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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 B3
管理番号 1311889 
審判番号 不服2015-13234
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-10 
確定日 2016-02-01 
意匠に係る物品 かつら用ベース 
事件の表示 意願2014- 14748「かつら用ベース」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)7月4日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「かつら用ベース」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書添付の図面に記載したとおりとしたものであって,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)。

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2014-14747号,意匠登録第1520307号。以下,単に「本意匠」という。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と,本願の本意匠の表示の欄に記載された意匠の意匠登録を受けようとする部分とは,下記の点で共通しています。
(1)六角形の組み合わせからなるハニカム構造の素地とした点。
他方,両意匠は下記の点で相違しています。
(ア)本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は横長の略逆等脚台形状であるのに対し,本願の本意匠の表示の欄に記載された意匠の意匠登録を受けようとする部分は扇形から該扇形の中心を頂点とする二等辺三角形を切り取った形状である点。
上記相違点(ア)は,本願出願前に一般的に見られた態様のものではなく,需要者の注意を強くひくものであることから,上記共通点(1)の印象を凌駕し,両意匠は意匠全体として美感を異にするものですので,本願意匠は本意匠に類似するということはできません。」

第3 手続の経緯
上記原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠が本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものである旨主張したが,同主張を採用できないとして拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成27年(2015年)7月10日に審判を請求し,原査定を取り消し,本願意匠を登録すべきものであるとの審決を求めるとともに,同日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が,第10条第1項の規定により本意匠(意願2014-14747号,意匠登録第1520307号)を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるか否かについて検討する。

1 本意匠
本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,平成26年(2014年)7月4日に意匠登録出願されたものであり,平成27年(2015)2月27日に意匠権の設定の登録がなされ(意匠登録第1520307号),同年3月30日に発行された意匠公報に掲載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」という。)(別紙第2参照)。

2 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「かつら用ベース」であり,本意匠の意匠に係る物品も「かつら用ベース」であるから,本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。
(2)本願部分と本意匠部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分は,全体が目の細かな網状シートからなる,平面視左右斜め上方,左右斜め下方の4方向より中心にむかって,縦長台形状の切欠部を有する太めの略十字状のかつら用ベースの,その左右斜め上方の切欠部の間に挟まれた上辺部であって,両上方切欠部下端を直線状に結んだ下辺より上方の上端縁に至るまでの範囲のかつら用ベースの上片部分であり,本意匠部分においても,全体が目の細かな網状シートからなる,平面視左右斜め上方,左右斜め下方の4方向より中心にむかって,縦長台形状の切欠部を有する太めの略十字状のかつら用ベースの,その左右斜め上方の切欠部の間に挟まれた上辺部であって,両上方切欠部下端を直線状に結んだ下辺より上方の上端縁に至るまでの範囲のかつら用ベースの上片部分であるから,本願部分と本意匠部分(以下,両意匠部分という。)の意匠登録を受けようとする部分の位置,大きさ及び範囲は,一致する。
(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 共通点
両意匠部分には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
下辺が直線状で左右辺が逆八の字状に末広がりの目の細かな網状シート状のものである点。
また,両意匠部分の具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)左右の逆八の字状に末広がりとなっている傾斜辺は水平方向に対し約33度の傾斜辺からなっているものである点。
(C)網目形状 について
網目形状は細かく六角形状が隙間なく連なる略ハニカム状となっている点。
イ 差異点
一方,両意匠部分には,具体的構成態様として,以下の差異点が認められる。
(a)上辺及び全体の形状について,
本願部分は,平面視,横長の略逆等脚台形状で上辺部が直線状であるのに対して,本意匠部分は,底辺直線状の略扇形状で上辺部が円弧状となっている点。
(b)左右辺及び先端部ついて
本願部分は,下辺:左右辺比率が約5:4であり左右辺部が長めで全体の横幅に対し,その先端部は鋭い角状で突出したものであるのに対し,本意匠部分は,約5:2と左右辺部が短めで先端部は突出せず,鈍い角状で全体の横幅に収まるものである点。

3 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
前記認定のとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。
(2)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲の評価
前記認定のとおり,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。
(3)形態の共通点の評価
両意匠部分の共通点(A)基本的構成態様について,下辺が直線状で左右辺が逆八の字状に末広がりの目の細かな網状シート状のものである点は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の基本的構成態様の共通点であって,この点のみをもって両意匠部分の類否判断を決するということはできない。
また,共通点(C)網目形状が細かく六角形状が隙間なく連なる略ハニカム状である点は,この種物品分野に限らず,網目の態様として本願の出願前にごく普通に見受けられることから,特に,看者の注意を惹くものとはいえない。
一方,共通点(B)左右の逆八の字状に末広がりとなっている傾斜辺が水平方向に対し約33度の傾斜辺からなっているものである点については,部分的な態様ではあるが,具体的な傾斜辺の角度についての共通点であって,僅かながら両意匠部分の類否判断に影響を与えるものである。
したがって,共通点(B)については,僅かながら両意匠部分の類否判断に影響を与えるものであるが,両部分を全体として観察する場合には,結局類否判断を決定づける程の共通性があるものとはいえず,共通点(A)及び(C)は,いずれも両意匠部分の類否判断に及ぼす影響が小さいものであって,両意匠部分の形態の共通点を総合しても,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえない。
(4)形態の差異点の評価
これに対して,両意匠部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a)で指摘した,上辺及び全体の形状についての差異,すなわち,本願部分が,平面視,横長の略逆等脚台形状で上辺部が直線状であるのに対して,本意匠部分は,底辺直線状の略扇形状で上辺部が円弧状となっている点は,両意匠部分の外観全体に渡る差異であって,その差異は明らかであって,上辺が直線状か円弧状かの相違は看者に与える視覚的印象も大きく異なるものであり,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。
次に,差異点(b)は,本願部分は,下辺:左(右)辺比率が約5:4であり左右辺部が長めで,全体の横幅に対し,その左右先端部は鋭い角状で突出したものであるのに対し,本意匠部分は,約5:2と左右辺部が短めで,左右先端部は突出せず,鈍い角状で全体の横幅に収まるものである点であって,差異点(a)で記載した,本願部分が略逆等脚台形状で横長のものであるとの印象を,全体の横幅に対し,その左右先端部が鋭い角状で突出したものである点が補強しており,両意匠部分の類否判断に与える影響は大きいということができる。
そうすると,差異点(a)は,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響が大きく,差異点(b)も両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きく,これらの差異点を総合すると,両意匠部分を別異のものと十分に印象付けるものであるから,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。
(5)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は一致するが,両意匠部分の形態においては,共通点の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響が総じて大きいとはいえないのに対して,差異点の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいので,本願意匠は本意匠に類似するということはできない。

4 本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するか否かについて
上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。

したがって,本願意匠は,第10条第1項の規定により本意匠(意願2014-14747号,意匠登録第1520307号)を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができない。

そして,前記第3のとおり,本願は,審判請求日と同日に願書の本意匠の表示を削除する補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。
また,本願意匠は本意匠に類似しないから,前記手続補正によって新たに意匠法第9条第2項の規定に該当するものともいえず,同条同項の規定により,本願を拒絶することもできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものとした,原審の拒絶の理由によっては,拒絶することができない。

また,当審において,さらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-01-18 
出願番号 意願2014-14748(D2014-14748) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (B3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須藤 竜也 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 清野 貴雄
渡邉 久美
登録日 2016-03-04 
登録番号 意匠登録第1547202号(D1547202) 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 並川 鉄也 
代理人 小谷 悦司 

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