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審決分類 審判    A1
審判    A1
管理番号 1318120 
審判番号 無効2014-880003
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-02-06 
確定日 2016-08-01 
意匠に係る物品 アイスクリーム用コーンカップ 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1470898号「アイスクリーム用コーンカップ」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
1.審判請求書
(1)請求の趣旨
請求人は,「意匠登録第1470898号の登録は,これを無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証までの書証を提出し,その理由として,以下のとおり主張した。

(2)意匠登録無効の理由の要点
意匠登録第1470898号意匠(以下,「本件登録意匠」という。(甲第1号証に記載された意匠))は,当該意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(公知意匠1ないし5(甲第2号証ないし甲第6号証に記載された意匠))に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠であるので,本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当する。(以下,「無効理由1」という。)
また,本件登録意匠は,他人の先願に係る意匠(先願意匠(甲第7号証に記載された意匠))と類似するものであるから,意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものである。(以下,「無効理由2」という。)
したがって,同法第48条第1項第1号の規定により,本件登録意匠の登録は無効とされるべきである。

(3)本件登録意匠
1)本件登録意匠の手続の経緯
本件登録意匠は,意匠登録第1470898号として意匠登録を受けている意匠であり,その手続経緯等は次のとおりである。
平成24年12月11日 出願登録出願(意願2012-030279)
平成25年 3月26日 登録査定(起案日)
平成25年 4月26日 設定登録
平成25年 6月 3日 意匠公報発行

2)本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠である。以下,その形態について特定する。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるアイスクリーム用コーンカップである。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には4つの凸部が設けられている。
(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。当該持ち手部の表面には,格子柄形状が設けられている。
(B)具体的構成態様
(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(4つの凸部及び4つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。
(f)下方の持ち手部に設けられた格子柄形状は,具体的には,略正方形状の凹みが連続する形状となっている。
(g)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:7である。

(4)本件登録意匠を無効にすべき理由
1)無効理由1: 意匠法第3条第2項の適用について
(i)引用意匠
イ 公知意匠1の要旨
公知意匠1は,ソフトクリーム用可食容器に係る意匠である(意匠登録第1440544号:2012年5月14日意匠公報発行)。以下,公知意匠1の形態を本件登録意匠との比較に必要な範囲において特定する。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器であって,上方収容部についての部分意匠である。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には4つの凸部が設けられている。
(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。
(B)具体的構成態様
(d)上方の収容部の側壁は,内側へ弧を描いて膨らんでいる。
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(4つの凸部及び4つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。

ウ 公知意匠2の要旨
公知意匠2は,ソフトクリーム用可食容器に係る意匠である(意匠登録第1456658号:2012年12月3日意匠公報発行)。以下,公知意匠2の形態を本件登録意匠との比較に必要な範囲において特定する。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器であって,表面に付された形状以外の外形についての部分意匠である。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には6つの凸部が設けられている。
(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。
(B)具体的構成態様
(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(6つの凸部及び6つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。

エ 公知意匠3の要旨
公知意匠3は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠である(意匠登録第1064939号:2000年3月27日意匠公報発行)。以下,公知意匠3の形態を本件登録意匠との比較に必要な範囲において特定すると,次のようになる。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器である。
(b)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。
(B)具体的構成態様
(c)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。
(d)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:6である。

オ 公知意匠4の要旨
公知意匠4は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠である(意匠登録第1064947号:2000年3月27日意匠公報発行)。以下,公知意匠4の形態を本件登録意匠との比較に必要な範囲において特定する。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるアイスクリーム用コーンカップである。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部に6つの凸部が設けられている。
(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。
(B)具体的構成態様
(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(6つの凸部及び6つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。
(f)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:7である。

カ 公知意匠5の要旨
公知意匠5は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠である(意匠登録第1010610号:1998年5月21日意匠公報発行)。以下,公知意匠5の形態を本件登録意匠との比較に必要な範囲において特定する。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるアイスクリーム用コーンカップである。
(b)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。当該持ち手部の表面には,格子柄形状が設けられている。
(B)具体的構成態様
(c)下方の持ち手部に設けられた格子柄形状は,具体的には,略正方形状の凹みが連続する形状となっている。
(d)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:6である。

(ii)本件登録意匠の創作容易
本件登録意匠は,上記公知意匠1ないし5の存在から考えて,当業者が容易に創作できた意匠に該当する。

本件登録意匠の基本的構成態様のうち,「(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるアイスクリーム用コーンカップである。」と「(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。」という点については,上記した公知意匠1ないし5に限らず,多くのアイスクリーム用コーンカップが有する基本的骨格であることは顕著な事実であって,前記基本的構成態様(a)及び(c)には創作性は全くない。また,「(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には4つの凸部が設けられている。」という点についても,上端が花弁状凹凸形状にて形成されている形状は,公知意匠1,2及び4において設けられているため創作性はなく,また,凸部が4つである点についても公知意匠1で既に開示されているところであって新規な創作とはいえない。すなわち,基本的構成態様の(b)は公知意匠1に表れている。よって,本件登録意匠の基本的構成態様に係る(a)ないし(c)については,何ら新しい創作に係る意匠は表れていない。

また,本件登録意匠の具体的構成態様のうち,「(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。」という点については,公知意匠2ないし4において表れており,収容部側壁を外側へ弧を描いて膨らませる形状は新規な創作ではない。また,「(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(4つの凸部及び4つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。」という点についても,公知意匠1に表れている。「(f)下方の持ち手部に設けられた格子柄形状は,具体的には,略正方形状の凹みが連続する形状となっている。」については,公知意匠5において表れているし,持ち手部分に格子柄形状を設けることはこの種物品分野においてはありふれた形態である。「(g)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:7である。」という点については,公知意匠4とほぼ同等であり,公知意匠3及び5とも全体的な割合は同等であるといえる。よって,本件登録意匠の具体的構成態様に係る(d)から(g)についても,何ら新しい創作に係る意匠は表れていない。

本件登録意匠の各要素の結合によって,本件登録意匠に創作性を認めることができるかどうかであるが,本件登録意匠においては,具体的構成態様(d)及び(e)の結合,すなわち,上方の収容部側壁を外側に弧を描いて膨らませ,上端において,4つの凸部を形成する花弁状凹凸部を形成している点において,本件登録意匠らしさが認められると考えられる。しかし,そのような形態は,公知意匠1及び2の存在から当業者であれば容易に創作可能である。公知意匠1には,4つの凸部を有する花弁状凹凸部が形成されており,また,公知意匠2には,上端において花弁状凹凸部を形成している意匠において,収容部側壁が外側へ膨らんでいる形状が表れている。よって,公知意匠1及び2を組み合わせることによって本件登録意匠の具体的構成態様(d)及び(e)に係る形態を創作することは,当業者にとって容易である。本件登録意匠の出願日と公知意匠1及び2の公報発行日とが比較的近いことから考えても,本件登録意匠の出願日当時の当業者であれば,公知意匠1及び2に基づいて,本件登録意匠の収容部及び上端の花弁状凹凸部に関する形態を創作することは容易であったといえる。

以上より,本件登録意匠は,公知意匠1ないし5に基づいて,当業者により容易に創作できたといえる意匠である。また,本件登録意匠の意匠として重要な部分といえる収容部及び上端の花弁状凹凸部の形状についても,公知意匠1及び2に基づいて容易に当業者が創作することができたといえる。よって,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当する。

2)無効理由2:意匠法第9条第1項違背について
本件登録意匠は,その出願日(2012年12月11日出願)前の出願に係る意匠登録第1474523号の意匠(先願意匠。2012年6月4日出願。甲第7号証)と類似である。以下,先願意匠の形態を特定し,本件登録意匠との類似について述べる。

(i)先願意匠
先願意匠(意匠登録第1474523号の意匠)の要旨
先願意匠は,ソフトクリーム用可食容器に係る意匠である。以下,その形態について特定する。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器である。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には6つの凸部が設けられている。
(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。
(B)具体的構成態様
(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(6つの凸部及び6つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。
(f)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:5である。

(ii)本件登録意匠と先願意匠との類否
本件登録意匠と先願意匠とは,以下の点において差異点がある。
・花弁状凹凸部において,本件登録意匠では4つの凸部と4つの凹部から構成されているのに対して,先願意匠では6つの凸部と6つの凹部とから構成されている点
・持ち手部において,本件登録意匠では格子状柄があるのに対して,先願意匠にはそのような格子柄が存在しない点
・収容部と持ち手部との長さ比が,本件登録意匠では約1:7であるのに対して,先願意匠では,約1:5である点

しかし,上記差異点は,いずれも,需要者が着目しない点における些細な相違に過ぎない。
差異点のうち,花弁状凹凸部における凸部及び凹部がそれぞれ4つか6つかの点については,花弁状凹凸が4つのものは公知意匠1により本件登録意匠の出願前から公知であり,花弁状凹凸が6つのものは公知意匠2において本件登録意匠の出願前より公知であるため,花弁状凹凸が4つか6つかという点から需要者は大きな美的印象の違いを受け取ることはない。また,需要者としては,花弁状凹凸が4つか6つかというところに大きな美的印象を受け取るのではなく,4つないし6つの花弁状凹凸が外側に膨らんだ収容部の上端に設けられているという共通点の方から大きな美的印象を受け取るものである。また,本件登録意匠が有する持ち手部に設けられた格子柄形状については,公知意匠5において表れているし,持ち手部分に格子柄形状を設けることはこの種物品分野においてはありふれた形態であるので,この点についても差異点として大きく評価することはできない。さらに,収容部と持ち手部との長さ比の違いについても,約1:7と約1:5の違いであって,決して目立つ差異といえるものではなく,些細な相違である。このように,本件登録意匠と先願意匠との差異点については,いずれも,些細な相違といえるものであって,大きく評価することはできない。
その一方で,両意匠は,「収容部と持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器であって,収容部上端には花弁状凹凸部が形成されており,当該花弁状凹凸部には4つあるいは6つの凸部及び凹部が設けられていて,収容部の側壁は外側へ弧を描いて膨らんでいて,持ち手部分は断面円形で下方に向かって窄む形状であって,収容部と下方の持ち手部との長さ比が約1:5ないし約1:7である。」という全体印象において共通している。両意匠は全体印象から受ける共通点の印象が強く,両意匠の共通点から需要者は,共通の美的印象を受け取るものである。
以上より,本件登録意匠は,先願意匠と類似である。

(5)むすび
上記のとおり,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当し,また,同法第9条第1項に違反して登録されたものであるから,同法48条第1項第1号の規定により,本件登録意匠の登録は無効とされるべきである。

(6)証拠方法
1)甲第1号証:意匠登録第1470898号(本件登録意匠)意匠公報(写し)
2)甲第2号証:意匠登録第1440544号(公知意匠1)意匠公報(写し)
3)甲第3号証:意匠登録第1456658号(公知意匠2)意匠公報(写し)
4)甲第4号証:意匠登録第1064939号(公知意匠3)意匠公報(写し)
5)甲第5号証:意匠登録第1064947号(公知意匠4)意匠公報(写し)
6)甲第6号証:意匠登録第1010610号(公知意匠5)意匠公報(写し)
7)甲第7号証:意匠登録第1474523号(先願意匠)意匠公報(写し)

2.審判事件弁駁書
請求人は,被請求人の本件審判事件に対する平成26年7月29日の答弁に対して,平成27年8月10日に以下のとおり弁駁し,併せて,証拠方法として甲第8号証ないし甲第15号証の書証を提出した。

(1)弁駁の内容
被請求人は,平成26年7月29日提出の審判事件答弁書(以下,「答弁書」という。)において,本件登録意匠の特定,甲第2号証から甲第6号証の各先行意匠の特定を独自に行った上で,創作性に関する反論を行った。また,この本件登録意匠の特定に基づき甲第7号証の意匠との類否に関する反論も行った。被請求人の主張を総合すると,まず,本件登録意匠の特定を誤っている。特に,収容部と持ち手部の区分および特定については明らかな誤りを犯している。このような誤った特定に基づき,被請求人は,創作性や類否に関する主張を行っているので,当然各主張も誤りとなっている。以下,各点に関する被請求人の答弁に対して弁駁を行う。

1)本件登録意匠の特定に関する反論
(i)収容部と持ち手部の区別
被請求人は,答弁書4ページ下から11行目から8行目において,本件登録意匠の「持ち手部」と「収容部」の特定について,『上方に拡開部分を有するタイプでは,「コーン」に相当する部分,すなわち,下端から上方に向かって“一定の傾斜”拡径している部分を「持ち手部」と解すべきであり,それより上方で“持ち手部の傾斜に対して不連続に”拡開している部分が「収容部」である。』と述べる。しかし,この特定方法については特に根拠も示されておらず失当である。被請求人の言う各部名称と対応部位に関連性はなく主観的特定に過ぎない。
請求人が考える「持ち手部」とは,正に「需要者が本物品を持つ部分」である。本物品をどのように持つかについて甲第8号証を提出する。甲第8号証は,本件登録意匠に係る製品を自然に持った写真である。本物品はアイスクリームを幅広く盛るための収容部を備えているため上方が重くなりがちであり,安定のために収容部の膨らみを親指で支えて持つ「支え持ち」,または,収容部の膨らみを人差し指と親指の間に載せるように持つ「載せ持ち」という方法で,需要者は本物品を持つ。もちろん,甲第8号証に示す持ち位置よりも下方で持つこともあるが,より安定して本物品を持つために,収容部を親指で支えたり,収容部を親指と人指し指の間に載せるように持つ方法が自然に取られる。このような「支え持ち」や「載せ持ち」を行った場合,格子状部の上端まで持ち手として使用されていることが甲第8号証から明らかである。よって,我々の「持ち手部」とは「需要者が本物品を持つ部分」であるという立場に立てば,「持ち手部」と「収容部」と名付けられる各部位は甲第1号証に示したとおりであって,さらに詳細には甲第9号証の図1に示す。甲第8号証および甲第9号証の図1をみれば,我々が特定する「持ち手部」と「収容部」が正しく,また,その特定についても明らかとなっている。

(ii)基本的構成態様と具体的構成態様に対する反論
被請求人は,甲第2号証から甲第6号証の公知意匠が有してない特徴として,本件登録意匠の具体的構成態様の以下の点を挙げている(答弁書3ページ5行目から12行目)。
V.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ外側に湾曲している第一傾斜部と,第一傾斜部から上方に向かいつつ外側に湾曲することなく外側に大きく張り出している第二傾斜部と,第二傾斜部から上方に向かい,持ち手部の円錐部の軸方向とほぼ平行に急激に立ち上がっている立ち上がり部とを備えている。
VI.持ち手部から収容部の中途まで,外表面に格子柄形状が設けられており,収容部の格子柄形状は,花弁状凹凸形状において花弁に対する萼のように配されている。
まず,上記V.の点であるが,先に述べたように,被請求人は「持ち手部」と「収容部」の位置を誤っているので,V.のような特定はあり得ず,収容部は,「第一傾斜部,第二傾斜部や立ち上がり部」のように分けて特定されるものではない。需要者は本物品を持った際に格子柄の上端まで指で本物品を持つのであるから,指に隠れていない収容部というのは,甲第9号証の図2で示すように,収容部外壁の略一定の円弧形状のみである。よって,上記V.における本件登録意匠の特定は失当である。
また,上記VI.において,被請求人は,収容部の格子柄形状は花弁状凹凸形状において花弁に対する萼のように配されていると述べるが,格子柄形状は持ち手部にのみ付されているので,「収容部の格子柄形状」という特定は誤りである。持ち手部にのみ付された格子柄形状は,花弁に対する萼と認識されるものではなく,花柄(花序の中央の軸から分枝し,各々の花をつけている柄の部分)全体に付された模様との美感を受けるものである。

(iii)本件登録意匠の特定
上記のように,持ち手部と収容部の区分の誤解に基づく被請求人による本件登録意匠の特定は失当である。本件登録意匠の特定は,請求人が審判請求書3ページで行ったものが正しく,以下のようになる。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるアイスクリーム用コーンカップである。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には4つの凸部が設けられている。
(c) 下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。当該持ち手部の表面には,格子柄形状が設けられている。
(B)具体的構成態様
(d) 上方の収容部の側壁は,外側へ略一定の弧を描いて膨らんでいる。
(e) 上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(4つの凸部及び4つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。
(f)下方の持ち手部に設けられた格子柄形状は,具体的には,略正方形状の凹みが連続する形状となっている。
(g)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:7である。

2)創作性に関する答弁に対する反論
(i)公知意匠1から5の特定
まずは,既に我々が示した「持ち手部」と「収容部」の区分方法に従って,公知意匠1から5の「持ち手部」と「収容部」を甲第10号証で特定する。青の点線の上方が「収容部」,下方が「持ち手部」である。いずれも,需要者が各物品を持つ際に手が添えられる範囲については「持ち手部」としている。
甲第10号証と乙第2号証とを比べると,公知意匠2および4において,請求人と被請求人間で「持ち手部」と「収容部」の範囲が一致していないことが分かる。公知意匠2においては,需要者は膨らんでいる収容部の下端を「支え持ち」または「載せ持ち」することが予想できるので,持ち手部の上端は,収容部の膨らみの下端であって,甲第10号証での特定が正しい。また,この考え方は,公知意匠4でも同じである。収容部の膨らみの下端が持ち手部の上端となる。よって,乙第2号証における公知意匠2および4の「持ち手部」と「収容部」の区分けは失当である。
被請求人は誤った特定に基づいて,公知意匠2および4を特定している。例えば,公知意匠2の特定においては,答弁書7ページ6行目および7行目において,「収容部の側壁は,・・・僅かに内側に湾曲している部分と,更に上に向かいつつ外側に大きく湾曲している部分とが緩やかに連続している」と特定しているが,収容部には「僅かに内側に湾曲している部分」などなく失当である。また,公知意匠4の特定においても,答弁書8ページ下から8行目から10行目において「収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続している。」と特定されているが,収容部には「僅かに内側に湾曲している部分」などなく失当である。
なお,被請求人は,公知意匠2においては,凸部間に境界線があらわれていると特定している。しかし,公知意匠2(ないし4)は,外側に略一定の円弧を描いて膨らんでいる花弁部の意匠として引用しているので,境界線の存在まで引用意匠として特定する必要はない。
よって,被請求人の公知意匠1ないし5の特定も不適当であって失当である。我々が審判請求書で行った公知意匠1ないし5の特定が正しい。

(ii)創作容易であること
被請求人は,答弁書10ページ3行目から9行目において,被請求人の言う本件登録意匠の要素V(第一傾斜部,第二傾斜部および立ち上がり部からなる収容部の外壁)はいずれの公知意匠も有していないと主張する。しかし,上述したように,収容部には第一傾斜部および第二傾斜部というものはない。収容部の外壁は略一定の円弧にて外側に膨らんでいるのみであって,公知意匠2ないし4で既に採用されている形態である。よって,この点における被請求人の主張は失当である。
また,被請求人は,答弁書10ページ10行目から18行目において,被請求人の言う本件登録意匠の要素V(収容部の格子柄形状は花弁状凹凸形状において花弁に対する萼のように配されている形態)はいずれの公知意匠も有していないと主張する。しかし,上述したように,本件登録意匠の収容部に格子柄形状はない。格子柄形状は持ち手部の上端で完結していて,このような形態は公知意匠5に既に採用されている。
このように,被請求人の新規な創作ポイントに関する主張は,本件登録意匠に対する誤解に基づいて行われたものであり失当である。よって,審判請求書において我々が主張したとおり,本件登録意匠は公知意匠1から5によって創作容易である。

3)類否に関する反論
(i)先願意匠の特定に関する反論
被請求人は,答弁書12ページ9行目において,先願意匠の収容部の具体的構成態様として「V. 収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続している」と特定している。これは,乙第3号証の右上図もそうであるが,収容部の範囲を誤っている。既に述べたように,収容部の膨らみ部分の下端までが実際に需要者に持たれる部分であるので,持ち手部は甲第11号証に示すように収容部の外側膨らみの下端までである。そうすると,先願意匠は,被請求人の言うように,内側湾曲部分と外側湾曲部分とからなる収容部と捉えられることなく,略一定の円弧を外側に描く側壁のみを有する収容部と特定されるべきである。よって,先願意匠の特定は,請求人が審判請求書9,10ページで行ったものが正しく,以下のようになる。
(A)基本的構成態様
(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器である。
(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には6つの凸部が設けられている。
(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。
(B)具体的構成態様
(d)上方の収容部の側壁は,外側へ略一定の弧を描いて膨らんでいる。
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(6つの凸部及び6つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。
(f)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:5である。

(ii)相違点に関する評価に対する反論
被請求人は,答弁書14ページ1行目から4行目において,「花を模した形状において,花弁が4枚であるか6枚であるかは美観に大きな差異を与える」と述べる。しかし,我々が審判請求書で述べたように,花弁状凹凸が4つのものは公知意匠1により公知であり,花弁状凹凸が6つのものは公知意匠2により公知であるから,花弁状凹凸の数というのは需要者に顕著な美感を与えるものではない。また,被請求人は上記主張を行ったが,特に明確な理由を述べることなく主張するのみであって,全く根拠がない。よって,本件登録意匠と先願意匠の花弁部においては「4つないし6つの花弁状凹凸が外側に膨らんだ収容部の上端に設けられている」という収容部の全体印象から生じる共通点から受け取られる共通の美感が顕著である。
被請求人は,答弁書14ページ4行目から10行目において,「花弁に相当する凸部間の凹部が緩やかに湾曲している場合は,朝顔やペニチュアのように花弁が互いに合着している花(合弁花冠)を連想させ,花弁に相当する凸部間に境界線があらわれている場合は,分離した複数枚の花弁からなる(離弁花冠)を連想させるから,美観に与える差異は大きい」と述べる。しかし,花弁がそれぞれ離れて独立しているかのような印象を受け取るのは,花弁の凸部にもっと高さがあって,かつ,一つ一つの花弁が独立している場合である。先願意匠のように花弁凸部の高さがあまりなく,各花弁が一連との印象の方が強いものについては,各凸部が分離しているかのような印象は受けない。よって,花弁凹部に平面視で境界線が入っているか否かだけで,需要者は大きな美的印象の差異を受け取らない。
被請求人は,答弁書14ページ11行目から15行目において,「(本件登録意匠の)収容部の側壁における不連続な曲面は,それまでの意匠にはなかった新規な印象を与えるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい」と述べる。しかし,これは先に述べたとおり,本件登録意匠の収容部の範囲の誤解に基づくものである。本件登録意匠の収容部は略一定に外側に弧を描いている側壁のみである以上,先願意匠と共通する。
被請求人は,答弁書14ページ16行目から20行目において,「持ち手部から収容部の中途まで外表面に形成されている格子柄形状に関する相違点も,それまでの意匠が与えなかった新規な印象を与えるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい」と述べる。しかし,これも本件登録意匠の収容部の範囲の誤解に基づくものであって,本件登録意匠において格子柄形状が付されているのは持ち手部のみである。持ち手部に格子柄形状が付されているコーンカップは甲第6号証に開示されているところである。その他,甲第12号証および同13号証にも開示されているところである。さらに,持ち手部から収容部にかけて全体に格子柄形状が付されている公知意匠も存在する(甲第14号証および同15号証)。よって,持ち手部に格子柄形状が付されている形態は需要者に新規な印象を与えるものではなく,また,そもそもコーンの全体にわたって格子柄形状を付すという形態も特に新規ではない。
以上のとおり,被請求人の行った本件登録意匠と先願意匠の相違点の評価は失当である。

(iii)乙第3号証に対する反論
被請求人は,答弁書15ページ1行目から10行目において,「本件登録意匠と先願意匠が類似であること」および「本件登録意匠が公知意匠1から5に基づいて容易に創作できたものであること」に関する請求人の主張に対して,意匠の要旨認定において敢えて相違点のいくつかを除外していると述べる。しかし,その除外された相違点がどこなのかについては言及がなく不明確な主張であって認否もできない。請求人から言えることとすれば,まず,類否判断においては需要者が受け取る美感の異同が判断基準となるのであるから,比較対象となる両意匠の特定も需要者に対して美感を与える形態のみを特定すれば足りる。被請求人は本件登録意匠と先願意匠を非類似にしたいがために不必要な形態についてまで詳細に特定することを望むつもりであろうが,意匠の類否判断においては不公平な特定となり失当である。
また,創作性に関する公知意匠の特定においては,公知意匠と本件登録意匠のもっている共通の創作ポイントのみに絞って公知意匠の形態を特定するのが当然であるから(逆に,公知意匠の形態において本件登録意匠の形態に関係ない部分は特定する必要はない),その前提に基づき,本件においても公知意匠1ないし5の特定を行っている。
また,被請求人は,「乙第3号証に示すように,請求人の登録意匠である甲第7号証の意匠(先願意匠)は,甲第5号証(公知意匠4)の意匠と基本的構成態様および具体的構成態様の全ての要素において同一である」と述べる。しかし,これは前述のとおり,意匠の類否判断における形態特定の必要範囲について誤解をした上での主張であることは明白である。先願意匠と公知意匠4とを比較するに際しては,本件とは当然需要者視点が変化してくるのであり,その変化に伴った両意匠の比較が行われる(本件で両意匠の特定を行う意味がないのでここでは特定は行わない)。この形態特定の大前提を無視した被請求人の主張は失当である。

4)むすび
上記のとおり,被請求人の答弁書における主張はいずれも妥当ではなく,我々が審判請求書で主張したように,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項および同法第9条第1項の規定に該当するものであるから,同法第48条第1項第1号の規定により,本件登録意匠の登録は無効とされるべきである。

(2)証拠方法
1)甲第 8号証 本件登録意匠を持った状態の写真(写し)
2)甲第 9号証 本件登録意匠の「持ち手部」と「収容部」とを示した図 (写し)
3)甲第10号証 公知意匠1ないし5の「持ち手部」と「収容部」とを示 した図(写し)
4)甲第11号証 先願意匠の「持ち手部」と「収容部」とを示した図(写 し)
5)甲第12号証 意匠登録第1010292号の類似1の意匠公報(写し )
6)甲第13号証 意匠登録第331677号の意匠公報(写し)
7)甲第14号証 意匠登録第752618号の意匠公報(写し)
8)甲第15号証 意匠登録第1106606号の意匠公報(写し)

第2 被請求人の答弁及び理由
1.審判事件答弁書(平成26年7月29日付け審判事件答弁書)
(1)答弁の趣旨
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める旨答弁するとともに,証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証までを提出し,その理由として,要旨以下のとおり主張した。

(2)答弁の理由
1)本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1470898号の意匠)は,平成24年12月11日に意匠登録出願され,平成25年4月26日に意匠権の設定の登録がなされたものである。
意匠に係る物品を「アイスクリーム用コーンカップ」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりのものであり,少なくとも次の要素を有している。
<基本的構成態様>
I.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
II.収容部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が4つ設けられている。
III.持ち手部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
IV.収容部の花弁状凹凸形状において,凹部は緩やかに湾曲しており,隣接する凸部間に境界線はあらわれていない。
V.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ外側に湾曲している第一傾斜部と,第一傾斜部から上方に向かいつつ外側に湾曲することなく外側に大きく張り出している第二傾斜部と,第二傾斜部から上方に向かい,持ち手部の円錐形の軸方向とほぼ平行に急激に立ち上がっている立ち上がり部とを備えている。
VI.持ち手部から収容部の中途まで,外表面に格子柄形状が設けられており,収容部の格子柄形状は,花弁状凹凸形状において花弁に対する萼(がく。花弁を囲む葉状の部分。)のように配されている。

2)請求人の主張
審判請求書によれば,請求人は次の理由1及び理由2を主張し,本件登録意匠の登録は無効とされるべきであると述べている。
理由1:本件登録意匠は,甲第2号証?甲第6号証の意匠に基づいて容易に創作をすることができた意匠であるため,意匠法第3条第2項に該当し,同法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきである(審判請求書2頁17行?9頁10行)。
理由2:本件登録意匠は,甲第7号証の意匠に類似するため,本件登録意匠の登録は意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものであり,同法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきである(審判請求書2頁17行?3頁2行,9頁11行?11頁13行)。

3)請求人の主張に対する答弁
3-1)理由1(意匠法第3条第2項)に対する答弁
(i)本件登録意匠の要旨
本件登録意匠の形態は,上述のように,基本的構成態様の要素I?III,及び,具体的構成態様の要素IV?VIよって特定することができる。
ここで,形態の特定に当たり対比の便宜を鑑みて請求人が使用している名称「収容部」及び「持ち手部」を使用しているが,意匠において,それぞれどの部分を「収容部」及び「持ち手部」と解するかについては,請求人と被請求人とで相違している。請求人は,甲第1号証(本件登録意匠の登録公報)の第2頁の正面図に,「収容部」及び「持ち手部」の範囲を示す書き込みを行っているが,これによれば意匠の上部で拡開している部分の“中途で”「収容部」と「持ち手部」とが区分けされており,何を基準にここで区分けしたのかが全く不明である。格子柄形状を有する部分を「持ち手部」と解しているようにも見えるが,そうすると,格子柄形状のない他の意匠(甲第2号証?甲第5号証の意匠)では,何を基準に「収容部」及び「持ち手部」を区分けしたのか,全く理解できない。
物品「アイスクリーム用コーンカップ」には,全体がコーン形状のタイプや,本件登録意匠と同様にコーンの上方に更に拡開部分を有するタイプが含まれるが,上方に拡開部分を有するタイプでは,「コーン」に相当する部分,すなわち,下端から上方に向かって“一定の傾斜で”拡径している部分を「持ち手部」と解すべきであり,それより上方で“持ち手部の傾斜に対して不連続に”拡開している部分が「収容部」である。従って,本件登録意匠における「収容部」及び「持ち手部」は,乙第1号証の図1に示す範囲である。
また,請求人は,本件登録意匠における収容部の側壁の形態について,単に「外側へ弧を描いて膨らんでいる」と特定しているが,これは妥当ではない。本件登録意匠の収容部の側壁は,具体的構成態様の要素Vとして記載したように,持ち手部の上端から上方に向かいつつ外側に湾曲している「第一傾斜部」と,第一傾斜部から上方に向かいつつ外側に湾曲することなく外側に大きく張り出している「第二傾斜部」と,第二傾斜部から上方に向かい,持ち手部の円錐形の軸方向とほぼ平行に急激に立ち上がっている「立ち上がり部」とを備えている。「第一傾斜部」,「第二傾斜部」及び「立ち上がり部」の範囲を,乙第1号証の図2に示す。つまり,本件登録意匠の収容部の側壁部は,持ち手部の傾斜と不連続であるだけではなく,収容部の側壁部自体も,いったん外側に湾曲するように膨出してから(第一傾斜部),外側に湾曲することなく外側に大きく張り出し(第二傾斜部),更に急激に上方に立ち上がるというように(立ち上がり部),不連続な曲面からなっている。
加えて,請求人は,本件登録意匠の格子柄形状について,「持ち手部に設けられた」と特定しているが,これは妥当ではない。乙第1号証の図1に示した「収容部」の範囲から明らかなように,本件登録意匠の格子柄形状は,具体的構成態様の要素VIとして記載したように,「持ち手部から収容部の中途まで」設けられている。また,本件登録意匠の格子柄形状では,菱形が横に並んだ列が上下に積重されたおり,最上段の列の菱形は,花弁状凹凸部において,花弁に対して萼のように配されている。

(ii)甲第2号証?甲第6号証の意匠の要旨
甲第2号証?甲第6号証の意匠それぞれにおいて,下端から上方に向かって“一定の傾斜で”拡径している「持ち手部」と,持ち手部の上方で“持ち手部の傾斜に対して不連続に”拡開している「収容部」は,乙第2号証に示す範囲である。

(ii-1)甲第2号証の意匠の要旨
甲第2号証(意匠登録第1440544号の意匠公報)の発行日は平成24年5月14日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の前である。甲第2号証の意匠に係る物品は「ソフトクリーム用可食容器」であり,本件登録意匠に係る物品と同一または類似である。
甲第2号証の意匠は,収容部についての部分意匠であり,その形態は次のように特定することができる。
<基本的構成態様>
i .下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
ii.収容部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が4つ設けられている。
iii.持ち手部は,截頭円錐形である。
<具体的構成態様>
iv.収容部の花弁状凹凸形状において,凹部は緩やかに湾曲しており,隣接する凸部間に境界線はあらわれていない。
v.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ内側に湾曲していることにより,連続的に反りかえった形状である。

(ii-2)甲第3号証の意匠の要旨
甲第3号証(意匠登録第1456658号の意匠公報)の発行日は平成24年12月3日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の前である。
甲第3号証の意匠に係る物品は「ソフトクリーム用可食容器」であり,本件登録意匠に係る物品と同一または類似である。
甲第3号証の意匠は,外表面に施された凹凸模様を除く形状についての部分意匠であり,その形態は次のように特定することができる。
<基本的構成態様>
i.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
ii. 収容部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が6つ設けられている。
iii.持ち手部は,截頭円錐形である
<具体的構成態様>
iv.収容部の花弁状凹凸形状において,隣接する凸部間に境界線があらわれている。
v.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ外側に大きく湾曲している部分とが緩やかに連続している。

(ii-3)甲第4号証の意匠の要旨
甲第4号証(意匠登録第1064939号の意匠公報)の発行日は平成12年3月27日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の前である。甲第4号証の意匠に係る物品は「アイスクリーム用コーンカップ」であり,本件登録意匠に係る物品と同一または類似である。
甲第4号証の意匠の形態は,次のように特定することができる。
<基本的構成態様>
i.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
ii.収容部は,半球面状である。
iii.持ち手部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
iv.収容部は,花弁状凹凸形状を有していない。
v.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ外側に円弧状に湾曲している。
vi.持ち手部の外表面には,円錐形の頂部から伸び,底面図に放射状にあらわれている8本の凸条が形成されている。

(ii-4)甲第5号証の意匠の要旨
甲第5号証(意匠登録第1064947号の意匠公報)の発行日は平成12年3月27日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の前である。甲第5号証の意匠に係る物品は「アイスクリーム用コーンカップ」であり,本件登録意匠に係る物品と同一または類似である。
甲第5号証の意匠の形態は,次のように特定することができる。
<基本的構成態様>
i.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
ii.収容部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が6つ設けられている。
iii.持ち手部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
iv.収容部の花弁状凹凸形状において,凹部は緩やかに湾曲しており,隣接する凸部間に境界線はあらわれていない。
v.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続している。
vi.持ち手部の外表面には,円錐形の頂部から伸び,底面図において螺旋状にあらわれると共に,収容部の花弁状凹凸形状の輪郭につながっている6本の凸条が形成されている。

(ii-5)甲第6号証の意匠の要旨
甲第6号証(意匠登録第1010610号の意匠公報)の発行日は平成10年5月21日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の前である。
甲第6号証の意匠に係る物品は「アイスクリーム用コーンカップ」であり,本件登録意匠に係る物品と同一または類似である。
甲第6号証の意匠の形態は,次のように特定することができる。
<基本的構成態様>
i.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
ii.収容部の上部には王冠状凹凸形状が形成されている。
iii.持ち手部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
iv.収容部は,花弁状凹凸形状を有していない。
v.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ内側に湾曲している部分と,その上方に不連続に連設された王冠状凹凸形状とからなる。
vi.持ち手部の外表面に格子柄形状が設けられており,持ち手部と収容部との間に存在する境界線(凸条)で格子柄形状は途切れている。

(iii)検討
本件登録意匠の形態の各要素が,甲第2号証?甲第6号証の意匠の形態に基づいて容易に創作をすることができたものであるか否かについて,検討する。
本件登録意匠の基本的構成態様における要素Iは,甲第2号証?甲第6号証の意匠も有している。
本件登録意匠の基本的構成態様における要素IIは,甲第2号証の意匠が有していると言える。
本件登録意匠の基本的構成態様における要素IIIは,甲第4号証?甲第6号証の意匠が有していると言える。
本件登録意匠の具体的構成態様における要素IVは,甲第2号証及び甲第5号証の意匠が有していると言える。
本件登録意匠の具体的構成態様における要素Vは,甲第2号証?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素である。甲第2号証?甲第6号証の意匠のうち,花弁状凹凸形状を有する意匠は,甲第2号証,甲第3号証,及び甲第5号証の意匠である。甲第2号証,甲第3号証,及び甲第5号証の意匠の何れも,持ち手部の上端からいったん外側に湾曲するように膨出してから,外側に湾曲することなく外側に大きく張り出し,更に急激に上方に立ち上がる,不連続な曲面を有していない。
本件登録意匠の具体的構成態様における要素VIは,甲第2号証?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素である。甲第2号証?甲第6号証の意匠のうち,格子柄形状を有する意匠は,甲第6号証の意匠のみである。上述のように,甲第6号証の意匠における格子柄形状は,持ち手部のみに設けられており,持ち手部と収容部の境界で格子柄形状は途切れている。従って,格子柄形状が持ち手部から収容部の中途まで設けられている本件登録意匠の形態を,先行意匠は有していない。しかも,本件登録意匠において収容部の格子柄形状における最上段の菱形は,収容部に形成された花弁状凹凸形状と相まって,花弁に対する萼のような印象を与える。このように,花弁状凹凸形状と格子柄形状の双方を収容部に有することにより新たな美観を生じさせる本件登録意匠を,花弁状凹凸形状しか有していない先行意匠(甲第2号証,甲第3号証,甲第5号証の意匠),格子柄形状しか有していない先行意匠(甲第6号証の意匠),及び,花弁状凹凸形状も格子柄形状も有していない先行意匠(甲第4号証の意匠)に基づいて,容易に創作することができたと言うことはできず,本件登録意匠は高い創作力を発揮して創作されたものである。

以上のように,本件登録意匠を構成する要素のうち,先行意匠である甲第2号証?甲第6号証の意匠の一部が有している要素に創作性があるか否かの検討をするまでもなく,少なくとも要素V及び要素VIは,甲第2号証?甲第6号証の意匠が有していない要素である。そして,これらの要素が,この種の物品分野における周知の創作手法や通常行われている程度の多少の改変によって容易に創作し得るものであるといえる証拠はない。したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠に係る意匠登録出願の前に,日本国内又は外国における公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて,容易に創作することができたものであると言うことはできず,本件登録意匠は意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しない。

3-2)理由2(意匠法第9条第1項)に対する答弁
(i)本件登録意匠
本件登録意匠の形態は,上記((2)の1)本件登録意匠,及び3)3-1)(i)本件登録意匠の要旨,の項)において認定したとおりである。

(ii)甲第7号証の意匠の要旨
甲第7号証(意匠登録第1474523号の意匠公報)の意匠に係る意匠登録出願の日は平成24年6月4日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日より前である。意匠公報の発行日は平成25年7月16日であり,本件登録意匠に係る意匠登録出願より後である。
甲第7号証の意匠に係る物品は「ソフトクリーム用可食容器」であり,本件登録意匠に係る物品と同一または類似である。
甲第7号証の意匠の形態は,次のように特定することができる。なお甲第7号証の意匠において,下端から上方に向かって“一定の傾斜で”拡径している「持ち手部」と,持ち手部の上方で“持ち手部の傾斜に対して不連続に”拡開している「収容部」は,乙第3号証の右上図に示す範囲である。
<基本的構成態様>
i.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる。
ii.収容部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が6つ設けられている。
iii.持ち手部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
iv.収容部の花弁状凹凸形状において,隣接する凸部間に境界線があらわれている。
v.収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続している。
vi.持ち手部の外表面は平滑である。

(iii)本件登録意匠と甲第7号証の意匠の対比
本件登録意匠と甲第7号証の意匠との類否を,検討する。
本件登録意匠の意匠に係る物品は「アイスクリーム用コーンカップ」であり,甲第7号証の意匠の意匠に係る物品は「ソフトクリーム用可食容器」であり,両意匠の意匠に係る物品は同一または類似である。
本件登録意匠の形態と甲第7号証の意匠の形態とを対比すると,共通点及び相違点は以下のとおりである。
<共通点>
(あ)下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から持ち手部の傾斜に対して不連続に拡開している収容部とからなる点。
(い)収容部に花弁状凹凸形状が形成されている点。
(う)持ち手部が円錐形である点。
<相違点>
(ア)花弁状凹凸形状における凸部は,甲第7号証の意匠では6つであるのに対し,本件登録意匠では4つである点。
(イ)甲第7号証の意匠では,花弁状凹凸形状において隣接する凸部の間に境界線があらわれているのに対し,本件登録意匠では,花弁状凹凸形状における凹部は緩やかに湾曲しており,隣接する凸部間に境界線があらわれていない点。
(ウ)甲第7号証の意匠の収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続しているのに対し,本件登録意匠の収容部の側壁は,持ち手部の上端から上方に向かいつつ外側に湾曲している第一傾斜部と,第一傾斜部から上方に向かいつつ外側に湾曲することなく外側に大きく張り出している第二傾斜部と,第二傾斜部から上方に向かい,持ち手部の円錐形の軸方向とほぼ平行に急激に立ち上がっている立ち上がり部とを備えている点。
(エ)甲第7号証の意匠では,持ち手部の外表面が平滑であるのに対し,本件登録意匠では,持ち手部から収容部の中途まで,外表面に格子柄形状が設けられており,収容部の格子柄形状は,花弁状凹凸形状において花弁に対する萼のように配されている点。

<共通点,相違点の評価>
共通点(あ)及び共通点(う)は,意匠に係る物品「アイスクリーム用コーンカップ」と同一または類似の物品において多く見られる形態であると言える。共通点(い)は,同種の物品においてありふれた形態であるとは言えないが,上記のように収容部に花弁状凹凸形状を有する先行意匠が複数登録されていることから,花弁状凹凸形状を有することのみでは類否判断に及ぼす影響は小さく,花弁状凹凸形状の具体的な形態が類否判断に影響を及ぼすと考えられる。
そうすると,花弁状凹凸形状の具体的な形態に関する相違点(ア)?(ウ)が,類否判断にどの程度影響を及ぼすかが問題となる。相違点(ア)にかかる要素は,甲第2号証の意匠も有しているが,花を模した形状において,花弁が4枚であるか6枚であるかは美観に大きな差異を与えるから,この相違点は無視できないものである。また,相違点(イ)にかかる要素は,甲第2号証及び甲第5号証の意匠も有しているが,花を模した形状において,花弁に相当する凸部間の凹部が緩やかに湾曲している場合は,朝顔やペチュニアのように花弁が互いに合着している花(合弁花冠)を連想させ,花弁に相当する凸部間に境界線があらわれている場合は,分離した複数枚の花弁からなる花(離弁花冠)を連想させるから,美観に与える差異は大きく,この相違点は無視できないものである。
更に,相違点(ウ)にかかる要素に関しては,本件登録意匠の先行意匠である甲第2号証?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素であり,収容部の側壁における不連続な曲面は,それまでの意匠にはなかったという新規な印象を与えるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。
加えて,持ち手部から収容部の中途まで外表面に形成されている格子柄形状に関する相違点(エ)も,本件登録意匠の先行意匠である甲第2号証の意匠?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素であり,それまでの意匠が与えなかった新規な印象を与えるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。

上記のように,両意匠は,意匠に係る物品が同一または類似であるものの,形態については,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きく,全体として異なる美観を生じさせ,見る者に別異の意匠であるとの印象を与えるから,非類似である。
従って,本件登録意匠は甲第7号証の意匠に類似しておらず,その登録は,意匠法第9条第1項の規定に違反してなされたものではない。
なお,請求人は,本件登録意匠が甲第7号証の意匠と類似であるとの主張,及び,本件登録意匠が甲第2号証?甲第6号証の意匠に基づいて創作容易であるとの主張のために,それぞれの意匠の要旨認定において,敢えて,相違点のいくつかを除外している。請求人によってこのように認定された意匠の要旨が妥当であるならば,乙第3号証に示すように,請求人の登録意匠である甲第7号証の意匠は,甲第5号証の意匠と基本的構成態様及び具体的構成態様の全ての要素において同一である。つまり,請求人による意匠の要旨が妥当であるなら,請求人の登録意匠である甲第7号証の意匠は,意匠法第3条第1項第2号または第3号の規定により登録を受けることができなかった意匠である。

3-3)まとめ
以上のように,請求人の主張には理由がなく,本件登録意匠の登録は,意匠法第48条第1項第1号の無効理由を有していない。

(3)証拠方法
1)本件登録意匠の要旨の認定において「収容部」及び「持ち手部」の解釈が請求人と異なることを乙第1号証の図1で示し,甲第2号証?甲第6号証の意匠における「収容部」及び「持ち手部」を,乙第2号証で示す。本件登録意匠の要旨の認定で使用した各部の名称を,乙第1号証の図2で示す。請求人による意匠の要旨認定が妥当ではないことを,乙第3号証で示す。
2)証拠の表示
(i)乙第1号証:本件登録意匠における各部の名称を示した図
(ii)乙第2号証:甲第2号証?甲第6号証の意匠における収容部及び持ち手部を示した図
(iii)乙第3号証:甲第5号証及び甲第7号証の意匠における収容部及び持ち手部を示した図と,請求人による意匠の要旨を対比させた表

第3 口頭審理
本件審判について,当審は,平成27年11月24日に口頭審理を行った。(平成27年11月24日付け口頭審理調書)

1.請求人
請求人は,請求の趣旨及び理由について,審判請求書,平成27年8月10日付け審判事件弁駁書及び平成27年11月10日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述した。
また,乙第1号証ないし乙第3号証の成立を認めた。

(1)陳述の要領
被請求人は,平成27年10月27日提出の口頭審理陳述要領書(以下,「要領書」という。)において,種々述べるところであるが,両意匠の「収容部」および「持ち手部」の特定について両当事者で相違しており,また,被請求人は,区分け位置そのものは問題ではないと述べる。しかし,この特定の問題は両意匠の要部の特定の問題であって,その他の公知意匠との比較においても重要であるので,この点を問題ではないと言い切る被請求人の主張には首肯できない。その他,被請求人においては,被請求人の言う「第一傾斜部」および「第二傾斜部」と我々の言う「収容部」および「持ち手部」との関係について誤解がある。そのような誤解に基づく主張も失当となっている。その他,本件登録意匠と甲第7号証の類否判断の点では,独自の論理で意味不明な議論を展開するところであるが,そこについても反論を行う。
以下,被請求人の要領書に対する陳述を行う。

1)「収容部」および「持ち手部」の特定に関する反論
被請求人は,我々の「収容部」および「持ち手部」の特定方法は不明確であって意匠の形態の正確な対比ができないと述べる一方で,被請求人の「収容部」および「持ち手部」の特定方法は,誰が区分けしたとしても単一の区分け線が得られると述べる。そして,被請求人の特定方法は,意匠に係る物品の用途(使用の仕方)に基づく区分けではなく,意匠の形状に基づく区分けであることを理由として述べている。

請求人が甲第8号証で本件登録意匠に係る物品の持ち方を示した上で,持ち手部と収容部を特定したのは,需要者視点および当業者視点に基づく。請求人は需要者が本物品を持つ部分を捉えて「持ち手部」と述べているが,それは需要者の視点から名付けているのと同時に,当業者においても当該部分を持つ部位と考えるからである。被請求人が言うところの特定方法では,持ち手部のほかにも収容部にまで格子形状が含まれているが,格子柄形状は装飾目的以外に持ち手の強度補強のためにも採用される形状であるところ,収容部にまでそのような強度補強の形状を含める必要はない。収容部と呼ばれるところまで格子柄形状を含めるのは不自然である。よって,以下のように整理できる。
(イ)需要者視点からは,甲第8号証で示したように,需要者が「支え持ち」や「載せ持ち」として本物品を持つところが持ち手部であり,また,その持ち手部の上方に収容部がある。
(ロ)当業者視点からは,装飾以外にも強度補強の目的も有する格子形状を収容部にまで中途半端に付す理由はなく,格子形状のところは持ち手部であるとの創作の前提がある。
以上のような理由から,請求人が甲第9号証でおこなった本件登録意匠の「収容部」および「持ち手部」の特定は正しい。また,上記(イ)および(ロ)の視点から,請求人は甲第10号証において,公知意匠1から5の「収容部」および「持ち手部」の特定を行ったが,これについても維持されるし,このような形態特定に基づく創作容易性に関する請求人の主張も維持される。

一方,被請求人の意匠の形状に基づく特定方法は,このような需要者視点や当業者視点に基づかず,本件登録意匠を独自に不必要に詳細に観察した特定方法であって,被請求人の主観がほとんどである。需要者や当業者が,第一傾斜部や第二傾斜部という詳細すぎる形状を認識するかというと,否である。請求人がいうところの収容部は略一定の湾曲形状と認識されることはあっても,第一傾斜部や第二傾斜部と分けて認識されることはない。このような誰も認識しえない詳細な形状を特定する方法が意匠の創作容易性や類否判断において採用されるかというと,当業者視点(創作容易性)や需要者視点(類否判断)を重視する判断においては,被請求人の主張するような特定方法は取られないことは明白である。

よって,要領書3ページ1行目から4ページ1行目で被請求人が述べた「収容部」および「持ち手部」の区分けについては理由がない。また,被請求人は,請求人の形状特定との違いを出そうと,部分の名称を「持ち手部」を「一定傾斜部」に,「収容部」を「拡開部」に変更した。しかし,この名称変更自体が創作容易性や類否判断に与える影響はない。

2)「収容部」および「持ち手部」の区分けの重要性に関する反論
被請求人は,仮に請求人による「収容部」および「持ち手部」の区分けが客観的に単一に定まるものであるなら,「第一傾斜部」および「第二傾斜部」を「持ち手部」の要素として,他の意匠の「持ち手部」の構成要素と対比すべきである,と述べる(要領書4ページ下から4行目から1行目)。しかし,先に述べたように,第一傾斜部や第二傾斜部という詳細すぎる認定を需要者および当業者は行わない。よって,請求人もそのような不当な特定は行わない。なお,第二傾斜部と言われる部分は我々のいう「持ち手部」からはみ出ており,第二傾斜部などという特定は我々の特定ではあり得ない。

被請求人は,「第一傾斜部」および「第二傾斜部」を含む形状の「持ち手部」に格子柄形状が付されているという形態を,他の意匠の「持ち手部」の構成態様と対比すべきである,と述べる(要領書4ページ下から1行目から5ページ2行目)。これも先に述べたように,「第一傾斜部」および「第二傾斜部」という特定が誤りであるのでそのような特定はあり得ない。先に述べたように,第二傾斜部と言われる部分は我々のいう「持ち手部」からはみ出ており,第二傾斜部などという特定は我々の特定ではあり得ない。

被請求人は,両者の区分け位置が異なっていても,それぞれが対比している意匠間で一致していれば,意匠を対比して得られる結果(創作容易性や類否の判断)には影響しないと主張し,その理由として,区分けする位置が異なっても,意匠の要素が失われるわけではないからである,と述べる(要領書5ページ4行目から9行目)。本意がよく分からないが,区分け位置そのものは重要でないという主張と請求人は理解したが,この考えには首肯できない。本物品においては,収容部および持ち手部の位置をどのように特定するかで,公知意匠1から5における両部の位置が変わってくる。また,この特定によって,収容部の花弁形状や円弧形状,持ち手部の格子柄形状の評価ができる。このような評価方法を無視するかのように,区分け位置については重要でないという議論を行うのは意匠の特定,評価を軽んじているとしか思えない。請求人は,収容部と持ち手部の区分け位置の特定は重要と考える。請求人の特定方法によって特定された上で,各公知意匠の各部も認定されそれに基づき本件登録意匠が創作容易,あるいは,先行意匠と類似となる。

3)3条2項に関する反論
被請求人は,要領書中「2)請求人の主張する理由1(意匠法3条2項)について」において,「持ち手部」および「収容部」をそれぞれ「一定傾斜部」および「拡開部」に置き換えて,本件登録意匠を特定しなおし,創作容易性に関する主張を行っている。ここの主張は,被請求人が既におこなった主張の繰り返しなので,請求人は反論済みであるから,ここでは繰り返し反論はしない。しかし,一部新規に主張する点があるので,その点については以下反論する。
被請求人は,請求人は「収容部」から排除した要素である「第一傾斜部」および「第二傾斜部」を,意匠の要素として他の先行意匠と対比する作業を怠っている,と述べる(要領書6ページ14行目から16行目)。しかし,先に述べたように,「第一傾斜部」および「第二傾斜部」をわざわざ特定することが不当であるので,請求人はそのような特定は行わない。

被請求人は,甲第3号証の意匠における「僅かに内側に湾曲した部分」および甲第5号証の意匠における「僅かに内側に湾曲した部分」という要素についても,「収容部」には「僅かに内側に湾曲した部分」などなく失当であると述べるにとどまり,先行意匠の要素として本件登録意匠と対比する作業を怠っている,と述べる(要領書6ページ16行目から21行目)。しかし,請求人は,甲第3号証と甲第5号証の意匠には「僅かに内側に湾曲した部分」など存在せず,当該部分について本件登録意匠と比較することもできないことを述べたまでである。本件登録意匠との比較以前の問題である。

被請求人は,請求人は「指で隠れていない収容部というのは,・・・収容部外壁の略一定の円弧形状のみである」と述べている。これは「指で隠れている部分」は意匠の要素ではないとの主張とも読み取れる,と述べる(要領書6ページ下から5行目から1行目)。しかし,請求人は意匠の要素ではないとまで言っていない。需要者が使用時に持ち手部により本物品を握った際に表れる収容部というのは,略一定の円弧形状の部分であることを強調したまでである。もちろん,意匠の要部認定においては,需要者の使用時における物品の状態が重視される要素であるから,前記した使用状況に基づく収容部の形態把握は重要な点である。

被請求人は,甲第12号証から同15号証が,請求の理由の要旨変更になるとして,これら証拠を考慮する必要はないと述べる(要領書7ページ下から13行目から5行目)。しかし,甲第12号証から同15号証は,要旨変更となる証拠の追加ではない。甲第12号証から同15号証の目的は,持ち手部に格子柄形状が付されているコーンカップ,または,持ち手部から収容部にかけて全体に格子柄形状が付されているコーンカップが,甲第6号証の意匠以外にも存在していることを示しているに過ぎない。よって,要旨変更となる基準となる,権利を無効にする根拠となる事実を実質的に変更するものではない。甲第12号証から同15号証については,審判便覧51-16 「4.請求理由の要旨変更とならない例」中の「(1)周知事実の追加的な主張立証」に当てはまり,要旨変更とはならない。すなわち,甲第12号証から同15号証においては,持ち手部に格子柄形状が付されているコーンカップ,または,持ち手部から収容部にかけて全体に格子柄形状が付されているコーンカップというものは,いろいろと存在していて,そのような形状は周知であることを示したものである。よって,この点についての被請求人の主張も失当である。

4)9条に関する反論
被請求人は,要領書中「3)請求人の主張する理由2(意匠法9条1項)について」において,「持ち手部」および「収容部」をそれぞれ「一定傾斜部」および「拡開部」に置き換えて,甲第7号証の意匠を特定しなおし,類否に関する主張を行っている。ここの主張は,被請求人が既におこなった主張の繰り返しなので,請求人は反論済みであるから,ここでは繰り返し反論はしない。しかし,一部新規に主張する点があるので,その点については以下反論する。
被請求人は,要領書10ページ5行目から10行目において,本件登録意匠と甲第7号証の意匠との対比において,あたかも請求人が,共通点のみを特定し,差異点およびその評価を行わずに類否を主張しているかのように述べるが,全くの誤りである。請求人は審判請求書10ページにおいて両意匠の差異点を特定した上で,その評価を行っているのであるから,被請求人の主張は全くの誤解である。

被請求人は,要領書10ページ下から9行目から6行目において,請求人が述べる「先願意匠と公知意匠4とを比較するに際しては,本件とは需要者視点が変化してくるのであり,その変化に伴った両意匠の比較が行われる」との主張は意味不明,と述べる。この点については本件とは無関係であるので詳述はしない。本件登録意匠と各公知意匠との特定を行う方法と,先願意匠(甲第7号証)と公知意匠4とを比較するに際しては,意匠の特定が変わってくるので,本件で使用した特定を用いて,先願意匠と公知意匠4とが構成要素全てにおいて同一というのは明らかな誤りということである。

被請求人は,本件登録意匠と各公知意匠,本件登録意匠と甲第7号証の意匠との各比較において,請求人が除外している相違点として,本件登録意匠と各公知意匠においては,いずれの先行意匠も有していない要素Vおよび要素VI,本件登録意匠と甲第7号証の意匠の対比における相違点(ウ)および(エ)を挙げる(要領書11ページ5行目から8行目)。しかし,これら相違点を請求人が除外している理由は明白である。これら相違点は,いずれも,第一傾斜部と第二傾斜部の存在に係る点,拡開部の中途まで格子柄形状が設けられている点であるが,これらの点については,前述しているように,請求人は,そもそも第一傾斜部と第二傾斜部の存在を特定する必要がないと考えている。また,請求人が言う持ち手部には格子柄形状が存在するが,収容部には格子柄形状は存在しない。このように特定を正しく行っているからこそ,前記のような相違点については存在しないのである。

5)まとめ
以上,被請求人の提出した要領書に対する反論を行った。被請求人の要領書における主張には全く理由がなく,請求人が主張する無効理由1(3条2項)および2(9条1項)に理由があるのは明白である。

2.被請求人
被請求人は,答弁の趣旨及び理由について,平成26年7月29日付け答弁書及び平成27年10月27日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述した。
また,甲第1号証ないし甲第15号証の成立を認めた。

(1)陳述の要領
1)意匠の要旨認定について
(ア)「収容部」及び「持ち手部」の区分け
被請求人は,答弁書において,請求人による「収容部」及び「持ち手部」の区分けについて,何を基準に区分けしたのかが不明であると主張した(答弁書4頁6?16行)。これに対し,請求人は弁駁書において「需要者が本物品を持つ部分」が「持ち手部」であると述べ(弁駁書3頁7?20行),甲第2号証?甲第6号証の意匠における区分けを甲第10号証に,甲第7号証の意匠における区分けを甲第11号証に,青い破線で示している。しかしながら,「需要者が本物品を持つ部分」という基準により区分けされる位置は,“だいたいこのあたり”という不明確なものに過ぎない。実際に,物品を持つ部分で区分けしてほしいと複数の需要者に対して依頼したならば,同一の意匠であっても需要者ごとに区分けの位置は異なるはずである。つまり請求人の基準では,甲第10号証及び甲第11号証で示しているように,「収容部」及び「持ち手部」の区分けを一本の線で定めることは無理であり,区分け位置は当然にある程度の幅を持つ。そうすると,幅を持つ区分け位置の近傍にある意匠の要素は,「収容部」に属するのか「持ち手部」に属するのかが不明確であり,意匠の形態の正確な対比ができない。
これに対し,被請求人による区分けは,下端から上方に向かって“一定の傾斜で”拡径している部分を「持ち手部」とし,それより上方で“持ち手部の傾斜に対して不連続に”拡開している部分を「収容部」とするものである(答弁書4頁17?24行)。この基準によれば,誰が区分けしたとしても単一の区分け線が得られる(乙第1号証?乙第3号証)。意匠に係る物品の用途(使用の仕方)に基づく区分けではなく,意匠の形状に基づく区分けであるからである。従って,意匠の要旨を正確に認定し,対比すべき要素を対比すべき意匠それぞれにおいて正確に特定するためには,被請求人の基準による区分けの方が適している。なお,被請求人が,答弁書で「収容部」及び「持ち手部」の名称を使用したのは,単に審理の便宜を鑑みて請求人が使用している名称を使用したものである(答弁書4頁6?7行)。今後は,被請求人による区分けが意匠の形状に基づくものであることを明確にすると共に,請求人の言う「収容部」及び「持ち手部」と区別するために,下端から上方に向かって一定の傾斜で”拡径している部分を「一定傾斜部」と称し,それより上方で“一定傾斜部の傾斜に対して不連続に”拡開している部分を「拡開部」と称することとする。答弁書に記載した被請求人による意匠の要旨認定は,全て,「持ち手部」を「一定傾斜部」に,「収容部」を「拡開部」に置換すれば,そのまま問題なく使用することができる。

(イ)区分けの位置そのものは問題ではない
請求人は,被請求人と区分けの位置の特定が異なることに基づき,次のような主張をしている。
・(本件登録意匠の)収容部には第一傾斜部および第二傾斜部というものはない。収容部の外壁は略一定の円弧にて外側に膨らんでいるのみであって,公知意匠2ないし4に既に採用されている形態である(弁駁書6頁14?19行)。
・本件登録意匠の収容部には格子柄形状はない。格子柄形状は持ち手部の上端で完結していて,このような形態は公知意匠5に既に採用されている(弁駁書6頁20?24行)。

しかしながら,仮に請求人による「収容部」及び「持ち手部」の区分けが客観的に単一に定まるものであるなら,「第一傾斜部」及び「第二傾斜部」を「持ち手部」の要素として,他の意匠の「持ち手部」の構成態様と対比すべきである。そして,「第一傾斜部」及び「第二傾斜部」を含む形状の「持ち手部」に格子柄形状が付されているという形態を,他の意匠の「持ち手部」の構成態様と対比すべきである。請求人は,そのような対比作業を一切行っていない。
つまり,請求人及び被請求人による区分けが,それぞれ客観的に単一に定まるものであるなら,請求人による区分け位置と被請求人による区分け位置とが異なっていたとしても,それぞれが対比している意匠間で一致していれば,意匠を対比して得られる結果(創作容易性や類否の判断)には影響しない。区分けする位置が異なっても,意匠の要素が失われる訳ではないからである。

2)請求人の主張する理由1(意匠法第3条第2項)について
答弁書に記載した内容と同じであるが(答弁書2頁21行?3頁12行),「持ち手部」及び「収容部」をそれぞれ「一定傾斜部」及び「拡開部」に置換して記載すると,本件登録意匠の要旨は次のようである。
<基本的構成態様>
I.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している一定傾斜部と,一定傾斜部の上端から一定傾斜部の傾斜に対して不連続に拡開している拡開部とからなる。
II.拡開部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が4つ設けられている。
III.一定傾斜部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
IV.拡開部の花弁状凹凸形状において,凹部は緩やかに湾曲しており,隣接する凸部間に境界線はあらわれていない。
V.拡開部の側壁は,一定傾斜部の上端から上方に向かいつつ外側に湾曲している第一傾斜部と,第一傾斜部から上方に向かいつつ外側に湾曲することなく外側に大きく張り出している第二傾斜部と,第二傾斜部から上方に向かい,一定傾斜部の円錐形の軸方向とほぼ平行に急激に立ち上がっている立ち上がり部とを備えている。
VI.一定傾斜部から拡開部の中途まで,外表面に格子柄形状が設けられており,拡開部の格子柄形状は,花弁状凹凸形状において花弁に対する萼のように配されている。

これを甲第2号証?甲第6号証の意匠と対比すると,具体的構成態様における要素Vは,甲第2号証?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素である。甲第2号証?甲第6号証の意匠のうち,花弁状凹凸形状を有する意匠は,甲第2号証,甲第3号証,及び甲第5号証の意匠であるが,その何れも,一定傾斜部の上端からいったん外側に湾曲するように膨出してから,外側に湾曲することなく外側に大きく張り出し,更に急激に上方に立ち上がる,不連続な曲面を有していない。上述のように,請求人は「収容部」から排除した要素である「第一傾斜部」及び「第二傾斜部」を,意匠の要素として他の先行意匠と対比する作業を怠っている。また,甲第3号証の意匠における「僅かに内側に湾曲した部分」及び甲第5号証の意匠における「僅かに内側に湾曲した部分」という要素についても,「収容部には『僅かに内側に湾曲した部分』などなく失当である」(弁駁書5頁24行?6頁6行)と述べるにとどまり,先行意匠の要素として本件登録意匠と対比する作業を怠っている。従って,要素Vに関する請求人の主張(弁駁書4頁6?11行)は妥当ではない。なお,請求人は,「指で隠れていない収容部というのは,・・・収容部外壁の略一定の円弧形状のみである。」(弁駁書4頁8?10行)と述べている。これは,「指で隠れている部分」は意匠の要素ではないとの主張とも読み取れる。しかしながら。「アイスクリーム用コーンカップ」の意匠が,手に持った状態のみで需要者の眼に触れるものではないことは,明らかである。
また,本件登録意匠の要素VIは,甲第2号証?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素である。甲第2号証?甲第6号証の意匠のうち,格子柄形状を有する意匠は,甲第6号証の意匠のみであるが,その格子柄形状は一定傾斜部のみに設けられている。格子柄形状が,一定傾斜部から拡開部の中途に至るまで設けられており,拡開部の花弁状凹凸形状と相まって花弁に対する萼のような印象を与える格子柄形状は,何れの先行意匠も有していない。上述のように,請求人は,本件登録意匠において格子柄形状は持ち手部のみに配されていると主張しているが,そのように主張している「持ち手部の形状と格子柄形状との関係」を,先行意匠と対比する作業を怠っている。従って,要素VIに関する請求人の主張(弁駁書4頁12?17行)は妥当ではない。
なお,請求人は,格子柄形状に関する先行意匠の証拠として,甲第12号証?甲第15号証を,弁駁書と共に新たに提出している。審判便覧の「51-16『請求の理由』の要旨変更」(特許を例にして記載されているが意匠にも適用される)では,「当初は進歩性違反を無効理由の根拠として先行技術発明EとFとを証拠として容易に発明できた旨の事実を主張しており,更に先行技術発明Gに係る証拠を追加して,容易想到性を主張したとき」を,要旨変更となる例として挙げている。今回,請求人が提出した新たな証拠はこれに類する証拠であるから,請求の理由の要旨変更であり甲第12号証?甲第15号証を考慮する必要はない。ただし,甲第12号証?甲第15号証の意匠も,「一定傾斜部から拡開部の中途に至るまで設けられており,拡開部の花弁状凹凸形状と相まって花弁に対する萼のような印象を与える格子柄形状」を備えていないことを,付言ながら申し添える。

3)請求人の主張する理由2(意匠法第9条第1項)について
答弁書に記載した内容と同じであるが(答弁書11頁25行?12頁12行),「持ち手部」及び「収容部」をそれぞれ「一定傾斜部」及び「拡開部」に置換して記載すると,甲第7号証の意匠の要旨は次のようである。
<基本的構成態様>
i.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している一定傾斜部と,一定傾斜部の上端から一定傾斜部の傾斜に対して不連続に拡開している拡開部とからなる。
ii.拡開部には花弁状凹凸形状が形成されており,花弁状凹凸形状には同一形状の凸部が6つ設けられている。
iii.一定傾斜部は,円錐形である。
<具体的構成態様>
iv.拡開部の花弁状凹凸形状において,隣接する凸部間に境界線があらわれている。
v.拡開部の側壁は,一定傾斜部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続している。
vi.一定傾斜部の外表面は平滑である。

被請求人が,本件登録意匠が甲第7号証の意匠と非類似であると考える理由は,答弁書で既に述べたとおりである(答弁書12頁13行?14頁末行)。特に,本件登録意匠と甲第7号証の意匠との対比における次の相違点は,本件登録意匠の先行意匠である甲第2号証?甲第6号証の意匠の何れも有していない要素であり,それまでの意匠にはなかったという新規な印象を与えるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。
・相違点(ウ):甲第7号証の意匠の拡開部の側壁は,一定傾斜部の上端から上方に向かいつつ僅かに内側に湾曲している部分と,更に上方に向かいつつ大きく外側に湾曲している部分とが緩やかに連続しているのに対し,本件登録意匠の拡開部の側壁は,一定傾斜部の上端から上方に向かいつつ外側に湾曲している第一傾斜部と,第一傾斜部から上方に向かいつつ外側に湾曲することなく外側に大きく張り出している第二傾斜部と,第二傾斜部から上方に向かい,一定傾斜部の円錐形の軸方向とほぼ平行に急激に立ち上がっている立ち上がり部とを備えている点。
・相違点(エ):甲第7号証の意匠では,一定傾斜部の外表面が平滑であるのに対し,本件登録意匠では,一定傾斜部から拡開部の中途まで,外表面に格子柄形状が設けられており,拡開部の格子柄形状は,花弁状凹凸形状において花弁に対する蕚のように配されている点。

これに対し,請求人は弁駁書において反論し,次のようにまとめている (弁駁書8頁1行?9頁9行)。
・「『4つないし6つの花弁状凹凸が外側に膨らんだ収容部の上端に設けられている』という収容部の全体印象から生じる共通点から受け取られる共通の美感が顕著である。」
・「花弁凹部に平面視で境界線が入っているか否かだけで,需要者は大きな美的印象の差異を受け取らない。」
・「本件登録意匠の収容部は略一定に外側に弧を描いている側壁のみである以上,先願意匠と共通する。」
・「持ち手部に格子柄形状が付されている形態は需要者に新規な印象を与えるものではない。」

しかしながら,甲第7号証の意匠は請求人の登録意匠であり,甲第7号証の意匠に対する先行意匠である甲第5号証の意匠との関係では,甲第7号証の登録意匠は登録性を有している,つまり甲第7号証の意匠は甲第5号証の意匠と非類似であると請求人は考えているはずである。その前提に立つと本件登録意匠と甲第7号証の意匠との類否判断が,上記の主張のような大まかな対比だけで足りるという請求人の主張には,説得力がない。請求人は,「共通の創作ポイントのみに絞って意匠の形態を特定するのが当然」であり,それが「意匠の類否判断における形態特定の必要範囲である」と主張している(弁駁書9頁21行?10頁6行)。しかしながら,審査基準を参照するまでもなく,意匠の類否判断には差異点の認定及び評価が重要であるから,共通しない創作ポイントの形態の対比も重要である。また,類否判断の主体は需要者であると意匠法第24条で規定されているが,「アイスクリーム用コーンカップ」の意匠である本件登録意匠と甲第5号証の意匠,及び「ソフトクリーム用可食容器」の意匠である甲第7号証の意匠は,名称付けが多少異なるものの意匠に係る物品は同一であり需要者も同一である。従って,請求人による意匠の要旨の認定では,「乙第3号証に示すように,請求人の登録意匠である甲第7号証の意匠は,甲第5号証の意匠と基本的構成態様及び具体的構成態様の全ての要素において同一である」から,請求人による意匠の要旨は妥当ではないという被請求人の主張(答弁書15頁1?5行)に対して,請求人が述べる「先願意匠と公知意匠4とを比較するに際しては,本件とは需要者視点が変化してくるのであり,その変化に伴った両意匠の比較が行われる」(弁駁書9頁26行?10頁6行)との主張は,意味不明である。

4)請求人が除外している相違点
請求人は,「被請求人は・・・本件登録意匠と先願意匠が類似であること,および,本件登録意匠が公知意匠1から5に基づいて容易に創作できたものであることに関する請求人の主張に対して,意匠の要旨認定において敢えて相違点のいくつかを除外していると述べる。しかし,その除外された相違点がどこなのかについては言及がなく不明確な主張であって認否もできない。」(弁駁書9頁12?16行)と述べている。請求人が除外している相違点とは,被請求人が答弁書の中で意匠間の対比において相違点として認定して列挙している点のうち,請求人が相違点としていない点であることは明らかである。例えば,本件登録意匠と甲第2号証?甲第6号証の先行意匠との対比における,何れの先行意匠も有していない要素V及び要素VI,本件登録意匠と甲第7号証の意匠との対比における相違点(ウ)及び相違点(エ)である。

5)まとめ
本口頭審理陳述要領書及び答弁書で述べたように,本件登録意匠は,甲第2号証?甲第6号証の意匠に基づいて容易に創作をすることができた意匠ではないため,意匠法第3条第2項に該当しない。また,本件登録意匠は甲第7号証の意匠に類似する意匠ではないため,意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものではない。従って,本件登録意匠は,意匠法第48条第1項第1号が規定する無効理由を有していない。

3.審判長
審判長は,この口頭審理において,甲第1号証ないし甲第15号証及び乙第1号証ないし乙第3号証について取り調べ,請求人及び被請求人に対して,本件無効審判事件の審理の終結を告知した。(平成27年11月24日付け第1回口頭審理調書)

第5 当審の判断
当審は,本件登録意匠は,先行公知意匠に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠に該当すると認められないので,意匠法第3条第2項の規定に該当せず,また,先願意匠に類似するものと認められないので,意匠法第9条第1項に規定する意匠に該当せず,意匠登録を受けることができないものであるとはいえない,と判断する。

1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1470898号の意匠)は,平成24年(2012年)12月11日に意匠登録出願され,平成25年(2013年)4月26日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「アイスクリーム用コーンカップ」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(請求人提出の甲第1号証に記載の意匠,別紙第1参照)

すなわち,その形態は,以下の基本的構成態様と具体的構成態様から成るものである。(なお,構成態様における各部位(「収容部」及び「持ち手部」)の特定とその呼称については,形態の比較上便宜的に,被請求人のいうところの,下端から上方に向かって“一定の傾斜で”拡径している縦長の逆円錐形状部分を「持ち手部」と称し,それより上方の,“持ち手部の傾斜から変化して”拡開している部分を「収容部」と称する。ただし,意匠に係る物品の用途(使用の仕方),各部位の使われ方はその呼称に限定されるものではない。また,この各部位の特定の仕方及び呼称は,以下の引用意匠(公知意匠2ないし5及び先願意匠)の特定,それらとの対比においても,同様である。)

(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.浅い略鉢状に拡開している。
B-2.周側壁の上端縁部分は,花弁状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆円錐形状に形成されている。
(ii)具体的構成態様(具体的構成態様の各記述に付与する符号は,収容部に関するものはb,持ち手部に関するものはc,収容部と持ち手部の両方(全体)に関するものはdとする。)
b-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から外側に反るように湾曲してから,僅かに斜め上方に向け直線的により大きく張り出した後に,屈曲して略垂直に立ち上がるように形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端部分は,同形の緩やかな凸弧状が滑らかに凹弧状に連設されたものが4つ繰り返され,上下振幅の小さい波形の花弁状凹凸形状に形成されている。
c-1.持ち手部の縦長逆円錐形状の拡開角度が約17度で,その下端が半球状に丸まっている。
d-1.縦長逆円錐形状の持ち手部の下端より僅かに上の位置から収容部の外方に大きく張り出した部分の途中までの外表面に,ダイヤ形状の凹部が連続して形成された斜め格子状レリーフ模様が設けられており,その模様は斜め格子状が上方にいくにしたがって格子目が大きくなるようにし,その模様上端が6つのダイヤ状凹部が水平方向に並び,格子状模様の上端がギザギザ状に表れるように施されている。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)を約7:4とし,収容部と持ち手部の高さ比を約1:4とし,収容部上端の径(最大径)と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1,収容部上端の径(最大径)と収容部の深さ(高さ)の比を約3:1としている。

2.無効理由1(意匠法第3条第2項)について
無効理由1は,本件登録意匠は,当該意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合,具体的には公知意匠1(甲第2号証に記載された意匠)ないし5(甲第6号証に記載された意匠)に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠であるので,本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当するから,同法第48条第1項第1号の規定により,本件登録意匠の登録は無効とされるべきである,というものである。
以下,引用の公知意匠2ないし5について認定し,本件登録意匠の創作容易性,つまり,それらの公知意匠に基づいて,本件登録意匠が容易に創作をすることができた意匠であるかを判断する。

(1)引用意匠について
1)公知意匠1の要旨
公知意匠1(甲第2号証に記載の意匠登録第1440544号の意匠(部分意匠))は,ソフトクリーム用可食容器に係る意匠であって,形態は以下のとおりである。(別紙第2参照)
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.浅い略鉢状に拡開している。
B-2.周側壁の上端縁部分は,花弁状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆截頭円錐形状である。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ外側に反るように湾曲して上端部が外方に,また平面視では正円形ではなくやや角丸正方形状に開くように形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端部分は,同形の緩やかな凸弧状が滑らかに凹弧状に連設されたものが4つ繰り返され,上下振幅の小さい波形の花弁状凹凸形状に形成されている。
d-1.持ち手部及び収容部の外表面は模様もなく,平滑である。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部の最大径)を約8:7とし,収容部と持ち手部の高さ比を約1:2.5とし,収容部の最大径と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1,収容部の最大径と収容部の高さの比を約3:1としている。

2)公知意匠2の要旨
公知意匠2(甲第3号証に記載の意匠登録第1456658号の意匠(部分意匠))は,ソフトクリーム用可食容器に係る意匠であって,その形態は以下のとおりである。(別紙第3参照)
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.略鉢状に拡開している。
B-2.周側壁の上端縁部分は,花弁状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆截頭円錐形状である。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ,一旦僅かに外側に反るように湾曲した後に,逆に外側に凸弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるように形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端部分は,同形の緩やかな凸弧状が連設されたものが6つ繰り返され,上下振幅の小さい山形の花弁状凹凸形状に形成されている。
b-3.収容部の周側壁外表面の上下端部寄りに蔦状のレリーフ模様がそれぞれ1条回設されている。
c-1.縦長逆截頭円錐形状の持ち手部の中央外表面に,同形の柵状(三角形尖塔状の短冊形の杭が並列し,その上下中央を横帯状で繋いだ模様)のレリーフ模様が上下3段に周回するように形成されている。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)を約3:2とし,収容部と持ち手部の高さ比を約1:2とし,収容部上端の径と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1,収容部上端の径と収容部の高さの比を約2:1としている。

3)公知意匠3の要旨
公知意匠3(甲第4号証に記載の意匠登録第1064939号の意匠)は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠であって,その形態は以下のとおりである。(別紙第4参照)
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連結して形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.略鉢状に拡開している。
B-2.周側壁の上端縁部分は,水平状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆円錐形状に形成されている。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から外側に円弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるようにして,略半球椀状に形成されている。
b-2.収容部の周側壁外表面に,六角形と五角形を組み合わせたサッカーボール様の模様の外形線がレリーフ状に表されている。
c-1.持ち手部の縦長逆円錐形状の拡開角度が約12度で,その下端が半球状に丸まっている。
c-2.縦長逆円錐形状の持ち手部の外表面に,持ち手部の下端より僅かに上の位置から等間隔に縦に8本の凸条のレリーフ模様を形成し,収容部の六角形の外形線のレリーフ模様と連続するように形成されている。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)を約5:2とし,収容部と持ち手部の高さ比を約2:7とし,収容部上端の径と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1,収容部上端の径と収容部の高さの比を約2:1としている。

4)公知意匠4の要旨
公知意匠4(甲第5号証に記載の意匠登録第1064947号の意匠)は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠であって,その形態は以下のとおりである。(別紙第5参照)
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.略鉢状に拡開している。
B-2.周側壁の上端縁部分は,花弁状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆円錐形状に形成されている。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ,一旦僅かに外側に反るように湾曲した後に,逆に外側に凸弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるように形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端部分は,同形の緩やかな凸弧状が滑らかに凹弧状に連設されたものが6つ繰り返され,上下振幅の小さい波形の花弁状凹凸形状に形成されている。
c-1.持ち手部の縦長逆円錐形状の拡開角度が約15度で,その下端が半球状に丸まっている。
d-1.縦長逆円錐形状の持ち手部から椀状の収容部の外表面に,持ち手部の下端位置から等間隔に縦に6本の段差状のレリーフ模様が,捻りながら約1周して収容部上端の花弁状凹凸形状の凹部位置まで,凸弧状の外形に滑らかに連なるように連続して形成されている。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)を約2:1とし,収容部と持ち手部の高さ比を約1:3とし,収容部上端の径と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1,収容部上端の径と収容部の高さの比を約2:1としている。

5)公知意匠5の要旨
公知意匠5(甲第6号証に記載の意匠登録第1010610号の意匠)は,アイスクリーム用コーンカップに係る意匠であって,その形態は以下のとおりである。(別紙第6参照)
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連結して形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.上下2段構成の深い椀状に形成されている。
B-2.下段は扁平略円錐台状に形成され,上段は,その周側壁の上端縁部分が,王冠状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆円錐形状に形成されている。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周壁は,斜め上方外側に大きく反るように円錐台状に拡開する下段(1段目)と,その下段の上端から屈曲してほぼ垂直に近く立ち上がる上段(2段目)の2段に形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端縁部分は,同形の比較的高さのある二等辺三角形の山型状が連設されたものが6つ繰り返され,大きなギザギザの王冠状に形成されている。
b-3.収容部の上端部分ギザギザ状の周側壁の外表面は帯状肉厚のレリーフ状に形成され,またギザギザ状の各山型の頂点の下の位置に小円形の凸状レリーフ模様が1つずつ施されている。
c-1.持ち手部の縦長逆円錐形状の拡開角度が約17度で,その下端が半球状に丸まっている。
c-2.持ち手部上端と収容部下端の間に周回する細凸状リング部を設けている。
c-3.縦長逆円錐状の持ち手部の下端より僅かに上の位置からその上端の収容部と境界の細凸状リング部までの間の外表面に,斜め格子状レリーフ模様が設けられており,その模様は断面凸弧状で斜め格子状が上方にいくにしたがって格子目が大きくなるように形成されている。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)を約2:1とし,収容部と持ち手部の高さ比を約1:2とし,収容部上端の径と持ち手部上端の径(最大径)の比を約7:4,収容部上端の径と収容部の高さの比を約7:5としている。また,収容部の2段構成の上下高比を約3:2としている。

(2)本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠の全体の基本的な構成である,A.下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものである点については,上記した公知意匠1ないし5に限らず,多くのアイスクリーム用コーンカップ,ソフトクリーム用可食容器(以下,「アイスクリーム用コーンカップ等」ともいう。)が有する一つの基本的骨格をなすものであることは周知の事実であるといえ,また,その持ち手部と収容部が連続一体的に形成されている点についても,公知意匠1,公知意匠2及び公知意匠4等をはじめとする多くのアイスクリーム用コーンカップ等が有する態様であるから,本件登録意匠におけるA.の基本的な構成態様に創作性はなく,各部のより具体的な態様における創作性の有無を検討する必要がある。
そして,A.の全体の基本的な構成は,それを構成する個々の部位である,B-1.略鉢状に拡開して形成され,B-2.その鉢状の周側壁の上端縁部分は花弁状凹凸形状に形成されている収容部と,C.縦長逆円錐形状に形成されている持ち手部から成るものであるが,公知意匠1ないし5の各公知意匠が,本件登録意匠と同様に,それぞれの各部の基本的な態様において,概略として,B-1.収容部が鉢状であり,そのうちの公知意匠1,公知意匠2及び公知意匠4が,B-2.収容部の上端部分の花弁状凹凸形状があるものであるとしても,それらB-1.及びB-2.の態様はA.同様に,各部の態様を概括的に捉えたものであるから,これらの態様をもって直ちに,本件登録意匠の収容部の態様が容易に創作できるものであったとはいうことはできない。
B-1.については,公知意匠1が,本件登録意匠と同様に拡開した収容部が概略やや浅い鉢(浅い鉢=皿)状であるという意味では共通しているとはいえるものの,後述するように公知意匠1の鉢状を形成する周側壁の具体的な形状は大きく相違しており,その他の公知意匠2ないし5については,本件登録意匠よりもやや深い鉢状のものであり,同様に後述するように,鉢状を形成する周側壁の具体的な形状において相違する点があるので,これらの公知意匠2ないし5をもって直ちに本件登録意匠の収容部のやや浅い鉢状(皿状)の形状が容易に創作できるものであったとはいうことはできず,さらにその具体的な形状について検討する必要がある。
また,同様に,本件登録意匠のB-2.収容部の周側壁の上端縁部分が花弁状凹凸形状に形成されている点についても,公知意匠1,公知意匠2及び公知意匠4が,緩やかな曲線的な凹凸形状で花弁状を形成しているものである点では大まかには同様といえるものの,後述するように,より具体的な花弁状を呈する凹凸形状,凹凸の連続のさせ方,凹凸の数等も異なることから,直ちにこれら公知意匠1,公知意匠2及び公知意匠4をもって本件登録意匠の収容部の周側壁の上端部分の花弁状凹凸形状が容易に創作できるものであったとはいえず,さらにその具体的な形状について検討する必要がある。
ただし,凹凸形状の数については,公知意匠1は4つ,公知意匠2及び公知意匠4は6つを設けたものであって,花弁状凹凸形状を形成する凹凸の数としては,この程度の数の増減はこれらの公知意匠からありふれたものであるということはできる。
一方,C.持ち手部を,逆円錐形状とすることについては,公知意匠3ないし公知意匠5にも見られるように,本件登録意匠と同様の細長い円錐状とすることは極普通であって,また公知意匠1及び公知意匠2のものも,円錐状の頂部を切り取った截頭円錐状であって,持ち手部の基本形状を細長い円錐状とする点については,創作性はないものといえる。

そこで次に,収容部の具体的な態様について検討してみると,本件登録意匠のb-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から僅かに外側に反るように湾曲してから,僅かに斜め上方に向け直線的により大きく張り出した後に,屈曲して略垂直に立ち上がる態様のものであるのに対して,公知意匠2及び公知意匠4のb-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ,一旦僅かに外側に反るように湾曲した後に,逆に外側に凸弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がる態様であって,A.全体の基本的な構成において共通している持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている点と合わせてみると,概略外側に大きく張り出す,あるいは大きく湾曲するという点では比較的共通性はあるものの,本件登録意匠の当該部分の態様は直線的であるのに対して,公知意匠2及び公知意匠4はいずれも曲線的であって,相当に異なるものであり,公知意匠1のb-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ外側に反るように湾曲して上端部が外方に,また平面視では正円形ではなくやや角丸状に開いている態様であり,他方,公知意匠3のb-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から外側に円弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるようにした略半球状の態様であって,いずれも本件登録意匠の収容部の態様とは大きく相違するものであり,これらの公知意匠の収容部の態様を本件登録意匠の創作が容易である根拠とすることはできない。また,その相違は,収容部の周壁の曲がり具合の組み合わせ(構成)によるものであるから,収容部の深浅を多少変更する等のありふれた改変でもないから,公知意匠2,公知意匠4及び公知意匠1に基づいて容易に創作できるものということもできない。
また,本件登録意匠のb-2.収容部の周側壁の上端部分は,同形の緩やかな凸弧状が滑らかに凹弧状に連設されたものが4つ繰り返され,上下振幅の小さい波形の花弁状凹凸形状に形成されているが,公知意匠1については,そのb-2.収容部の周側壁の上端部分は,外周方向から見ると,そのシルエットが同形の緩やかな凸弧状が滑らかに凹弧状に連設されたものが4つ繰り返され,上下振幅の小さい波形の花弁状凹凸形状を形成している点で本件登録意匠と一見同様に見えるものではあるが,上述のとおり,公知意匠1のb-1.の周側壁そのものが外側に反るように湾曲して上端部が外方に,また平面視では正円形ではなくやや角丸正方形状に開いている形状と一体になった態様であって,本件登録意匠のように,周側壁の上端部分が上方に立ち上がっている態様における花弁状凹凸形状ではなく,本件登録意匠の態様とは大きく相違するものであり,公知意匠1のb-2.の花弁状凹凸形状の態様をもって創作容易とすることはできない。また仮に,その上端部分のみの変化の仕方をシルエット的に捉えて適用する手法があるとしても,それは形態についての2次元と3次元にまたがる抽象的で高度な応用の過程を要するものであって,それを意匠の創作容易性の判断において,ありふれた手法であって,その手法によって改変が容易に行える,とすることは適当とはいえない。
公知意匠2については,そのb-2.収容部の周側壁の上端部分は,6つの同形の緩やかな凸弧状が繰り返し連設され,上下振幅の小さい山形の花弁状凹凸形状に形成されているものであって,その凸弧状の連設の仕方が,本件登録意匠のように凸弧状の両端の連設部分が凹弧状に滑らかに繋がるのではなく,凸弧状が繰り返すその境界がV字状に表れる態様のものであって,本件登録意匠とは態様が異なるものであるから,本件登録意匠の創作を容易とする根拠として公知意匠2は十分なものではない。
公知意匠4については,その凸弧状の連設の仕方が,本件登録意匠と同様に,凸弧状の両端の連設部分が凹弧状に滑らかに繋がるものであるが,凸弧状の数が6つから成る小さな波形の花弁状凹凸形状である点において同一ではない。しかし,先述のとおり,凸弧状の数の相違については,それを6つから4つの少ないものとする程度のことは,公知意匠1(凹凸の数は4つ)と考え合わせてみれば,この種物品においてありふれた改変の範囲であって,凸弧状の数の相違が創作の容易性に影響を及ぼすものではないから,本件登録意匠の周側壁の上端部分の花弁状凹凸形状は,公知意匠4のb-2.の態様を元に,その凸弧状の数を6つから4つに減じた程度であって,着想しうるものといえる。
しかし,収容部の創作容易性を判断するには,周側壁の上端部分の花弁状凹凸形状だけではなく,当然にその元となる収容部の周側壁の形状と一体不可分であることを踏まえると,公知意匠4については,その花弁状凹凸形状を上端部に施すb-1.収容部の周側壁そのものが,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ一旦僅かに外側に反るように湾曲した後に,逆に斜め上方に向かいつつ外側に凸弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるように形成されているものであり,本件登録意匠のb-1.収容部の周側壁が,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ僅かに外側に反るように湾曲してから,斜め上方に向け直線的により大きく張り出した後に,略垂直に屈曲して立ち上がるように形成されているものとは相当に異なるものであり,かつB-1.収容部の深さ及びZ.収容部の構成比も相当程度異なるものであるから,収容部の上端部分の花弁状凹凸形状についてのみ,凸弧状の両端の連設部分が凹弧状に滑らかに繋がる点でも同様の公知の態様が見受けられ,その凸弧状(凹凸)の数を改変すれば本件登録意匠とほぼ同様の態様を創作することができるといえるにすぎないから,それをもって,本件登録意匠の周側壁の上端部分に同形の6つの凸弧状がその両端の連設部分において凹弧状に滑らかに繋がる花弁状凹凸形状を備える収容部全体を容易に創作することができたということはできない。

次に,本件登録意匠のd-1.縦長逆円錐形状の持ち手部の下端より僅かに上の位置から収容部の外方に大きく張り出した部分の途中までの外表面に,ダイヤ形状の凹部が連続して形成された斜め格子状レリーフ模様が設けられており,その模様は斜め格子状が上方にいくにしたがって格子目が大きくなるようにし,その模様上端が6つのダイヤ状凹部がギザギザ状に表れるように施されている態様の創作性については,公知意匠5(c-3.)において見られるとおり,逆円錐状の持ち手部に上方に行くにしたがって格子目が大きくなる格子状レリーフ模様を施すことはありふれていることといえるものの,その格子状レリーフ模様を施す位置及び施し方については,本件登録意匠のものは,その模様の上端を収容部の外方に大きく張り出した部分の中途まで表し,かつその格子状レリーフ模様の上端を水平状にするのではなく,模様を水平状に終わらせた場合にダイヤ状の間の下向き三角形状凹部を施さずに6つのダイヤ状凹部がギザギザ状に表れるように意図的に施しているものであって,そうした位置にそのように施した態様は,公知意匠5をはじめ他の意匠いずれにも見られない態様であり,被請求人が主張するように,その上端部に花弁状凹凸形状を有する収容部の下方にかかる位置に施したことによって当該模様が看者に大きな萼のように見える強い印象を与える特徴的なものとなっているといえ,模様を施す位置及び模様を施した態様も含めてその創作容易性を立証する(創作性を否定する)ことができる証拠及び論理は請求人から何ら示されていない。

したがって,本件登録意匠は,縦長逆円錐状の持ち手部上方から連続一体的に形成された扁平でやや直線的に拡開した新規な皿状ともいえる浅い鉢状の収容部に,その周側壁の上端部分を収容部の深さに合わせた4つの緩やかで大きな凸弧状が滑らかに繋がる花弁状凹凸形状を形成した本体の外表面に,持ち手部の下端寄りから続く斜め格子状レリーフ模様を収容部の外方に大きく張り出した部分の途中の位置まで,かつ模様の上端を単純に水平状に終わらせるのではなく,6つのダイヤ状凹部がギザギザ状に表れるように施している態様が相まって,本件登録意匠の独自の特徴を表している態様のものであって,本件登録意匠のこの態様は,公知意匠1ないし5に見られる全体又は部分の態様を組み合わせることによって容易に創作することができたものであるとは到底いえない。

(3)請求人の主張について
なお,請求人も本件登録意匠の意匠として重要な部分であり,特徴の一つと認める収容部の形状及びその上端の花弁状凹凸部の形状について,当該部位については請求人が証拠方法で示した公知意匠に表れているとおり,具体的に様々な態様のものがあって,それらの異同をきちんと捉えた上で創作性を判断すべきであるにもかかわらず,具体的な収容部の側壁の湾曲の仕方や花弁状を構成する凹凸形状の具体的な形状などを極めて大雑把に捉えて,公知意匠1には,4つの凸部を有する花弁状凹凸部が形成されており,また,公知意匠2には,上端において花弁状凹凸部を形成している意匠において,収容部側壁が外側へ膨らんでいる形状が表れているから,公知意匠1及び公知意匠2を組み合わせることによって本件登録意匠の当該部分の具体的構成態様に係る形態を創作することは,当業者にとって容易であり,公知意匠1及び公知意匠2に基づいて,本件登録意匠の収容部及び上端の花弁状凹凸部に関する形態を創作することは容易であった旨主張するが,本件登録意匠の収容部の周側壁の湾曲あるいは直線等の構成の具体的な態様と周側壁の深浅(構成比),そしてその周側壁上端の花弁状凹凸形状の態様及びそれらが一体となった態様は,上述のとおりであって,公知意匠1及び公知意匠2を単に組み合わせて創作することができるものとはいえないから,その主張を採用することはできない。
また,「下方の持ち手部に設けられた格子柄形状は,具体的には,略正方形状の凹みが連続する形状となっている。」点について,公知意匠5において表れており,持ち手部分に格子柄形状を施すことはこの種物品分野においてはありふれた形態であって,創作性がない旨の請求人の主張についても,上述のとおり,格子状レリーフ模様を施す位置,施した態様についてありふれているといえないのであるから,その主張を採用することはできない。

(4)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(公知意匠1ないし5)に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠に該当しないものであるので,本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当せず,この点につき無効理由を有さないものであるから,本件登録意匠は,同法第48条第1項第1号の規定に該当しないものと認められる。

3.無効理由2(意匠法第9条第1項)について
無効理由2は,本件登録意匠は,その出願日前の出願に係る他人の先願に係る意匠(意匠登録第1474523号の意匠。2012年6月4日出願。2013年6月14日設定登録。2013年7月16日公報発行。請求人提出の甲第7号証に記載の意匠。以下,「先願意匠」という。(別紙第7参照))と類似するものであるから,意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,本件登録意匠の登録は無効とされるべきである,というものである。
以下,無効理由2について,その先願意匠を認定し,本件登録意匠との類否について述べる。

(1)先願意匠
先願意匠は,ソフトクリーム用可食容器に係る意匠であって,その形態は以下のとおりである。
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.収容部は,略鉢状に拡開して形成されている。
B-2.収容部の鉢状の周側壁の上端縁部分は,花弁状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆円錐形状に形成されている。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周側壁は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ,一旦僅かに外側に反るように湾曲した後に,逆に外側に凸弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるように形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端部分は,同形の緩やかな凸弧状が連設されたものが6つ繰り返され,上下振幅の小さい山形の花弁状凹凸形状に形成されている。
c-1.持ち手部の縦長逆円錐形状の拡開角度が約15度で,その下端が半球状に丸まっている。
d-1.持ち手部及び収容部の外表面は模様もなく,平滑である。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)を約2:1とし,収容部と持ち手部の高さ比を約1:3とし,収容部上端の径と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1,収容部上端の径と収容部の高さの比を約2:1としている。

(2)本件登録意匠と先願意匠との対比
1)意匠に係る物品
まず,意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「アイスクリーム用コーンカップ」であり,引用意匠は,「ソフトクリーム用可食容器」であるが,いずれもアイスクリームまたはソフトクリーム用の可食の容器であるから,意匠に係る物品は,共通する。
2)形態における共通点
本件登録意匠と先願意匠(以下,「両意匠」という。)は,その形態において,主に以下の点で共通する。
(i)基本的構成態様
A.全体の基本的な構成は,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成されている。
それらを構成する各部の基本的な構成態様については,
B.収容部については,
B-1.略鉢状に拡開している。
B-2.周側壁の上端縁部分は,花弁状凹凸形状に形成されている。
C.持ち手部については,
C-1.縦長逆円錐形状に形成されている。
(ii)具体的構成態様
b-1.持ち手部の上端から一旦外側に反るように湾曲(屈曲)してから,上方に閉じて立ち上がるように形成されている。
b-2.周側壁上端の花弁状凹凸形状の凹凸はやや浅く形成されている。
c-1.持ち手部の縦長逆円錐形状の拡開角度が約15?17度の狭いものである。
c-2.持ち手部の縦長逆円錐形状の下端が半球状に丸まっている。
(iii)全体及び各部の構成比
Z.全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)は約2:1(本件登録意匠は約7:4),収容部上端の径(最大径)と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1としている。

3)形態における相違点
一方,両意匠は,その形態において,主に以下の点で相違する。
(ii)具体的構成態様
b-1.収容部の周側壁については,
本件登録意匠は,持ち手部の上端から外側に反るように湾曲してから,僅かに斜め上方に向け直線的により大きく張り出した後に,屈曲して略垂直に立ち上がるように形成されているのに対して,先願意匠は,持ち手部の上端から斜め上方に向かいつつ,一旦僅かに外側に反るように湾曲した後に,逆に外側に凸弧状に大きく湾曲して,上端はほぼ垂直に立ち上がるように形成されている。
b-2.収容部の周側壁の上端部分の花弁状凹凸形状については,
本件登録意匠は,同形の緩やかな凸弧状が滑らかに凹弧状に連設されたものが4つ繰り返され,上下振幅の小さい波形の花弁状凹凸形状に形成されているのに対して,先願意匠は,同形の緩やかな凸弧状が連設されたものが6つ繰り返され,上下振幅の小さい山形の花弁状凹凸形状に形成されている。
d-1.持ち手部及び収容部の外表面の態様については,
本件登録意匠は,縦長逆円錐形状の持ち手部の下端より僅かに上の位置から収容部の途中までの外表面に,ダイヤ形状の凹部を連続して形成した斜め格子状レリーフ模様が設けられており,その模様は斜め格子状が上方にいくにしたがって格子目が大きくなるようにし,その模様上端が収容部の外方に大きく張り出した部分において6つのダイヤ状凹部がギザギザ状に表れるように施されているのに対して,先願意匠は,模様がなく,平滑である。
(iii)各部の構成比
Z-2.収容部と持ち手部の高さ比を,本件登録意匠は,約1:4としているのに対して,先願意匠は約1:3とし,収容部上端の径(最大径)と収容部の深さ(高さ)の比を,本件登録意匠は約3:1としているのに対して,先願意匠は約2:1としている。

(3)本件登録意匠と先願意匠の類否判断
上記(2)の共通点と相違点を評価,総合し,両意匠の類否を判断する。
1)共通点
上記(2)2)(i)基本的構成態様の,共通点A.全体の基本的な構成が,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものであって,持ち手部と収容部は連続一体的に形成され,それらを構成する各部の基本的な構成態様の,共通点B-1.収容部が,略鉢状に拡開して形成され,共通点B-2.鉢状の周側壁の上端縁部分が,花弁状凹凸形状に形成され,共通点C.持ち手部が,縦長逆円錐形状に形成されており,その全体の縦横構成比(全高と収容部上端の最大径)が約2:1,収容部上端の径(最大径)と持ち手部上端の径(最大径)の比を約2:1としている点については,両意匠の骨格を成し,両意匠の基本的な構成態様を表しているものであるといえるものの,共通点A.の,下端から上方に向かって一定の傾斜で拡径している持ち手部と,持ち手部の上端から上の持ち手部の傾斜よりも大きく拡開している収容部とから成るものである態様については,請求人提出の公知意匠1ないし5をはじめとするこの種物品の多くの先行意匠において見られる,この種物品の意匠が有する一つの極めて基本的な骨格を両者が有しているということであり,またそれに加えて,その持ち手部と収容部が連続一体的に形成されている態様としてみた場合にも,公知意匠1,公知意匠2及び公知意匠4等において既に普通に見受けられる態様であって,両意匠にのみ見られる共通点ではないから,これらの共通点のみをもって直ちに両意匠の類否を決定づけることはできない。

そして,略鉢状とする収容部をもつものは,請求人提出の公知意匠1ないし公知意匠5等をはじめ多くの公知意匠に,収容部の周側壁の上端部を大雑把に花弁状凹凸形状とするものは公知意匠1,公知意匠2及び公知意匠4にも見られる態様であり,また持ち手部を縦長円錐形状とするものも公知意匠3ないし5等をはじめ多くの公知意匠に見られるところであり,さらに,外表面の凹凸模様等の具体的な態様を除けば,これらの3つの態様を兼ね備える先行意匠として請求人提示の公知意匠4が既に存在するのであるから,両意匠の,共通点B.の収容部が鉢状であって,その周側壁の上端部分が略花弁状凹凸形状である点,共通点C.の持ち手部が,縦長逆円錐形状に形成されている点については,収容部,持ち手部の概略の態様が共通しているにすぎないのであって,両意匠のみに見られる共通点ではなく,収容部の鉢状の深浅及び鉢状を構成する周側壁の曲がり具合(曲率)や,花弁状凹凸形状を構成する凸状の形状,数及び凸状の連設の仕方,持ち手部及び収容部の外表面の模様の有無などの具体的態様の共通性までには至らない,未だ概括的な構成態様の共通点に留まるものであるといえる。したがって,これらの共通点のみをもって直ちに本件登録意匠が先願意匠に類似するとの判断にまで至るものではなく,両意匠の具体的構成態様の共通点,相違点をも評価したうえで判断されるべきものである。
そこで,具体的態様の共通点b.c.について検討してみると,b-1.の収容部が持ち手部から一旦外方に拡開して開いたままでなく内側に閉じている,b-2.花弁状凹凸形状の凹凸の深さがやや浅いものである,というレベルの共通性があるが,これらについては,基本的構成態様と同様に,他の多くの意匠にも見られる態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえず,また,c.持ち手部全体の縦長逆円錐形状の開拡の角度が約15?17度の狭い(持ち手部が細い)ものであることも,この種物品においては,極普通に見られる態様であり,また、その下端を半球状に丸めた態様も,逆錐状とする場合にはほとんど必ず見られる常套的な造形処理の組み合わせ態様といってよいほどありふれた態様の共通性であるから,それらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はほとんどないといえる。

2)相違点
そこで,相違点である(ii)具体的構成態様を検討してみると,まず,相違点b-1.収容部の周側壁の態様については,その全体が概略鉢状ではあるといっても,先願意匠は,曲線的でやや深さのある正に鉢状であって,公知意匠3及び公知意匠5にも見られる比較的ありふれた態様であるといえるのに対して,本件登録意匠は,直線的な態様であって,(iii)の収容部の縦横構成比及び全体に占める収容部の高さ(深さ)(本件登録意匠の方が先願意匠の収容部よりも薄く扁平である。)の相違にも表れているように,浅い,鉢状というよりは皿状ともいうべきものであって,先行意匠の深さのあるものとは異なる印象のものであり,他には見られない本件登録意匠のみの新規な態様のものであるから,この相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものといえる。
また,相違点b-2.収容部の周側壁の上端部分の花弁状凹凸形状については,収容部最上端の最も目につく部分であり,看者の注目を集めるために施された装飾部分であるから,その凸弧状(凹凸)の形状,数及び構成等の細部にも注意がいくところであって,一見同形の緩やかな凸弧状が繰り返される連設の態様で同じように見えても,凸弧状の連設の態様において,本件登録意匠の滑らかで境界が現れず穏やかな波のような印象が強まる態様のものと先願意匠の各凸弧状がその左右両端で境界が現れ凸弧状のみが繰り返している山形状の印象が強まる態様のものとでは違いが目につき,さらに凸弧状の数の違いも視覚的効果に影響することも加味すると,この相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものといえる。また,当然に花弁状凹凸形状が形成される上端部分は本体収容部の形状と一体不可分なものであるから,相違点b-1.と相まって,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
なお,花弁状凹凸形状の凸弧状の数の僅かな相違については,連設する態様が同じであれば,凸弧状の数による視覚的な影響はほとんどないといえるが,本件登録意匠は連設の態様は滑らかであり,かつ凸弧状の数が少ないことから,その滑らかさが強まるのに対して,先願意匠は凸弧状の両端の境界が繰り返し現れる凹状部分が滑らかではない態様であって,かつ凸弧状の数が本件登録意匠の1.5倍の6つであることから,その繰り返しの数が増えることによってさらに現れる境界が目立って印象的となるものである。

そして,相違点d-1.の持ち手部及び収容部の外表面における模様の有無の相違については,先願意匠の全く何の模様も施していない単なる平滑な態様と,本件登録意匠の斜め格子状レリーフ模様が上下端部分を除く全体の多くの部分に施されている態様とでは,全く印象を異にするものであって,それが両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
本件登録意匠に施されたその模様は,細かな地模様などではなく,全体の形状やこの種物品の生地の厚さから相応に目立つ格子状,レリーフ状の模様であって,その格子模様はこの種物品において従前から比較的見られる模様であるとしても,本件登録意匠の全高の8割方という大きな部分に施されたものであり,かつ模様の具体的な配置の仕方及び施し方において,特にその模様の上端部分を上述のとおり特徴のある扁平で直線的な収容部の外方に大きく直線的に張り出した部分の中途まで施して,しかもその模様の上端部分を,下方から上方にいくにしたがって格子目が大きくなるようにした最も大きなダイヤ形状の凹部6つのみでギザギザ状に表しており,その態様はこれまでにない新規な本件登録意匠のみの特徴といえるものであるから,そうした模様の態様の有無の相違は,前記の収容部の形状の相違と相まって,当該模様が看者に大きな萼のように見える強い印象を与える特徴的なものとなっているといえ,両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものといえる。

3)類否判断(共通点と相違点の総合評価)
以上のとおりであって,前記共通点A.,B-1.,B-2.及びC.に係る態様は,それらが相乗して生じる視覚的な効果を考慮してもなお,未だ概括的な共通性を示すに留まるものであって,需要者に共通の美感を強く起こさせるものとまではいえず,両意匠の類否判断を決定付けるものとはいえないのに対し,相違点が相まって両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいものであって,両意匠の美感を大きく異ならせているものであるから,本件登録意匠は先願意匠に類似しない。

(4)請求人の主張について
請求人は,両意匠について,基本的構成態様だけでなく,具体的構成態様についても,
(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる,
(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(6つの凸部及び6つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である,
等とそれらを個別的に捉える一方で,概括的に捉え,それらに基づいて両意匠は,
・花弁状凹凸部において,本件登録意匠では4つの凸部と4つの凹部から構成されているのに対して,先願意匠では6つの凸部と6つの凹部とから構成されている点
・持ち手部において,本件登録意匠では格子状柄があるのに対して,先願意匠にはそのような格子柄が存在しない点
・収容部と持ち手部との長さ比が,本件登録意匠では約1:7であるのに対して,先願意匠では,約1:5である点
において差異があるとし,それら差異点は,いずれも,需要者が着目しない点における些細な相違に過ぎない旨主張している。
しかしながら,本件登録意匠及び先願意匠は,各部位の範囲について請求人と被請求人との食い違った見解が相容れないことに象徴されるように,個別に分けて部位を認識しやすい態様のものではなく,連続一体的に形成されているものであり,それは持ち手部と収容部の箇所だけでなく,花弁状凹凸形状として認識している部分についても,その花弁状凹凸形状は当然に本体の収容部の形状の上に形成されているものであり,その収容部の形状,それは直線的か曲線的か,その構成比も含めて一体に形成されたものなのであって,それを「収容壁は,外側に膨らんでいる」と大雑把に括って共通点としたり,花弁状凹凸形状の具体的な構成,凸弧状の曲がり具合,連設の仕方等を抜きにして,まるで花弁状凹凸形状の態様がその凸弧状の数のみ相違していることを前提とするかのようにして,創作容易性における判断のように「4つか6つかという点から需要者は大きな美的印象の違いを受け取ることはない」と評価するのは適切ではない。
確かに凸弧状の高さによって連設の態様(連設部分の態様)が目立ち易いか,目立ちにくいかの違いが出てくるとはいえるとしても,そうした凸弧状の高さという細かい部分の態様を引き合いに出して主張する一方で,収容部そのものの深浅や「外側に膨らんでいる」形状,つまり本件登録意匠が直線的な態様であるのに対して,先願意匠が弧状の曲線的な態様である点の具体的な違いについては捨象して捉えているところがあるといわざるを得ない。凸弧状の数の多寡が形状の類否に与える影響についても,創作容易性の判断ではないのであるから,上述のとおり前提となるその凸弧状の形状やその構成の異同に影響されるだけでなく,4つと6つとは,18と20の場合と違って,単純に2つの違いだけであるとはいいきれず,6/4(1.5)倍又は4/6倍といえ,場合によっては視覚的印象を大きく異ならせる要因となることがあるものである。

また,持ち手部から収容部の中途まで外表面に形成されている格子柄形状の有無に関する相違点について,それが需要者が着目しない点における些細な相違である理由として,請求人は,本件登録意匠において格子柄形状が付されているのは「持ち手部のみ」であるとして,同様に持ち手部に格子柄形状が付されている先行公知意匠(公知意匠5(甲第6号証)等(甲第12号証及び同13号証))にも開示されていることを示す一方で,「持ち手部から収容部にかけて全体に」格子柄形状が付されている公知意匠(甲第14号証および同15号証)の存在も示し,それらによって,「持ち手部に」格子柄形状が付されている形態は需要者に新規な印象を与えるものではなく,また,そもそもコーンの全体にわたって格子柄形状を付すという形態も特に新規ではないという主張をしているが,それら先行公知意匠の例示は,単に様々な格子状模様における様々に施された例が示されただけであって,本件登録意匠の「収容部の途中の部分までに」,「下方から徐々に大きくなってダイヤ状の凹部が(間の三角形状凹部を表すことなく)ギザギザ状に表された」具体的な態様を,両意匠の類否判断においてどのように評価することができるか,どのような判断材料として示されたのかは明らかにされておらず,単に,格子状レリーフ模様が付される,本体がどのような形状であっても,そしてその全体でもいずれの部分,いずれの範囲,大きさであっても,格子状レリーフ模様を付すことは全て,新規性の判断において着目する価値がないものという主張に等しいものであるが,それを肯定できる理由が全く示されていないといわざるを得ない。
それは,これらの差異点が,いずれも,需要者が着目しない点における些細な相違にすぎないとする主張の根拠として,「両意匠は,『収容部と持ち手部とからなるソフトクリーム用可食容器であって,収容部上端には花弁状凹凸部が形成されており,当該花弁状凹凸部には4つあるいは6つの凸部及び凹部が設けられていて,収容部の側壁は外側へ弧を描いて膨らんでいて,持ち手部分は断面円形で下方に向かって窄む形状であって,収容部と下方の持ち手部との長さ比が約1:5ないし約1:7である。』という全体印象において共通しており,両意匠は全体印象から受ける共通点の印象が強く,両意匠の共通点から需要者は,共通の美的印象を受け取るものである」との主張があるが,一方で,無効理由1(創作容易性)における請求人の主張において,「本件登録意匠の基本的構成態様のうち,『(a)上方の収容部と下方の持ち手部とからなるアイスクリーム用コーンカップである。』と『(c)下方の持ち手部分は,断面円形で下方に向かって窄む形状である。』という点については,上記した公知意匠1ないし5に限らず,多くのアイスクリーム用コーンカップが有する基本的骨格であることは顕著な事実であって,前記基本的構成態様(a)及び(c)には創作性は全くない。また,『(b)上方の収容部の上端には,花弁状凹凸形状が形成されている。当該花弁状凹凸部には4つの凸部が設けられている。』という点についても,上端が花弁状凹凸形状にて形成されている形状は,公知意匠1,2及び4において設けられているため創作性はなく,また,凸部が4つである点についても公知意匠1で既に開示されているところであって新規な創作とはいえない。すなわち,基本的構成態様の(b)は公知意匠1に表れている。よって,本件登録意匠の基本的構成態様に係る(a)ないし(c)については,何ら新しい創作に係る意匠は表れていない。」また,「本件登録意匠の具体的構成態様のうち,『(d)上方の収容部の側壁は,外側へ弧を描いて膨らんでいる。』という点については,公知意匠2ないし4において表れており,収容部側壁を外側へ弧を描いて膨らませる形状は新規な創作ではない。また,『(e)上端の花弁状凹凸部は,緩やかな弧を描いて凹凸(4つの凸部及び4つの凹部)を形成しており,各花弁の形状は同一である。』という点についても,公知意匠1に表れている。」,「『(g)上方の収容部と下方の持ち手部とは,その長さ比が約1:7である。』という点については,公知意匠4とほぼ同等であり,公知意匠3及び5とも全体的な割合は同等であるといえる。よって,本件登録意匠の具体的構成態様に係る(d)から(g)についても,何ら新しい創作に係る意匠は表れていない。」として,両意匠に共通する態様について,同様の態様を有する先行公知意匠を示して,両意匠に共通する態様が新規でもなく,創作性もないものと主張しており,格子状レリーフ模様における主張と同様に考えるならば,全く矛盾する論理のない主張といわざるを得ない。
全体の多くの部分に施された格子状レリーフ模様の有無,しかもそれは模様の施される位置も施され方もこれまでに見られない新規な態様の模様の有無の相違が看者に与える視覚的印象の違いとして両意匠の類否判断に与える影響を上回るようなものが,全く新規でもなく,創作性もないものと請求人自らが主張する両意匠の共通する態様にあるとは到底いえず,したがって,請求人のこの主張は失当であって,採用することは到底できない。

(5)小括
したがって,本件登録意匠は,他人の先願に係る意匠(先願意匠)に類似するものであるとはいえないから,意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものに該当せず,この点につき無効理由を有さないものであるから,本件登録意匠は,同法第48条第1項第1号の規定に該当しないものと認められる。

第7 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効理由1及び無効理由2のいずれにも理由はなく,本件登録意匠が,意匠法第3条第2項の規定及び意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものということはできないから,同法第48条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすることはできない。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-06-22 
出願番号 意願2012-30279(D2012-30279) 
審決分類 D 1 113・ 4- Y (A1)
D 1 113・ 121- Y (A1)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 木本 直美平田 哲也 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
本多 誠一
登録日 2013-04-26 
登録番号 意匠登録第1470898号(D1470898) 
代理人 立花 顕治 
代理人 松井 宏記 
代理人 田中 順也 
代理人 山田 威一郎 
代理人 大矢 正代 
代理人 前田 勘次 
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