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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H7
管理番号 1309604 
審判番号 不服2015-6966
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-14 
確定日 2016-01-05 
意匠に係る物品 自動車用リモートコントローラー 
事件の表示 意願2014- 11026「自動車用リモートコントローラー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成26年(2014年)5月23日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用リモートコントローラー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書添付の図面に記載したとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2014-11024号。以下,単に「本意匠」という。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠と,願書に本意匠として記載された意願2014-011024号の意匠とは,共に全体が正面視略縦長長方形状であり,側面視略平行四辺形状となるように上方と下方にそれぞれ傾斜が設けられ,この傾斜によって,平面から正面にかけての面と,背面から底面にかけての面がそれぞれなめらかにつながっています。また,正面視上方に2つのボタン部が縦に並んで設けられているという態様が共通しています。
しかしながら,意願2014-011024号の意匠は側面視平面側と背面側の2枚の略曲板状部が組み合わさって形成されたような形態であるのに対し,本願意匠は全体が一つのまとまった形態であり,この差異による両意匠の印象差は顕著です。したがって,両意匠は類似しないものと認められます。」

第3 手続の経緯
上記,原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠が本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものである旨主張したが,同主張を採用できないとして拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成27年(2015年)4月14日に審判を請求し,原査定を取り消し,本願意匠を登録すべきものであるとの審決を求めるとともに,同日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が,第10条第1項の規定により本意匠(意願2014-11024号)を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるか否かについて検討する。
1 本意匠
本意匠は,平成26年(2014年)5月23日に意匠登録出願されたものであり,平成27年(2015)3月6日に意匠権の設定の登録がなされ,同年4月6日に発行された意匠公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

2 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用リモートコントローラー」であり,本意匠の意匠に係る物品も「自動車用リモートコントローラー」であるから,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。
(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 共通点
両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が上面と正面,下面と背面が滑らかに一体となった,平行の上下斜面からなる略四角柱状である点。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)側面視の態様について
左右側面からみて,細長い略平行四辺形状となっている点。
(C)釦部について
正面,上寄りに釦部を縦方向1列に2つ間隔を空けて配している点。
イ 差異点
一方,両意匠には,基本的構成態様として,以下の差異点が認められる。
(a)全体の構成について,
本願意匠は,平面視,背面側隅丸の略台形柱状のひとつながりの材から成るような一体的な構成からなるものであるのに対して,本意匠は,平面視,略長方形柱状で,先端を浅めに屈曲した厚みのある長方形板状体を正面板状体の裏に背面側板状体がはまるよう上下逆向きの点対称状に組み合わせ,その隙間に板状本体部を挟んだような構成のものである点。
また,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(b)全体の比率について
意匠全体の縦,横,厚み比率は,本願意匠は,約7:3:1であるのに対し,本意匠は,約7:2:1である点。
(c)釦部について
(c-1)本願意匠の釦部の形態は,平坦面に施錠状態の南京錠様の図柄と開錠状態の南京錠様の図柄であって,全長約5分の1から中程までの間に配されて,釦部の間隔も広めであるのに対し,本意匠の釦部の形態は,円形であって,その釦部が全長約4分の1から中程までの間に配されて,釦部の間隔もやや広めである点。
(c-2)本願意匠の正面下方には,横長長円状の釦部が配されているのに対し,本意匠では,そのような釦部はないものである点。
(d)背面について
本願意匠には,背面上端寄りに極浅い円形凹部が配され,下端にも略長方形状(蓋)部が配されているのに対し,本意匠には,そのようなものはない点。
(e)角部態様について,
本願意匠は正面四隅角部に大きな丸みを施し,平面と側面及び背面の稜部,そして正面と側面及び底面の稜部に極細い面取りを切れ目なく施しているのに対して,本意匠は,正面四隅角部にごく小さな丸みを施し,面取りは施していないものである点。

3 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
前記認定のとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。
(2)形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)基本的構成態様について,全体が平行の上下斜面からなる略縦長直方体状である態様は,各種のコントローラーの物品分野において,本願の出願前に普通に見受けられることから(例えば,参考意匠:2007年11月16日に発行された大韓民国意匠商標公報07-31号掲載の登録番号30-0468940号,コンピューター用遠隔調整器の意匠,別紙第3参照。),両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
また,共通点(B)側面視の態様については,細長い略平行四辺形状となっている点も,上記参考意匠に見られるとおり,両意匠のみの格別の特徴ということができず,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
さらに,共通点(C)の釦部の配置について,正面上寄りに縦方向1列に二つ,間隔を空けて配している点もこの種物品分野に限らず,操作釦部の配置として本願の出願前にごく普通に見受けられることから,特に,看者の注意を惹くものとはいえない。
したがって,共通点(A),(B)及び(C)は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいものであって,両意匠の形態の共通点を総合しても,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(3)形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a)で指摘した,全体の構成についての差異,すなわち,本願意匠が,平面視,背面側隅丸の略台形柱状のひとつながりの材から成るような構成であるのに対して,本意匠は平面視略長方形柱状で先端を浅めに屈曲した厚みのある長方形板状体を上下逆向きの点対称状に組み合わせ,その隙間に板状本体部を挟んだような構成である点は,外観全体に渡る差異であって,丸みをおびた略台形柱状であるか略長方形柱状である点においてもその差異を看取できるところ,特に側面視においては,ひとつながりの材から成るような滑らかな一体感をもつものと,板状の複数の部材を組み合わせて成ることによって,その部材が積層状になっているのを看取できるものとの差異は明らかであって,看者に与える視覚的印象も根本から異なるものであり,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいということができる。
次に,差異点(b)は,全体の比率についてであって,本願意匠の縦,横,厚み比率は,約7:3:1であるのに対し,本意匠は,約7:2:1であり,本意匠に比べて本願意匠は,やや幅広のものであるといえ,その差は,横幅のみの差異でもあるが,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているということができる。
そして,差異点(c-1)は,釦部の形状及び配置の差異であって,本願意匠の釦部の形態が,平坦面に施錠状態の南京錠様の図柄と開錠状態の南京錠様の図柄を配した釦部であるのに対し,本意匠の釦部の形態が円形である点は,看者の注目する操作面側の釦部の形態差でもあり,単なる円形状のものと平坦面に施された南京錠様の図柄のみによるものとの印象差は大きく,全長約5分の1から中程までの間に配されてその釦部の間隔も広めであるものと全長約4分の1から中程までの間に配されて,釦部の間隔もやや広めである点の両意匠の釦部の配置態様は,この種物品の分野で格別の特徴ある態様とまでいえないが,上記形態の差異ともあいまって,操作面側の別異の感を強調し,両意匠の類否判断に与える影響は大きいといえる。
さらに,差異点(c-2)についても,横長長円状の釦部の有無についてであって,正面の看者の目につく操作面側の釦部の有無であり,下方に配され,ごくありふれた形態である横長長円状の釦部であったとしても,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているということができる。
加えて,差異点(d)は,背面の態様についての差異であるが,極浅い円形凹部及び略長方形状(蓋)部の有無について,操作面の反対側の背面側の態様であるから,看者が常に注視する部位に係る差異であるとはいい難く,意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいものであるといえる。
最後に,差異点(e)は各角部の丸み態様及びそれをつなぐ稜部の面取りの有無についての差異であって,部分的ではあるが,本願意匠の角部の大きな丸みと面取りの存在がより滑らかに本願意匠の一体感のある印象を強め,本意匠の角部のごく小さな丸みと稜部に面取りのない点が,本意匠の板状体の組み合わせからなる鋭角的な印象を強め,それぞれの視覚的特徴の差異を際立たせるのに寄与しているといえ,両意匠の類否判断に与える影響は無視できない態様であり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
そうすると,差異点(a)は,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きく,差異点(e)がそれを助長させており,差異点(c-1)は,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,差異点(b)及び(c-2)についても,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているので,差異点(d)の影響が小さいものであるとしても,これらの差異点を総合すると,両意匠を別異のものと十分に印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。
(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は本意匠に類似するということはできない。

4 本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するか否かについて
本願意匠が意匠法第10条第1項の規定により本意匠(意願2014-11024号)を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるか否かについて検討する。
本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件のうち,「自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠」に該当する。
また,本願意匠と本意匠は,本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠の意匠登録出願の日は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
しかし,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。

したがって,本願意匠は,第10条第1項の規定により本意匠(意願2014-11024号)を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができない。

そして,前記第3のとおり,本願は,審判請求日と同日に願書の本意匠の表示を削除する補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。
また,本願意匠は本意匠に類似しないから,前記手続補正によって新たに意匠法第9条第2項の規定に該当するものともいえず,同条同項の規定により,本願を拒絶することもできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものとした,原審の拒絶の理由によっては,拒絶することができない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-12-18 
出願番号 意願2014-11026(D2014-11026) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鐸木 芳実木村 智加 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 清野 貴雄
渡邉 久美
登録日 2016-01-15 
登録番号 意匠登録第1543858号(D1543858) 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 松井 重明 
代理人 村上 加奈子 
代理人 倉谷 泰孝 

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