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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7 |
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管理番号 | 1311903 |
審判番号 | 不服2015-16170 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-02 |
確定日 | 2016-03-01 |
意匠に係る物品 | 棚付きテーブル |
事件の表示 | 意願2014- 18255「棚付きテーブル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)8月21日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば意匠に係る物品を「棚付きテーブル」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたもので,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。背面図は正面図と対称にあらわれるため省略する。また,一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由として引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁が平成25年(2013年)8月5日に発行した意匠公報に記載された,意匠登録第1476063号の意匠(意匠に係る物品「整理棚付き机」。以下「引用意匠」という。)であり(別紙第2参照),本願部分と対比される対象は,引用意匠における本願部分に相当する,整理棚,取付け金具及び脚部の上部部分(以下「引用部分」という。)である。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「棚付きテーブル」であって,テーブルの両側に棚部が設けられたものであり,一方,引用意匠の意匠に係る物品は「整理棚付き机」であって,机の片側に棚部が設けられたものである。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分は,テーブルの片側に設けられた棚部,テーブル天板の左端部(以下,単に「天板左端部」という。),左側脚部の上部(以下,単に「脚上部」という。),及び棚の下部に配された取付け金具から成るものであり,棚部は書籍などを収納する用途を有し,天板左端部,脚上部及び取付け金具は棚部を支える機能を有している。 一方,引用部分は,棚部,脚上部及び取付け金具から成り,棚部は書籍などを収納する用途を有し,脚上部及び取付け金具は棚部を支える機能を有している。 3 本願部分と引用部分の形態 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 両部分の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)外形が略横長直方体状で箱形の棚部の下部に同形の取付け金具が複数個設けられ,その取付け金具が脚上部の左側面に当接され,当該脚上部の上下方向の位置が棚部の下面よりも下方にある点。 (B)棚部は,平面視の縦幅(奥行き幅)が横幅の3倍以上であって,テーブル又は机の側が開放されており,その開放された空間の中央に仕切り板が設けられ,前方の板(正面板),仕切り板及び後方の板(背面板)の上に上板が載った構成とされている点。 (C)取付け金具は,正面から見て略直角三角形状であって,その右端面が脚上部の上端寄りに接合され,その上端面が棚部下面の中央から右端寄りにかけて接合されている点。 (D)脚部は,正面視縦長長方形状であって,左側面から見ると,略ロ字状テーブル脚の上部であって,略扁平倒コ字状に表されている点。 (2)差異点 一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)天板左端部の有無及びそれと棚部との接続の態様について 本願部分の棚部は天板左端部の上に載っており,正面から見て,本願部分の棚部と脚上部の間には天板左端部が貫入され,左側面から見ても,その天板左端部が棚部と脚上部の間に挟まっているが,引用部分には天板左端部は含まれていない。 (b)棚部と脚上部の構成について 正面から見て,本願部分の脚上部は棚部の直下に位置しており,脚上部の右端は棚部の右端と同一線上に表されている。これに対して,引用部分の脚上部は棚部の直下ではなく,右斜め下方に位置しており,脚上部の左端が棚部の右端とほぼ同一線上になるように表されている。 (c)取付け金具の個数及び配置構成について 本願部分の取付け金具は2個であり,左側面から見て,棚部を横方向に約3:4:3に区切る位置に設けられているのに対して,引用部分の取付け金具は4個であり,左側面から見て,棚部を横方向に約1:4:3:4:1に区切る位置に設けられている。 (d)取付け金具の形状について 本願部分の取付け金具は薄板状であって,正面視横幅は棚部横幅の約3/8であり,取付け金具の上面には正面視薄板状で底面視略細幅釣鐘状の台座があり,その台座の右端には,正面視「し」字状の薄い支持板がある。これに対して,引用部分の取付け金具は,略直角三角柱状であって,その左端部が垂直状に形成されており,前後の厚みは棚部の前後幅(奥行き幅)の約1/19である。 (e)棚部の形状について 本願部分の棚部は,正面から見て,縦幅:横幅:奥行き幅の比が約1:1:3であり,右側から見て,底板が両側板の間に挟まり,天板左端部の上に載っているので,底板の小口が天板の上に表されている。これに対して,引用部分の棚部は,正面から見て,縦幅:横幅:奥行き幅の比が約1.6:2:7であり,右側から見て,底板が両側板の下端に接合され,底板の上面が(意匠登録を受けようとする部分ではない)天板の上面と面一致状に連続しているので,底板の小口は表れていない。 また,本願部分の棚部の仕切り板は,両側板よりも左右幅がやや小さく,その左端部が両側板左端部の位置よりも左方にあるが,引用部分の棚部の仕切り板は,両側板の左右幅と同じであり,その左端部は両側板左端部の位置と同じに表されている。 (f)脚上部の形状について 本願部分の脚上部は,左側面視略扁平倒コ字状部が一体に成形されており,その略扁平倒コ字状部の横長部分の断面は正方形状であって,その縦幅は棚部の縦幅の約1/10である。これに対して,引用部分の脚上部は,左側面からみて,両側の支柱と,その間に配された横框から成るものであり,その横框の断面は左端上下が膨らんだ略L字状であって,その膨らんだ部分が左側面視筋状に表されており,横框の縦幅は棚部の縦幅の約1/4である。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)は,共に棚部が設けられたテーブル又は机であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両部分共に書籍などを収納する用途を有する棚部と,それを支える機能を有する脚上部及び取付け金具を備えているので,両部分の用途及び機能は共通する。 しかし,本願部分には天板左端部が含まれているのに対して,引用部分にはそれが含まれていないので,両部分の位置,大きさ及び範囲には差異が認められる。 3 出隅部材の物品分野における意匠の類否判断 テーブル又は机を看者が観察する場合には,天板と脚部の構成や,各部の態様について,底面視を除く全方向から看者は注意を払うこととなり,特に棚部付きの場合は,その棚部がどのように支えられているのかにつき看者は特段注目するというべきであるから,「棚付きテーブル」の物品分野の意匠の類否判断においては,棚部の支持態様,天板と脚部の構成及び各部の態様について評価し,これらを総合して意匠全体として形態を評価する。 4 形態の共通点の評価 両部分の共通点(A)ないし(D)のうち,外形が略横長直方体状の棚部の下方に脚上部を配して,その脚部を正面視縦長長方形状とした意匠は,請求人が審判請求時に提出した参考資料3に記載された整理棚付きテーブルの意匠(平成22年(2010年)8月28日発行の雑誌「月刊近代家具」に掲載の記事,「NeoCon2010 Report」(米国イリノイ州・シカゴで2010年6月14日から16日にかけて開催された,世界最大規模のオフィス,インテリア関係のフェア,NeoCon World’s Trade Fair 2010 のレポート),第53頁に所載の整理棚付きテーブルの意匠。別紙第3参照)により,本願の出願前に公然知られている。 また,棚部の下部に取付け金具を取り付けること自体は,棚部を有する物品分野の意匠においてはありふれた態様であり,棚部の縦横比についてもテーブルの幅に応じて適宜変更されるものであること,及び棚部の内部に仕切り板を設けることもありふれていることを踏まえると,これらの構成態様に看者が特に注目するとはいい難い。 そうすると,共通点(A)ないし(D)が両部分の類否判断に与える影響は小さいということができる。 5 形態の差異点の評価 一方,両部分の差異点は,以下に述べるとおり,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を与えるということができる。 まず,天板左端部の有無及びそれと棚部との接続の態様についての差異点(a)と棚部と脚上部の構成についての差異点(b)は,両部分を比較した際に看者が一見して気が付く構成上の差異であるというべきであり,看者は,棚部がどのように支えられているのかにつき特に注目することから,差異点(a)及び(b)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 次に,取付け金具の個数,配置構成及び形状に関する差異点(c)及び(d)についても,棚部を支える取付け金具についての差異であるから看者は注意を払うというべきであって,全方向から棚付きテーブルを観察する看者は取付け金具の形状についても当然観察することとなり,略薄板状である本願部分の取付け金具は,略直角三角柱状である引用部分の取付け金具とは大きさの違いもあいまって異なる印象を呈するものである。また,本願部分の取付け金具は2個であって,棚部の前後縁寄りには配されていないから,引用意匠に比べて目立たず(そのような構造を可能にしているのは,棚部が天板左端部の上に載っているからである。),この点も看者に異なる印象を与えるというべきである。したがって,差異点(c)及び(d)が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 そして,棚部の形状についての差異点(e)のうち,本願部分の棚部底板の小口が天板の上に表されている点は,そのような小口が表れていない引用部分と対比した際に看者が容易に看取できるものであり,天板左端部の有無の差異点(b)とあいまって,両部分の視覚的印象を異にしているというべきであるから,小口の有無の差異が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 加えて,脚上部の形状についての差異点(f)も,左側面から見た横長部分又は横框の形状の差異は明らかであって,棚部の縦幅と比較した幅の差も顕著であるから,差異点(f)が両部分の類否判断に与える影響は小さいとはいえない。 そうすると,上記(a)ないし(f)の差異点は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両部分の形態の差異点を総合すると,両部分を別異のものと印象付けることとなる。 6 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能も共通するものの,両部分の位置,大きさ及び範囲には差異が認められ,また,両部分の形態においても,共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点を総合すると,両部分の類否判断に及ぼす影響が大きく,両部分を別異のものと印象付けるので,差異点が共通点を凌駕して両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせることから,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-02-18 |
出願番号 | 意願2014-18255(D2014-18255) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 正田 毅 |
登録日 | 2016-03-11 |
登録番号 | 意匠登録第1547451号(D1547451) |
代理人 | 永芳 太郎 |