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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1319235 
審判番号 不服2016-6899
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-11 
確定日 2016-08-30 
意匠に係る物品 胃空腸栄養補給用カテーテル 
事件の表示 意願2014-9138「胃空腸栄養補給用カテーテル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2013年(平成25年)11月25日(以下「優先日」という。)のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成26年(2014年)4月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「胃空腸栄養補給用カテーテル」とし,形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願優先日前,日本国特許庁発行の公開実用新案公報記載 平成5年実用新案出願公開第76451号(考案の名称「プラグ付きカテーテル」)の図3に表されたカテーテルの意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「胃空腸栄養補給用カテーテル」であり,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,胃及び空腸に対して栄養を補給する用途及び機能を有するカテーテルである。
これに対して,引用意匠の意匠に係る物品は「プラグ付きカテーテル」であり,引用意匠に係る公報の記載によれば,体液等を吸引,排液又は薬液注入を行うと同時に,内蔵された温度センサー等の電気的検出手段を用いて体温等の生体情報を計測する体内挿入用の用途及び機能を有するカテーテルである。
そうすると,引用意匠の意匠に係る物品に備わる,体液等の吸引,排液又は生体情報を計測する用途や,それらの機能を,本願意匠の意匠に係る物品は有していないことから,両意匠の意匠に係る物品は,おおむね相違する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面の向きを,引用意匠にも当てはめることとする。)

<共通点>
両意匠は,基本的態様として,
(A)全体は,奥行方向に長い略管状であって,正面から見て,管の略中央から上側に,左右の辺を円弧に置き代えた略台形の大貫通穴が設けられ,大貫通穴の下方に,略弓形の中貫通穴が設けられ,大貫通穴の上方に,略円形の小貫通穴が設けられている点,
で共通する。

<相違点>
両意匠は,具体的態様として,
(ア)中貫通穴が,本願意匠は単に空洞であるのに対して,引用意匠は穴の内部に電線が配置されている点,
(イ)大貫通穴の上辺が,本願意匠は,小貫通穴を囲むような曲線であるのに対して,引用意匠は,下片と平行な直線である点,
(ウ)大貫通穴と中貫通穴の入り隅が,本願意匠は丸みを帯びているのに対して,引用意匠は角張っている点,
で相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品の評価
上記1.(1)に示すとおり,両意匠の意匠に係る物品は,おおむね相違するところ,この相違により,それぞれのカテーテルが必要とされる医療状況も異なることになるから,カテーテルの需要者である医療従事者は,一見して両意匠の意匠に係る物品の使用目的と使用方法が異なると判断することができる。したがって,両意匠の意匠に係る物品の相違は,需要者が一見して気付くものであるというべきである。

(2)両意匠の形態についての共通点の評価
基本的態様として示す共通点(A)は,カテーテルの物品分野において,他にも見られる形態であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,それ程大きいものとはいえない。

(3)両意匠の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア),すなわち中貫通穴が,本願意匠は単に空洞であるのに対して,引用意匠は穴の内部に電線が配置されている点は,両意匠の意匠に係る物品がおおむね相違することに起因する,形態に関する相違点であるから,相違点(ア)は,カテーテルの需要者である医療従事者に対して,両意匠が異なるものであるという印象を非常に強く与えるというほかない。
また,相違点(イ)に係る本願意匠の形態は,大貫通穴の上辺が,小貫通穴を囲むような曲線であるというものであるところ,正面視において最も広い面積を占める大貫通穴についての形態である上,カテーテルの物品分野において他には見られない形態であることから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
他方,貫通穴の入り隅が丸みを帯びていることは,カテーテルの物品分野において他にも見られる形態であるから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,相違点(ア)ないし(ウ)が相乗した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が相違し,この相違は需要者が一見して気付くものであるというべきであり,また,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-08-17 
出願番号 意願2014-9138(D2014-9138) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-09-16 
登録番号 意匠登録第1561108号(D1561108) 
代理人 特許業務法人 大島特許事務所 

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