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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) H2
管理番号 1309610 
判定請求番号 判定2015-600007
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2016-02-26 
種別 判定 
判定請求日 2015-02-17 
確定日 2016-01-05 
意匠に係る物品 電柱用バンドの締付け具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1470218号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「バンド締付け具」の意匠は,登録第1470218号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由
1.請求の趣旨
イ号図面に示す意匠は登録第1470218号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。
2.請求の理由
(1)判定請求の必要性
判定請求人は,請求外NTT株式会社(以下,「請求外NTT」という。)に対し,イ号意匠のバンド締付け具(以下,「イ号物件」という。)の譲渡の申出を行い,今後継続的な販売を計画している。
バンド締付け具については,被請求人が,本件判定請求に係る登録意匠「電柱用バンドの締付け具」(甲1,以下,「本件登録意匠」という。)を有しており,請求外NTTから,本件登録意匠に類似しないことを,判定請求により明確にすることを求められた。
よって,判定請求人は,本判定請求に及んだ。
(2)本件登録意匠の手続の経緯
出 願 平成24年12月5日(意願2012-29760号)
登 録 平成25年4月19日(登録第1470218号)
(3)本件登録意匠の説明
1)基本的構成態様
A 本体部と一つの回動レバーからなるバンド締付け具である。
2)具体的構成態様
B 本体部は,
B1 平面視で各角に丸みのある略長方形であり,
B2 中央には短辺の左端から右端までへ短辺の長さの約60%幅の溝が設けられ,
B3底部には,バンドを本体内に導入する導入溝が2か所に設けられている。
B4側面図において,左右両側が上端から下端まで連続して,なだらかな曲面となっている。
C 回動レバーは,
C1 平面視で略長方形であり,短辺は本体の溝部の短辺の寸法とほぼ同一,長辺は本体の溝部の長辺の寸法の約85%であり,
C2 平面視で双方の長辺には,端部近傍に勾玉形状の回動軸が,他端近傍に方型の係止片が設けられ,
C3平面視で回動軸が設けられた端部の裏面には4つの溝が設けられ,当該端部の近傍には,平面から底面に通じるバンド挿通孔が設けられ,
C4正面視で回動軸が設けられた端部はアール状になっている。
(4)イ号意匠の説明
1)基本的構成態様
a 本体部と二つの回動レバーからなるバンド締付け具である。
2)具体的構成態様
b 本体部は,
b1 平面視で長辺に膨らみのある略太鼓形であり,
b2 中央には短辺の左端から右端までへ短辺の長さの約60%幅の溝が設けられ,
b3 底部には,バンドを本体内に導入する導入溝が2か所に設けられている。
b4 側面図において,左右両側の上端から中間部分までなだらかな曲面となっており,中間部分から下端まではほぼ垂直となっている。
c 回動レバー1は,
c1 平面視で略長方形であり,短辺は本体の溝部の短辺の寸法とほぼ同一,長辺は本体の溝部の長辺の寸法の約90%であり,
c2 平面視で双方の長辺には,端部近傍に円柱状の回動軸が,回動軸の近傍に方型の係止片が設けられ,
c3 平面視で回動軸が設けられた端部の裏面には溝がなく,当該端部の近傍には,平面から底面に通じるバンド挿通孔が設けられ,当該挿通孔には4つの溝がある。
c4 正面視で回動軸が設けられた端部はアール状になっている。
d 回転レバー2は,
d1 平面視で略長方形であり,短辺は本体の溝部の短辺の寸法とほぼ同一,長辺は本体の溝部の長辺の寸法の約40%であり,
d2 平面視で双方の長辺には,端部近傍に円柱状の回動軸が,回動軸の近傍に方型の係止片が設けられ,
d3 平面視で回動軸が設けられた端部の裏面には溝がなく,当該端部の近傍に,平面から底面に通じるバンド挿通孔が設けられ,当該挿通孔には4つの溝がある。
d4 正面視で回動軸が設けられた端部はアール状になっている。
(5)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
1)本件登録意匠に係る物品のバンドの締付け方法
バンド(「バンドA」)は,本体底面の導入溝から導入され,回動レバーの端部から回動レバーの挿通孔を経て,本体と回動レバーにより挟持されることにより締付け固定される。
2)本件登録意匠の要部
[1]本件登録意匠に係る物品の需要者
バンド締付け具は,それを現実に使用する者により選別され購入されるから,本件登録意匠に係る物品の需要者は,当該物品を使用しバンドの締付け作業を行う者である。
[2]需要者が注目する部分
バンド締付け具は,バンドを確実に締め付けるものである。そのような用途からすると,需要者は,バンドが確実に締め付けられるかに興味を抱くから,バンドを締め付けるための回動レバーの数や構成,本体部と回動レバーがバンドをどのように締め付けるかに関する部分に注目することは,明らかである。
[3]公知意匠
本件登録意匠出願当時に,本体部及び回動レバーから構成されたバンド締付け具としては,下記公知意匠がある。
ア 公知意匠1:意匠登録第1396715号(甲3)
イ 公知意匠2:意匠登録第1013921号(甲4)
ウ 公知意匠3:意匠登録第1451823号(甲5)
エ 公知意匠4:請求外須田既存商品(甲6,甲7)
[4]本件登録意匠の要部
ア.本件登録意匠の基本的構成態様
回動レバーの個数は,バンドを締め付ける性能と密接に関係するから,構成Aは本件登録意匠の要部となる。
イ.本体部の具体的構成態様
(ア)構成B1
本体部を略長方形とすることは,公知意匠においても見られる態様であり,また,ベルトを締め付ける性能と直接に関係しないから,要部とはなり得ない。
(イ)構成B2
本体部に回動レバーが収まる溝を設けることは,公知意匠においても見られる態様であり,ベルトの締付けに回動レバーを用いた場合,当然に必要となる態様であるから,要部とはなり得ない。
(ウ)構成B3
本体部の底部から,バンドを本体内に導入する導入溝を2か所設けることは,公知意匠においても見られる態様であるから,要部とはなり得ない。
(エ)構成B4
本体部の側面図において,左右両側が上端から下端まで連続して,なだらかな曲面となっている態様は,公知意匠4(請求外須田既存商品)で採用された構成態様であり,要部となり得ない。
ウ.回動レバーの具体的構成態様
(ア)構成C1
回動レバーが,平面視で略長方形であることは,公知意匠においても見られる態様であるが,回動レバーの具体的な寸法は,バンドを締め付ける作業をする際に,作業効率などに直接影響するから,本件登録意匠の要部に該当する。
(イ)構成C2
回動レバーの回動軸や係止片の具体的な形状は,バンドを締め付ける作業をする際に,締付けが確実に行われるかなどに直接影響するから,本件登録意匠の要部に該当する。
(ウ)構成C3
回動レバーにどのようにバンドが挿入されるかは,バンドを締め付ける性能に密接に関連するから,本件登録意匠の要部に該当する。
(エ)構成C4
回動レバーの端部にバンドを添わせることから,回動レバーの端部の態様は,バンドを締め付ける性能に密接に関連するから,本件登録意匠の要部に該当する。
エ.よって,本件登録意匠の要部は,構成A1,同C1,同C2,同C3,同C4となる。
3)本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
[1]本件登録意匠の構成A(回動レバーの個数)について
回動レバーは,バンドを締め付ける本質的な要素であり,よって,その個数や形状は,需要者が極めて強い注意をする部分である。この点,本件登録意匠は,回動レバーが1個しか存在しないのに対し,イ号物件の意匠は大小各1個の回動レバーが存在し,その基本的な構成において本件登録意匠と相違している。
この構成態様の違いは,前述のように本件登録意匠の要部における相違であり,需要者の美感に与える影響は極めて重大である。
[2]本件登録意匠の構成B(本体部の具体的な構成態様)について
本件登録意匠とイ号物件の意匠とは,本件登録意匠の構成Bについて類似する部分があるが,前述のとおり,本体部の具体的な構成態様は公知意匠と同一であるから,構成Bにおいて本件登録意匠とイ号物件の意匠が類似することは,需要者の美感に大きな影響を与えない。
[3]本件登録意匠の構成C(回動レバーの具体的な構成態様)について
本件登録意匠の回動レバーの具体的な構成態様は,前述のとおり,需要者が特に注意を払う部分であり,また,公知意匠とも異なる本件登録意匠の要部である。
この点,イ号物件の意匠は,そもそも回動レバーの個数が異なる点で美感が大きく異なる。また,本件登録意匠は,回動軸の形状が勾玉状の特徴的な態様(構成C2)であるのに対し,イ号物件の意匠は公知意匠と同様に単純な円柱状の回動軸である点で異なる。本件登録意匠は特徴的な回動軸を採用することで,回動レバーは,単に回動するだけではなく,バンドの締付け時に回動軸と反対側にスライドすることができ,回動軸と係止片の双方が本体部に固定され,バンドを確実に締め付ける効果を発揮する構成態様となっている。
よって,本件登録意匠を目にした需要者は,かかる回動軸の具体的な構成態様に強く注目することになり,単なる円柱状の回動軸のイ号物件の意匠とは,需要者に与える美感は,著しく異なる。
また,係止片の位置について,本件登録意匠は,回動レバーの回動軸が設けられた端部と反対側の端部近傍に設けられ,回動軸とともに回動レバーを係止するが,イ号物件の意匠は,回動軸近傍に係止片が設けられている。この点,係止片は,バンドの締付けを左右するものであるから,需要者に,強く注目される部分であるといえ,この点が,異なる両意匠は,需要者に与える美感が異なる。
[4]結論
以上のとおり,イ号物件の意匠は,本件登録意匠とその要部において相違し,他方,類似が見られる構成態様は,需要者が注目する要部ではないから,両意匠は,需要者において,視覚を通じて起こさせる美感が異なる。
よって,イ号物件の意匠は本件登録意匠とは類似せず,イ号物件は,本件登録意匠と類似しない。
(6)むすび
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので,請求の趣旨どおりの判定を求める。

第2 判定請求人の上申の内容(平成27年4月2日付け)
また,判定請求人は,上申書を提出し,以下のとおり,イ号意匠について申し述べた。
1.イ号意匠の意匠登録出願
(1) 意匠登録出願
(あ)請求人は,平成26年5月2日,特許庁に対し,下記意匠の意匠登録出願をした(以下,「本意匠出願」という。)(甲8:意匠登録願)。
出願した意匠(以下,「出願意匠」という。)は,固定用レバーが非固定時の位置になっている図面であるのに対し,イ号意匠は,固定用レバーが固定時の位置になっている 図面である点で相違しているが,その構成態様は,ほぼ同一である。
(い)イ号意匠の平面図
例えば,イ号意匠の平面図は,出願意匠の正面図の固定用レバーが固定位置にあるものとほぼ同一であることは,両図面から容易に理解できる。
(う)イ号意匠の正面図
また,イ号意匠の正面図は,出願意匠の底面図において,固定用レバーがない構成態様(固定位置にあり固定用レバーが見えない位置の構成態様)とほぼ同一である。
(え)その他,イ号意匠の各図面は,出願意匠の各図面とほぼ同一である。
2.イ号意匠の意匠登録査定
特許庁において,本意匠出願は,平成27年3月4日(起案日),意匠登録される旨の査定がなされた(甲9:登録査定)。
また,同日付の通知書(甲10)では,「審査官が,本願意匠の新規性,創作非容易性等の判断の際に参考とした資料」として,意登1013921などが通知されている。これ らの意匠は,本件登録意匠と同様「バンド締付け具」に関する意匠であるが,これらの意匠は,一見して,本件登録意匠よりもイ号意匠と似ている。
にもかかわらず,当該意匠ですら,イ号意匠(当審注:「本件登録意匠」の誤記と認められる。)と類似の範囲ではないと判断され,登録査定された事実は,イ号意匠と本件登録意匠が類似しないことを,端的に裏付けるものである。
3.結論
以上のとおりであるから,すみやかに非類似の判定をされるように上申する。
第3 判定被請求人の答弁
被請求人は,答弁書を提出し,以下の要旨を主張した。
1.請求人は,請求の理由において,
「(1)判定請求の必要性」
「(2)本件登録意匠の手続の経緯」
「(3)本件登録意匠の説明」
「(4)イ号意匠の説明」を記載し,
「(5)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明」
を記載している。
2.「(1)判定請求の必要性」において,
「請求外NTTから,本件登録意匠に類似しないことを,判定請求により明確にすることを求められた。」は,否認する。NTT株式会社側は判定請求人に対してそのような要求をしていない,と判定被請求人は聞いている。
3.「(2)本件登録意匠の手続の経緯」において,
出願日及び出願番号,そして,登録日及び登録番号は,認める。
4.「(3)本件登録意匠の説明」において,
「1)基本的構成態様」及び「2)具体的構成態様」を記載している。
5.「(4)イ号意匠の説明」において,
「1)基本的構成態様」及び「2)具体的構成態様」を記載している。
6.「(5)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明」において,
(1)「1)本件登録意匠に係る物品のバンドの締付け方法」を説明し,「2)本件登録意匠の要部」を記載している。
(2)この「1)本件登録意匠に係る物品のバンドの締付け方法」において,
1)説明するバンドの経路,つまり通し方が誤っており,否認する。
[1]参考までに記載すると,「バンドA」の場合,「バンドA」は,「本体底面」の上面にバンドA導入方向,つまり,左側から右側に向かう方向から導入され,この上面と回動レバーとの間を通過する。
そして,この「バンドA」は,「本体底面」の溝部から「本体底面」の下面に導出され,この「本体底面」の下面をバンドA導入方向とは逆方向,つまり,右側から左側に向かう方向に移動させられ,「本体底面」の「導入溝」から「本体底面」の上面に導入される。
「本体底面」の上面に導入されたこの「バンドA」の先端部位は,「本体底面」の上面と「バンドA」の下面との間をバンドA導入方向とは逆方向,つまり,右側から左側に向かう方向に移動させられ,「本体底面」よりも外側に位置させる。
[2]また,「バンドB」の場合,「バンドB」は,「本体底面」の上面にバンドB導入方向,つまり,右側から左側に向かう方向から導入され,この上面を通過した後に,「バンドA」の上面と回動レバーとの間を通過する。
そして,この「バンドB」は,回動レバーの回動中心部位を囲繞して「挿通孔」に至り,この「挿通孔」の下方入口部分をかすめて(右方向へ)引き出され,回動レバーと「バンドB」の上面との間をバンドB導入方向とは逆方向,つまり,左側から右側に向かう方向に抜き出される。
このとき,「バンドB」の先端部位は,回動レバーの内側に位置する。
[3]つまり,バンド締付け具の使用状態においては,回動レバーの回動中心部位の「挿通孔」近傍で,バンドを二層や三層の状態とし,回動レバーの回動動作によってバンドを堅固に締め付けるというバンドの通し方を採用している。
一方,判定請求人の「1)本件登録意匠に係る物品のバンドの締付け方法」のものは,バンドを層状にして回動レバーで締め付けるという使用状態を開示していない。
(3)「2)本件登録意匠の要部」において,
1)「[1]本件登録意匠に係る物品の需要者」の記載については,「バンド締付け具を使用しバンドの締付け作業を行う者である。」は,認める。
2)「[2]需要者が注目する部分」の「バンド締付け具は,バンドを確実に締め付けるものである。そのような用途からすると,・・・・・・明らかである。」は,否認する。
ここで,「需要者はバンドが確実に締め付けられたに興味を抱く」のは,ひと昔前のことであり,現在は,電柱などにバンド締付け具を固定した後の形態に視点は移っている。
そして,判定被請求人のいう,この「丸み形状」は,判定請求人が2.-[4]-イ.-(エ)構成B4で述べている「本体部の側面図において,左右両側が上端から下端まで連続して,なだらかな曲面となっている態様」が,その視点である。
また,この丸み形状は,バンド締付け具の使用時に,側面が「足掛かり」とならないのみでなく,バンド締付け具が損傷され難くし,また,作業時の衣類等の引っ掛かりをなくして作業性も良好とするとともに,通行人の安全も確保する。
なお,判定請求人の述べている「確実に締め付けられるか」は,バンド締付け具としては当然の機能であり,このような視点は,現在は見所ではないので,要部ではない。
3)「[3]公知意匠」の記載については,公知意匠1?4を開示しており,認める。
4)「[4]本件登録意匠の要部」について,
[1]「ア.本件登録意匠の基本的構成態様」において,「構成A」,
つまり,「本体部とーつの回動レバーからなるバンド締付け具」を本件登録意匠の要部と主張しているが,否認する。
第1の主たる要部は他にある。
つまり,主たる要部は,バンド締付け具を柱状体に取り付けた際の面の,特に側面の丸み形状にある。
また,「(エ)構成B4」で,「・・・・・・なだらかな曲面となっている態様は,公知意匠4・・・・・・で採用された構成であり,要部となり得ない。」は,否認する。
いわゆる「丸み形状」を曲面であれば全て同じものとする,つまり,十把一絡げの,極めて大雑把な論調は納得し難い。曲面でも種々のものがあり,まさに機能的な美観を評価されるべきものと考える。
[2]「イ.本体部の具体的構成態様」において,
「本体部を略長方形とする」記載の「(ア)構成B1」や「本体部に回動レバーが収まる溝を設ける」記載の「(イ)構成B2」,そして「本体部の底部にバンドを本体部内に導入する導入溝を2か所設ける」記載の「(ウ)構成B3」については,認める。
しかし,「(エ)構成B4」の記載においては,「本体部の側面図において,左右両側が上端から下端まで連続して,なだらかな曲線となっている態様に関して,要部になり得ない。」は,否認する。
それは,バンド締付け具の使用時,つまり,バンドを締め付けた状態の回動レバーの閉鎖時においては,判定請求人の提出した本件登録意匠の公報である甲第1号証の第6頁の【使用状態参考図】から明らかなように,本体部側面の曲面部分の一方が上部に位置することとなるためである。
つまり,不審者が電柱に登り上がる際の足掛け部として使用されないか,という点を危惧し,外形の形状に視点は移っている。
要するに,このバンド締付け具が格好の足掛け部として機能することは絶対に避けたい,との需要者の強い要望があるのである。
そのため,柱状体に巻き付け取り付けた際に上面となる,バンド締付け具の側面は丸みを帯び,いわゆる足場の「足掛かり」とならない形状であるかどうか,つまり丸みを帯び滑り易い形状であるかに着目する。
そして,この丸み形状が第三者の足掛け防止を図り,安全性を担保し,一種独特な機能美を醸し出し,要部そのものである。
[3]「ウ.回動レバーの具体的構成態様」において,
回動レバーが平面視で略長方形である記載の「(ア)構成C1」,及び,回動レバーの回動軸や係止片の具体的な形状に関する「(イ)構成C2 」の記載については,認める。
そして,「(ウ)構成C3」の記載において,回動レバーにどのようにバンドが挿入されるかは,「バンドを締め付ける性能に密接に関連するから,本件登録意匠の要部に該当する。」は,否認する。
ア.それは,意匠は,主に視覚を通じて美観を起こさせる物品の形状を権利化するものでありますため,バンドを回動レバーにどのように挿入するかは,現場作業員が任意に変更可能な事柄も含んでいるため,本件登録意匠の要部に該当するという判定請求人の主張には賛同できないためである。
イ.また,「(エ)構成C4」の記載においても,「回動レバーの端部の態様は,バンドを締め付ける性能に密接に関連するから,本件登録意匠の要部に該当する。」は,否認する。
ウ.それは,上記した同様の理由から,「本件登録意匠の要部に該当する。」という判定請求人の主張には賛同できないためである。
[4]「エ.よって,本件登録意匠の要部は,構成A,同C1,同C2,同C3,同C4となる。」は,否認する。
(4)「3.本件登録意匠とイ号意匠との類否判断」において,
1)「[1]本件登録意匠の構成A(回動レバーの個数)について」の記載に関して,回動レバーの個数が相違すると,外観に影響を与える可能性があることは判断が容易です。
しかし,回動レバーが回動動作をするため,回動レバーが開放された状態の開放時のみでなく,バンドを締め付けた状態の回動レバーの閉鎖時も外観の要部となるものであるため,否認する。
それは,大小各1個の回動レバーを有するイ号意匠の閉鎖時には,大小各1個の回動レバーの夫々の全体形状が確認できるものではなく,外観が類似すると思料されるとともに,回動レバーの開放時の構成態様の違いのみを主張することは片手落ちの状態であると思料されるためである。
2)「[2]本件登録意匠の構成B(本体部の具体的な構成態様)について」の記載に関して,「構成Bにおいて本件登録意匠とイ号物件の意匠が類似することは,需要者の美観に大きな影響を与えない。」は,否認する。
なぜならば,「B4」に記載されるなめらかな曲面,前述したような「丸み」を全く考慮していないためである。
3)「[3]本件登録意匠の構成C(回動レバーの具体的な構成態様)について」の記載に関して,回動レバーの個数が異なる点のみでなく,回動レバーの回動時の動作も説明し,「需要者に与える美観が著しく異なる。」は,否認する。
なぜならば,イ号物件の意匠の外的美観を重要視せず,回動レバーの個数や回動レバーの動作のみを重要視しているためである。
4)「[4]結論」の記載に関して,「よって,イ号物件の意匠は本件登録意匠とは類似せず,イ号物件は,本件登録意匠と類似しない。」は,否認する。
なぜならば,本件登録意匠は,本体部の側面に形成されるなめらかな曲面の外観のみでなく,この本体部に対して回動可能に取り付けられる回動レバーを備えた際の外観をも勘案すれば,本体登録意匠の外観が醸し出す 機能美をイ号物件の意匠が有していることは明白なためである。
7.また,請求人は,平成27年4月2日付けで提出した上申書について,
(1)「1.イ号意匠の意匠登録出願」において,
1)平成26年5月2日付けでほぼ同一のイ号意匠が意匠登録出願されていることを甲第8号証により説明しているが,否認する。
なぜならば,意匠上は全く別の形態をしている。
「イ号意匠の意匠登録出願」においては,回動レバーの開放時を常態としており回動レバーの閉鎖時が稀と見られてしまう。
通常は,バンド締付け具の使用時である,回動レバーの閉鎖時を常態とするのが,意匠法上,極めて妥当である。
2)そして,「(い)イ号意匠の平面図」の記載にて,イ号意匠の平面図と出願意匠の平面図とがほぼ同一であると説明しているが,否認する。
それは,上述の回動レバーの閉鎖時を常態とする理由にある。
3)また,「(う)イ号意匠の正面図」の記載では,イ号意匠の正面図と出願意匠の底面図(※ただし,180°回転した。)とがほぼ同一であると説明しているが,否認する。
その理由は,上述の回動レバーの閉鎖時を常態とする点にある。
4)更に,「(え)」の記載では,イ号意匠の各図面が出願意匠の各図面とほぼ同一であると主張しているが,否認する。
それは,上述の回動レバーの閉鎖時を常態とする理由にある。
5)そして,「イ号意匠の意匠登録出願」においては,回動レバーの開放時のみの六面図を開示しているため,否認する。
それは,上述の回動レバーの閉鎖時を常態とする理由にある。
(2)「2.イ号意匠の意匠登録査定」において,
甲第10号証の通知書によって,「・・・・・・意登1013921などが・・・・・・,一見して,本件登録意匠よりもイ号意匠と似ている。にもかかわらず,イ号意匠が登録査定された事実は,イ号意匠と本件登録意匠とが類似しないことを,端的に裏付けるものである。」は,否認する。
(3)「3.結論」において,
判定請求人の「以上のとおりであるから,すみやかに非類似の判定をされるように上申する。」は,否認する。
8.参考までに記載すると,
この度,イ号物件である意匠登録第1523151号に対しては,無効理由が存在するので,同日付けで意匠登録無効審判を請求する。
9.以上述べた理由から明らかなように,イ号図面に示す意匠は,本件登録意匠である登録第1470218号及びこれに類似する意匠の範囲に属する,と思料する。

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成24年(2012年)12月5日に意匠登録出願され(意願2012-29760号),平成25年(2013年)4月19日に設定の登録がなされ(登録第1470218号),平成25年(2013年)5月27日に意匠公報が発行されたものであって,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「電柱用バンドの締付け具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,(別紙第1参照)
すなわちその形態は,
基本的構成態様において,
A-1 全体形状については,底面部が長手方向へ極緩やかな弧状の湾曲面からなる,平たい略長方形板体であって,本体部と本体部上面の溝内部に配置されたレバー部からなるものであり,
A-2 本体部については,平面視,隅丸横長長方形状で,側面視,略倒コの字状の柱状体であって,コの字状内面に相当する部分は,幅方向中央,一定幅長手方向全長に渡る角状溝としたものであり,
A-3 レバー部については,平面視上下幅と本体部角状溝部幅はほぼ等しく,長手方向は本体部よりやや短く,平面視,略横長長方形状の伏せた略長方函状体であって,平面視左方短辺付近に略逆しずく形柱状体を上下に渡した態様とし,長辺側下端辺は本体の湾曲面に沿って弧状に形成されたものであって,
具体的態様において,
B-1 本体部については,その全体の奥行き(幅):横(全長):厚み(高さ)比率は,約1:1.6:0.4であって,
B-2 幅方向中央の大半を占める角状溝部幅は底幅に対し,約1:0.6であり,
B-3 底面部には,細長い略長円状の締め付けバンド用導入溝が底面視,左端寄りに一つ,中央よりもやや右寄りに一つ,計2か所に設けられており,その向き合う長辺は細かく深い波状に切り欠かれており,四隅寄りに小長方形孔が設けられ,
B-4 長手方向外壁面は表面にはなにも設けられておらず,上部角部は隅丸状の小さめの丸みをおび,そこから両端部はほぼ垂直に形成され,その外壁面は左右側面視においては,上端から下端まで外側へ末広がりにやや丸みを持った傾斜面となっており,
C-1 レバー部については,略逆しずく形柱状体側,長手方向壁部外面には左右一対の曲玉板状の回動軸片を設け,他方端寄りには左右一対の長方板状係止辺を設け,
C-2 上面は,長手方向壁部を除き,中程から回動軸側手前まで緩やかに下端へ落ち込む傾斜面となって,向かい側短辺方向の略逆しずく形柱状体との間の隙間がスリット状のバンド用挿通孔となり,
C-3 その略逆しずく形柱状部下端部は細い丸溝が4本設けられているものである。
2.イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書と同時に提出されたイ号図面により示されたものであって,意匠に係る物品は「バンド締付け具」であると認められ,その形態を,イ号図面により表されたとおりとしたものであり,(別紙第2参照)
すなわちその形態は,
基本的構成態様において,
a-1 全体形状は,底面部が長手方向へ極緩やかな弧状の湾曲面からなる,平面視,略樽形の平たい板体であって,本体部と本体部上面の溝内部に配置されたレバー部からなるものであり,
a-2 本体部については,平面視,略樽形状で,側面視,略倒コの字状の柱状体であって,コの字状内面に相当する部分は,幅方向中央,一定幅長手方向全長に渡る角状溝としたものであり,
レバー部については,
a-3 本体部角状溝部内に収まるものであり,平面視上下幅と本体部角状溝部幅はほぼ等しく,正面図及び左右側面図から小円形部は見受けられるものの軸部の位置,その回動状態,厚み及び長さは確認できないものである。
具体的態様において,
b-1 本体部について,その全体の奥行き(幅):横(全長):厚み(高さ)比率は,約1:1.8:0.5であって,
b-2 幅方向中央の大半を占める角状溝部幅は底幅に対し約1:0.6であり,
b-3 底面部には,ごく細長いスリット形状のバンド導入溝が底面視,左端寄りに一つ,右端寄りに一つ,計2か所に配されており,その背き合う側の長辺は細かく深い波状で,本体部長辺側に沿って細長長方形部が2つ配され,重ねて中央寄りに小長方形状部が4つ配されており,
b-4 長手方向外壁面は正面視において,左右端寄りにそれぞれ背面側と一対の小円形部が設けられ,上部長手方向両角部は大きな丸みをおび,つながる両端部は僅かに垂直に形成され,上部右半分は緩やかに盛り上がり,その上には角状の浅い切欠き部が設けられており,左右側面視においては,その外壁面は,上端から中程まで末広がりに傾斜面を形成し,中程から下端まで垂直状となり,その切替え部は丸みをおびており,
c レバー部については,平面視,右側にほぼ本体部角状溝部幅いっぱいの幅で長手方向約3分の2の横長長方形状と左端に余地を残して幅方向に縦長の長方形状を配し,その中側,中央寄りに幅方向に縦長細い長方形状部が認められる。
3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「電柱用バンドの締付け具」であり,イ号意匠も「バンド締付け具」であって,電柱用との記載はないが,実質的に両意匠の意匠に係る物品はバンドを締め付ける機能,用途について共通するので,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
まず,共通点として,
(あ)基本的構成態様として,
全体形状は,底面部が長手方向へ極緩やかな弧状の湾曲面からなる,略平たい板体であって,本体部と本体部上面の溝内部に配置されたレバー部からなるものであり,本体部については,側面視,略倒コの字状の柱状体であって,コの字状内面に相当する部分は,幅方向中央,一定幅長手方向全長に渡る角状溝としたものであり,レバー部については,平面視上下幅と本体部角状溝部幅はほぼ等しいものである点。
(い)本体部の具体的態様については,
幅方向中央の大半を占める角状溝部幅は底幅に対し約1:0.6である点。
(う)本体部底面部の態様について,
片側一方の長辺が細かく深い波状に切り欠かれている細長いバンド導入溝が2つ配されており,一つは底面視左端寄りに配されている点。
他方,相違点として,
(ア)基本的構成態様について,本件登録意匠は,平面視,略長方形の板体であるのに対し,イ号意匠は,平面視,略樽形の板体である点。
(イ)本体部形状について,本件登録意匠がその全体の奥行き(幅):横(全長):厚み(高さ)比率は,約1:1.6:0.4であるのに対し,イ号意匠は,約1:1.8:0.5である点。
(ウ-1)本件登録意匠の底面部には,略長円状の締め付けバンド用導入溝が2つ配され,その向き合う長辺側は細かく波状に切り欠かれているのに対し,イ号意匠のバンド導入溝は,スリット形状であり,背き合う側の長辺が細かく深い波状に切り欠かれており,底面視,右側の締め付けバンド用導入溝は,本件登録意匠は中央よりやや右に配されているのに対し,イ号意匠は右端寄りに配されている点。
(ウ-2)本件登録意匠は,底面視,四隅寄りに小長方形孔が設けられているのに対し,イ号意匠は,本体部長辺側に沿って細長長方形部が2つ配され,重ねて中央寄りに小長方形状部が4つ配されているものである点。 (エ)本件登録意匠の長手方向外壁面は表面にはなにも設けられておらず,上部角部は隅丸状の小さめの丸みをおび,そこから両端部はほぼ垂直に形成され,その外壁面は左右側面視においては,上端から下端まで外側へ末広がりにやや丸みを持った傾斜面となっているのに対し,イ号意匠は,長手方向外壁面は正面視において,左右端寄りにそれぞれ背面側と一対の小円形部が設けられ,上部角部は大きな丸みをおび,長手方向両端部は僅かな垂直に形成され,上部右半分は緩やかに盛り上がり,その上には角状の浅い切欠き部が設けられており,左右側面視においては,その外壁面は,上端から中程まで末広がりに傾斜面を形成し,中程から下端まで垂直面となり,その切替え部は丸みをおびている点。
(オ)レバー部について,
本件登録意匠は,平面視,略長方形状の伏せた略長方函状体であって,平面視左方短辺は略逆しずく形柱状体を渡した態様とし,その略逆しずく形柱状部下端部は細い丸溝が4本設けられているものであり,長辺側下端辺は本体の湾曲面に沿って弧状に形成されているのに対し,イ号意匠は,正面図及び左右側面図から小円形部は見受けられるものの軸部の位置,その回動状態,厚み及び長さは確認できないものであって,平面視,右側にほぼ本体部角状溝部幅いっぱいの幅で長手方向約3分の2の横長長方形状と左端に余地を残して幅方向に縦長の長方形状を配し,その中側,中央寄りに幅方向に縦長細い長方形部を配しているのが観察できるに止まる点。
4.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本件登録意匠の出願前に存在する公知意匠を参酌し,需要者の注意を引きやすい部分を考慮した上で,本件登録意匠とイ号意匠が類似するか否かについて,考察する。
まず,共通点(あ)の基本的構成態様については,「電柱用バンドの締付け具」の意匠の概括的な構成態様にあたるものであるが,本件登録意匠の出願前に既によく見られる態様(甲第3号証で示す先行意匠1:意匠登録第1396715号意匠,別紙第3参照,甲第4号証で示す先行意匠2:意匠登録第1013921号意匠,別紙第4参照)であって,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に,共通点(い)の短辺側中央の大半を占める角状溝部幅は底幅に対し約1:0.6である点は,本体における角状溝部の比率に係るものであるが,これもまた本件登録意匠の出願前に既に見られる態様(前記先行意匠1)であり,本件登録意匠とイ号意匠のみがもつ特徴のある共通点とは認められず,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。そして共通点(う)本体部底面部の態様についてであるが,細長いバンド導入溝が2つ配されている点は,この種物品分野で極めて普通の態様であって(例えば,前記先行意匠1及び前記先行意匠2),溝片側長辺が細かく深い波状である点は,本件登録意匠とイ号意匠のみがもつ特徴のある共通点とまではいえず,(例えば,前記先行意匠1)この点も両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
よって,この種物品においては,これらの共通点は,両意匠にのみ共通する態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも微弱なものであって,そして,上記の共通点を総合しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対し,相違点(ア)の基本的構成態様について,平面視,略長方形の板体であるか,平面視,略樽形の板体であるかは,取引の際にも使用時であっても十分に需要者が観察できる外観の形状であって,一見して看取できる形態の相違であり,本件登録意匠の全体形状は略長方形の板体で直線的な構成であり,一方,イ号意匠の樽形状の板体で曲線的な構成であるので,両意匠の視覚的印象は,大きく異なっているから,全体の類否判断に大きな影響を与えるものである。
相違点(イ)については全体のプロポーションの相違にかかるものであるが,ややイ号意匠の方が本件登録意匠より長めのものであるとしても,その数値差は僅かなものであって,軽微な差異に止まり,類否判断に与える影響は小さいものである。
相違点(ウ-1)は,底面における態様についてであって,具体的には,底面視の本件登録意匠の締め付けバンド用導入溝は,略細長い長円状で,2つあるうちの片方は中央よりやや右側に配されているのに対し,イ号意匠のバンド導入溝は略細長いスリット状で2つあるうちの片方は右端寄りに配されており,そのバンド導入溝を深い波状に切りかかれている向きが内側向きに設けられたものか外側向きに設けられたかの点でも相違し,設置時には,ほぼ観察できない箇所であるが,取引に際し需要者が観察できる箇所でもあり,類否判断に与える影響は,一定程度あるものと認められる。
相違点(ウ-2)の本件登録意匠の底面視四隅寄りに小長方形孔が設けられている点については,イ号意匠においては,本体部長辺側に沿って細長長方形部が2つ配され,重ねて中央寄りに小長方形状部が4つ配されているのが観察できるに止まり,形態を対比することはできず,類否判断に与える影響は,参酌できない。
相違点(エ)については,本体部外壁部の具体的形状に係るものであって,本件登録意匠の外壁面は,左右側面視において,上端から下端まで外側へ末広がりにやや丸みを持った傾斜面となっているのに対し,イ号意匠は,上端から中程まで末広がりに一旦傾斜面を形成し,中程から下端まで垂直面となって,その切替え部が,丸みをおびている点は,一見して看取できる外観の形状における相違であって,外壁面においての変化の態様が一様なものであるか,複合的なものであるかの点で大きく相違しており,正面視において,上部両角部が隅丸状の小さめの丸みをおびて,続く両端部がほぼ垂直に形成されたものと,上部両角部が大きな丸みをおび,長手方向両端部は僅かな垂直に形成され,かつ,上辺側右半分は緩やかに盛り上がり,角状の浅い切欠き部が設けられたものとも,一見して看取できる相違であって,また,正背面左右端寄りにそれぞれ一対,配された小円形部の有無についても表面の目立つ部分に係る態様の相違であり,それらの相違は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
レバー部の相違点(オ)についてはイ号図面には,レバー部を引き起こした態様が明らかでないため,イ号意匠のレバー部の具体的態様については,本件登録意匠と対比できず,類否判断に与える影響は,参酌できない。
これら相違点が両意匠の類否判断に与える影響を総合すると,相違点(イ)が類否判断に与える影響が小さく,相違点(ウ-1)が一定程度の影響を及ぼすものであって,相違点(ウ-2)及び(オ)が参酌できないものであったとしても,外観から容易に需要者が観察可能であって,一見して看取できる顕著な相違である相違点(ア)の本体部の全体形状の相違を本体部外壁部の具体的構成態様の相違点(エ)が一体となって,より強く際立たせており,これら相違点の両意匠の類否判断に及ぼす影響は,非常に大きいといえる。
また,相違点(イ),(ウ-1)についても部分的な態様の相違が上記,相違点(ア),(エ)がもたらす印象の差を補強し,相違点(ア),(ウ-1)及び(エ)があいまって生じる視覚的効果は,両意匠を意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものである。
5.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,形態については,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点があいまって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を大きな影響を及ぼしており,意匠全体として需要者に与える美感が異なるものであるから,本件登録意匠とイ号意匠とは類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2015-12-17 
出願番号 意願2012-29760(D2012-29760) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (H2)
最終処分 成立 
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 清野 貴雄
渡邉 久美
登録日 2013-04-19 
登録番号 意匠登録第1470218号(D1470218) 
代理人 佐合 俊彦 
代理人 井上 裕史 
代理人 西郷 義美 
代理人 西郷 直子 
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