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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J3
管理番号 1310770 
審判番号 不服2014-20938
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-16 
確定日 2016-01-13 
意匠に係る物品 デジタルカメラ 
事件の表示 意願2013- 26993「デジタルカメラ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2013年5月21日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成25年(2013年)11月19日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「デジタルカメラ」とし,その形態を願書に添付した図面に表されたとおりとし,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(以下,本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」ともいう。)(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとするものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁発行の意匠公報記載の意匠登録第1423381号(意匠に係る物品,デジタルビデオカメラ)の意匠の本願意匠部分に相当する部分(以下,「引用意匠部分」といい,本願意匠部分と併せて「両意匠部分」という。)の意匠であって,その形態は,同公報掲載のとおりのものである。(別紙第2参照)
そして,その具体的な理由を,両意匠部分とは,デジタルカメラの液晶画面が設けられた面からレンズが設けられた面に向かって平面視円弧状にゆるやかに膨出させた面の態様において共通しており,意匠全体として観察する場合には類似するものと認められる,とするものである。

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(なお,対比のため,本願意匠の図面における正面図と,引用意匠の背面図の右側を上にしたものとが対応するものとし,以下,本願意匠の図面における向きで表すこととする。)
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「デジタルカメラ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「デジタルビデオカメラ」である。
(2)両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は共に,手のひらで持つ大きさのカメラ本体の筐体の一部を構成する比較的小さいものであって,具体的には,扁平な縦長長方形板状の本体の,上端部分及び下端寄り部分を除く本体中央の略水平帯状部分の,背面の長方形表示画面部及び正面のレンズ機構部を除いた部分で,それは,(長方形表示画面部に接する)背面の左右両端部から正面全体に連続する本体の周面部分であって,正面のレンズ機構部(本願意匠は正面中央やや上方に小円形の3つのレンズ部を備えた大円盤状のもの,引用意匠は上方中央に小円形状のもの)を除いた部分である。
そして,その用途及び機能は,本体筺体のその部分を構成するものである。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分には,主に以下のとおりの共通点及び相違点がある。
A.共通点
(a-1)正面側全体を横方向の緩やかな凸弧状の曲面に形成している点。
(a-2)正面から側面,側面から背面へ回り込む角部に丸みを付けている点。

B.相違点
一方,その本体筐体の周面部分の具体的な態様において,主に以下の相違点がある。
(b-1)正面から側面,側面から背面にかけての丸みの態様について
本願意匠部分は,正面側全体を横方向の緩やかな凸弧状とし,それに連続するように両側面にかけて,正面から側面が一つの曲面となってそのまま背面に回り込むように丸みが形成され,平(底)面視においては,あたかも鏡餅の縁部分の断面,あるいは,平らな面の上に載った液体が表面張力によってできる形状の縁部分の断面のような,緩やかな膨出と端部の丸みのなだらかで均質な曲線からなる形状としているのに対して,
引用意匠部分は,正面側全体を横方向の緩やかな凸弧状とし,正面から屈曲して平坦な側面とし,またその側面から直角に屈曲して平坦な背面に回り込むように形成し,その正面から側面及び側面から背面の角部に丸みを付けたものであって,平面視においては,やや角張った蒲鉾状のような形状としている点。
(b-2)部分の厚さについて
本願意匠部分は,横幅に対する厚みの比が約11:2の薄いものであるのに対して,引用意匠部分は,約11:3のやや厚いものである点。
(b-3)正面側の表面の模様等の態様について
引用意匠部分は,その正面の上方寄りに緩やかな下向き弧状の横方向の線模様(区画線)が左右両側,背面に回り込んで表されているのに対して,本願意匠部分には,そのような模様等は何も表されていない点。

2.両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「デジタルカメラ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「デジタルビデオカメラ」である。
一般に,「デジタルカメラ」といえば,厳密には静止画を撮影する「デジタルスチルカメラ」を指すものであり,動画を撮影録画する「デジタルビデオカメラ」(「デジタルカムコーダ」)は含めないが,現在では動画撮影が可能なデジタルスチルカメラや静止画撮影が可能なデジタルビデオカメラが一般的になっており,両者の境界線は徐々になくなりつつあるから,その使用目的,用途及び機能において共通するものであって,両意匠の意匠に係る物品は共通すると認められる。
(2)両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は共に,本体の筐体を構成するものとしての用途及び機能を同じくするものと認められ,共通する。
位置及び範囲については,両意匠部分は共に,扁平な縦長長方形板状の本体の上端部分及び下端寄り部分を除く中央の周面の,背面の左右両端部から正面側に位置し,その本体の背面の左右両端部から正面全体に連続する範囲のものである点で共通し,その大きさについても,共に,手のひらで持つ大きさのカメラ本体の筐体の一部を構成する比較的小さいものであるから,共通する。
なお,位置,大きさ及び範囲については,上記1.両意匠の対比の(2)のとおりであって,両意匠のそれぞれのレンズ機構部を除いた分だけ,若干の違いがある。しかし,それは,共にこの種物品において普通に見られる位置,大きさ及び範囲のレンズ機構部を除くことによる違いにすぎないから,上記認定の共通性を覆す程のものではない。

(3)両意匠部分の形態
A.共通点
共通点(a-1)については,両意匠部分において大きな部分を占める,しかも正面部分の特徴ではあるものの,この種物品において,その湾曲の程度は多少違うとしても,両意匠部分と同様の態様が,既に見受けられるから,正面側を緩やかな凸弧状に膨出するように形成したことのみをもって,両意匠部分の類否判断を決定づけるものとまではいえず,また共通点(a-2)の角部に丸みを付けることについても,この種の物品分野に限らない一般的,常套的な造形手法であると共に,その丸みの程度や他の面の造形との関係によって評価がされるべきものであって,丸みを付けたことのみをもって,両意匠部分の類否判断に大きな影響を及ぼすとはいえないものである。

B.相違点
一方,相違点(b-1)は,本体筐体の両側という相対的に小さく,薄い部分の形態の相違であるが,前述のとおり,両意匠部分の特徴が最も表れている部分の相違であるといえ,本願意匠部分の,正面の緩やかな凸弧状に連続するように両側面にかけて一つの曲面となって背面に回り込むように丸みが形成され,緩やかな膨出と端部の丸みのなだらかで均質な曲線からなる形状としているのに比べて,引用意匠部分の,角部に丸みを付けてはいるものの,正面から屈曲して平坦な側面とし,またその側面から直角に屈曲して平坦な背面に回り込むように形成し,平坦な側面の存在が際立つ形状としたものとは,看者に与える印象が大きく異なるものであって,両意匠部分の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。
そして,相違点(b-2)の引用意匠部分が本願意匠部分の約1.5倍の厚みがあることが相違点(b-1)と相まって,本願意匠部分は,あたかも鏡餅の縁部分の断面,あるいは平らな面の上に載った液体が表面張力によってできる形状の縁部分の断面のような,緩やかな膨出と端部の丸みのなだらかで均質な曲線からなる扁平な形状であり,一方,引用意匠部分は,厚みのあるやや角張った蒲鉾状のような形状であるという,両意匠部分が別異の印象を更に強くしており,類否判断に大きな影響を及ぼしていると認められる。
なお,相違点(b-3)の線模様の有無については,引用意匠部分の線模様もさほど目立つとまではいえないこと,また引用意匠部分の下向き弧状の線模様(区画線)が表された正面上方寄りの部分は,本願意匠部分においては,意匠登録を受ける部分ではない大きなレンズ機構部がある部分であって,直ちには比較すべきでないともいえることから,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能が共通し,位置,大きさ及び範囲も概ね共通するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響がほとんどないのに対して,相違点のそれは,類否判断に支配的な影響を及ぼしており,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕して類否判断を決定づけているから,意匠全体として,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
したがって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審においてさらに審理した結果,本願について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-12-28 
出願番号 意願2013-26993(D2013-26993) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子神谷 由紀鶴田 愛 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 本多 誠一
橘 崇生
登録日 2016-02-12 
登録番号 意匠登録第1545427号(D1545427) 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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