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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 C4
管理番号 1311890 
審判番号 不服2015-15829
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-27 
確定日 2016-02-02 
意匠に係る物品 ハンドドライヤー 
事件の表示 意願2014-1399「ハンドドライヤー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成26年(2014年)1月27日付けの意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という)は,意匠に係る物品を「ハンドドライヤー」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたもので,引用された意匠は,平成25年(2013年)10月11日に出願され,その後平成26年9月12日に設定登録された,意願2013-23750号(意匠登録第1508883号)の意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)であって,意匠に係る物品を「ハンドドライヤー」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである。(別紙第2参照)

3.当審の判断
(1)両意匠の対比
両意匠を対比すると,意匠に係る物品は,共に「ハンドドライヤー」であって,水受け部を備えた壁掛けタイプのもので,一致している。
(A)両意匠の形態における共通点
両意匠は,(ア)全体形状を,縦横奥行きの寸法比率をおおむね3:1.5:1の略台形柱状としている点,(イ)その底面形状を,上底側(正面側)の角を大きな角丸とした,正面側に向かってややすぼまり状の略台形状としている点,(ウ)上側2分の1弱を本体部とし,本体部と同程度の高さで,正面側から奥行きの約3分の2程度を大きく削り取った形状で,その余の下端部を水受け部とした点,で主に共通している。
そして,(エ)削り取った部分を更に,奥側にはほぼ一杯までえぐり取り,かつ,水受け部上面を少しえぐり取った態様とし,大きな空間を提供して,それを左右に薄い柱部を備えた手乾燥室とした点,(オ)本体上面は,極緩やかに前下がりの傾斜面とした点,(カ)水受け部の下側に設けた下方底板部は,正面視で略倒立台形状,かつ,側面視において,略倒立直角台形状とした点,で共通している。

(B)両意匠の形態における相違点
それに対して,具体的構成態様において,
(a)物品全体の縦横奥行きの寸法比率につき,正確には,本願意匠では約3:1.5:1であるのに対して,引用意匠では約3:1.75:1である点
(b)本体部上面の態様につき,本願意匠は,左右側面から正面にかけて,極細い水平面による段差を設けた上で,左右側面及び正面から円弧面で膨出させてその余の中程部分を平面としているのに対して,引用意匠は,極々緩やかな膨出円弧面で,ほぼ平坦面を構成している点
(c)側面視の態様につき,本願意匠は,本体部下縁,並びに水受け部上縁及び下縁に,(b)で述べた,本体部上面に設けた極細い段差と同様の,極細い段差を設けているのに対して,引用意匠は,本体部と柱部の間に細い溝を設けている点
(d)下方底板部の態様につき,本願意匠は,(c)で述べたとおり,下方底板部は本体部上面に設けた極細い段差と同程度僅かに奥まった所に形成したもので,その厚さは,水受け部の厚みの4分の1以下であるのに対して,引用意匠は,水受け部からそのまま円弧状に回り込んで形成したもので,その厚さは,水受け部よりやや薄い程度の厚みである点
(e)柱部,水受け部及び下方底板部の態様につき,本願意匠は,手前から約5分の2の箇所に水受け部と下方底板部にわたって垂直方向に1本の線があり,「斜視図」から明らかなように,その垂直線は,水受け内部までつながっており,「内部機構を省略したA-A’端面図」より分かるとおり,当該手前部分は,後方部分(水受け部及び下方底板部の後方部分,並びに柱部)とは別部材としているのに対して,引用意匠は,柱部から水受け部までを一体としている点
(f)正面視における態様につき,本願意匠は,本体部中央やや下の所に小さい丸部を縦に二つ配列し,かつ,水受け部の下端に接して中央に略正方形部を設けているのに対して,引用意匠は,その様な丸部や略正方形部を設けていない点
(g)手乾燥室の天井面の態様につき,本願意匠は,奥側に向かって下がる微妙な傾斜面としており,正面視で手乾燥室の上側に天井面の奥側の一部や横長帯状部等が見えるのに対して,引用意匠は,正面視で,本願意匠の様な態様が見えない点
において主な相違点が認められる。

(2)類否判断
両意匠を比較すると,共通点は,この種の水受け部を備えた壁掛けタイプのハンドドライヤーにあっては,本願出願前より広く見られる基本的な構成における共通点であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決定するものとすることはできない。
これに対して,具体的態様に係る相違点(a)については,横幅のみの僅かな寸法差であるから,両意匠を2つ横並びにして,対比観察して初めて分かるほどの小さな相違といえ,両意匠の類否判断に与える影響は,極僅かと認められる。
相違点(d)については,最下端の部分の,回り込んで下にすぼまってゆく箇所の相違であるから,ハンドドライヤーを使う人からは観察しづらい部分の相違といえるから,両意匠の類否判断に与える影響は,限定的といわざるを得ない。
しかし,相違点(b)については,ハンドドライヤーの使用者の最も目に付きやすい部分であって,大きな面積を占める部分であるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きいといえる。
そして,相違点(c)については,本願意匠は,本体部上面に設けた極細い段差と合わせて,本体部下縁,水受け部上縁及び水受け部下縁に設けた極細い段差によって,僅かに奥まった,本体部上面膨出部,柱部及び下方底板部に対して,本体部と水受け部に帯を巻いたように見える態様であって,これに対して,引用意匠は,本体部と柱部の間に設けた細い溝と,柱部が曲線を描いて水受け部の上縁とつながる態様によって,側面視において,縦長長方形の本体に,略L字状の部位(柱部,水受け部及び下方底板部)が,ぶら下がっているように見える態様であるから,両意匠の印象は大きく異なり,大きな面積を占める側面形状の相違点であるから,類否判断に与える影響は大きいといえる。
以上のとおりであるから,その他の相違点を挙げるまでもなく,上記相違点(b)及び同(c)がもたらす印象で,共通点が醸し出す印象をしのいでおり,見る者に両意匠が別異であると認識させるものであり,両意匠の形態は類似しないといえる。
したがって,両意匠の意匠に係る物品は一致しているが,形態は類似しないから,両意匠は,類似しているとはいえない。

4.結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第9条第1項に掲げる意匠に該当しないものであるから,原査定における拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-01-19 
出願番号 意願2014-1399(D2014-1399) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 橘 崇生
刈間 宏信
登録日 2016-03-18 
登録番号 意匠登録第1547928号(D1547928) 
代理人 鎌田 健司 
代理人 藤井 兼太郎 
代理人 前田 浩夫 

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