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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1309607 
審判番号 不服2015-12421
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-01 
確定日 2016-01-15 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー用リモートコントローラー 
事件の表示 意願2014- 15286「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成26年(2014年)7月14日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁普及支援課が平成26年(2014年)5月1日に受け入れた,2014年3月20日発行の大韓民国意匠商標公報に掲載されたテレビジョン受像機用リモートコントローラー(登録番号30-0734972)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH26412200号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」であり,引用意匠は,「テレビジョン受像機用リモートコントローラー」であるが,両意匠は,いずれも電気機器用のリモートコントローラーであり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定・対比する。
(1)共通点
(A)全体を,正面視横長長方形状とし,厚み部分を背面側に僅かに窄めた細長い偏平直方体形状とし,その正面全体を平坦な透光部から成る操作及び表示用のパネルとした点,
(B)各周側面を略等幅とし,上下左右対称の略角錐台形状とした点,
(C)正面側の縁部には極細の略面取り状傾斜部を設けている点,
(2)差異点
(ア)本願意匠は,各周側面を平坦な傾斜面とし,全体を上下面が左右面より僅かに傾斜が大きい略等脚の角錐台形状として,背面側頂面を横長長方形状としているのに対して,引用意匠は,各周側面を凸弧状面とし,全体を背面四隅が丸みを帯びた頂面まで一続きの曲面を形成する偏平な略蒲鉾形状としている点,
(イ)本願意匠は,左右側面の傾斜の角度をやや急に,平底面の傾斜の角度をやや緩やかにして,両者を異なる角度に形成しているのに対して,引用意匠は,左右側面及び平底面のいずれの角度も同様に形成している点,
(ウ)側面視した本体の縦幅と厚みの比が,本願意匠は,約3:1であるのに対して,引用意匠は,約5:1である点,
(エ)正面パネルの周囲について,本願意匠は,正面パネルの周囲に余地部がないのに対して,引用意匠は,ごく細い縁状の余地部を有している点,
(オ)本願意匠は,背面パネルの中央に,全体の横幅の約1/3程度の幅の横長長方形状の蓋部を設けているのに対して,引用意匠は,右側面側に略倒台形状の蓋部を設けている点,
(カ)正面パネルの四隅について,本願意匠は,四隅を小さい隅丸として角張らせているのに対して,引用意匠は,四隅の隅丸が大きく丸みがある点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成であるが,全体を,正面視横長長方形状とし,厚み部分を背面側に僅かに窄めた細長い偏平直方体形状とし,その正面全体を平坦な透光部から成る操作及び表示用のパネルとした態様は,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)及び共通点(C)についても,各周側面を略等幅とし,上下左右対称の略角錐台形状とし,正面側の縁部には極細の略面取り状傾斜部を設けた態様は,この種の物品分野においては両意匠以外にも普通に見られるもので,ありふれた態様といえるもので,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえないものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の態様については,各周側面を平坦な傾斜面とし,全体を上下面が左右面より僅かに傾斜が大きい略等脚の角錐台形状として,背面側頂面を横長長方形状としている本願意匠と,各周側面を凸弧状面とし,全体を背面四隅が丸みを帯びた頂面まで一続きの曲面を形成する偏平な略蒲鉾形状としている引用意匠とでは,全体の立体形状が異なり,別異の印象を起こさせるものであり,また,周側面から背面側にかけての態様は,正面側の態様と比べるとやや目に触れにくい部分の態様であるものの,使用者が手にとって操作するリモートコントローラーという物品の性質上間近に見るものであり,周側面から背面側にかけては手に触れる部分であるから,その周側面の形状を,略等脚の角錐台形状とした角張った本願意匠と,偏平な略倒蒲鉾形状の曲面状とした引用意匠とでは,使用者に与える印象が明らかに異なり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の周側面の傾斜角度の差異については,背面側に窄んだ周側面側は目に触れにくい部分であって,左右側面側は,使用者が握らない部分でもあるから,本願意匠の平底面と左右側面の傾斜の差異は,通常の使用状態では気がつきにくい差異であるから,上下の面と左右の面の角度が異なる本願意匠と,全てが同様の角度の引用意匠とでは,それのみでは,さほど大きな差異ということはできず,両意匠の類否判断に与える影響が小さいものといえるが,前記差異点(ア)の異なる印象を強めてはいる。
また,差異点(ウ)の側面視した本体の縦幅と厚みの比については,厚みのある本願意匠は,どっしりとした印象を与えている一方,厚みの薄い引用意匠は,看者にスリムな印象を与えているから,その印象は明確に異なるもので,その差異は無視することができず,前記差異点(ア)の差異と相俟って,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
一方,差異点(エ)の正面パネルの周囲の余地部については,余地部のあるものもないものも,いずれもこの種のリモートコントローラーの物品分野においては,ありふれた態様といえるものであり,また,引用意匠の余地部も僅かなもので,その差異が目立つものとはいえず,前記共通点(C)の略面取り状傾斜部を有する正面側の縁部の共通点に埋没する程度のものであるから,その差異が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。
また,差異点(オ)の蓋部の位置の差異については,いずれの態様もこの種のリモートコントローラーの分野においては,部分的でありふれた態様といえるものであり,その差異が両意匠の類否判断に影響を与えるものとはいえない。
差異点(カ)の正面パネルの四隅の隅丸の程度については,いずれの態様もこの種のリモートコントローラーの物品分野においては,ありふれた態様といえるもので,その差異のみでは目立つものとはいえないが,引用意匠の隅丸の程度が大きい態様は,背面側の態様と共に全体が丸みのある印象を与えるものといえ,本願意匠の隅丸の程度が小さい態様は,背面側の略倒脚の角錐台形状が看者に与える角張った印象を強調しているものであり,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が看者に与える印象が共通点のそれを凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-01-04 
出願番号 意願2014-15286(D2014-15286) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 久保田 大輔
斉藤 孝恵
登録日 2016-01-29 
登録番号 意匠登録第1544559号(D1544559) 
代理人 原田 雅美 
代理人 松原 美代子 
代理人 渡邉 知子 
代理人 川越 弘 

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