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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J7
管理番号 1317040 
審判番号 不服2015-22166
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-16 
確定日 2016-06-24 
意匠に係る物品 点滴スタンド 
事件の表示 意願2014- 6189「点滴スタンド」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)3月25日に出願された,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「点滴スタンド」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

この意匠登録出願の意匠は点滴スタンドの部分に係るものであり,意匠登録を受けようとする部分は上部点滴掛け部のアーム及びフック部であるが,当該物品分野において点滴掛け部の対向するフック部をアーム部に対し左右逆方向に曲げずらして設けることは公知の手法(意匠1,意匠2)と認められることから,この意匠登録出願の意匠は,本願出願前に公然知られたものと認められる,点滴用スタンド(意匠3,意匠4)の対向するフック部を,本願出願前に公然知られた手法(意匠1,意匠2)でアーム部に対し左右逆方向に曲げずらして形成し,点滴スタンドのアーム及びフック部分の形状としたに過ぎないので,容易に創作できたものと認められる。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1428976号の意匠

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の登録実用新案公報記載
実用新案登録第3096656号
【図4】【図5】【図6】に表された意匠

意匠3(別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1437162号の意匠

意匠4(別紙第5参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1442755号の意匠


第3 請求人の主張の要旨

請求人は,要旨以下のとおり理由を述べ,本願意匠は登録すべきものである旨主張している。

1 本願意匠創作の契機
従来の点滴スタンドには,意匠1や意匠2に示されるように,フックの先端を鉛直方向上方に突出させ,その先端を通してそのフックに輸液パックを掛けるタイプのものが多く見受けられた。一方,病院の病室は,ベッド周囲がカーテンで仕切られており,このカーテンの上部は,目の粗い網目状に構成されていることが多いのが実情である。したがって,その目の粗い網目部分にフック先端部分が非常に引っ掛かりやすく,点滴スタンド使用者の病室内の移動を妨げ,ひいては転倒事故につながることもあった。
一方,意匠3及び意匠4に示される点滴スタンドでは,フックの先端が支柱に向けて延出されているので,フックに輸液パックを引っ掛けるためには,輸液パックを支柱とフックの先端との間に,フックの脇から入れることが必要となる。このような装着作業は,輸液パックの操作スペースの観点やフック先端の視認の面で問題を有し,改善が望まれるところであった。
本願意匠は,上記問題に鑑みて創作されたもので,フックの先端がカーテンに引っ掛かることを抑制しつつ,輸液パックをフックに取り付けやすいデザインとしたものである。

2 本願意匠の創作性について
(1)本願意匠の特徴点は,水平状のアーム部から正面視略U字状に折り曲げた後,「フックの先端がアーム部の下方(真下)に配置されるよう,他方のアームのフック部方向に折り曲げることにより,全体としてフック部が,平面視において略三角形状をなすよう形成されている」というものである。
意匠3及び意匠4ともに,この構成は全く備えておらず,この構成の示唆すら一切存在しない。意匠3及び意匠4のフック先端は,アーム部からフック先端部にかけて,全てが同一平面上に配置されており,本願意匠の立体的な屈曲形態とは全く異なるものである。特に,本願意匠における,全体としてフック部が,平面視において略三角形状をなすよう形成されている点は,従来の公知意匠には全く見られない本願意匠に特有の形態であり,ありふれた手法による改変の範囲を超えるものである。すなわち本願意匠は,もはや意匠3及び意匠4が有する特徴とは異なる独自の特徴を有するに至っているといえる。
このように,本願意匠のフック部は,全体として,平面視略三角形状という特有のまとまり感を表出するよう意匠創作上の工夫がなされているものである。

(2)本願意匠は,そのフック先端部が,アーム部の下方空間内に収まっており,意匠1や意匠2のように,アーム部の高さ以上に上方に突出していないため,フックの先端部がカーテンの網目に引っ掛かりにくいデザインとなっている。
また,意匠1や意匠2は,輸液パックをフックに掛ける際,輸液パックをフックの先端より上に持ち上げて,上からフックに掛ける必要があり,大容量の輸液パックやガラス製の薬瓶の場合,作業が不安定になりがちであった。これに対して本願意匠の場合は,フック先端がアーム部の下方に位置し,かつ,フック先端が若干斜め上を向いている程度であるため,輸液パックや薬瓶の着脱が非常にし易く,片手でも容易かつ的確に,輸液パックの着脱を行えるデザインとなっている。
意匠3及び意匠4のフックの先端部は,アーム部の下方空間内に収まっており,一応,フックの先端部がカーテンの網目に引っ掛かりにくいデザインにはなっているが,意匠3や意匠4のフックのように,脚ベースから上方に延びる支柱方向にフックの先端が向いていると,輸液パックの作業時に支柱が邪魔をして,輸液パックの着脱作業がしづらいという難点がある。
この点につき本願意匠は,輸液パックの着脱方向に広い作業領域が確保されているため,より広い空間において作業を行うことができる。また,フック先端がこのような形態に曲げられているため,医療従事者は,フックの先端に正面から対峙することができ,作業の安定が図られることになる。
以上のように,本願意匠には,フックの先端がカーテンに引っ掛かることを抑制しつつ,フックへの輸液パックの着脱作業を容易にするため,フックの位置や向き,曲げ具合,曲げる方向等,意匠創作上の様々な創意工夫が施されている。

3 まとめ
以上のとおり,本願意匠は,本物品の性質や用途・機能を考慮したうえで,引用意匠には見られない態様を選択し,ひとつの形態にまとめ上げたものといえる。すなわち,本願意匠は,創意工夫の結果創出されたものであり,当業者が容易になす変形の域を超えたものであって,格別の創意が見られるものである。
従って意匠全体として観察すれば,本願意匠は十分に創作性のある意匠であって,意匠法第3条第2項には該当しないものと思料する。


第4 当審の判断

1 意匠の認定
(1)本願意匠
1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「点滴スタンド」である。

2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,車輪を備えた脚部に1本の長い支柱部を設け,その略上端付近に平面視略十字状となるようにアーム部を4本配した点滴スタンドの,対向する2本のアーム部分であって,点滴用バッグを吊り下げて保持するために用いられる部分である。

3)形態
ア 基本的構成態様
全体を略直線状とし,外側の先端部分を,下方に折り曲げてフック部を形成したアーム部2本を,支柱部を挟んで平面視点対称の形状となるようにして水平方向に配置したものである。

イ 具体的態様
(ア)フック部を,アーム部の直線状部分から鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,アーム部を手前側に延伸した向きで右奥方向に,正面視で略U字状となるよう折り曲げ,
(イ)その後,フック部先端がアーム部の真下に位置するよう,アーム部を手前側に延伸した向きで左奥方向に折り曲げ,フック部全体が,平面視において略三角形状をなすよう形成したものである。

(2)意匠1
意匠1の意匠に係る物品は,「医療機器用スタンド」であって,意匠1の本願部分に相当する部分(以下,「意匠1部分」という。)は,車輪を備えた脚部に1本の長い支柱部を設け,その略上端付近に平面視略十字状となるようにアーム部を4本配した点滴スタンドの,対向する2本のアーム部分であって,医療用バッグを吊り下げて保持するために用いられる部分である。そして,その基本的構成態様は,全体を略直線状とし,外側の先端部分を,下方に折り曲げてフック部を形成したアーム部2本を,支柱部を挟んで平面視点対称の形状となるように水平方向に配置したものであり,具体的形態は,フック部を,アーム部の直線状部分から鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,アーム部を手前側に延伸した向きで右奥方向に,正面視で略U字状となるよう折り曲げ,フック部先端がアーム部よりも高い位置になる長さとし,フック部全体が,平面視において略「レ」字状をなすよう形成したものである。

(3)意匠2
原審が例示した意匠2は,特許庁発行の登録実用新案公報記載の実用新案登録第3096656号の【図4】【図5】【図6】に表された意匠であるが,明細書の記載によると,図6のフック部の意匠は図5のフック部の意匠と折り曲げる向きをアーム部を挟んで線対称とした意匠であり,図4及び図5が表す意匠とは別の意匠である。しかし,原審がこれらの意匠を例示したのは,本願意匠が属する物品分野において,対向するフック部をアーム部に対し左右逆方向に曲げずらして設けることは公知の手法であることを示すためであり,その点に関していえば,図4及び図5が表す意匠も,図6が表す意匠もその形態的特徴を備えている。そこで,当審においては,図4及び図5が表す意匠を,意匠2として認定する。

意匠2の意匠に係る物品は,「医療機器用スタンド」であって,意匠2の本願部分に相当する部分(以下,「意匠2部分」という。)は,車輪を備えた脚部に1本の長い支柱部を設け,その略上端付近に平面視略一文字状となるようにアーム部を対向して2本配した点滴スタンドのアーム部分であって,医療用バッグを吊り下げて保持するために用いられる部分である。そして,その基本的構成態様は,全体を略直線状とし,外側の先端部分を,下方に折り曲げてフック部を形成したアーム部2本を,支柱部を挟んで平面視点対称の形状となるように水平方向に配置したものであり,具体的形態は,フック部を,アーム部の直線状部分からアーム部を手前側に延伸した向きで左方向にやや折り曲げ,そこから鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,アーム部を手前側に延伸した向きで左奥方向に,正面視で略U字状となるよう折り曲げ,フック部先端がアーム部と同じ高さになる長さとし,フック部全体が,平面視において略逆「レ」字状をなすよう形成したものである。

(4)意匠3
意匠3の意匠に係る物品は,「点滴用スタンド」であって,意匠3の本願部分に相当する部分(以下,「意匠3部分」という。)は,車輪を備えた脚部に1本の長い支柱部を設け,その略上端付近に平面視略十字状となるようにアーム部を4本配した点滴スタンドの,対向する2本のアーム部分であって,点滴用バッグを吊り下げて保持するために用いられる部分である。そして,その基本的構成態様は,全体を略直線状とし,外側の先端部分を,下方に折り曲げてフック部を形成したアーム部2本を,支柱部を挟んで平面視点対称の形状となるように水平方向に配置したものであり,具体的形態は,フック部を,アーム部の直線状部分から鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,支柱部側に向かって正面視で略U字状となるよう折り曲げ,フック部先端を支柱側に向かってアーム部の直線状部分と並行になるよう折り曲げて,フック部先端がアーム部よりも低い位置になるよう形成し,フック部全体が,平面視において略一文字状をなすよう形成したものである。

(5)意匠4
意匠4の意匠に係る物品は,「点滴用スタンド」であって,意匠4の本願部分に相当する部分(以下,「意匠4部分」という。)は,車輪を備えた脚部に1本の長い支柱部を設け,その略上端付近に平面視略十字状となるようにアーム部を4本配した点滴スタンドの,対向する2本のアーム部分であって,点滴用バッグを吊り下げて保持するために用いられる部分である。そして,その基本的構成態様は,全体を略直線状とし,外側の先端部分を,下方に折り曲げてフック部を形成したアーム部2本を,支柱部を挟んで平面視点対称の形状となるように水平方向に配置したものであり,具体的形態は,フック部を,アーム部の直線状部分から鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,支柱部側に向かって正面視で略U字状となるよう折り曲げ,フック部先端を支柱側に向かってアーム部の直線状部分と並行になるよう折り曲げて,フック部先端がアーム部よりも低い位置になるよう形成し,フック部全体が,平面視において略一文字状をなすよう形成したものである。

2 創作非容易性の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

本願部分と意匠3部分及び意匠4部分は,全体を略直線状とし,外側の先端部分を,下方に折り曲げてフック部を形成したアーム部2本を,支柱部を挟んで平面視点対称の形状となるよう水平方向に配置した基本的構成態様,及びフック部の具体的な正面視態様も,ほとんど共通している。そして,本願部分のフック部先端の態様,及びそれを含めたフック部全体の態様は,意匠3及び意匠4と相違しているが,この点については,原査定においては,意匠1及び意匠2を例示して,公然知られた手法(意匠1,意匠2)でアーム部に対し左右逆方向に曲げずらして形成したに過ぎない,と判断している。

しかし,本願部分のフック部先端の態様,及びそれを含めたフック部全体の態様については,以下の理由により,当業者が容易に創作することができたものということはできない。
本願部分のフック部先端の態様及びそれを含めたフック部全体の態様は,フック部を,アーム部の直線状部分から鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,アーム部を手前側に延伸した向きで右奥方向に,正面視で略U字状となるよう折り曲げ,その後,フック部先端がアーム部の真下に位置するよう,アーム部を手前側に延伸した向きで左奥方向に折り曲げ,フック部全体が,平面視において略三角形状をなすよう形成したものであり,すなわち,アーム部を手前側に延伸した向きで見たときに,右奥側に一度折り曲げ,その後左奥側に折り曲げた態様としている。他方,意匠1部分及び意匠2部分のフック部先端及びそれを含めたフック部全体の態様は,アーム部を手前側に延伸した向きで見たときに,左奥側に一度折り曲げただけの平面視逆「レ」字状とした態様であり,本願部分の態様とは相違するものである。
そして,本願部分のように,アーム部の直線状部分から鉛直方向下方側に緩やかに折り曲げた後,アーム部を手前側に延伸した向きで右奥方向に,正面視で略U字状となるよう折り曲げ,その後,フック部先端がアーム部の真下に位置するよう,アーム部を手前側に延伸した向きで左奥方向に折り曲げ,フック部全体が,平面視において略三角形状をなすよう形成した態様は,本願出願前には見られない本願独自の態様であると認められる。

よって,本願部分は,本願出願前に公然知られた形態に基づいて,当業者が容易に創作することができたものということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-06-09 
出願番号 意願2014-6189(D2014-6189) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 渡邉 久美
久保田 大輔
登録日 2016-07-29 
登録番号 意匠登録第1557232号(D1557232) 
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 
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