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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 L2 |
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管理番号 | 1313100 |
審判番号 | 不服2015-12902 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-06 |
確定日 | 2016-04-11 |
意匠に係る物品 | 側溝用ブロック |
事件の表示 | 意願2014- 17400「側溝用ブロック」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)8月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであり,具体的には,平成27年1月30日付け拒絶理由通知書において以下のとおり示されている。 「この種側溝用ブロックにおいて,全体を略縦長四角筒状の一方の壁面がない断面略コ字状とし,内部の水路の底部を別部材としたものも,全体を略縦長四角筒状とし,内部に長さ方向に貫く水路を形成したものも,例を挙げるまでもなく本願出願前よりありふれた態様として認められます。 また,矩形状の開口部の周辺の左右天板の各々の中央部に細線状の孔を形成したものは,本願意匠の出願前に公然知られています(例えば,意匠2等参照。)。 そうすると,意匠1の意匠に基づき,底部側の壁面を塞いで全体を略縦長四角筒状とし,意匠2のように矩形状の開口部の周辺の左右天板の各々の中央部に細線状の孔を形成したにすぎない本願の意匠は,当業者であれば容易に創作することができたものといわざるを得ません。 なお,内部に設けられた水路の底部の断面形状を弧状とし,左右側面部に水路の外側を輪郭に沿って覆う細溝を形成することは,本願意匠の出願前に普通に知られていることから(意匠登録第1102070号意匠等参照),この点が,本願意匠のみの特徴といえるものではなく,創作容易性の判断に及ぼす影響は微弱に過ぎません。 意匠1(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1345210号の意匠 意匠2(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1254193号の意匠」 さらに,平成27年4月15日付け拒絶査定において以下のとおり示されている。 「提出された意見書において,本願意匠に底部を塞ぐ別部材が無いこと,『全体を略縦長四角筒状として内部に長さ方向に貫く水路を形成した』態様は,側溝用ブロックの分野において,物品の用途・機能上,必然的に構成される骨格的な態様であり,『矩形状の開口部周辺の左右の天板各々の中央部に細線状の孔を形成した態様』においてはその具体的な態様が意匠2と異なることより容易に意匠の創作ができたものとは言えない旨主張されましたが,側溝用ブロックの分野において,全体形状を同一部材からなる略縦長四角筒状とするものも,別部材を組み合わせた略縦長四角筒状とするもの(例えば,意匠登録第819601号の接続施工状態を示した斜面図に表された意匠,意匠登録第1017302号の使用状態を示す参考図に表された意匠,意匠登録第1424167号の使用状態を示す参考正面図に表された意匠)も,断面略コの字状の門型とするものも周知の態様であり,また,本願意匠と意匠2の具体的な態様の差異についても,その点のみを子細に観察すればわかる程度の僅かなものであり,これらの点が創作容易性の判断に及ぼす影響は微弱なものと言わざるを得ません。 そうすると,本願意匠は,先に通知した拒絶理由のとおり,公然知られた意匠に基づいて容易に創作をすることができた意匠といわざるを得ません。」 第3 請求人の主張 これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。 (1)原査定は,本願意匠の創作容易性判断の根拠として,側溝用ブロックの物品分野において,全体を同一部材からなる略縦長四角筒状とするものは周知であると認定したが,特許庁による意匠登録出願の審査では,側溝用ブロックの形態全体の骨格的形態がその出願前に知られているとしても,各部の具体的態様についての創作を総合した結果,創作容易ではないと認められて意匠登録をした事例が多数存在する。したがって,側溝用ブロックの形態の全体を同一部材からなる略縦長四角筒状とするものが周知である点をもって,直ちに,本願意匠は容易に意匠の創作をすることができたということはできない。 (2)原査定は,側溝用ブロックの物品分野において,別部材を組み合わせた略縦長四角筒状とするものは周知であると認定したが,その根拠として拒絶査定に示された参考意匠は,いずれも,本願意匠とは形態全体の骨格的な構成態様に大きな相違があるから,創作の要旨が異なるというべきである。 (3)原査定は,側溝用ブロックの物品分野において,断面略コの字状の門型とするものは周知であると認定したが,本願意匠は,長さ方向に対する端面又は断面が略ロの字状であり,断面略コの字状とする側溝用ブロックと対比しても形態全体が異なる態様であるから,原査定の認定には誤りがある。 (4)原査定は,本願意匠と意匠2の具体的な態様の相違は僅かなものであると判断したが,両意匠は,形態全体の骨格的な態様,上面及び開口部の具体的な態様のいずれについても大きく相違しているから,子細に観察すればわかる程度の僅かな相違とはいえない。 そうすると,本願出願前に,側溝用ブロックの意匠として,形態全体の骨格的形態及び具体的形態を本願意匠のように構成した態様は公然知られていたとはいえないから,本願意匠は,公然知られた意匠に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえない。 第4 当審の判断 本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に創作することができたものであるか否かについて,請求人の主張を踏まえて,以下,検討する。 1.本願意匠の形態 本願意匠の形態は,次のとおりである。 なお,本願意匠に係る側溝用ブロックの施工状態においては,右側面図において,右回りに90度回転した向きに置かれるものと認められるので,本願意匠の認定に際しては,それに合わせて,正面図に表れる面を上面とし,右側面図は右回りに90度回転させ,その他の図についてもこれらの向きに合わせて,その形態を認定することとし,原査定の拒絶理由において例示された意匠についても同様とする。 (ア)基本的構成 全体は,横長略角筒状であって,その内部に左右に貫通する流水路を形成し上面の中央に,蓋板を嵌合するための略横長長方形の開口部を設けた態様である。 (イ)上面 上面は,上面側から見て,中央部に略横長長方形の開口部が設けられた,略横長長方形の外形で,側面から見て,ごく浅いV字状の谷部が形成された態様であって,左右両端から中央に向けて順に,水平な細幅縁面,緩やかな下降斜面を形成し,中央部に小溝を形成した態様とし,上面側から見て,上面の略全域に,正方形状の凹凸レリーフ模様を縦横に多数配列し,前後の細幅縁面には,それより若干大きい横長長方形状の凹凸レリーフ模様を各一列配した態様とし,中央の小溝の底部に,当該小溝に沿って,下方に開口するスリット状の貫通孔を,中央部の開口部を挟んで左右に一か所ずつ設けた態様である。 (ウ)開口部 開口部は,上面から見て,上面の中央部,約2分の1の面積を占める,縦横比が約1対2の横長長方形状であって,開口部長辺側の,ブロック上面からやや下がった位置に,開口部全幅に渡る段差を形成したもので,その段差部に,僅かに下方に下がった凹部を,左右対称状に2か所設けた態様である。 (エ)内壁面部 内壁面部は,側面から見て左右対称形で概略四角形状の一定断面形状であって,側壁面は,下側3分の2が垂直面で,上側3分の1が僅かに略ハの字状に傾斜した面とし,天井面を上方に円弧状に湾曲した湾曲面に,床面を下方に円弧状に湾曲した湾曲面にそれぞれ形成した態様である。 (オ)左右両端部 左右両端部は,側面から見て,外形が僅かに縦に長い略長方形状であり,中央部に前記(エ)の内壁面部が開口している。そして,両端面の,内壁面部開口部の側壁面と床面を囲むように,略倒コの字状で,下辺が下方円弧状に湾曲した細溝を形成した態様である。 2.原審が拒絶理由で例示した意匠 (1)意匠1 意匠1の意匠に係る物品は,「側溝用ブロック」であって,その形態は,全体を,前後の壁部の上端に上面部を一体的に形成して,側面視略倒コの字状としたものであって,上面の中央に,蓋板を嵌合するための略横長長方形の開口部を設けた態様であり,上面は,上面側から見て,中央部に略横長長方形の開口部が設けられた,略横長長方形の外形で,側面から見て,ごく浅いV字状の谷部が形成された態様であって,左右両端から中央に向けて順に,水平な細幅縁面,緩やかな下降斜面を形成し,中央に小溝を形成した態様とし,上面から見て,上面の略全域に,正方形状の凹凸レリーフ模様を縦横に多数配列し,前後の細幅縁面には,それより若干大きい横長長方形状の凹凸レリーフ模様を各一列配した態様とし,開口部は,上面から見て,上面部の中央部,約2分の1の面積を占める,縦横比が約1対2の横長長方形状であって,開口部長辺側のブロック上面からやや下がった位置に,開口部全幅に渡る段差を形成したもので,その段差部に,僅かに下方に下がった凹部を,左右対称状に2か所設けた態様であり,内壁面部の形状は,側面から見て左右対称形で縦長の略倒コの字形の一定断面形状であって,側壁面は,下側8分の7が垂直面で,上側8分の1が僅かに略ハの字状に傾斜した面とし,天井面を上方に円弧状に湾曲した湾曲面に形成した態様である。 (2)意匠2 意匠2の意匠に係る物品は,「道路用側溝ブロック」であって,その形態は,全体を,前後の壁部の上端に上面部を一体的に形成して,側面視略倒コの字状としたものであって,上面部の中央に,蓋板を嵌合するための略横長長方形の開口部を設けた態様であり,上面部は,上面側から見て,中央部に略横長長方形の開口部が設けられた略横長長方形の外形で,側面から見て,中央に段差を設けて,段差の上部から一端部にかけての上面の約半分を凸状湾曲面に,段差の底部から他端部にかけての上面の約半分を凹状湾曲面に形成し,段差底部の近傍には,段差に沿って下方に開口するスリット状の貫通孔を,中央部の開口部を挟んで左右に一か所ずつ設けた態様である。 3.本願意匠の創作容易性について まず,本願意匠の構成態様(エ)の内壁の形態について検討すると,本願意匠が,側面から見て左右対称形で概略四角形状の一定断面形状であって,側壁部は,下側3分の2が垂直面で,上側3分の1が僅かに略ハの字状に傾斜した面とし,天井面を上方に円弧状に湾曲した湾曲面に,床面を下方に円弧状に湾曲した湾曲面にそれぞれ形成した態様であるのに対し,意匠1及び意匠2は,いずれも床面が解放された態様であって,それらの構成比率についても,いずれも横幅に対して高さが高く,本願意匠とは異なる。そして,この相違は,側溝用ブロックの物品分野における通常の知識に基づいて改変を加えたとしても,本願意匠の態様とすることが容易にできたとはいえない。したがって,構成態様(エ)は,当業者であれば容易に着想できたということはできないものである。 次に,本願意匠の,構成態様(オ)の左右両端部の態様について検討すると,側面から見て,外形が僅かに縦に長い略長方形状であり,中央部に前記(エ)の内壁面部が開口したものとし,両端面の,内壁面部開口部の側壁面と床面を囲むように,略倒コの字状で,下辺が下方円弧状に湾曲した細溝を形成した本願意匠の態様は,本願意匠独自の形態であるから,当業者であれば容易に着想することができたということはできないものである。 そうすると,本願意匠の構成態様(エ)及び(オ)は,当業者であれば容易に着想することができたということはできないものであるから,意匠全体として,本願意匠は,容易に創作することができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-03-30 |
出願番号 | 意願2014-17400(D2014-17400) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(L2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 清野 貴雄 |
登録日 | 2016-04-22 |
登録番号 | 意匠登録第1550265号(D1550265) |
代理人 | 白崎 真二 |
代理人 | 勝木 俊晴 |
代理人 | 阿部 綽勝 |