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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C4
管理番号 1309594 
審判番号 不服2015-3936
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-02 
確定日 2015-12-18 
意匠に係る物品 耳栓 
事件の表示 意願2013- 18875「耳栓」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)8月19日の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「耳栓」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって,「本物品の連結部はポリ塩化ビニル等の弾性部材により構成されるので『連結部が引っ張られた状態の正面図』に示すように,連結部は伸縮性を有する。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「この種耳栓において,耳栓本体部は,全体が円柱形状を基調としたもので,下方に向かってすぼまり状とし,下端部を半球状に形成したしたものであり,上端面には,紐状の連結部を形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られています【意匠1】。
同様に,連結部を環状に形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られています【意匠2】。
本願意匠は,その出願前公然知られた【意匠1】の意匠に基づき,紐状の連結部を,当業者にとってありふれた手法を用いて,【意匠2】の意匠の様に環状に形成したまでのものにすぎませんから,容易に意匠の創作をすることができたものと認められます。
なお,本願意匠の連結部が伸縮する点は,素材の変更に伴って従属的に派生するものであって,この点に格別の創作があったものとはいえず,創作容易性の判断に影響を及ぼすものとは認められません。

【意匠1】(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年 9月14日に受け入れた
総合カタログ 労働安全衛生保護具・機器 OCCUPATIONAL SAFETY EQUIPMENTS 2007年版
第83頁所載
耳栓の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC19020054号)

【意匠2】
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2006-348432
【図9】の耳栓に形成されたリング状部68として表された連結部の意匠」

第3 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「耳栓」であり,本願意匠の形態は,次のとおりである。
(A)全体について
全体が,略円柱形状である本体部と,その上端に突設された連結部から成るものである。
(B)本体部の態様について
正面から見て,本体部は,上端から下端寄りにかけて漸次径が小さくなっており,下部は略半球状に形成されている。
(C)連結部の態様について
連結部は,伸縮性を有する丸紐を環状にしたものであり,正面から見て,連結部の高さは本体部の高さの約5/11である。
(D)本体部上面の連結部取付け態様について
本体部上面中央に,連結部である紐を挿入するための略横長長円形状の穴部が設けられている。

2 創作非容易性の判断
「耳栓」の意匠の物品分野において,(B)の態様を呈する本体部を有するものは,拒絶の理由で示された意匠1に見られるように,本願の出願前に公然知られている。
一方,拒絶の理由で示された意匠2における環状の連結部は,上記の公開特許公報の記載によれば,「リング状部68」であって,それは耳栓14のロッド状部36の後端縁部に一体的に(不可分に)形成されたものと説明されている(同公報【0078】の記載。別紙第3参照。)。
また,そのロッド状部36の後端形状は同公報の記載では不明であるところ,連結部が一体的に形成されているとの上記説明により,少なくとも本願意匠の本体部上面中央に見られるような穴部がロッド状部36に設けられていると推認することはできない。さらに,連結部がロッド状部36と一体であることから,ロッド状部36がシリコンなどから形成されているとの同公報の記載(同公報【0057】の記載。別紙第3参照。)を踏まえると,連結部も同様の材質から形成されていると推認され得るので,本願意匠の伸縮性を有する紐とは材質が異なるともいうべきである。
そうすると,連結部がロッド状部36と一体的に形成されており,かつロッド状部36の後端形状が不明である意匠2には,本願意匠の(C)と(D)の態様,具体的には,伸縮性を有する丸紐を環状にした連結部を本体部上面中央の略横長長円形状穴部に挿入した形態が表されているということはできない。
そこで,同公報の図9に表された意匠2のロッド状部36とリング状部68の形態をもって,当業者が本願意匠の(C)と(D)の態様,具体的には,伸縮性を有する丸紐を環状にした連結部を本体部上面中央の略横長長円形状穴部に挿入した形態を容易に創作することができたかについて検討する。
本願意匠の連結部である丸紐は伸縮性のある材質であって,上述のとおり,伸縮性があるとはいい難い意匠2の連結部とは異なっており,シリコンなどから形成されているロッド状部36と一体になった意匠2の連結部は,比較的硬いものであると推認され得ることから,当業者が環状の連結部を本体部に設けるに当たっては,公然知られた意匠2の形態のみをもってその環状連結部を伸縮性のある材質に変更したということはできない。
また,本願意匠の本体部上面中央には,連結部を挿入するための略横長長円形状の穴部が設けられているが,上述のとおり,意匠2のロッド状部36の後端には穴部が形成されていると推認することはできないから,当業者が環状の連結部を本体部に設けるに当たっては,公然知られた意匠2の形態のみをもって略横長長円形状の穴部を設けたということはできない
そうすると,意匠2に基づいて,当業者が本願意匠の(C)と(D)の態様を容易に創作することができたということはできない。
したがって,原審の拒絶の理由で引用された,意匠1及び意匠2に基づいて,当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-12-08 
出願番号 意願2013-18875(D2013-18875) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
正田 毅
登録日 2016-01-15 
登録番号 意匠登録第1543914号(D1543914) 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 山崎 和香子 

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