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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1313086 
審判番号 不服2014-18651
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-18 
確定日 2015-03-31 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー 
事件の表示 意願2013-11763「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を1年1月秘密にすることを請求した,平成25年(2013年)5月29日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「エアーコンディショナー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたもので,拒絶の理由に引用された意匠は,特許庁から発行された意匠公報に記載の,意匠登録第1397317号(意匠に係る物品,エアーコンディショナー)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と引用意匠を併せて「両意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.当審の判断
(1)両意匠の意匠に係る物品について
両意匠を対比すると,意匠に係る物品は,共に「エアーコンディショナー」であって,一致する。

(2)両意匠の形態について
両意匠の形態を対比すると,その形態には,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
(2-1)両意匠の共通点
(a)隅切り正方形状の扁平(へんぺい)な略直方体状の本体の下面に,本体より一回り大きい正方形板状の前面パネルを設けたもので,
(b)正面視において,前面パネルは,正面中央の正方形状の四周に僅かな余白部を残してほぼ全面に多数の平行細スリットをくまなく並べてグリル部を形成したグリルパネルと,それを取り巻く外周パネル部とから成り,外周パネル部は,グリルパネルの四辺に接して,吹き出し口を配し,四隅にコーナーパネルを設けたものとしたものであって,
具体的構成態様においては,
(c)吹き出し口の内側には,グリルパネルの辺に接した四周辺額部を設け,その外側に,ルーバーを設けた点,
(d)前面パネル全幅とグリル部幅の比率について,約2:1とし,
(e)吹き出し口の幅を,グリル部の幅と同程度としたことによって,
(f)吹き出し口の幅は,前面パネル幅の約2分の1,コーナーパネル一辺の長さが,前面パネル幅の約4分の1と成り,グリル部の面積は,前面パネルの約4分の1,コーナーパネル一枚分の面積は,前面パネルの約16分の1と成っており,
(g)外周パネル部における縁を,二段の階段状とし,
(h)グリル部においては,スリットを3等分するように,スリットと直交する極細桟を設けた点,
において主に共通する。

(2-2)両意匠の相違点
それに対して,具体的構成態様において,
(ア)グリルパネルにつき,本願意匠は,外周パネル部に対して,段差を設けて前方に突出させているのに対して,引用意匠は,段差が無く,前面パネル全面を同一面状としている点,
(イ)グリルパネルの余白部の幅につき,本願意匠は,極細い幅としているのに対して,引用意匠は,ルーバーと同程度の広い幅にしている点,
(ウ)その結果,引用意匠は,グリルパネルが余白部の幅の分だけ外側に広がり,その角がコーナーパネルに食い込む状態となっているのに対して,本願意匠は,グリルパネルの角とコーナーパネルの角が当たるようになっている点,と同時に,
(エ)コーナーパネルの形状につき,本願意匠は正方形であるのに対して,引用意匠は,グリルパネルが食い込んだ結果,略「L」字形状となっている点,
(オ)センサーについて,本願意匠は,正面視において右下のコーナーパネルの左上隅に円錐台状のものが設けられているが,引用意匠には,設けられていない点,
で主な相違が認められる。

(3)類否判断
(3-1)共通点の評価
共通点(a)及び(b),共通点(d)ないし(f)並びに共通点(h)は,いずれも,4方向吹き出し式天井埋め込みエアーコンディショナーにおいて,本願の出願前から見られる極普通の態様であるから,これらの各共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいと言える。
共通点(c)は,重要部分の一つである,吹き出し口内に設けた四周辺額部に関することであって,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えると考えられる。
共通点(g)は,前面パネルの中心から外れた外周パネル部の縁部分のことであるから,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えると言える。

(3-2)相違点の評価
この種物品エアーコンディショナーにおいては,吹き出し口と吸い込みグリルパネルの構成が,重要部分の一つと考えられるところ,相違点(ア)は,その吸い込みグリルパネルに係るものであって,前面パネルの中央に存する重要部分における相違であるが,その段差は注視して気付く程の極小さなものであるから,類否判断に与える影響は微弱と認められ,相違点(イ)は,観者において,この点のみを抽出し,対比観察することはないと思われるが,相違点(ア)と相まって,本願意匠においては,突出したグリルパネルの枠が認識されるのに対して,引用意匠は,段差が無いため,グリルパネルは背景となる外周パネル部の中に溶け込み,外周パネル部中央に設けられたグリル部のみが認識される態様になっているから,両意匠の類否判断においては,一定程度の影響を与えると認められるところ,相違点(ウ)及び(エ)によって,本願意匠は,コーナーパネルと吹き出し口が接する形状線と,グリルパネルの形状線が,略一直線状であって,前面パネル上で,井桁状に表れ,コーナーパネルの角に段差を持ったグリルパネルの角が当たるという,別体感を想起させているのに対して,引用意匠は,同一面状のもの同士の一方が他方に食い込んで,融合してゆく感じが認められるため,一体感を醸し出そうとしていると捉えられる形状にしているため,両意匠に対して,別異の印象を与えるものである。
そうすると,相違点(ア)ないし(エ)が相まって生み出される効果を考慮すると,その他の相違点を検討するまでもなく,相違点がもたらす印象は,共通点が醸し出す印象をしのいでおり,観者に両意匠が別異であると認識させるものである。

(3-3)まとめ
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致しているが,その形態については,両意匠の共通点及び相違点の視覚的効果を総合的に判断すると,相違点が共通点を圧し,両意匠は,類似しないものと言える。

4.結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-03-17 
出願番号 意願2013-11763(D2013-11763) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 橘 崇生
清野 貴雄
登録日 2015-04-10 
登録番号 意匠登録第1523855号(D1523855) 
代理人 村上 加奈子 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 松井 重明 

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