ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 G2 |
---|---|
管理番号 | 1319226 |
審判番号 | 不服2016-5086 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-06 |
確定日 | 2016-08-16 |
意匠に係る物品 | 自動車用タイヤ |
事件の表示 | 意願2012- 29439「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)11月30日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原審の拒絶の理由 原審における平成27年10月6日付けの拒絶理由通知書における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(平成24年11月30日に出願された整理番号:2012D00288の意匠登録出願(意願2012-029438号に該当)の意匠(以下,「本意匠」という。))に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。 第3 手続きの経緯 原審の上記拒絶の理由に対して,出願人は,平成27年11月13日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似するものであるため,意匠法第10条第1項の規定に該当すると主張したが,平成28年1月20日付けで拒絶査定がなされたため,同年4月6日に審判請求書を行った。 その後,請求人は,平成28年6月15日に手続補正書を提出し,願書に記載の「本意匠の表示」を削除し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更すると共に,同日に提出した上申書において,原査定の拒絶の理由は解消したため,原査定を取消して本願は登録すべきものであるとの審決を求めている。 第4 当審の判断 以下,本願意匠が本意匠とは類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるか否かについて検討する。 1.本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品について 本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用タイヤ」であるので一致する。 2.本願部分と本意匠の本願部分に対応する部分(以下,「本意匠部分」という。)の対比 (1)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と本意匠部分(以下,「両部分」という。)は,いずれも自動車用タイヤのトレッド部及びその左右ショルダー部の傾斜面部分における表面部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (2)両部分の具体的形態 まず,共通点として, (A)全体は,略横向き短円筒形状の円筒面部分のトレッド部及びその左右ショルダー部の傾斜面部分における表面部分の形態であって,正面視において, (B)トレッド部は,その中央に等幅な直線状の縦溝(以下,「中央縦溝部」という。)をタイヤ周方向に形成し,この中央縦溝部を起点として左右ショルダー部の外側端部付近まで,左側に向かって漸次幅広に伸張する略横「ノ」の字状に表れる横溝(以下,「左弧状横溝部」という。)と,右側に向かって漸次幅広に伸張する左弧状溝部と左右対称形の溝部(以下,「右弧状横溝部」という。)を,互い違いになるように半ピッチずらして上下に等間隔に形成したものであって,この左弧状横溝部上下間または右弧状横溝部上下間を,2本の縦方向に形成された溝(以下,タイヤ中央部側のものを「内側溝部」,タイヤ外側のものを「外側溝部」という。)によって3つのブロック(以下,タイヤ中央部から外側に向かって「内側ブロック部」,「外側ブロック部」,「ショルダーブロック部」という。)に分割した構成としたものであり, (C)内側溝部は,ほぼ等幅な直線により構成している点, (D)外側溝部は,上方がタイヤ外側に向かって僅かに傾斜した形態である点, (E)各ブロック部については, (E-1)内側ブロック部は,略菱形形状であり,その表面部分に,両端部に直線状部分を持つ略ジグザグ線状のサイピング(以下,「ジグザグ線状サイピング」という。)7本及び略直線状のサイピング1本を,各サイピングが略平行になるようにタイヤ外側に向かって下に傾斜した態様で形成している点, (E-2)外側ブロック部は,その表面部分上端部付近に,略直線状のサイピング1本及びその下側部分にジグザグ線状サイピングを複数本,各サイピングが平行になるようにタイヤ外側に向かって下に傾斜した態様で各サイピングが略平行になるように形成している点, (E-3)ショルダーブロック部は,僅かに湾曲したその上下辺と,上方がタイヤ外側に向かって僅かに傾斜した内側辺及び垂直状の外側辺からなり,内側上角部を隅丸とした略直角台形状の形態であって,タイヤ外側の端部部分で上下のショルダーブロック部同士を連結した態様とし,その表面部分に,ジグザグ線状サイピングを略水平状に4本及びその下側に内側端部にのみ直線状部分を持つ略ジグザグ線状の短サイピングを1本,各サイピングが平行になるように略水平状に形成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)内側溝部の態様について,本願部分は,上下の内側溝部が一直線状に連なり,中央縦溝部の左右に,それより幅広で等幅な直線状の縦溝をタイヤ周方向に形成した形態としているのに対して,本意匠部分は,中央縦溝部より細幅で,上方がタイヤ外側に向かって僅かに傾斜した溝を上下に不連続に形成した形態としている点, (イ)外側溝部の態様について,本願部分は,下方に向かって漸次窄まった形態であるのに対して,本意匠部分は,ほぼ等幅な直線状の形態である点, が認められる。 3.両部分の形態の評価 以上の共通点及び相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響を評価すると,まず,共通点(A)の両部分全体の態様,及び共通点(B)のトレッド部の態様については,自動車用タイヤの形態として既に見られるものであり(例えば,参考意匠:大韓民国意匠商標公報(2003年3月15日発行)に所載の「自動車用タイヤ(登録番号:30-0319906類似1)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH15525925号),別紙第2参照),本願意匠の出願前に既に見られるものであるから,両部分のみがもつ特徴的な態様とはいえず,これらの共通点(A)及び共通点(B)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 次に,共通点(C)ないし(E-3)の各部の態様も,内側ブロック部の形態は既に見られるものであり(上記参考意匠参照),ショルダーブロック部の形態も全体のブロックパターンに埋没してしまい特に目につくものではなく,また,各ブロックに形成されたサイピングの形態も特に目を惹く部位でもないため,この共通点(C)ないし(E-3)が両部分の類否判断に及ぼす影響も小さいものである。 そして,これらの共通点(A)ないし(E-3)は,全体としてみても,両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,相違点(ア)内側溝部の態様については,上下の内側溝部が一直線状に連なることで,中央縦溝部とともに計3本の等幅で直線状の縦溝部がタイヤ周方向に形成された本願部分の態様と,等幅直線状の縦溝部が中央に1本しかない本意匠部分のものとは,ブロックパターンが大きく異なり,看者に全く別のものであるとの印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。 次に,相違点(イ)外側溝部の態様については,該部位を下方に向かって漸次窄まった構成としたことで,中央縦溝部及び内側縦溝部とは異なり,上下方向に連続しているようには見えない本願部分の態様と,全てが等幅で直線状の構成であるため,中央縦溝部及び内側溝部と同じく上下方向に連続しているように見える本意匠のものとは,看者に別異の印象を与えるものであるから,相違点(ア)と相まってこの相違点(イ)が両部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。 そうすると,これらの相違点(ア)及び相違点(イ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる視覚的効果は,両部分の類否判断を左右するものであるといえる。 4.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両部分の形態については,上記のとおり,相違点が類否判断に及ぼす影響が,共通点のそれを上回っており,両部分全体として別異の印象を与えるものである。 したがって,本願意匠と本意匠とは類似しないものと認められる。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであって,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであるが,請求人の提出した手続補正書によって原審の拒絶の理由は既に解消しているので,当該拒絶の理由によって本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2016-07-28 |
出願番号 | 意願2012-29439(D2012-29439) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(G2)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 玉虫 伸聡、加藤 真珠 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 橘 崇生 |
登録日 | 2016-09-23 |
登録番号 | 意匠登録第1561473号(D1561473) |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 村松 由布子 |