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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H6
管理番号 1311906 
審判番号 不服2015-16167
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-02 
確定日 2016-03-08 
意匠に係る物品 非接触型データキャリア 
事件の表示 意願2014- 5731「非接触型データキャリア」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,本意匠を意願2014-005729とする関連意匠の意匠登録出願として,平成26年(2014年)3月18日に出願された部分意匠として意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「非接触型データキャリア」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものであって,「『正面図』,『背面図』,『左側面図』,『右側面図』,『平面図』,および『底面図』において,黄色の着色部分以外の部分(大径コイルと小径コイルの略L字状の配線が表れる背面の右側面側の部分,右側面上方寄りの背面と連続する部分,平面右側面寄りの背面と連続する部分)が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。『第一層の透光性を有する部分を示す参考図』乃至『第五層の透光性を有する部分を示す参考図』において,実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であり,一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

本願意匠は,当該物品の背面側左上隅部分の形状及び色彩に関する創作物であり,その基本的構成態様は,5層に積層された透光性を有する基板のうちの第三層ないし第五層の各層にアンテナ回路の一部を角部が90度円弧の「L」字状に形成したものであって,第三層と第五層の回路については,基板外縁部の背面視同位置に,第四層の回路については,第五層の回路の内側にそれぞれ配置して成るものと認められる。
しかしながら,アンテナ回路の一部を角部が90度円弧の「L」字状に形成することは,下記文献1の図12にも記載されているように一般的な手法であって,その形状も月並みなものであり,また,基板を複数枚積層して回路を構成することは周知の技術であって,緑色のソルダーレジストを使用した透光性を有する基板もありふれたものであり,内層基板に形成された回路の明度が表層のものより低い点については,内層基板の回路表面に一般的に施される黒化処理等による必然的な結果であると認められる。また,基板の角部を登録を受けようとする部分から直角三角形状に除外している点については,意匠の構成要素として特筆すべきものはない。よって,当業者であれば,本願意匠の構成態様は容易に想到し得るものというほかない。

文献1(別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2008-211572


第3 請求人の主張の要旨

請求人は,要旨以下のとおり理由を述べ,本願の意匠は登録すべきものである旨主張している。

本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は,大径コイルを配置した基板を背面最上層に設けるとともに,小径コイルを配置した基板を内層に設けた多層基板の一部であるのに対して,引用意匠の対応する部分は,5ターンのコイルが表面に配置された基板の一部である。
すなわち,背面最上層の基板表面に表れる径の小さなコイルが,本願意匠においては背面最上層の基板の下にある内層の基板に配設されるものであるのに対して,引用意匠においては表層の基板に配設されるものであり,本願意匠と引用意匠とでは,それを構成する部分が異なる。本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠の対応する部分が異なることから,全体に対する位置も当然異なり,本願意匠の当該部分は,引用意匠から直ちに創作することができるものではない。
ここで,部分意匠の創作非容易性については,「『意匠登録を受けようとする部分』を当該物品全体の形態の中において,その位置,その大きさ,その範囲とすることが,当業者にとってありふれた手法であるか」(意匠審査基準 71.4.3 創作非容易性)が問題になることから,本願意匠のように,径の大きなコイルについては背面最上層の基板に配設しつつも,径の小さなコイルについては,背面最上層の基板ではなく,内層の基板に配設することが当業者にとってありふれた手法であるか否かについて検討する。
引用意匠,および審判請求書に別添して提出した資料5に示す登録意匠などにあるように,本物品分野においては,渦巻き状のアンテナコイルを基板表面に設けることが通常であり,径の大きなコイルと小さなコイルのうち,小さなコイルだけを内層の基板に配設することは斬新な態様であり,ありふれた手法によって実現されるものではない。
また,平成27年1月27日付け拒絶理由通知書(以下,単に拒絶理由通知書という)においては,「基板を複数枚積層して回路を構成することは周知の技術」と指摘されているのみであり,本願意匠の上記構成,すなわち,径の大きなコイルについては背面最上層の基板に配設しつつも径の小さなコイルについては内層の基板に配設することが,ありふれた手法であるとする具体的な事実が示されていない。
意匠審査基準「23.7 当業者にとってありふれた手法であることの提示」には,「その手法が当業者にとってありふれたものであることが,審査官にとって顕著な事実と認められる場合」には具体的な事実を提示することを要しないとあるものの,ここでいう「審査官にとって顕著な事実と認められる場合」は,「例えば,玩具業界において,本物の自動車をそっくりそのまま自動車おもちゃに転用するという手法等」といったように創作性がほとんど認められない場合であり,本願意匠の上記構成の場合にまで,具体的な事実を提示することを要しないというものではないものと思料する。
提示する具体的な事実がないことからも,引用意匠に基づいて本願意匠を創作することが,ありふれた手法によるものではないものと思料する。


第4 当審の判断

1 意匠の認定

(1)本願意匠
1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「非接触型データキャリア」である。

2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,5枚の同一外形状の基板を重ね合わせて成る,ICチップを正面側に備えた正方形状の非接触型データキャリアの,背面視左上側の正方形で囲んだ部分から,左上端角部の直角三角形部分を除いた切り欠き略正方形状部分,かつ板体の背面側3/5の厚み(正面側を第一層基板とした場合の,第三層基板から第五層基板)の部分である。

3)本願部分の形態
ア 基本的構成態様
全体が,背面視切り欠き略正方形の薄い板状であり,背面側に複数本のコイルの一部が略逆L字状に表れているものである。

イ 本願部分の具体的態様
(ア)コイル部分を除いた本願部分全体が,透光性を有する緑色であり,
(イ)背面表面(第五層基板背面)の左上角部付近にコイル(以下,このコイル及びこのコイルと同じ径のコイルを「大径コイル」という。)の一部が隅丸逆L字状に灰色で表れ,板体内部(第四層基板背面)の,第五層基板の大径コイルの内側にあたる位置に,大径コイルより一回り小さいコイル(以下,このコイル及びこのコイルと同じ径のコイルを「小径コイル」という。)の一部が隅丸逆L字状に形成され,第五層基板に透けて黒色に表れている
ものである。
なお,願書の記載及び願書に添付された図面によれば,第四層基板には小径コイルが設けられ,第三層基板には大径コイルが設けられているが,本願意匠を構成する各層は,通常は分離不可能であり,各層が重合固定された本願意匠を看者が観察したときには,第三層基板の大径コイルは第五層基板の大径コイルに隠れてほとんど視認することができないものである。

(2)文献1の図12に記載された意匠(以下,「引用意匠」という。)
引用意匠の認定にあたっては,本願意匠の図面の向きとあわせて記載する(公開特許公報の図12に表された面を「正面」として記載する)。

なお,文献1の図12には(a)及び(b)の2つの図面が表されており,それぞれデータキャリアの位置や形状が異なる別意匠の図面ではあるが,原査定における文献1の引用趣旨は,アンテナ回路の角部を90度円弧の「L」字状に形成することが一般的であることを示すものであり,その態様は,(a)及び(b)の図面に表されたいずれの意匠においても共通しているから,当審においては(a)の図面に表された意匠を引用意匠として認定する。

引用意匠の意匠に係る物品は,ICチップを搭載した非接触型データキャリアを正面に備えた「ブースターアンテナ基板」であって,引用意匠の本願部分に相当する部分(以下,「引用部分」という。)は,正方形状のブースターアンテナ基板の,正面視右上側の正方形で囲んだ部分から,右上端角部の直角三角形部分を除いた切り欠き略正方形状部分である。
そして,引用部分の基本的構成態様は,全体が,正面視切り欠き略正方形の薄い板状であり,正面側から複数本のコイルの一部が略逆L字状に見えるものとし,具体的態様を,正面表面に,各々僅かに大きさが異なる7本の隅丸逆L字状コイルを連続して配置しているものである。なお,引用部分の背面視形態,側面視形態,引用部分全体の色彩,及び引用部分が透光性を有するか否かについては不明である。

2 創作非容易性の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

原査定の拒絶の理由は,(1)アンテナ回路の一部を角部が90度円弧の「L」字状に形成すること,及び(2)基板を複数枚積層して回路を構成すること,(3)緑色のソルダーレジストを使用した透光性を有する基板,はいずれもありふれたものであるから,当業者であれば,本願意匠の構成態様は容易に想到し得ると判断している。

たしかに,上記(1)ないし(3)の形態や手法は,非接触型データキャリアが属する物品分野においてありふれたものであるが,本願部分は,前記1の(1)の3)のとおり,背面表面(第五層基板背面)の左上角部付近に大径コイルの一部が隅丸逆L字状に表れ,板体内部(第四層基板背面)の,第五層基板の大径コイルの内側にあたる位置に,小径コイルの一部が隅丸逆L字状に形成され,第五層基板に透けて表れているものであり,換言すれば,大小2種類のコイルが2層構造で配置されているように見えるものである。
したがって,本願部分は当業者が容易に創作することができたものであると判断するためには,上記(1)ないし(3)に加えて,(4)コイルを基板表面及び基板内部に設けて階層的に配置すること,(5)階層的に配置した各コイルの大きさを異ならせること,及び(6)コイルの形態を基板に透けて見えるようにすること,についても当業者が容易に着想することができた手法であることを示さなければならない。
そこで,当審において,上記(4)ないし(6)の手法が,当業者が容易に着想することができたものであるか否かについて検討したところ,(4)の,コイルを基板表面及び基板内部に設けて階層的に配置することは,例えば,平成19年4月19日に公開された公開特許公報記載の特開2007-102348の図4に表された非接触型データキャリアの意匠(参考意匠1:別紙第3)に見られるように,非接触型データキャリアを小型化するために用いられる手法としてありふれたものであり,また,(6)の,コイルの形態を基板に透けて見えるようにすることは,非接触型データキャリアの基板に透光性を有する素材を用いることは一般的であって,本願意匠もその一般的な素材を用いた結果として,基板内部の小径コイルが透けて見えているにすぎないものであるから,創作者が特段の創意を施したものであるとは認められない。
しかし,(5)の,階層的に配置した各コイルの大きさを異ならせることについては,本願出願前には見られない手法であり,その具体的態様は,本願部分固有の視覚的特徴であるということができる。

よって,本願部分は,引用意匠に記載されている手法を用いて,当業者が容易に創作することができたものであるということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-02-24 
出願番号 意願2014-5731(D2014-5731) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H6)
最終処分 成立 
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 本多 誠一
久保田 大輔
登録日 2016-03-18 
登録番号 意匠登録第1548257号(D1548257) 
代理人 三浦 勇介 
代理人 西川 孝 
代理人 稲本 義雄 
代理人 荒谷 聡 
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