年実用新案出願公開第116183号
【第1図】において「1」として表された
湯たんぽキャップの意匠

【公知意匠3】 (別紙第4参照)
意匠登録第0478354号の意匠
湯たんぽの内,湯たんぽの蓋の意匠」


第3 請求人の主張

今回の審査結果は,本願意匠および公知意匠の認定に大きな誤りがあると考える。
本願意匠の認定には,最初から大きな誤りがあり,端的に言えば,本願意匠は,「蓋に円形の小孔」があるのではない。蓋とは別部材(栓取付部材)の表面に円形の小孔があるのである。そして,この「栓取付部材」は蓋の表面に表れているのだから内部構造ではない。
本願意匠は,平面図から明らかなとおり小孔の周囲に同心円状に接合部があり,その接合部は断面図から明らかなとおり蓋体とは別部材の栓取付部材が蓋体に嵌合され,その接合部が表れている。
つまり,小孔は蓋体にあるのではなく,蓋体とは別部材である「栓取付部材」の表面にあるのである。
出願意匠の認定は言うまでもなく正確に行われなければならず,出願人が断面図を添付したのは,この「接合部」を正確に認定してもらう為に必要であったから添付したものあるから有効に利用されなければおかしい。なぜなら,断面図がなく外観に表れている線が何であるか審査官が認定できない場合は審査官から断面図の提出を求められるのが常であるから断面図を認定に使わないこと,言い換えれば断面図を軽視する事は許されない(審査官が断面図を軽視しているといっているのではない)。
この形態は本願意匠の特徴的形態であるため,肝心要の形態の認定を誤った審査結果には到底承服できない。
次に,拒絶査定では,「小孔の周囲にある同心円状の接合部」は「公知意匠1に見受けられる」旨の記載があるが,公知意匠1の認定も完全に誤っている。
公知意匠1の蓋体表面に「接合部」は見当たらない。
確かに,公知意匠1の蓋体の,いわゆる「透視図」には,小孔の周囲にそのような同心円状のようなものが見受けられるが,拒絶査定の言葉を借りるならば「意匠の保護対象は外観」であり,公知意匠1の外観に表れていない内部形態を審査に持ち出すことは意匠の審査手法としてあり得ない。しかも,公知意匠1の透視図で見える同心円状のものが「接合部」であるかどうかも,公知意匠1の図面からは断定できない。断定できない形態を審査の判断材料とすること自体おかしい。以上,本願意匠,公知意匠の認定には大きな誤りが存在する。
更に,拒絶理由には「表面及び裏面の中央に円形の小孔を設けることは,極々一般的」とあるが,「極々一般的」とした理由が公知意匠たった2つに掲載されていることだけを根拠とするのならば,明らかに証拠性に乏しい。
(中略)1つや2つの公知文献では「極々一般的」と言えるはずがなく,当然に「ありふれた手法」にも当たらない。
本願意匠は,蓋の表面に小孔があるのではなく蓋とは別部材の「栓取付部材」の中心に小孔があるのであって,また,小孔の周囲には蓋体と「栓取付部材」の「接合部」があり,蓋の表面に「栓取付部材」を設けることは公知意匠にないのであるから,ありふれた造形手法ではない。本願意匠は,公知意匠1,2とは全くもって別の形態を有する意匠である。
また,公知意匠3の本願意匠に相当する部分には,本願意匠のような裏面に下向きに突出した「短円柱状」はなく,明らかに形態が異なる意匠であるから,本願意匠は公知意匠3のうち本願意匠に相当する部分の形態をほとんどそのまま用いるものでは,決してない。
以上の様に,本願意匠は,公知意匠1?3から容易に創作できるものでは明らかになく,創作的価値が格別認められる意匠であることが明らかであるから,早期に登録されるべきものである。


第4 当審の判断

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「湯たんぽの蓋」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願部分は,湯たんぽの蓋(以下,「蓋体」という。)の底面中央の下方に突出した部分(以下,「底面突出部」という。),及びその周囲の僅かな部分を含む,平面及び底面側の中央を中心とした同心円で囲んだ部分であり,願書及び願書に添付された図面に明示されていないものの,湯たんぽの分野における通常の知識に基づいて判断すると,蓋体中央の平面側及び底面側の小円孔は湯たんぽ内部と外部を通気するために用いられる部分であると推認できるものである。

(3)形態の基本的構成態様
本願部分は,嵌合部品(以下,「嵌合部」という。)と蓋本体の2つの部品から構成されており,その基本的な形態は,平面側を略平面状とし,底面突出部を略短円筒体として,本願部分全体を,上面に鍔部を有する略円筒体形状としたものである。

(4)形態の具体的態様
(ア)底面突出部の高さを,上面鍔部の厚みの約2.7倍とし,
(イ)嵌合部の平面視中央及び底面突出部の底面視中央に同径の小円孔を各1ずつ設け,
(ウ)平面側の小円孔の周囲に,嵌合部と蓋本体との接合線が同心円状に表れている
ものである。

2 創作非容易性の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に創作することができたものであるか否かについて,請求人の主張を踏まえて検討する。

原査定は,本願意匠は,公知意匠3のうち,本願意匠に相当する部分の形態をほとんどそのまま用い,これに僅かな変更を加えたものに,公知意匠1や公知意匠2に表されているとおり,本願意匠が属する物品分野において極々一般的に行われているありふれた造形手法である表面及び裏面の中央に円形の小孔を設けたにすぎないものであって,当業者であれば容易に創作できたと認められる,と判断した。

これに対し,請求人は,まず,本願意匠は,平面図から明らかなとおり小孔の周囲に同心円状に接合部があり,その接合部は断面図から明らかなとおり蓋体とは別部材の栓取付部材(当審注:当審においては「嵌合部」として認定した部材)が蓋体に嵌合され,その接合部が表れたものであって,小孔は蓋体にあるのではなく,蓋体とは別部材である「栓取付部材」の表面にあるのであるから,本願意匠は,「蓋に円形の小孔」があるとした,原査定における本願意匠の認定には大きな誤りがあると主張している。しかしながら,本願部分は,蓋本体と嵌合部から構成されるものであっても,一般的には嵌合部を含めた完成体を「蓋」と捉えること,さらに,本願部分の蓋本体と嵌合部は平面側が面一となっており,その形態は,平らな面に接合線が表れているのみであって,嵌合部がとりたてて目立つ形態となっていないことから,本願意匠を「蓋に円形の小孔」を設けたものと認定した原査定に誤りはない。
したがって,公知意匠1及び公知意匠2は,蓋体の平面側に嵌合部は認められないものの,本願部分と同様に通気を目的とする小円孔が蓋体の平面側及び底面側の中央に設けられている形態が,ありふれた造形手法であることを示す例として適切なものであるといえる。

一方,公知意匠3の本願意匠に相当する部分については,底面突出部は認められるものの,その突出の程度はごく僅かであり,底面から見たときにはほとんど円板状に見えるものである。そうすると,底面突出部の高さを蓋体の厚みの約2.7倍とする本願部分の底面突出部の形態は,請求人主張のとおり,公知意匠3の底面突出部の形態とは大きく異なるものであって,公知意匠3の形態を僅かに変更して創作することができる範囲を超えているものであるから,原査定の判断は誤りであるといわざるを得ない。

また,本願意匠の平面側の小円孔周囲に表された同心円状の接合部については,原査定の拒絶の理由には記載されていないが,拒絶査定において,「本願意匠のように,小孔の周囲に同心円状に接合部が表れているものは,先の拒絶理由通知において公知意匠1として挙げた意匠に見受けられるように,本願出願前から見受けられるものであるから,やはり当該態様は,意匠の創作として格別評価することができません。」と公知意匠1の認定及び判断をしている。
しかし,請求人主張のとおり,公知意匠1の第二図(一部切断平面図)に表れている,平面視中央に設けられた小孔の周囲に同心円状線模様の一部は,外観に表れない内部形態であるから,この意匠を例示して,本願意匠のように小孔の周囲に同心円状に接合部が表れているものは本願出願前から見受けられる,とした原査定の公知意匠1の認定及び判断は誤りである。

そうすると,本願部分は,原査定において示された意匠1ないし意匠3の形態に基づいて,容易に創作することができたものであるということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-10-14 
出願番号 意願2014-6262(D2014-6262) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D4)
最終処分 成立 
前審関与審査官 長谷川 翔平越河 香苗 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 久保田 大輔
江塚 尚弘
登録日 2015-12-04 
登録番号 意匠登録第1541209号(D1541209) 
代理人 井澤 洵 
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