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審決分類 審判 補正却下不服   取り消さない H7
管理番号 1315693 
審判番号 補正2014-500003
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2014-10-30 
確定日 2016-03-31 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2013- 23591「携帯情報端末」において、平成26年7月18日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願意匠
本願は,2013年(平成25年)5月29日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)10月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,その物品に表示される画像の部分について意匠登録を受けようとするものであって,当初の願書の【意匠に係る物品の説明】の欄に「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」と記載され,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面(以下,「願書添付図面」という。)に表されたとおりのもので,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。また,一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙1参照)

第2 手続の経緯及び平成26年7月18日付け手続補正書
1.平成26年2月12日付け拒絶理由通知
原審は,平成26年2月12日付け(平成26年2月19日発送)で,拒絶の理由を通知した。
その拒絶の理由は,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとするもので,具体的には,以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,携帯情報端末に係る創作であって,正面表示部に表された画像の一部について意匠登録を受けようとする部分とするものです。そして,当該画像について,願書の【意匠に係る物品の説明】に「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」と記載されています。
しかしながら,上記【意匠に係る物品の説明】中の記載及び添付図面の記載等からは,コンテンツ選択とは物品のどのような機能(例えば,音楽再生機能,写真編集機能,各種コンテンツ管理機能等)のためのものか不明で,また,正面図に表された画像が,コンテンツの選択のためにどのように操作されるものか不明(例えば,コンテンツの選択に用いられるアイコンとして,各種コンテンツを管理する機能を起動するための起動アイコンや,再生や編集対象のコンテンツの選択にあたって使用される決定キー等が考えられます)なため,正確に意匠を把握することができません。
したがって,この意匠登録出願は,未だ具体的な意匠を表わしたものと認めることができません。
なお,この意匠登録出願の添付図面に記載された【白黒で示した画像部分拡大参考図】及び【線図で示した画像部分拡大参考図】,は,【正面図】及び【画像部分拡大図】と色彩やグラデーションの有無が異なるため,参考図として適切ではありません。」

2.平成26年7月18日付け意見書及び同日付け手続補正書
1.の平成26年2月12日付けの拒絶の理由の通知に対して,出願人は,平成26年7月18日付けで意見書と同時に手続補正書を提出した。この手続補正書において補正されたのは,以下の2点である。(別紙1参照)
(1)願書の【意匠に係る物品の説明】の変更
出願当初の記載内容である
「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」を
「本物品は,本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能を有する携帯情報端末である。本願の表示部に表示される画像は,本物品がこの機能を発揮できる状態にするための操作に用いられるものである。また,物品の操作は,指又はスタイラスペンで画像に触れることによって行う。」
とする内容に変更した。
(2)願書添付図面の一部の図の削除
出願当初の願書添付図面に記載した
【色彩付きで示した画像部分拡大参考図】及び【線図で示した画像部分拡大参考図】を削除した。

3.平成26年7月24日付けの補正の却下の決定(2.平成26年7月18日付け手続補正書についての決定)
2.の平成26年7月18日付け手続補正書について,原審は,平成26年7月24日付けで,その補正を却下すべきものと決定した。その理由は,次のとおりである。
「上記手続補正書により願書の「意匠に係る物品の説明」欄の記載を補正され,表示部に表示された画像を操作することにより発揮できる状態にすることができる本物品の機能は,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能」であることを明らかにされました。
しかしながら,出願当初の当該欄には,「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」とのみ記載され,パソコン又はテレビへのコンテンツの保存や,パソコン又はテレビを用いたコンテンツの再生に関する記載はみられず,「コンテンツの選択」が,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能」のためのコンテンツの選択であることは,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができません。また,当該欄の記載は,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼすものです。
したがって,上記手続補正書による補正は,出願当初の願書の記載の要旨を変更するものです。」

第3 請求人の主張
請求人は,要旨以下のとおり主張した。
1.補正の根拠及び要旨の変更でない旨の説明
平成26年7月24日付けの補正の却下の決定では,「コンテンツの選択」が「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能」であることを導き出すことができなかったことを指摘されている。
しかし,本願意匠中の環状線が,本願意匠に係る物品中に保存したコンテンツが複数のデバイス間で転送され,使用される様子を表したものであるところ,本願意匠の属する分野において,コンテンツが複数のデバイス間で共有される様子を描く際に,コンテンツの流れをイメージして複数の矢印を環状に配することにより軌跡を描くことは,本願の出願前から一般に行われていた(第1号証)。例えば,第1号証中,「SaaS ビジュアルモール スマートカタログ」と題された資料の2頁目において「Point.4」と記載された箇所には,コンテンツが複数のデバイス間で共有される様子が複数の矢印を環状に配することにより軌跡を描くことで表されている。
したがって,当該分野における通常の知識に基づけば,本願意匠中の環状線における各白色部分が,コンテンツを保存したデバイス及び当該コンテンツを転送して保存し又は再生する他のデバイスを表すものであることを明確に導き出すことができるものである。なお,第1号証の一部は本願の出願後の資料であるが,当該資料については出願前の状況や事情を示しているものとして参考になるものでる。
また,本願意匠は出願人が提供するコンテンツ関連サービス「Samsung Link」について用いられているものであるところ(第2号証),本願の出願前,当該サービスは「Allshare Play」という名称で提供されていた(第2号証)。当該名称をキーワードとしてサーチエンジンGoogleで画像検索したところ,複数のデバイスを環状線で結びつけ又は囲むことによって,「物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能」を描写する画像が多く見つかった(第3号証)。これらの画像は,いずれも本願の出願前のものである。例えば,第3号証の1頁目における1行目の画像のうち右から2番目のものにおいては,矢印を環状に配することにより,音楽等のコンテンツがパソコン,スマートフォン及びタブレットの間で動く様子を表すといった使用例が見られる。
かかる事実からも,本願意匠の属する分野における通常の知識に基づき,本物品に係る各機能を導き出すことはできたものと考える。
さらに,当該分野においては,本願の出願前から環状線により描かれたアイコンのデザインが「同期中」,「ローディング中」,「処理中」といったコンテンツの動きを表すアイコンについて一般に使用されていた(第4号証)。例えば,第4号証における1つ目の資料では,電子ブックリーダー本体とサーバーを同期中である様子が矢印を環状に配することによって表されている。
したがって,当該分野における通常の知識に基づけば,画像の形態から当該物品の機能をごく具体的に特定することはできないとしても,少なくともこれがコンテンツについて何らかの動きを表すものであることは容易に理解することができたものと考える。
以上より,手続補正書による補正は,出願当初の願書の記載の要旨を変更する補正には該当致しない。

2.我が国における画像を含む意匠についての意匠の特定
なお,意匠法施行規則では,意匠法第2条第2項に規定する操作用の「画像」を含む場合は,その「画像」を含む意匠に係る物品の機能及び「画像」の操作の説明を記載する必要があるとされている。(様式2備考40)。そのため,本願についても,出願時に「意匠に係る物品の説明」欄に当該物品の機能が明らかになるような記載が必要であったと考えられる。しかしながら,一般に,出願人は願書の作成に際し,取得したい権利範囲を徒に狭めない記載とすることを意識すると同時に,日本の意匠制度において認められる程度に明確な記載をすることも心掛けるものの,どの程度の記載であれば当該物品の機能が十分に明らかになるかについては,実際の審査における判断をみなければ分からないのが実情である。

3.第一国出願における意匠に係る物品の機能及び画像の操作の説明についての願書記載と我が国の意匠審査基準における優先権主張における有効性の判断
本願は大韓民国における第一国出願を基礎とする優先権主張を伴う意匠登録出願であるところ,同国の制度では意匠に係る物品の機能及び画像の操作の説明は願書の必須記載事項とはなっていないため,当該第一国出願にはこれらの事項は記載されていない。審査基準には,優先権主張の有効性の判断について以下の記載がみられる。
「101.3.1.1 優先権証明書記載の意匠について,優先権証明書の記載全体から総合的に判断してその意匠に係る物品の用途,機能が明らかな場合
我が国への意匠登録出願において,優先権証明書の記載全体から総合的に判断して明らかな用途,機能に応じた,別表第一の物品の区分又は同程度の物品の区分を記載した場合には,両意匠に係る物品は優先権の認否において同一と認められる。」
このような事情の下,第一国出願に係る意匠との同一性を保つという観点から,日本での出願時に第一国出願には含まれない記載を加えることを躊躇する場合も多々ある。本願の場合でも,第一国出願において含まれていない機能についての記載を願書に加えることによって意匠の同一性を損なう可能性がある,とも解釈できる。上記より考察すると,意匠に係る物品の説明の欄について要求される明確さが分からないまま当該欄を補正することを審査後に求められ,その補正を行うことが要旨変更と判断され最終的に拒絶される,または補正却下後の新出願を行いパリ条約上の優先権の利益を喪失するという選択肢しかないとすれば,外国からの出願人にとってあまりに酷であり,日本の意匠制度自体が疑問視されかねない状況となりかねない。

4.むすび
本願意匠に係る画像のようにコンテンツの動きを表す画像は携帯情報端末によくみられるものであり,本願意匠に係る画像は複数のデバイス間におけるコンテンツの動きを表すものであることは予想できることから,先の補正は本願意匠の要旨の変更にはあたらない。それに加え,「画像」を含む意匠の出願における物品の説明の欄の記載に関する基準の不明確性や,優先権主張の有効性を保つ必要性があったという事情を考慮すれば,平成26年7月18日付けの補正は認められるべきであると考える。

第4 当審の判断
当審は,出願当初の願書の【意匠に係る物品の説明】の欄に記載されていた「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」を「本物品は,本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能を有する携帯情報端末である。本願の表示部に表示される画像は,本物品がこの機能を発揮できる状態にするための操作に用いられるものである。また,物品の操作は,指又はスタイラスペンで画像に触れることによって行う。」とする内容に変更した補正については,以下の理由により,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず,また,当該欄の記載は,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼすものであるので,平成26年7月18日付けでした手続補正書による補正は,出願当初の願書の記載の要旨を変更するものである,と判断する。

1.出願当初の願書の記載及び願書添付図面からの本願意匠の認定
出願当初の願書の【意匠に係る物品】の欄には「携帯情報端末」,願書の【意匠に係る物品の説明】の欄には「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」と記載され,願書添付図面の各図には,正面側に大きな縦長長方形状の表示部を有する縦長長形状で扁平な携帯情報端末が破線で表され,その表示部の左上方に,実線で表した図形を含む意匠登録を受けようとする一点鎖線で囲まれた略正方形状の区画の画像部分が表されている。
意匠登録出願においては,意匠登録を受けようとする意匠の【意匠に係る物品】を願書に記載しなければならないが,意匠法施行規則第7条別表第1の別表下欄に掲げる物品の区分のいずれにも属さない物品について出願するときは,物品の使用の目的,使用の状態等物品の理解を助けるような説明を願書の【意匠に係る物品の説明】の欄に記載する(意匠法施行規則第2条 様式第2 備考39)こととなっている。
また,意匠法第2条第2項の規定により物品の操作の用に供される画像を含む意匠について出願するときは,その画像に係る当該物品の機能及び操作の説明を【意匠に係る物品の説明】の欄に記載する(意匠法施行規則第2条 様式第2 備考40)こととなっている。
一方,本願の場合は,意匠に係る物品を「携帯情報端末」としているが,「携帯情報端末」は別表第1の別表下欄に掲げる物品の区分のいずれにも属さない物品であるから,本来は物品の使用の目的,使用の状態等物品の理解を助けるような説明を記載すべきところであるが,当該物品の用途や機能等の説明として,物品の表示部に表された画像について,それがコンテンツの選択に用いられるものであるとの記載があるのみである。

以上,本願のように,意匠に係る物品の用途や機能等についてほとんど説明がない場合には,本願意匠の意匠に係る物品である「携帯情報端末」が一般的に備えている機能を有するものと捉えて,本願意匠を認定することになる。
一般に「携帯情報端末」の具体的な機能としては,例えば,
・個人情報管理機能
(スケジュール(予定)管理,ToDo(予約)管理,住所録等)
・メモ機能
・電子辞書機能
・電卓機能
・カメラ機能
・ゲーム機能
・マルチメディアプレーヤー機能
(MP3などの演奏,静止画・動画の閲覧)
・インターネットへの接続(Webの閲覧,電子メールの送受信)
・GPS機能
などが挙げられる。(以上,出典Wikipedia)
しかし,本願意匠が,こうした「携帯情報端末」が一般的に備えている機能を有するものとしても,「(本願意匠の)画像は,コンテンツの選択に用いられる。」との記載のみからは,その記載内容を最大限に推し量ったとしても,大雑把に,本願意匠の画像が携帯情報端末が一般的に備える,例えばマルチメディアプレーヤー機能(MP3などの演奏,静止画・動画の閲覧)の一部の機能に関係するものであって,本願意匠の画像はその機能を発揮するために行われる行程の一つとしての「コンテンツの選択」の操作に用いられるものである,と推認できるに留まるといえる。
そうすると,依然として,本願については,コンテンツ選択とは物品のどのような機能のためのものか,また,本願意匠の画像がコンテンツの選択のためにどのように操作されるものかが明確でないため,出願の意匠を正確に把握することができず,意匠法第3条柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当せず,意匠登録を受けることができない,という拒絶の理由を有するものと,原審同様に判断せざるを得ない。

2.7月18日付け手続補正書の補正によって特定される本願意匠の内容(意匠の要旨)が出願当初の内容を変更するものか否かについて
7月18日付け手続補正書において変更された【意匠に係る物品の説明】は,「本物品は,本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能を有する携帯情報端末である。本願の表示部に表示される画像は,本物品がこの機能を発揮できる状態にするための操作に用いられるものである。また,物品の操作は,指又はスタイラスペンで画像に触れることによって行う。」である。
そこで,この補正による意匠に係る物品の説明の記載から特定される本願意匠の内容(意匠の要旨)は,出願当初の願書の【意匠に係る物品】を「携帯情報端末」とし,【意匠に係る物品の説明】を「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる。」とする記載から特定される本願意匠の内容から当然導き出されるものか否かを検討する。
なお,この手続補正書には,願書添付図面から「色彩付きで示した画像部分拡大参考図」「線図で示した画像部分拡大参考図」を削除する補正が含まれているが,いずれも意匠登録を受けようとする画像中の図形についての同形のものの「色付き」のもの及び「線図」で表した「参考図」である図の「削除」であるから,出願当初の内容を変更するものではない。
(1)まず,補正をする【意匠に係る物品の説明】の記載を,以下のように,各項目ごとに分けて考察する。
(a)意匠に係る物品の機能
本物品は,本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能を有する携帯情報端末である。
(b)画像に係る当該物品の機能
本願の表示部に表示される画像は,本物品がこの機能((a))を発揮できる状態にするための操作に用いられるものである。
(c)画像に係る操作方法
物品の操作は,指又はスタイラスペンで画像に触れることによって行う。

(a)意匠に係る物品の機能について
「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能」,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビを用いて再生する機能」は,携帯情報端が一般的に有する機能であるか否かについては,携帯情報端末の一般的に備える機能(前掲)を参考にするならば,例えば,「本物品中に保存したコンテンツを本物品の表示部等において再生する機能」は,携帯情報端末の一般的な機能の一つとはいえるとしても,本物品中に保存したコンテンツを,「本物品以外のパソコン又はテレビ等の外部機器に保存する機能」及び「本物品以外のパソコン又はテレビ等の外部機器を用いて再生する機能」は,携帯情報端末が一般的に備える機能とはいい難い。
したがって,この(a)部分の記載内容は,出願当初の記載から当然導き出される範囲を超えるものである。
(b)画像に係る物品の機能について
出願当初の当該画像の機能としていた「正面図等に表された画像は,コンテンツの選択に用いられる」との記載を削除し,代わって新たに,補正によって,画像に係る物品の機能として,(a)のとおり,意匠に係る物品の機能として,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能」又は「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビを用いて再生する機能」が明記され,それを受ける形で,「本願の表示部に表示される画像は,本物品がこの機能を発揮できる状態にするための操作に用いられるものである(下線は当審が付記。)」とするものである。
つまり,画像に係る物品の機能については,当初の「コンテンツの選択」に係る機能から,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能」,又は「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビを用いて再生する機能」と変更されており,画像はその機能を発揮できる状態にするために用いられるものとされている。
そうすると,(a)で述べたとおり,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能」は,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とする場合に,その携帯情報端末の有する一般的な機能とはいえないから,当初の記載から当然導き出される範囲を超えるものに変更されているところ,「コンテンツの選択に用いられる」の記載からは,(それが画像に係る物品の機能であるとしたとしても,)「『本物品中に保存したコンテンツを本物品以外のパソコン又はテレビに保存する又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能』を発揮できる状態にするための操作に用いられる」ものとした補正の内容は,当然導き出される範囲を超えるものであるということができる。
出願当初と補正とを比較すると,共通するのは,選択や保存・再生の機能する(働きかける)対象が「コンテンツ」であることにすぎず,画像を含む本願意匠を適切に把握するために重要な画像に係る物品の機能については,出願当初の「コンテンツの選択」という,選択する目的が不明な説明内容から比れば,「本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する」又は「パソコン又はテレビを用いて再生する」という目的のために用いるものであることが明確にはなったとしても,それは出願当初は不明だった目的が補正によって初めて明らかになったのであり,逆に「コンテンツの選択に用いられる」との記載がなくなったことから,この意匠に表れた画像を具体的にどのように用いて,本物品中に保存したコンテンツをパソコン又はテレビに保存する機能又はパソコン又はテレビを用いて再生する機能を発揮できる状態にするものなのかは不明となったといえる。
また,出願当初の「コンテンツの選択」をする機能との関係も不明のままである。仮に「コンテンツの選択」が,後から明らかにされた(開示された)「コンテンツの保存,再生のため」の一行程としてなされることは考え及ぶ可能性はあるとしても,コンテンツの選択という行程は最終目的に至る途中の種々の行程の一つであり,何らかの具体的な目的のための機能の一部であると特定,限定することはできない。つまりこの意匠の属する分野における通常の知識に基づいて,当初の願書の記載等から総合的に判断しても導き出すことはできない。
したがって,「本物品に保存したコンテンツを(本物品以外の)パソコン又はテレビに保存する又は本物品中に保存したコンテンツを(本物品以外の)パソコン又はテレビを用いて再生する機能』を発揮できる状態にするための操作に用いられる」ものとした補正は,当初の記載から当然導き出される範囲を超えるものである。
(c)当該画像の操作方法について
当該画像の操作方法として,「物品の操作は,指又はスタイラスペンで画像に触れることによって行う」ことを追加した点については,この種の電子機器において,この「指又はスタイラスペンで画像に触れる」,いわゆるタッチ操作の方法は,極めて一般的であって,当初の記載では明記されていなかったものを単に明記したに過ぎず,当初の記載から当然導き出される範囲のものであると認められる。
ただ,意匠法第2条第2項の規定により物品の操作の用に供される画像を含む意匠について出願する際に,その画像に係る当該物品の機能とともに操作の説明を記載することを同法施行規則に定めている趣旨は,単に指等で触れる操作方法(タッチパネル方式であること)を説明として求めているのではなく,出願の画像を含む意匠を理解するために必要な,例えばその図形の全部又は一部をスライドさせる,指で引き延ばす等の操作時の動きやそれに伴う図形の変化の有無,また,そうした操作によって,例えば,「選択のために用いる」としていることは,具体的に,例えば複数示された選択肢上にカーソルを移動させて「選択肢を選ぶ」ことをするのか,選んだ「選択肢を決定する」ことをするのか等の画像の具体的な機能をも明確にするためである。
本願意匠の場合,厳密にいえば,選択する対象である選択肢はどこに,どのように表示されるのか,表示されないのかも,不明である。携帯情報端末という多機能の物品であって,「選択」のために用いる画像として,1つの図形のみがほとんど何の説明もなしに表されていても,具体的な機能や操作を特定することはできないといわざるを得ない。
請求人は,「第3 請求人の主張の2.我が国における画像を含む意匠についての意匠の特定」において,意匠法施行規則において,意匠法第2条第2項に規定する操作用の「画像」を含む場合は,その「画像」に係る意匠に係る物品の機能及び「画像」の操作の説明を記載する必要があることに触れ,本願についても,出願時に「意匠に係る物品の説明」欄に当該物品の機能が明らかになるような記載が必要であったと考えられると述べつつも,「一般に,出願人は願書の作成に際し,取得したい権利範囲を徒に狭めない記載とすることを意識すると同時に,日本の意匠制度において認められる程度に明確な記載をすることも心掛けるものの,どの程度の記載であれば当該物品の機能が十分に明らかになるかについては,実際の審査における判断をみなければ分からないのが実情である。」と述べているが,先述のとおり登録を受けようとする意匠が具体的に特定できなければ,意匠権として本人が権利行使する際にも,第三者が意匠権を尊重して善意に侵害しないように避けようにも,まずは意匠が具体的に特定できなければならず,その前から「取得したい権利範囲を徒に狭めない」記載をすることを意識する方が先に立つというのは,権利が不明確になることにも繋がりかねず,好ましいことではない。また,画像を含む意匠について,どの程度の記載であれば当該物品の機能が十分に明らかになるかについては,先行の登録意匠についての意匠公報が相当数発行されており,その意匠についての【意匠に係る物品の説明】の記載を参考とすることができるものと考える。
(d)その他
なお,請求人は,上記(a),(b)に関連して,願書の記載の説明の補正おける,「パソコン又はテレビの外部機器に保存する,又は外部機器を用いて再生する機能」について説明,主張する過程において,当該画像はその当該機器(パソコン又はテレビ)へのコンテンツの送信が行われている状態,つまり「送信中」の状態であることを表すものである旨述べている。
これは,本願の画像が,コンテンツの選択に用いられる『操作』,指又はスタイラスペンで画像に触れる『操作』のための画像であるとする,出願当初及び(平成26年7月18日付けの)手続補正の,意匠に係る物品の説明の記載とも整合しない,「機能を発揮した(送信という作動をしている)状態を表す」画像であるということであり,相矛盾する主張となっている。

(2)次に,この補正の内容は出願当初の願書添付図面に表れている表示画面表された画像の意匠を構成する図形に基づけば当然導き出される範囲のものであり,出願当初の願書の記載及び願書添付図面の記載によって表された意匠の要旨を変更する補正には該当しない旨の請求人の主張について検討する。
請求人は,本願意匠の表示画像(縦長長方形状の表示画面の左上の一点鎖線で区画された内側の領域)中の略大隅丸正方形状の中に概略太幅円環状線が,本願意匠に係る物品中に保存したコンテンツが複数のデバイス間で転送され,使用される様子を表したものであるとし,当該分野において,コンテンツが複数のデバイス間で共有される様子を描く際に,コンテンツの流れをイメージして複数の矢印を環状に配することにより軌跡を描くことは,出願前から一般に行われていることから,当該分野の通常の知識に基づけば,この概略太幅円環状線における各白色部分が,コンテンツを保存したデバイス及び当該コンテンツを転送して保存し又は再生する他のデバイスを表すものであることを明確に導き出すことができる,と主張する。
加えて,当該分野においては,本願出願前から,円環状線により描かれたアイコンのデザインが「同期中」,「ローディング中」,「処理中」といったコンテンツの動きを表すアイコンについて一般に使用されており,当該分野における通常の知識に基づけば,画像(図形)の形態から当該物品の機能をごく具体的に特定することはできないとしても,少なくともこれがコンテンツについて何らかの動きを表すものであることは容易に理解することができたものと考えられるので,本補正は,出願当初の願書の記載の要旨を変更する補正には該当しない,と主張する。

しかしながら,大隅丸正方形状の中の概略太幅円環状線は,円環の上方と左右下方の3箇所で3等分された,半円状を先頭にして後方に行くにしたがって明調子から中間調子まで徐々に濃くなる態様のものが3つ連なるように構成された図形ではあるが,その図形の具体的な形状と,意匠に係る物品の「携帯情報端末」及び意匠に係る物品の説明の欄の「コンテンツの選択に用いられる。」との記載とを総合したとしても,本願意匠の画像が,具体的に例えば本物品中の音楽等のコンテンツをパソコンやテレビなどの本物品とは別の外部機器に(送信され)保存されたり,外部機器を用いて再生(音楽の再生や静止画の表示等)することを,直接導き出すことはできない。
円環状を構成する3つの先頭半円の弧状帯状が,左回りの動きを表すように見えるとして,そこからは最大限善解しても,請求人が述べるように,「少なくともこれがコンテンツについて何らかの動きを表すものであることは容易に理解することができたもの」とまではいえても,やはり「図形の形態から当該物品の機能をごく具体的に特定することはできない」のであって,ましてや,「本願意匠に係る物品以外のパソコンやテレビなどの外部機器に対して動作させる機能」を発揮させるための操作をするものであるということが,当初の願書等の記載から当然に導き出せるものであるとは認められない。

以上の(1)及び(2)から総合的に判断すると,平成26年7月18日付けの手続補正書によってなされた補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができないものと認められる。また,当該補正の内容は,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼすものであるから,上記補正は,出願当初の意匠の要旨を変更するものであると認められる。

なお,「第3 請求人の主張の3.第一国出願における意匠に係る物品の機能及び画像の操作の説明についての願書記載と我が国の意匠審査基準における優先権主張における有効性の判断」の主張については,確かに,第一国出願を基礎とする優先権主張を伴う意匠登録出願であり,その第一国の制度では意匠に係る物品の機能及び画像の操作の説明は願書の必須記載事項とはなっていない,あるいは記載が認められない場合等には,当該第一国出願にはこれらの事項は記載されていない。そうした場合に,我が国の意匠審査基準(101.3.1.1)には,優先権主張の有効性の判断について,「優先権証明書記載の意匠について,優先権証明書の記載全体から総合的に判断してその意匠に係る物品の用途,機能が明らかな場合,我が国への意匠登録出願において,優先権証明書の記載全体から総合的に判断して明らかな用途,機能に応じた,別表第一の物品の区分又は同程度の物品の区分を記載した場合には,両意匠に係る物品は優先権の認否において同一と認められる。」としている。
このような事情の下では,請求人の述べるように,第一国出願に係る意匠との同一性を保つという観点から,日本での出願時に第一国出願には含まれない記載を加えることを躊躇して,本願の場合,第一国出願において含まれていない機能についての記載を願書に加えることによって意匠の同一性を損なう可能性を危惧したとも解釈できる。
しかしながら,先述のとおり,我が国の意匠登録制度においては,権利の客体である意匠を的確に理解,特定できるようにするために,意匠に係る物品の説明の欄において画像に係る物品の機能を記載することとしている。仮に審査後において当該欄を補正することが必要となる場合には,その補正が適切に行われることで出願を維持することができようになっている。パリ条約による優先権の主張を伴う出願において,補正却下後の新出願を行ったことによってパリ条約上の優先権の利益を喪失するということになるおそれはあるが,それは優先権の主張を伴わない出願における補正において出願当初の願書の記載及び願書添付図面の記載から総合的に判断しても導き出すことができない補正が却下されることと同じである。
意匠出願登録制度については各国が独立した制度であることから,出願して権利を得ようとする国における手続に則ることは相互に認め合うところであり,(これはハーグ協定においてさえも,各国独自の記載等を一定求めることができるようになっている。),その上で,優先権制度等において必要な措置として,意匠審査基準の定めたとおりの「優先権証明書の記載全体から総合的に判断してその意匠に係る物品の用途,機能が明らかな場合,(中略),両意匠に係る物品は優先権の認否において同一と認められる」(意匠審査基準101.3.1.1)という運用を採っているところである。
少なくとも,本件の「補正の却下」の適否に関しては,第一国出願との同一性を問題としているものではなく,日本への出願における願書に記載した画像を含む意匠についての【意匠に係る物品の説明】の内容における意匠に係る物品の用途及び機能,並びに画像に係る物品の機能について,出願当初のものと補正のもので大きな隔たりがあることを問題とするものである。

第5 むすび
以上のとおりであって,平成26年7月18日付けの手続補正は,出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものと認められ,したがって,原審の,同手続補正書を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした決定は,適正なものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2015-10-29 
結審通知日 2015-11-04 
審決日 2015-11-17 
出願番号 意願2013-23591(D2013-23591) 
審決分類 D 1 7・ - Z (H7)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 本多 誠一
渡邉 久美
登録日 2016-06-03 
登録番号 意匠登録第1553073号(D1553073) 
代理人 小暮 理恵子 
代理人 久保 怜子 
代理人 志賀 正武 
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