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審決分類 審判    L2
管理番号 1319242 
審判番号 無効2015-880011
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-09-26 
確定日 2016-08-22 
意匠に係る物品 基礎杭 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1499504号「基礎杭」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由

請求人は,平成27年9月26日付けの審判請求において,「登録第1499504号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,以下のとおり主張し,証拠方法として甲第1号証ないし第26号証の書証を提出した。

1 意匠登録無効の理由の要点
(1)本件登録意匠は,請求人が出願した特許出願の特許公開公報に記載された意匠(以下,「公知意匠1」という。)又は請求人が出願前から公然と実施することにより公知となった意匠(以下,「公知意匠2」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきである。

(2)本件登録意匠は,公知意匠1又は公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第17号証?甲第25号証)に置き換えて構成したにすぎないものであり,当業者であれば容易に創作することのできる意匠であるから,意匠法第3条第2項により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきである。

2 本件意匠登録を無効とする理由
(1)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,物品「基礎杭」に関するものであり,その要旨は次のとおりである。 すなわち,甲第2号証に示す意匠公報及び甲第5号証に示す対比説明図からも明らかなように,

ア 基本的な構成態様は,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体1の下半身に螺旋状のリブ2が形成されており,前記杭本体1の基端部には板状の取り付け用の取付基板3が取り付けられている。

イ 具体的な構成態様は,
ア)前記取付基板3は円形状からなる。
イ)前記取付基板3には,長孔4が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている。
ウ)前記取付基板3の中央に円形の小孔が開設されている。
エ)前記杭本体1は下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている。

(2)公知意匠1について
公知意匠1は,請求人が平成18年2月3日に特許出願した「基礎杭と建造物の支柱との接合構造およびそれに使用する基礎杭」(特願2006-27730)の明細書及び図面に記載された意匠である。
なお,前記特許出願は,平成19年8月16に出願公開(特開2007-205108)され(甲第3号証),平成23年10月21日に登録(特許第4846378号)されている(甲第4号証)。

前記公知意匠1は,物品「基礎杭」に関するものであり,その要旨は次のとおりである。すなわち,甲第3号証に示す特許公開公報,甲第4号証に示す特許公報及び甲第5号証に示す対比説明図からも明らかなように,

ア 基本的な構成態様は,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体1Aの下半身に螺旋状のリブ2Aが形成されており,前記杭本体1Aの基端部には板状の取り付け用の取付基板3Aが取り付けられている。

イ 具体的な構成態様は,
ア)前記取付基板3Aは八角形状からなる。
イ)前記取付基板3Aには,長孔4Aが中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている。

(3)公知意匠2について
公知意匠2は,請求人が前記特許出願に係る基礎杭を,商品名「タッピングパイル」として製造販売し,太陽光発電パネルの基礎や農業用温室の基礎として施工している基礎杭である。
請求人は,前記「タッピングパイル」を,平成20年頃より現在に至るまで製造販売し,一部は請求人自ら農業用温室の基礎や太陽光発電パネル設置用基礎として使用し施工している(甲第6号及び甲第7号証)。
また,前記「タッピングパイル」は,遅くとも,平成23年1月末には宇都宮の「エフ・エフ・ヒライデ」には太陽光発電システムの基礎として使用され,施工完成している(甲第8号証及び甲第9号証)。
また,平成24年3月27日には,請求人のホームページに前記「タッピングパイル」の写真及び施工時の動画を掲載する(甲第10号証及び甲第11号証)と共に,同年7月には,農業試験場鹿沼農場跡地に太陽光発電設備設置工事においても,前記「タッピングパイル」を使用している(甲第12号証乃至甲第15号証)。
さらに,平成25年2月27日から3月1日まで開催されたスマートエネルギーWeek2013において,第4回太陽光発電システム施工展において,前記「タッピングパイル」を展示している(甲第16号証及び甲第17号証)。
上述する製造販売及び施工例は,一部であり,その他,多くの「タッピングパイル」を平成25年7月5日より前に製造販売し,太陽光発電パネルの基礎として施工している。

公知意匠2は,物品「基礎杭」に関するものであり,その要旨は次のとおりである。すなわち,甲第6号証,甲第7号証,甲第8号証,甲第10号証,甲第12号証及び甲第16号証に示す書証並びに甲第5号証に示す対比説明図からも明らかなように,

ア 基本的な構成態様は,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体1Bの下半身に螺旋状のリブ2Bが形成されており,前記杭本体1Bの基端部には円形板状の取り付け用の取付基板3Bが取り付けられている。

イ 具体的な構成態様は,
ア)前記取付基板3Bは円形状からなる。
イ)前記取付基板3Bには,長孔4Bが中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている。
ウ)前記取付基板3Bの中央に角形の小孔が開設されている。

(4)意匠法第3条第1項3号について
ア 本件登録意匠と公知意匠1との対比
ア)物品の対比
本件登録意匠と公知意匠1とは,いずれも物品「基礎杭」に関するものであり,両者は物品「基礎杭」に関する点で共通する。

イ)形態の共通点及び差異点
本件登録意匠と公知意匠1とは,その基本的構成態様において,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体の下半身に螺旋状のリブが形成されており,前記杭本体の基端部には板状の取り付け用の取付基板が取り付けられている点で共通し,また,具体的構成態様において,前記取付基板に,長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている点で共通する。
一方,本件登録意匠と公知意匠1とは,その具体的構成態様において,本件登録意匠の前記取付基板は円形状からなるのに対して,公知意匠1の前記取付基板は八角形状からなる点,本件登録意匠の前記取付基板の中央に円形の小孔が開設されているのに対して,公知意匠1の前記取付基板はそのような小孔が開設されていない点及び本件登録意匠の前記杭本体は下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られているのに対して,公知意匠1の前記杭本体は下半身から先端先鋭部にかけて略同寸にて形成されてなる点において相違する。

ウ)形態の共通点及び差異点の評価
両意匠間を比較検討すると,両者間には,(a)前記取付基板の形状の差異,(b)前記取付基板の中央に開設される小孔の有無,(c)杭本体の下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られているか否かの差異が認められる。
しかしながら,(a)の点については,単に円形状か八角形状であるかの差異であり,前記取付基板の平面視形状を周知の形状に変更しただけのものであり,(b)の点については,前記取付基板の中央に開設される小孔の有無は,それ程際立った差異ではなく,(c)の点については,杭本体の形状を周知の形状に変更しただけのものである。
すなわち,本物品は,太陽光発電パネル等の構造物の支柱を接合して構造物を立設するものであり,基礎杭の打ち込み位置を前記構造物の複数の支柱位置と整合させる必要が生じる。しかしながら,全ての基礎杭を構造物の複数の支柱位置と整合させて打ち込むことは困難であり,前記基礎杭が地中に打ち込まれる際に,所定の場所から多少の芯ずれを起こした状態で打ち込まれる場合があり,また,螺旋リブを備える基礎杭の場合は,杭頭を所定高さ位置となるように回転圧入するので,構造物側の固定孔と基礎杭の孔が一致しない場合があり,これを解消すべく,前記構造物側の固定孔と基礎杭の長孔の重合範囲において芯ズレ調整を行うことができると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されない構造となすことを特徴とするものである。
したがって,前記螺旋リブによって回転圧入させて地中に打ち込んで用いる本物品においては,長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に多数開設される前記取付板の形状は,まさに看者の注意を強く惹くところであり,意匠の要部となる部分である。
以上より,両意匠には,上記した差異が認められるが,先に述べた基本的な構成態様及び具体的な態様であって意匠の要部に係る部分については酷似しており,両意匠は共通する。一方,差異については,その共通点における取付板の外形についての軽微な差異及び杭本体の下半身を若干先細り状に絞られている部分は広く知られた一般的なものであって(甲第18号証乃至甲第26号証),新規な部分ではなく,意匠全体の態様からみれば非常に軽微な差異であり,意匠全体としてはそれ程際立った差異ということはできないものであり,その差異が両者の類否判断に与える影響はそれほど顕著なものとは言えず,類否判断の要素として評価できない。

エ)類否の結論
以上のように,両意匠は基本的な構成態様が一致し,更に,具体的な構成態様についても,前記取付基板に長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている点で共通しており,これらの点は,両意匠の形態に関する主要部を構成するものであり,両意匠の基調をなす特徴であり,また,前記取付板に放射線状に多数の長孔が開設される形状が,前記構造物側の固定孔と基礎杭の長孔の重合範囲において芯ズレ調整を行えると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されないという技術的効果を奏す点からみても,看者の注意を強く惹くところであって,類否判断を左右する支配的要素である。
したがって,両意匠は,類否判断を左右する支配的要素において一致し,共通している両意匠は,全体として類似するものである。

イ 本件登録意匠と公知意匠2との対比
ア)物品の対比
本件登録意匠と公知意匠2とは,いずれも物品「基礎杭」に関するものであり,両者は物品「基礎杭」に関する点で共通する。

イ)形態の共通点及び差異点
本件登録意匠と公知意匠2とは,その基本的構成態様において,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体の下半身に螺旋状のリブが形成されており,前記杭本体の基端部には板状の取り付け用の取付基板が取り付けられている点で共通し,また,具体的構成態様において,前記取付基板が円形状に形成されてなる点及び前記取付基板に長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている点で共通する。
一方,本件登録意匠と公知意匠2とは,その具体的構成態様において,本件登録意匠の前記取付基板の中央に円形の小孔が開設されているのに対して,公知意匠2の前記取付基板は角形の小孔が開設されている点及び本件登録意匠の前記杭本体は下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られているのに対して,公知意匠2の前記杭本体は下半身から先端先鋭部にかけて略同寸にて形成されてなる点において相違する。

ウ)形態の共通点及び差異点の評価
両意匠間を比較検討すると,両者間には,(a)前記取付基板の中央に開設される小孔の形状の差異,(b)杭本体の下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られているか否かの差異が認められる。
しかしながら,(a)の点については,前記取付基板の中央に開設される小孔の形状の差異はそれ程際立った差異ではなく,(b)の点については,杭本体の形状を周知の形状に変更しただけのものである。
そして,前述のとおり,前記螺旋リブによって回転圧入させて地中に打ち込んで用いる本物品においては,長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に多数開設される前記取付板の形状は,まさに看者の注意を強く惹くところであり,意匠の要部となる部分である
以上より,両意匠には,上記した差異が認められるが,先に述べた基本的な構成態様及び具体的な態様であって意匠の要部に係る部分については酷似しており,両意匠は共通する。一方,差異については,その共通点における取付板の中央に開設される小孔の形状についての軽微な差異及び杭本体の下半身を若干先細り状に絞られている部分は広く知られた一般的なものであって(甲第18号証乃至甲第26号証),新規な部分ではなく,意匠全体の態様からみれば非常に軽微な差異であり,意匠全体としてはそれ程際立った差異ということはできないものであり,その差異が両者の類否判断に与える影響はそれほど顕著なものとは言えず,類否判断の要素として評価できない。

エ)類否の結論
以上のように,両意匠は基本的な構成態様が一致し,更に,具体的な構成態様についても,前記取付基板が円形状に形成されてなる点及び前記取付基板に長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている点で共通しており,これらの点は,両意匠の形態に関する主要部を構成するものであり,両意匠の基調をなす特徴であり,また,前記取付板に放射線状に多数の長孔が開設される形状が,前記構造物側の固定孔と基礎杭の長孔の重合範囲において芯ズレ調整を行えると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されないという技術的効果を奏す点からみても,看者の注意を強く惹くところであって,類否判断を左右する支配的要素である。
したがって,両意匠は,類否判断を左右する支配的要素において一致し,共通している両意匠は,全体として類似するものである。

(5)意匠法第3条第2項について
本件登録意匠は公知意匠1の構成要素のうち,杭本体を周知の形状(甲第18号証乃至甲第26号証)である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換し,取付板の形状を八角形から周知の形状である円形にすると共に,取付板中央に小孔を設けて構成したにすぎない意匠である。
本件登録意匠は公知意匠2の構成要素のうち,杭本体を周知の形状(甲第18号証乃至甲第26号証)である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換し,取付板中央に小孔を周知の円形状に置換して構成したにすぎない意匠である。

以上より,本件登録意匠は,公知意匠1又は公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したにすぎないものであり,当業者であれば容易に創作することのできる意匠である。

3 むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,公知意匠1又は公知意匠2と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきものである。
もしくは,本件登録意匠は,公知意匠1又は公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したにすぎないものであり,当業者であれば容易に創作することのできる意匠であるから,意匠法第3条第2項により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきものである。

4 証拠方法
(1)甲第1号証 意匠登録原簿(登録第1499504号)
(2)甲第2号証 意匠公報(登録第1499504号)
(3)甲第3号証 特許公開公報(特開2007-205108)
(4)甲第4号証 特許公報(特許第4846378号)
(5)甲第5号証 本件登録意匠と公知意匠1及び公知意匠2の対比説明図
(6)甲第6号証 タッピングパイル基礎工法のパンフレット
(7)甲第7号証 タッピングパイル太陽電池設置工法のパンフレット
(8)甲第8号証 ニュースリリース原稿
(9)甲第9号証 2011年2月8日付 下野新聞 第10面該当部
(10)甲第10号証 サンキンB&G株式会社ホームページ抜粋
(11)甲第11号証 WayBackmachine サンキンB&G株式会社ホームページ掲載時情報
(12)甲第12号証 鹿沼太陽光発電設備 施工現場写真
(13)甲第13号証 鹿沼太陽光発電設備工事概要書(第1,2,6,10,11頁)
(14)甲第14号証 鹿沼市ホームページ抜粋
(15)甲第15号証 環境ビジネスオンライン ホームページ抜粋
(16)甲第16号証 スマートエネルギーWeek2013 展示会写真
(17)甲第17号証 スマートエネルギーWeek2013展示会会場案内図
(18)甲第18号証 特開昭60-102416号公報
(19)甲第19号証 特開昭60-102421号公報
(20)甲第20号証 実公昭61-26437号公報
(21)甲第21号証 実公昭61-26438号公報
(22)甲第22号証 実開昭62-7435号公報
(23)甲第23号証 実開昭62-143742号公報
(24)甲第24号証 実開昭62-143743号公報
(25)甲第25号証 実開昭62-143744号公報
(26)甲第26号証 実開昭63-27534号公報

なお,甲第5号証,甲第10号証,甲第11号証,甲第14号証,甲第15号証及び甲第16号証は原本であり,その余はすべて写しである。


第2 被請求人の答弁及び理由

被請求人は,平成27年12月11日付けの審判事件答弁書において,請求人の申立及び理由に対して,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」旨の答弁をし,その理由として,以下のとおり主張した。

1 答弁の理由
(1)総論
請求人は,本件意匠を無効とする理由について,(i)公知意匠1ないし公知意匠2と類似するものであり,意匠法3条1項3号に該当する,(ii)公知意匠1又は公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したに過ぎないものであり,意匠法3条2項に該当する,の2点を挙げている。
しかし,以下に述べるとおり,そのいずれにも理由がない。

(2)本件意匠及び公知意匠1ないし2の構成について
ア 本件意匠について
(ア)本件意匠の基本的構成態様
杭の中央部付近から下端に掛けてテーパーを設けた杭であって,下半身に螺旋状の羽根が形成されており,その上端にはフランジを設置したもの。

(イ)本件意匠の具体的態様
螺旋状の羽根は7巻しており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれて配置されるものであって,全体がねじ状に形成されている。フランジは円形であって回転打ち込み手段の連結部を菊花状のボルト孔を形成している。

(ウ)要部
本件では,需要者であるソーラーパネル等を設置する事業者の注意を引く構成態様が類似するかどうかが問題となるところ,本件意匠は,杭中央部付近から下端に掛けてテーパー状に先細るようにしてあり,それに沿うように螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれる点に特徴があり,その点こそが要部たる構成要素である。

イ 公知意匠1について
(ア)公知意匠1の基本的構成態様
杭であって,下半身に螺旋状の羽根が形成されており,その上端にはフランジを設置したもの。

(イ)公知意匠1の具体的態様
螺旋羽根の巻数や下端部の構造は判然とせず(甲5の図では, 12以下の構造が必ずしも明らかでない。),螺旋羽根部全体にテーパーが設けられているというわけではない。フランジは正八角形である。

ウ 公知意匠2について
(ア)公知意匠2の基本的構成態様
杭であって,下半身に螺旋状の羽根が形成されており,その中央部やや上部にはジョイントを備え(甲6や甲8,甲10等ではジョイントが明瞭に確認できるが,甲7ではジョイント部が見られず,これらが同一物品とは思われない。),その上端にはフランジを設置したもの。

(イ)公知意匠2の具体的態様
下端部の構造は判然とせず,螺旋羽根部全体にテーパーが設けられているというわけではない。螺旋状の羽根の巻数は3回程度である。フランジは正八角形である。

類否判断について
(ア)本件意匠と公知意匠1との比較
a 物品の対比
いずれも物品が基礎杭に関するものであることは間違いない。

b 基本的構成要素・具体的態様の対比
基本的構成要素では,下半身に螺旋状の羽根が形成されており,その上端にはフランジを設置したものであることは共通する。他方で,本件意匠ではテーパーが設けられているところ,公知意匠1ではテーパーが存在しない点で相違する。
具体的態様では,フランジに長孔が開設されている点が共通する。他方で,本件意匠ではフランジが円形であるところ,公知意匠1では正八角形である点,本件意匠ではフランジの中央部に小孔が空いている点,羽根の巻数が相違する。

(イ)本件意匠と公知意匠2との比較
a 物品の対比
いずれも物品が基礎杭に関するものであることは間違いない。

b 基本的構成要素・具体的態様の対比
基本的構成要素では,下半身に螺旋状の羽根が形成されており,その上端にはフランジを設置したものであることは共通する。他方で,本件意匠ではテーパーが設けられているところ,公知意匠2ではテーパーが存在しない点,ジョイント部が設けられている点で相違する。
具体的態様では,フランジが円形であること,フランジに長孔が開設されている点が共通する。他方で,本件意匠ではフランジの中央部に円形の小孔が空いているところ,公知意匠2では正方形の小孔が空いている点,羽根の巻数が相違する。

(ウ) 評価
本件意匠の要部は,前述のとおり,杭中央部付近から下端に掛けてテーパー状に先細るようにしてあり,それに沿うように螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれる点である。この要部については,公知意匠1及び2には設けられておらず,本件意匠と公知意匠1及び2が類似とは評価できない。
この点,請求人は,フランジの形状こそが看者の注意を強く惹く要部であるとするが,「意匠に係る物品の説明」においても,フランジの説明はなされず,むしろテーパー状になっており,所定深さまで地盤中にねじ込まれて配置される点が強調されているのであり,その指摘は当たらない。看者たる需要者とすれば,杭全体の形態に注目し,かつ美観を感じるものである。要部認定に当たっては,「全体的観察」を行う必要があるところ,杭本体ではなく,フランジの形状に着目するというのは,木を見て森を見ない,「個別的観察」を行っていると言わざるを得ない。
また,請求人はテーパーを設ける部分は広く知られた一般的なものであるとして,いくつかの証拠を提示するが,いずれも杭の下端部の先端に近い部分に先細り部を設けているものであり,本件意匠の要部たる,「中央部付近から下端までのテーパー」を構成しているものはない。
したがって,要部において相違する公知意匠1及び公知意匠2は,本件意匠と類似するものではない。

エ 容易想到性について
上述の要部について,請求人は,周知の形状である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換したのみであると主張する。
しかしながら,その根拠として掲げる意匠例は前述のとおり,杭の下端部の先端に近い部分に先細り部を設けているものなのであり,周知の形状とみることはできない。
また,技術的にも,先端に近い部分にだけ先細り部を設けているのであればともかく,その杭の中央部からテーパーを設けることは,強度を確保しつつ滑らかなテーパーを設ける工法を研究することが必要であると思われ,それが容易であるとする証拠もなく「容易想到」とはいえないと思われる。

オ まとめ
以上のとおりであり,本件意匠と公知意匠1,2とは要部において全く異なる構成であって類似ではなく,容易想到であるともいえないものであるから,請求人の主張は失当である。


第3 請求人の弁駁

請求人は,平成28年2月2日付けの審判事件弁駁書において,平成27年12月11日付けの審判事件答弁書による被請求人の答弁及び理由に対して,以下のとおり反論し,証拠方法として甲第27号証の書証を提出した。

1 弁駁の趣旨
(1)平成27年12月12日付差出の審判事件答弁書(以下,「本件答弁書」という)における本件登録意匠,公知意匠1及び公知意匠2の認定には誤りがあり,それに基づく類否判断は失当である。
(2)本件答弁書における「容易想到性」についての主張は,誤った意匠の認定に基づくものであるとともに,誤った法解釈に基づくものであり,失当である。

2 理由
(1)類否判断について
ア 被請求人の主張
本件答弁書第3頁20行?22行において,被請求人は本件意匠の要部を「・・杭中央部付近から下端に掛けてテーパー状に先細るようにしてあり,それに沿うように螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれる点・・」としている。
そして,本件意匠と公知意匠1との相違点として,テーパーが設けられている点,取付基板(フランジ)が円形である点と正八角形である点,取付基板(フランジ)の中央部の小孔の有無及び羽根の巻数の差異を挙げている。
また,本件意匠と公知意匠2とに相違点として,テーパーが設けられている点,ジョイント部(移動阻止環)が設けられていない点,取付基板(フランジ)の中央部の小孔の形状の差異及び羽根の巻数の差異を挙げている。
そして,公知意匠1及び公知意匠2には,本件意匠の要部である中央部付近から下端までのテーパーを有していないから類似しないと主張する。

イ 意匠の要部
しかしながら,この種物品における前記「中央部付近から下端までのテーパー」形状は,たとえば,甲第18号証においては,第1頁左欄7行?8行に「・・杭全体のほぼ中間市から先端方向にかけてテーパーを形成し・・」 とあり,また,第2頁左欄上部第18行?20行に,「杭の外形は全長のほぼ中間の位置から先端方向にかけて緩いテーパーを付してやや先細りとする。」とあり,さらに第1図に示されている。
また,甲第19号証においては,螺旋杭(5)として,第1図,第2図及び第4図に「中央部付近から下端までのテーパー」形状が示されている。
また,甲第20号証乃至甲第25号証においては,それぞれ「ねじ杭」として杭本体を先端方向に向けてテーパー状に形成されたものが第1図として示されている。
また,甲第26号証においては,「ねじ状杭」として,杭本体を先端方向に向けてテーパー状に形成されたものが第1図として示されている。
さらに,今般提出する甲第27号証(特開2006-214205)においても,図1,図2,図4,図5に「支持杭1」として「中央部付近から下端までのテーパー」を有する螺旋杭が示されている。
すなわち,被請求人が主張する本件意匠の要部である「中央部付近から下端までのテーパー」は,この種物品においては,従来から看られるありふれた形態である。したがって,「中央部付近から下端までのテーパー」は,この種物品において意匠の要部となり得るものではない。
一方,この種の螺旋状の基礎杭においては,太陽光発電パネル等の構造物の支柱と基礎杭の打ち込み位置を整合させる必要が生じるが,全ての基礎杭を構造物の複数の支柱位置と整合させて打ち込むことは困難であり,前記基礎杭が地中に打ち込まれる際に,所定の場所から多少の芯ずれを起こした状態で打ち込まれる場合があり,また,螺旋状の基礎杭では,杭頭を所定高さ位置となるように回転圧入するので,構造物側の固定孔と基礎杭の孔が一致しないという問題が生じる。
本件意匠である螺旋状の基礎杭の「長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に多数開設される取付板の形状(菊花状のボルト孔)」は,構造物側の固定孔と基礎杭の長孔の重合範囲において芯ズレ調整を行うことができると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されない効果を実現するため,このような技術的要請から生じる形状は,この種物品の使用者たる建築業者,施工者において重要な関心事であるため,著しく注意を喚起する部分となり,まさに意匠の要部となるものである。

ウ 本件意匠と公知意匠1,公知意匠2との類否
(ア)共通点
本件意匠と,公知意匠1及び公知意匠2とは,その基本的形態において,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体の下半身に螺旋状のリブが形成されており,前記杭本体の基端部には板状の取り付け用の取付基板が取り付けられている点で共通する。
また具体的形態において,前記取付基板3には,長孔4が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に等間隔に10条開設されている点で共通する。なお,本件意匠と公知意匠2とは,さらに前記取付基板の形状も円形状である点で共通する。

(イ)相違点
本件意匠と,公知意匠1及び公知意匠2とは,その具体的構成態様において,本件登録意匠の前記杭本体は下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られているのに対して,公知意匠1の前記杭本体は下半身から先端先鋭部にかけて略同寸にて形成されてなる点において相違する。
また,公知意匠1との関係では,前記取付基板の中央の小孔の有無及び前記取付基板の形状が相違する点,公知意匠2とは,前記取付基板の中央の小孔の形状が相違する点においてそれぞれ相違する。

(ウ)類否判断
そして,本件意匠と,公知意匠1及び公知意匠2との共通点は,上記のように意匠の要部に係るものであり,一方,相違点は,全体から観察しても微差であり,意匠の類否に影響を与えるものではない。
したがって,本件意匠と,公知意匠1及び公知意匠2とは類似する意匠である。

(2)「容易想到性」について
ア 被請求人の主張
本件答弁書第6頁14行?16行において,被請求人は「・・,その根拠として掲げる意匠例は前述のとおり,杭の下端部の先端に近い部分に先細り部を設けているものなので,周知の形状とみることはできない。」と主張し,さらに,本件答弁書第6頁17行?20行において,「・・技術的にも,・・・その杭の中央部からテーパーを設けることは,強度を確保しつつ滑らかなテーパーを設ける工法を研究する必要があると思われ,それが容易であるとする証拠もなく『容易想到』であるとはいえないと思われる。」と主張している。

イ 周知形状及び公知形状
しかしながら,甲第18号証においては,前述のとおり,第1頁左欄7行?8行に「・・杭全体のほぼ中間位置から先端方向にかけてテーパーを形成し・・」とあり,また,第2頁左欄上部第18行?20行に「杭の外形は全長のほぼ中間の位置から先端方向にかけて緩いテーパーを付してやや先細りとする。」とあり,さらに第1図に示されている。
また,今般提出する甲第27号証においても,前述のとおり,「中央部付近から下端までのテーパー」を有する螺旋杭が示されている。
したがって,「杭の外形は全長のほぼ中間の位置から先端方向にかけて緩いテーパーを付してやや先細りとする」形状は,周知形状であり,また少なくとも,公知の形状である。

ウ 「容易想到性」について
被請求人が主張する「容易想到性」は,創作容易性のことであると考えられるが,そもそも,創作容易性の判断は,意匠(物品の形状,模様,若しくは色彩又はこれらの結合)の創作が容易であるか否かによりなされるものであるから,特許等の進歩性を判断する「容易想到」とは別の概念である。技術的に容易か否かは本件とは関係がない。
したがって,本件答弁書第6頁17行?20行における被請求人の主張は誤った法解釈に基づくものであり,到底これを容認することはできない。

創作容易性について
以上より,本件請求人が審判請求書で陳述するとおり,
(ア)本件登録意匠は公知意匠1の構成要素のうち,杭本体を周知の形状(甲第18号証乃至甲第26号証)である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換し,取付板の形状を八角形から周知の形状である円形にすると共に,取付板中央に小孔を設けて構成したにすぎない意匠である。
(イ)本件登録意匠は公知意匠2の構成要素のうち,杭本体を周知の形状(甲第18号証乃至甲第26号証)である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換し,取付板前中央に小孔を周知の円形状に置換して構成したにすぎない意匠である。
(ウ)したがって,本件登録意匠は,公知意匠1又は/及び公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したにすぎないものであり,当業者であれば容易に創作することのできる意匠である。

(3)むすび
以上のとおり,被請求人の答弁における類否判断の主張は,本件登録意匠,公知意匠1及び公知意匠2の認定に誤りがあり,失当である。
また,被請求人の答弁における「容易想到性」についての主張は,誤った公知意匠の認定に基づくものであるとともに,誤った法解釈に基づくものであり,失当である。

3 証拠方法
(1)甲第27号証 特開2006-214205公報の写し


第4 請求人の弁駁に対する被請求人の答弁

被請求人は,平成28年3月29日付けの審判事件答弁書(2)において,平成28年2月2日付けの審判事件弁駁書による請求人の反論に対して,以下のとおり反論し,証拠方法として乙第1号証の書証を提出した。

1 答弁の趣旨
(1)請求人の「甲第18号証,19号証,27号証は「中央部付近から下端までのテーパー」形状を示していると認定し,その形状がこの種物品において意匠の要部となり得るものではない」とする主張は誤りである。
(2)引き続き,本件審判を棄却し,審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。

2 理由
(1)総論
請求人は,弁駁書において,被請求人答弁書について,「本件登録意匠,公知意匠1及び公知意匠2の認定には誤りがあり,それに基づく類否判断は失当である。また,容易想到性についての主張は,誤った意匠の認定に基づくものであるとともに,誤った法解釈に基づくものである。」と主張する。
しかし,以下に述べるとおり,そのいずれにも理由がない。

(2)本件登録意匠等の認定について
登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされ(意匠法24条2項),その判断に際しては,両意匠を全体的観察により対比し,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,更には登録意匠における公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,登録意匠について需要者が視覚を通じて注意をひきやすい特徴的部分(これを「要部」という。)を把握し,この特徴的部分を中心に両意匠を対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当であると解されている。

被請求人は,甲18,19,27の各杭を示し,この種物品において,従来から看られるありふれた形態であり,要部たり得ないとする。
しかしながら,以下に述べるとおり,その主張には理由がない。

被請求人が平成27年12月11日付け審判事件答弁書において主張する本件意匠の要部は,「杭中央部付近から下端に掛けてテーパー状に先細るようにしてあり,それに沿うように螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれる点」である。
請求人は,これを狭く解し,その要部において公知意匠1及び2と大きく相違する点である「テーパー状に先細るようにしてある点」のみを要部としている。しかしながら,前述のとおり,「テーパー状に先細るようにしてある点」のみならず,「螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれる点」も要部であるから,その主張の前提において誤っている。
そして,本件意匠の螺旋状の羽根は幅がごく短く,巻数も7巻程度と少なくされており,テーパー状に先細りしていることもあいまって,全体としてスマートな印象を与えるものであり,これ全体が要部であるといえる。
これに対して,請求人が掲げるような杭は,甲18の第1図,甲19の第1図,甲27の図1のとおり,羽根が杭のほぼ全てに渡って設けられていて巻数が非常に多くなっており,螺子のような印象を受ける。そうすると,本件意匠とこれらの杭とは美感が明らかに異なるものであり,ここに需要者が注目するはずであるから,この構造全体が要部であるといえる。

請求人が示す各杭を分析的にみても,本件意匠のテーパーとは質的に異なり,それらが公知であるからといって,本件意匠の要部でないことは明らかである。
甲18号証に示される「ねじ込み杭」は,請求人の指摘するとおり,「杭全長のほぼ中間位置から先端方向に欠けてテーパーを形成」するものである。しかしながら,この杭は,その先端に鉄製の沓を装着するとされているものであり(甲18の明細書の2(1)上から4行目?5行目),先端部分までテーパーを構成している本件意匠とは質的に異なる。
甲19号証に示される「螺旋杭のねじ込み工法」も,請求人の指摘するとおり,「中央部付近から下端までのテーパー」が形成されているものである。しかし,この工法に示される杭も先端部分はねじ状ではなく,先細りしていない(甲18のような沓が装着されているような図である。)。質的に異なることは明らかである。
甲27号証に示される支持杭も,テーパーが形成されているものの,設けられている螺旋状の文様は羽根ではなく溝なのであって(甲27の【課題を解決するための手段】【0015】参照)。本件意匠とは質的に異なることは明らかである。

請求人は,本件意匠のうち,「菊花状のボルト孔を設けたフランジ」が要部であると主張するようであるが,そのようなフランジこそ,明らかに公知なのであって(たとえば乙1。このボール盤は,本件意匠のような杭を製造する者にとっては当然に知悉している機械である。),要部になることはない。
また,そもそも,意匠の類否判断は,美感に基づいて行われるものであって(意匠法24条2項),注意を引かれる部分は視覚的なものに限られるべきである。
請求人は,この点について,「菊花状のボルト孔を設けたフランジ」は,構造物側の固定孔と基礎杭の長孔の十号範囲において芯ズレ調整を行うことが出来ると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されない効果を実現するためなどとして,需要者の注意を喚起するとするが,そのような機能的な側面は美感ではなく機能である以上,そのことを重視すべきではない。

請求人は,「菊花状のボルト孔を設けたフランジ」を要部とみて,それが類似しているとして,類否判断を行っている。要部の認定を誤ったもので,それに基づく類否判断が誤りであることは論を待たない。

(3)容易想到性(創作容易性)について
請求人は,本件意匠は置換の意匠であり,容易に創作することが出来る意匠であると主張する。
置換とは,意匠の構成要素の一部を他の意匠に置き換えることをいう。具体的には,公然知られた意匠の特定の構成要素を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したにすぎない意匠である。
とすると,問題は,本件意匠のような基礎杭の当業者にとって,杭の要素を他の杭の要素で置き換えることがありふれた手法であるかどうかである。しかし,その点に関する証拠はない。
また,請求人は,甲18ないし甲26の形状と,本件意匠の形状が類似していることを前提にしているが,これらが何ら類似していないことは先に述べたとおりである。
このような請求人の主張によれば,ありとあらゆる意匠において,「AをBに置換した意匠」と表現することができ,新規の意匠登録が全く許されないことになるであろう。
なお,創作容易性は,特許法における「容易想到」とは別の概念ではあるものの,類似の概念であるとされている。また,「当業者のありふれた手法」の観点からは,実現可能性の点を考慮することは法的に当然の主張である。

(4)結論
以上のとおり,請求人の弁駁書の主張には理由がない。

3 証拠方法
(1)乙第1号証 ボール盤についての資料


第5 口頭審理

本件審判について,当審は,平成28年6月21日に口頭審理を行った。(平成28年6月21日付口頭審理調書)(口頭審理において,審判長は,両者に対して審理を終結する旨を通知した。)

1 請求人
請求人は,平成28年5月24日付けの口頭審理陳述要領書及び証拠方法としての甲第28号証ないし甲第57号証を提出し,以下のとおり主張した。

(1)審判事件答弁書(2)第4頁1行?9行について
被請求人は,審判事件答弁書(2)第4頁1行?5行において,「請求人は「テーパー状に先細るようにしてある点」のみを意匠の要部としている。」と陳述しているが,そのような事実はない。

請求人は弁駁書第3頁21行?25行において,「中央部付近から下端までのテーパー」は,ありふれた形態であって,意匠の要部となり得るものではないと主張しているのであり,本件意匠の要部は,先端部が先鋭状に形成された円筒状の杭本体の下半身に螺旋状のリブが形成されており,前記杭本体の基端部には板状の取り付け用の取付基板が取り付けられる基礎杭において,構造物側の固定孔と基礎杭の長孔の重合範囲において芯ズレ調整を行うことができるように,前記取付基板に,中心部から所定間隔を隔てて長孔を放射線状に等間隔に開設されている点にあると主張しているのである(弁駁書第3頁25行?第5頁9行)。

被請求人は,審判事件答弁書(2)第4頁1行?9行において,意匠の要部は,「テーパー状に先細るようにしてある点」,「螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじこまれる点」及び「螺旋状の羽根は幅がごく短く,巻数も7巻程度と少なくされており」,「テーパー状に先細りしていることもあって,全体としてスマートな印象を与えるもの」,これ全体であるとしている。
しかしながら,甲第18号証乃至甲第27号証に記載されている基礎杭は,いずれも,「テーパー状に先細るようにしてある」とともに,「螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじこまれ」て使用され,「螺旋状の羽根は幅がごく短く」形成され,複数の巻数を備えているものであり,いずれも,「全体としてスマートな印象を与えるもの」である。
したがって,本件意匠における「テーパー状に先細るように形成され,螺旋状の羽根が形成され,所定の深さまで地盤中にねじこまれて使用され,螺旋状の羽根は幅がごく短く形成され,前記螺旋羽根が複数の巻数を形成しており,全体としてスマートな印象を与える点」は,本物品である「基礎杭」においては,ありふれた周知な形状であって,特に看者の注意を引くものではなく,意匠の要部となるものではない。
なお,螺旋羽根の巻数については,仕様に応じて適宜選択されるものであり,その点において差異があろうとも,容易に行われる改変であって,その差異において美感に与える影響は極めて少ないものであり,この程度の巻数の差異は,類否判断に影響を与えない。また,「所定の深さまで地盤中にねじこまれ」る点については,当該物品の単なる通常の使用方法であり,意匠の要部となるものではない。

(2)審判事件答弁書(2)第5頁6行?10行について
本件物品は「基礎杭」であり,その用途は地面に埋設されて建築物,構築物等の基礎に用いられるものであり,その機能は,前記建築物,構築物等の基礎となり,前記建築物,構築物等を支持する機能を有するものである。
被請求人が今般提出した資料(乙第1号証)には,ボール盤についての2種類の図とバイス(万力)についての2種類の図が記載されているが,いずれも,本件物品と,物品の性質,目的,用途,機能,使用態様が著しく明白に相違するものであって,本件意匠の要部の認定には何ら関係しない。

(3)基礎杭のありふれた形状について
前述のとおり,甲第18号証乃至甲第27号証からも,本件意匠に係る基礎杭において,テーパー状に先細るようにしてある点は,前記基礎杭についてはありふれた形状であることは明白であるが,請求人は,今般さらに,既に提出している甲第18号証乃至甲第27号証を補強すべく,今般,甲第28号証乃至甲第57号証を提出する。
前記甲第28号証乃至甲第57号証は,いずれも「基礎杭」に関してインターネット上で閲覧したWebページを出力したものであり,それぞれのURLと出力年月日は,それぞれのページ下端に記載のとおりである。出力者は請求人代理人弁理士中尾真一である。
そして,前記甲第28号証乃至甲第57号証の記載されている「基礎杭」はいずれも「テーパー状に先細るようにしてある」と共に,「螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじこまれ」て使用されるものであって,「螺旋状の羽根は幅がごく短く」形成され,複数の巻数を備えているものであり,いずれも,「全体としてスマートな印象を与えるもの」である。
したがって,被請求人が主張する意匠の要部は,本件意匠の出願日より以前に数多く販売され,施工されている極めてありふれた形状であることは明白である。

(4)証拠方法
ア 甲第28号証 株式会社ケイジェイシー HPトップページ抜粋
イ 甲第29号証 WayBackmachine 株式会社ケイジェイシー HPトップページ保存情報
ウ 甲第30号証 株式会社ケイジェイシーHP内ダウンロード画面抜粋
エ 甲第31号証 株式会社ケイジェイシーHPダウンロード画面内会社 案内画面抜粋
オ 甲第32号証 株式会社ケイジェイシーHPダウンロード画面内2016カタログ両面抜粋
カ 甲第33号証 株式会社ケイジェイシーHPダウンロード画面内KJ C NEWS LETTER 2013夏号
キ 甲第34号証 株式会社ケイジェイシーHPダウンロード画面内カタ ログ グラウンドスクリュー(PDF)画面抜粋
ク 甲第35号証 株式会社ケイジェイシー HP製品紹介画面
ケ 甲第36号証 株式会社ケイジェイシー HP製品紹介画面内M76 × 1300-M16画面
コ 甲第37号証 株式会社ケイジェイシー HP製品紹介画面内G89 ×1300-M12画面
サ 甲第38号証 株式会社三英 HP画面抜粋
シ 甲第39号証 株式会社三英 HP内 What’s New 画面抜粋
ス 甲第40号証 株式会社三英 HP内 What’s New 画面抜粋
セ 甲第41号証 株式会社三英 HP内 What’s New 画面抜粋
ソ 甲第42号証 サンコネクト発電所のブログ(2013/01/14)抜粋
タ 甲第43号証 サンコネクト発電所のブログ(2013/01/15)抜粋
チ 甲第44号証 株式会社穂積トレイド HP抜粋
ツ 甲第45号証 WayBackmachine 株式会社穂積トレイド HP抜粋保存情報
テ 甲第46号証 五葉山太陽光発電ブログ(2013/10/01)抜粋
ト 甲第47号証 茂山組の社長ブログ(2013/06/30)抜粋
ナ 甲第48号証 株式会社NCC HP内過去のお知らせ(2013/04/12) 画面抜粋
ニ 甲第49号証 You Tubeの投稿動画(2013/04/07公開)画像抜粋
ヌ 甲第50号証 You Tubeの投稿動画(2012/03/29公開)画像抜粋
ネ 甲第51号証 You Tubeの投稿動画(2012/04/27公開)画像抜粋
ノ 甲第52号証 You Tubeの投稿動画(2012/04/27公開)画像抜粋
ハ 甲第53号証 You Tubeの投稿動画(2012/10/21公開)画像抜粋
ヒ 甲第54号証 You Tubeの投稿動画(2012/12/04公開)画像抜粋
フ 甲第55号証 You Tubeの投稿動画(2013/09/20公開)画像抜粋
ヘ 甲第56号証 You Tubeの投稿動画(2013/08/02公開)画像抜粋
ホ 甲第57号証 You Tubeの投稿動画(2013/02/21公開)画像抜粋

なお,甲第28号証ないし甲第57号証は,すべて原本である。

2 被請求人

被請求人は,平成28年6月14日付けの口頭審理陳述要領書及び証拠方法としての乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む)を提出し,以下のとおり主張した。

(1)乙1の具体的な詳細について
以下,提出済みの乙第1号証を乙第1号証の1とする。

ア ボール盤Bについて
(ア)乙1の1に記載のある「ボール盤B」は,乙1の2のとおり,「東芝卓上ドリル」の型番「DPN-13」なる製品である。この19の部品に「菊花状の孔を備えたフランジ」が存在する。
乙1の3によれば,この製品は,日本電産テクノモーター株式会社においては,2003(平成15)年12月には生産が中止されている。裏を返せば,2003(平成15)年12月よりも相当程度以前には,本製品が市販され,流通していたものと思われる。
(イ)ボール盤(卓上ドリル)は,金属材料から製品を産み出す金属加工業であれば日常業務に用いるありふれたものである。本件との関係では,このように日常的に用いている機械に菊花状のフランジが採用されていることは,当業者にとっても広く認識されていたものと考えることができる。

イ なお,乙1の1にはボール盤Aやバイス(万力)についても記載があるが,上記のボール盤Bのみで主張としては足りると考えるため,これらに対する詳細は追加しないこととする。

(2)「菊花状の孔を備えたフランジ」が公然知られていたことに関する追加主張
ア 「ボール盤の加工テーブル送り装置」について(乙2)
乙2のとおり,実用新案出願公開昭61-124312がある。
これも乙1と同様,ボール盤に係るものである。第1図で示された1の部品をみると,4条ではあるものの,「菊花状の孔を備えたフランジ」を確認することが出来る。
付け加えるならば,第1図で示された1の部品について,4条の孔を設けていること自体については本実用新案との関係では何ら指示がなく,このような孔が設けられていることは所与の前提になっているとさえ思われる。
未審査となっているが,公開実用新案公報にて公開されたものであり,公然知られた考案であることには間違いない。

イ 「ボール盤用薄板押え治具」について(乙3)
乙3のとおり,実用新案出願公開昭63-107512がある。
これも前同様にボール盤に係るものである。第2図で示された2をみると,4条ではあるものの,「菊花状の孔を備えたフランジ」が存在している。
これも,「菊花状の孔」は考案の内容になっていないようである。
ウ 以上のとおり,公開された公開実用新案公報によれば,「菊花状の孔を備えたフランジ」は既に公然知られたものであると言うことができる。

(3)請求人提出の甲28ないし甲57に対する意見
ア 請求人は,甲28ないし甲57を提出し,被請求人が主張する意匠の要部は,本件意匠の出願日以前に数多く販売され,施工されている極めてありふれた形伏であるとする。以下,反論する。

イ 請求人は,要するに,ドイツKRINNER社製のグランドスクリュー杭が本件意匠の要部を備えていると主張するようである。
(ア)フランジ部を要部とする請求人の主張には何ら影響のないこと
まず,ドイツKRINNER社製のグランドスクリュー杭は,「菊花状の孔を備えたフランジ」を有していない。たとえば,甲36の1頁目,2頁目,甲37の1頁目,2頁目に示された各製品は,六角形のフランジに,その各に小孔が設けられる構造になっているのみである。
フランジ部が要部であると主張する請求人の主張には適合しない製品であり,その意味では意味のない主張である。

(イ)甲28ないし甲57に記載のある杭と本件意匠は要部において異なること
これまでに述べてきたとおり,被請求人は,本件意匠の要部は「杭中央部付近から下端に掛けてテーパー状に先細るようにしてあり,それに沿うように螺旋状の羽根が形成されており,所定の深さまで地盤中にねじ込まれる点」であり,本件意匠の螺旋状の羽根は幅がごく短く,巻数も7巻程度と少なくされており,テーパー状に先細りしていることとあいまって,全体としてスマートな印象を与えるものであり,これ全体が要部である。
この観点から,請求人の示す製品と比較する(請求人は,これだけ多くの製品を摘示しながら具体的にどの杭のことを主張するのか示さないため,被請求人において取捨選択して主張することとする。)。
(a)Mシリーズ
甲31の4頁目に示される製品である。甲36,甲38の3頁目で示されるものも同様であろう。
本件意匠の要部と比較して,羽根が15巻しており,スマートな印象を与えるものではない。また,テーパーが杭の中央部ではなく,杭のやや下部から始まっている点でも相違する。
(b)FLEX-3
甲31の5頁目に示される製品である。
仕様が明らかではないが,杭ではなく,杭と架台が一体化した製品のようである。杭中央部付近からのテーパーが確認できず,要部が相違することは明らかである。
(c)甲34で示される杭
甲34では,1頁目及び2頁目に杭がいくつか示されている。
これらのいずれも,杭中央部付近からのテーパーが確認できず(むしろテーパーが漏斗状になっている。),要部が相違することは明らかである。付言すれば,羽根の巻数も明らかに異なる。
(d)Gシリーズ
甲37で示される製品である。
これも,杭中央部付近からのテーパーが確認できず,要部が相違することは明らかである。なお,甲37の2頁目にある図は,羽根の巻数が本件意匠に類似するようにも思えるが,ただの模式図のようであり,製品の仕様を示したものではない。
(e)それ以外のもの
上記ものは製品番号や仕様等も判然としないため,一括して主張する。甲42,甲43,甲44,甲46?甲57は,いずれも杭中央部からのテーパー確認できず,羽根の巻数も明らかに異なる。
(f)以上の杭は,いずれも杭中央部からのテーパーがなかったり,羽根の巻数が違ったりしていて,「全体としてスマートな印象を与える」ものではない。

(ウ)公然知られることとなった日時についての立証が不足していること
請求人が提示する甲28ないし甲57の中には,公然知られることとなった日時が判然しないものが多くある。
すなわち,請求人は,いわゆるWayback Machineを用いて,公開されていた日時を主張するようである。しかし,たとえば甲28の情報が掲載されていたことを示すという甲29では,甲28のアドレスである″http/www.kic‐i.com/″のスクリーンショットがいくつかあるという情報しか分からない。そのときの″http/www.kic-i.com/″のサイトにどのような情報が掲載されていたのかはこれでは明らかにはならない。甲44と甲45にも同様のことがいえる。
そのほかのサイトについても,いつの時点の情報であるのか判然としないものが多く,本件意匠に先行していたかどうかは判然としない。

(4)証拠方法
ア 乙第1号証の1 「資料1」と題する資料
イ 乙第1号証の2 「卓上ドリル(13mm)」と題する資料
ウ 乙第1号証の3 「東芝電動工具」と題するウェブサイト
エ 乙第2号証 公開実用新案公報昭61-124312
オ 乙第3号証 公開実用新案公報昭63-107512

なお,乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む)は,すべて写しであり,乙第1号証の1は,平成28年3月29日付けの審判事件答弁書(2)に添付された乙第1号証を差し替えるものである。

3 口頭審理調書

(1)請求人
ア 請求の趣旨及び理由は,審判請求書,平成28年2月2日付け審判事件弁駁書及び平成28年5月24日付け口頭審理陳述要領書のとおり陳述。
イ 乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む)の成立を認める。
ウ 審判請求書第2頁第17行目の「甲第17号証?甲第25号証」を「甲第18号証?甲第26号証」に訂正する。

(2)被請求人
ア 答弁の趣旨及び理由は,平成27年12月11日付け審判事件答弁書,平成28年3月29日付け審判事件答弁書(2)及び平成28年6月14日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述。
イ 甲第1号証ないし甲第57号証の成立を認める。
ウ 請求人の陳述ウの訂正を認める。

(3)審判長
ア 甲第1号証ないし甲第57号証及び乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む)について取り調べた。
イ 本件の審理を終結する。


第5 当審の判断

当審は,意匠登録第1499504号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)はその出願日前に日本国内において頒布された公開特許公報の特開2007-205108号(甲第3号証)に記載された「基礎杭」の意匠(以下,「公知意匠1」という。)とも,本件登録意匠の出願日前から請求人が前記特許出願に係る基礎杭を商品名「タッピングパイル」として製造販売し,太陽光発電パネルの基礎や農業用温室の基礎として施工していたとする基礎杭の意匠(以下,「公知意匠2」という。)(甲第6号証ないし甲第17号証)とも類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当せず,また,公知意匠1の構成要素の一部,又は公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第17号証(当審注:甲第18号証の誤記と認める。)ないし甲第25号証(当審注:甲第26号証の誤記と認める。))に置き換えて構成した,意匠法第3条第2項にいう当業者であれば容易に創作することができた意匠にも該当しないから,その意匠登録が第3条の規定に違反してされたものとはいえず,請求人による意匠法第48条第1項第1号の規定に基づいた本件意匠登録を無効とする請求は成立しない,と判断する。
その理由は,以下のとおりである。

1 本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1499504号の意匠)は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとして平成25年12月17日に意匠登録出願され,平成26年5月9日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品,その用途及び機能,並びにその形状,模様,色彩またはこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)

ア 意匠に係る物品
本件登録意匠は,太陽光発電システムのソーラーパネル等を設置する際に,パネル架台等の構築物を地盤の上方で支持するために用いる「基礎杭」である。

イ 基本的構成態様
本件登録意匠は,周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた取付基板部とから構成されるものである。

ウ 具体的形態
(ア)杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状として,そのテーパー状部分の開始位置とほぼ同位置から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものであって,
(イ)リブ部は,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を7つとし,
(ウ)杭本体部の下端を円錐状に尖らせ,
(エ)取付基板部の平面視外形状を円形状とし,
(オ)取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設け,
(カ)取付基板部中央に円形の小孔を設けたものである。

2 無効理由1について
請求人は,本件登録意匠は,公知意匠1又は公知意匠2と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきである旨主張するので,当審においては,本件登録意匠が公知意匠1と類似することを無効理由1-1として,本件登録意匠が公知意匠2と類似することを無効理由1-2として,以下,理由を述べる。

(1)無効理由1-1
請求人が無効理由1-1,すなわち本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当することの証拠として示した意匠は,平成19年8月16日に公開された公開特許公報の特開2007-205108号(甲第3号証)に記載された「基礎杭」の意匠(以下,「公知意匠1」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)
なお,特開2007-205108号の図面には,符号14の水平安定翼を含めた意匠が符号10の基礎杭として表されているが,請求人と被請求人双方の主張において水平安定翼の有無は論点にされていないこと,及び水平安定翼は基礎杭の付加的な部品であることから,当審においては,符号14の水平安定翼を除いたものを公知意匠1として認定する。

ア 公知意匠1の意匠に係る物品
公開特許公報の特開2007-205108号の記載によれば,公知意匠1は,例えば,農業用温室や農業用ハウス等の比較的軽量の建造物の基礎工事に使用される「基礎杭」である。

イ 公知意匠1の基本的構成態様
公知意匠1は,周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた略板状の取付基板部から構成されるものである。

ウ 公知意匠1の具体的形態
(ア)杭本体部全体を略円柱状とし,杭本体部の中央やや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものであって,
(イ)リブ部は,杭本体部の略円柱状部分の直径とほぼ同じ高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を4つとし,
(ウ)杭本体部の円柱状部分の下側に,略縦長ホームベース状の掘削用板体を設け,
(エ)取付基板部の平面視外形状を正八角形状とし,
(オ)取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設け,
(カ)取付基板部中央は小孔のない平坦面とし,
(キ)杭本体部のリブ部が設けられていない部分の略中央の位置に移動阻止環を設けたものである。

エ 本件登録意匠と公知意匠1の対比
(ア)意匠に係る物品
本件登録意匠は,太陽光発電システムのソーラーパネル等を設置する際に,パネル架台等の構築物を地盤の上方で支持するために用いるものであり,公知意匠1は,例えば,農業用温室や農業用ハウス等の比較的軽量の建造物の基礎工事に使用されるものであるが,いずれも構造物や建造物を支持するための「基礎杭」であるから,本件登録意匠と公知意匠1の意匠に係る物品は共通する。

(イ)基本的構成態様
本件登録意匠と公知意匠1は,共に周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた取付基板部とから構成される点で共通している。


(ウ)具体的形態
a 共通点
本件登録意匠と公知意匠1の具体的形態は,以下の点で共通している。
(A)取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設けた点

b 相違点
本件登録意匠と公知意匠1は,以下の点で相違している。
(a)杭本体部の態様について,本件登録意匠は,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とし,そのテーパー状部分の開始位置とほぼ同位置から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものであるのに対し,公知意匠1は,杭本体部全体を略円柱状とし,杭本体の中央やや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものである点
(b)リブ部の態様について,本件登録意匠は,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を7つとしているのに対して,公知意匠1は,杭本体部の略円柱状部分の直径とほぼ同じ長さの高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を4つとしている点
(c)杭本体部の下端部の態様について,本件登録意匠は,円錐状に尖らせているのに対して,公知意匠1は,杭本体部の円柱状部分の下側に,略縦長ホームベース状の掘削用板体を設けた態様としている点
(d)取付基板部の平面視外形状について,本件登録意匠は円形状としているのに対して,公知意匠1は,正八角形状としている点
(e)取付基板部中央の態様について,本件登録意匠は,円形の小孔を設けているのに対して,公知意匠1は,小孔がなく,平坦面としている点
(f)移動阻止環について,本件登録意匠には設けられていないのに対して,公知意匠1には設けられている点

オ 本件登録意匠と公知意匠1の類否判断
本件登録意匠と公知意匠1は,意匠に係る物品が共通しているから,以下,本件登録意匠と公知意匠1の基本的構成態様,並びに具体的形態の共通点及び具体的形態の相違点についてそれぞれ評価し,総合的に類否を判断する。

(ア)基本的構成態様の評価
基本的構成態様が共通している点については,本件登録意匠と公知意匠1の骨格の共通点ではあるものの,周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた略板状の取付基板部から構成される態様は,基礎杭の基本的構成態様としては例を示すまでもなくありふれたものであるから,この共通点が本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は小さい。

(イ)具体的形態の共通点の評価
取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設けたという,共通点(A)の態様については,公知意匠1の公開前にはほとんど見受けられない態様ではあるが,この態様は,杭本体の頭部に設けられた取付基板という,意匠全体に占める割合が小さな部分に表れる態様であるから,共通点(A)は,この共通点のみをもって本件登録意匠と公知意匠1が類似するものであると直ちに判断できるほどの,類否判断に大きな影響を与えているものであるとはいえない。
ところで,請求人は,この共通点(A)について,構造物側との芯ズレ調整を行うことができると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されない構造となすことを特徴とするものであるから,長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に多数開設される前記取付板の形状は,まさに看者の注意を強く惹くところであり,意匠の要部である旨主張する。
しかし,杭の芯ズレ調整のために取付基板に長孔を設けることは,例えば平成17年2月24日に公開された公開特許公報の特開2005-48537号に記載された杭頭ベースプレートの意匠(参考意匠1:別紙第4参照)や,平成17年7月7日に公開された公開特許公報の特開2005-180061号に記載された杭側ベースプレートの意匠(参考意匠2:別紙第5参照)に見られるように,公知意匠1の公開前からすでに見られるものであり,芯ズレを調整できるようにしたこと自体が看者の注意を強く惹く特徴であるということはできないから,請求人の主張を採用することはできない。

(ウ)具体的形態の相違点の評価
相違点(a)の,杭本体の態様の相違については,杭本体の下方側をテーパー状とした基礎杭が本件登録意匠の出願前からよく見られていたとしても,本件登録意匠のように,テーパー状部分の開始位置を杭本体部の略中央とし,そのほぼ同位置から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けた基礎杭の形態は,本件登録意匠の出願前にはほとんど見受けられない本件登録意匠独自の態様であって,また,この相違は,本物品の埋め込み作業の効率性や安定性に直接関係する,看者が注意して観察する杭本体の下方側部分の相違であることから,この相違点(a)は,本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は大きい。
なお,請求人は,本件登録意匠の中央部付近から下端までのテーパー状部分の態様は,この種物品においては,従来から看られるありふれた形態であると主張し,その証拠として,甲第18号証ないし甲第57号証を提出しているが,看者が本件登録意匠及び公知意匠1の形態を比較観察するときには,杭本体下方側のテーパー部分の形態と螺旋状リブ部の形態とを分離してそれぞれの形態を評価するだけでは不十分であって,それぞれの形態が組み合わされた形態の視覚的印象についても評価するべきであり,そうすると,請求人が証拠として提出した前記書証に記載された意匠は,いずれも,本件登録意匠のように,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状として,そのテーパー状部分の開始位置とほぼ同位置から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けた形態ではないから,これらの証拠によって,本件登録意匠の杭本体の形態が,従来から看られるありふれた形態であるということはできない。したがって,請求人の主張を採用することはできない。
そして,相違点(b)の,リブ部の態様の相違については,本件登録意匠のように,リブ部の高さを杭本体部の略円柱状部分の直径と比べてかなり短い長さとし,厚みを一定の板状とした態様は,例えば,甲第18号証や甲第44号証に記載された基礎杭の意匠に見られるように,本件登録意匠の出願前から見受けられたものであって,本件登録意匠の独自の特徴とはいえないものの,リブ部の高さを杭本体部の略円柱状部分の直径と同程度の長さとした公知意匠1のリブ部の形態とでは,一見して看者に与える視覚的印象を異にするものであり,また,リブ部の高さが異なるのみならず,本件登録意匠の巻き数7に対して,公知意匠1の巻き数4であることが,リブ部の高さの相違と相まって,本件登録意匠と公知意匠1のリブ部の視覚的印象をさらに大きく異ならしめているから,この相違点(b)も,本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に大きく影響を与えているといえる。

他方,相違点(c)については,杭本体部の下端部という,意匠全体の中では局所的な部分の形態の相違であり,また,円錐状に尖らせている本件登録意匠の形態は,杭本体の下端部の形態としては,例を示すまでもなくありふれた形態であるから,この相違点(c)が,本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は小さい。
そして,相違点(d)の,取付基板部の平面視外形状の相違については,取付基板部の平面視外形状を円形状としたものも,正八角形状としたものも,本件登録意匠の出願前からよく見られるものであり,いずれも看者の注意を引く態様ではないから,この相違点(d)も,本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は微弱である。
また,相違点(e)の,取付基板部中央の小孔の有無については,この相違は,取付基板の平面中央の局所的な部分の相違であって,意匠全体として観察したときには目立たない部分の相違ということができ,また,本件登録意匠の小孔の形状も単なる円形であることから,看者の注意を引く形態であるということもできないから,この相違点(e)も,本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は微弱である。
さらに,相違点(f)の,移動阻止環の有無については,杭本体のごく一部の局所的な部分に係る相違であって,また,その形態も単に円筒形状としたもので,特徴的な形態ではなく,看者の注意を引くものであるということができないから,この相違点(f)も,本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は微弱である。

カ 小括
以上のとおり,本件登録意匠と公知意匠1は,意匠に係る物品及び基本的構成態様が共通し,また,具体的形態に共通点が認められるものの,その共通点は本件登録意匠と公知意匠1の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し,具体的形態の相違点,とりわけ相違点(a)及び相違点(b)が類否判断に与える影響は大きく,それらが看者に与える総合的な視覚的効果は,形態の共通点のそれを凌駕しているといえ,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本件登録意匠は公知意匠1と類似しないものである。
したがって,請求人の主張する無効理由1-1は成立しない。

(2)無効理由1-2
請求人が無効理由1-2,すなわち本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当することの証拠として示した意匠は,甲第6号証ないし甲第17号証によって証する,商品名「タッピングパイル」として製造販売し,施工している「基礎杭」の意匠(以下,「公知意匠2」という。)である。
公知意匠2の形態は,甲第6号証ないし甲第13号証,及び甲第16号証に記載されているが,当審においては,杭本体全体の形態が最もよく表れ,斜視ではあるが取付基板の平面形態も現れている甲第16号証上段の写真及び下段の写真(別紙第3参照)に現された形態に基づいて,公知意匠2の形態を認定する。
なお,甲第16号証に記載された意匠が公然と知られるに至った日時については甲第16号証に記載がないが,甲第16号証上段の写真には,請求人(サンキンB&G株式会社)の出展ブース中に「タッピングパイル」と記載された看板が上方に掲げられ,その真下には基礎杭が1本しかないことから,この基礎杭は請求人の商品名「タッピングパイル」の基礎杭であると認めることが妥当である。そうすると,甲第8号証によれば,商品名「タッピングパイル」の基礎杭が2011年1月29日に請求人と他者によってプレスリリースとして発表されており,また,甲第11号証によれば,商品名「タッピングパイル」の基礎杭が請求人によってホームページで公開され,2012年3月27日にインターネットアーカイブ社によって記録されているから,当該基礎杭が公然と知られた状態となったということができる。したがって,甲第16号証に記載された意匠は,本件登録意匠の出願の日前に,公然知られた意匠となったと推認することができる。

ア 公知意匠2の意匠に係る物品
公知意匠2は,例えば,太陽光発電システムのソーラーパネル等を設置する際に,パネル架台等の構築物を地盤の上方で支持するために用いる「基礎杭」である。

イ 公知意匠2の基本的構成態様
公知意匠2は,周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた略板状の取付基板部から構成されるものである。

ウ 公知意匠2の具体的形態
(ア)杭本体部全体を略円柱状とし,杭本体部の下方寄りに下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものであって,
(イ)リブ部は,杭本体部の略円柱状部分の直径とほぼ同じ長さの高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を3つとし,
(ウ)杭本体部の下端部の形態は不明であり,
(エ)取付基板部の平面視外形状を円形状とし,
(オ)取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設け,
(カ)取付基板部中央には矩形状の小孔を設けたものである。

エ 本件登録意匠と公知意匠2の対比
(ア)意匠に係る物品
本件登録意匠と公知意匠2は,ともに太陽光発電システムのソーラーパネル等を設置する際にパネル架台等の構築物を地盤の上方で支持するために用いる「基礎杭」であるから,本件登録意匠と公知意匠2の意匠に係る物品は共通する。

(イ)基本的構成態様
本件登録意匠と公知意匠2の基本的構成態様は,ともに周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた略板状の取付基板部から構成される点で共通している。

(ウ)具体的形態
a 共通点
本件登録意匠と公知意匠2の具体的形態は,以下の点で共通している。
(A)取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設けた具体的形態
(B)取付基板部の平面視外形状を円形状としている点

b 相違点
本件登録意匠と公知意匠2は,以下の点で相違している。
(a)杭本体の具体的形態について,本件登録意匠は,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とし,そのテーパー状部分のやや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものであるのに対し,公知意匠2は,杭本体部全体を略円柱状とし,杭本体の下方寄りに下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けたものである点
(b)リブ部の態様について,本件登録意匠は,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を7つとしているのに対して,公知意匠2は,杭本体部の略円柱状部分の直径とほぼ同じ長さの高さとした厚みが一定の板状で,巻き数を3つとしている点
(c)杭本体部の下端部の態様について,本件登録意匠は円錐状に尖らせているのに対して,公知意匠2は不明である点
(d)取付基板部中央の小孔の態様について,本件登録意匠は円形状であるのに対して,公知意匠2は矩形状である点

オ 本件登録意匠と公知意匠2の類否判断
本件登録意匠と公知意匠2は,意匠に係る物品が共通しているから,以下,本件登録意匠と公知意匠2の基本的構成態様,並びに具体的形態の共通点及び具体的形態の相違点について評価し,総合的に類否を判断する。

(ア)基本的構成態様の評価
基本的構成態様が共通している点については,本件登録意匠と公知意匠2の骨格の共通性ではあるものの,周側面にリブ部を設けた略棒状の杭本体部と,その頭部に備えた略板状の取付基板部から構成される態様は,基礎杭の基本的構成態様としては例を示すまでもなくありふれたものであるから,この共通点が本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に与える影響は小さい。

(イ)具体的形態の共通点の評価
まず,取付基板部に,10個の長孔を中心部から放射線状に等間隔に設けたという,共通点(A)の態様については,公知意匠2の公開前にはほとんど見受けられない態様ではあるが,この態様は,杭本体の頭部に設けられた取付基板という,意匠全体に占める割合が小さな部分に表れる態様であるから,この共通点(A)は,この共通によって本件登録意匠と公知意匠2が類似するものであると直ちに判断できるほどの,類否判断に大きな影響を与えているものであるとはいえない。
ところで,請求人は,構造物側との芯ズレ調整を行うことができると共に,基礎杭の孔を回転方向位置に拘束されない構造となすことを特徴とするものであるから,長孔が中心部から所定間隔を隔てて放射線状に多数開設される前記取付板の形状は,まさに看者の注意を強く惹くところであり,意匠の要部である旨主張する。
しかし,杭の芯ズレ調整のために取付基板に長孔を設けることは,例えば平成17年2月24日に公開された公開特許公報の特開2005-48537号に記載された杭頭ベースプレートの意匠(参考意匠1:別紙第4参照)や,平成17年7月7日に公開された公開特許公報の特開2005-180061号に記載された杭側ベースプレートの意匠(参考意匠2:別紙第5参照)に見られるように,公知意匠2の公開前からすでに見られるものであり,芯ズレを調整できるようにしたこと自体が看者の注意を強く惹く特徴であるということはできないから,請求人の主張を採用することはできない。
また,共通点(B)の,取付基板部の平面視外形状の態様については,取付基板部の平面視外形状を円形状としたものは,本件登録意匠の出願前からよく見られるものであり,看者の注意を引く態様ではないから,この共通点(B)も,本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に与える影響は微弱である。

(ウ)具体的形態の各相違点の評価
しかし,相違点(a)の,杭本体部の態様の相違については,杭本体部の下方側をテーパー状とした基礎杭が本件登録意匠の出願前からよく見られていたとしても,本件登録意匠のように,テーパー状部分の開始位置を杭本体部の略中央とし,そのほぼ同位置から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けた基礎杭の形態は,本件登録意匠の出願前にはほとんど見受けられない本件登録意匠独自の態様であって,また,この相違は,本物品の埋め込み作業の効率性や安定性に直接関係する,看者が注意して観察する杭本体部の下方側部分の相違であることから,この相違点(a)が,本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に与える影響は大きい。
そして,相違点(b)の,リブ部の態様の相違については,本件登録意匠のように,リブ部の高さを杭本体部の略円柱状部分の直径と比べてかなり短い長さとし,厚みを一定の板状とした態様は,例えば,甲第18号証や甲第44号証に記載された基礎杭の意匠に見られるように,本件登録意匠の出願前から見受けられたものであって,本件登録意匠の独自の特徴とはいえないものの,リブ部の高さを杭本体部の略円柱状部分の直径と同程度の長さとした公知意匠2のリブ部の形態とでは,一見して看者に与える視覚的印象を異にするものであり,また,リブ部の高さが異なるのみならず,本件登録意匠の巻き数7に対して,公知意匠2の巻き数3であることが,リブ部の高さの相違と相まって,本件登録意匠と公知意匠2のリブ部の視覚的印象をさらに大きく異ならしめているから,この相違点(b)も,本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に大きく影響を与えているといえる。

他方,相違点(c)については,杭本体部の下端部という,意匠全体の中では局所的な部分の形態の相違であり,また,円錐状に尖らせている本件登録意匠の形態は,杭本体部の下端部の形態としては,例を示すまでもなくありふれた形態であるから,この相違点(c)が,本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に与える影響は小さい。
そして,相違点(d)の,取付基板部中央の小孔の形態の相違は,取付基板の平面中央の局所的な部分の相違であって,意匠全体として観察したときには目立たない部分の相違ということができ,また,本件登録意匠の小孔の形状も単なる円形であり,看者の注意を引く形態ということもできないから,この相違点(d)も,本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に与える影響は微弱である。

カ 小括
以上のとおり,本件登録意匠と公知意匠2は,意匠に係る物品及び基本的構成態様が共通し,また,具体的形態に共通点が認められるものの,具体的形態の各共通点は本件登録意匠と公知意匠2の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し,具体的形態の相違点,とりわけ相違点(a)及び相違点(b)が類否判断に与える影響は大きく,それらが看者に与える総合的な視覚的効果は,形態の共通点のそれを凌駕しているといえ,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本件登録意匠は公知意匠2と類似しないものである。
したがって,請求人が主張する無効理由1-2は成立しない。

3 無効理由2について
請求人は,本件登録意匠は,公知意匠1又は公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証?甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものであり,当業者であれば容易に創作することのできる意匠であるから,意匠法第3条第2項により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきである旨主張するので,当審においては,本件登録意匠が公知意匠1の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証?甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないことを無効理由2-1として,本件登録意匠が公知意匠2の構成要素の一部を,当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証?甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないことを無効理由2-2として,以下,理由を述べる。

(1)無効理由2-1
請求人は,無効理由2-1として,本件登録意匠は公知意匠1の構成要素の一部を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証ないし甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものである,と主張し,その理由を,本件登録意匠は公知意匠1の構成要素のうち,杭本体を周知の形状(甲第18号証ないし甲第26号証)である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換し,取付板の形状を八角形から周知の形状である円形にするとともに,取付板中央に小孔を設けて構成したにすぎない意匠である,としている。
しかし,本件登録意匠と公知意匠1の形態の相違点は,前記「2 無効理由1について」の「(1)無効理由1-1」の「エ 本件登録意匠と公知意匠1の対比」の「(ウ)形態の相違点」において述べたとおりであるから,請求人は,本件登録意匠の形態のうち,公知意匠1と相違するすべての形態について容易に創作することができたとする理由を述べているとはいえない。そこで,当審において,前記第1の「1 意匠登録無効の理由の要点(2)」の趣旨を踏まえて,本件登録意匠は公知意匠1の構成要素の一部を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証ないし甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものであるか否かについて総合的に検討する。

まず,本件登録意匠の公知意匠1と形態が相違する部分,及びその形態は,以下のとおりである。


(a)杭本体部の形態を,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とし,そのテーパー状部分のやや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けている。
(b)リブ部の形態を,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を7つとしている。
(c)杭本体部の下端部の形態を円錐状に尖らせている。
(d)取付基板部の平面視外形状を円形状としている。
(e)取付基板部中央に円形の小孔を設けている。
(f)杭本体部に移動阻止環を設けていない。

次に,上記各形態が,当業者にとってありふれた手法によって甲第18号証ないし甲第26号証に記載された意匠の形態に置き換えられたものであるか見てみると,まず,形態(b)については,リブ部を,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状とした態様は,甲第18号証の基礎杭のリブ部が,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/6の高さとした,厚みが一定の板状であり,高さが約1/4か約1/6かの相違は認められるものの,例えば公知意匠1のような本件登録意匠より高いリブ部がすでに多数存在していることから,本件登録意匠のリブ部の,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4とした高さは,基礎杭のリブ部の高さとしては従来から見られる範囲内のものであり,また,巻き数を7つとしている点も,甲第18号証や甲第44号証に,本件登録意匠よりも巻き数を多くしたリブ部を設けた基礎杭が表れており,本件登録意匠のリブ部を巻き数7としたことは,基礎杭のリブ部の巻き数としては従来から見られる範囲内のものであるから,この形態(b)は,甲第18号証に記載された基礎杭のリブ部の形態に基礎杭が属する物品分野においてありふれた改変を加えた形態に置き換えたものということができる。
また,形態(c)については,杭本体部の下端部を円錐状に尖らせている形態は,甲第18号証ないし甲第26号証には明確には表されていないものの,例えば甲第44号証に記載された意匠に見られるように,基礎杭本体部の下端部の形態としては,本件登録意匠の出願の日前からありふれているものであり,この形態(c)は,当業者が容易に創作することができた形態であるということができる。
さらに,形態(d)については,取付基板部の平面視外形状を円形状とした形態は,甲第18号証ないし甲第26号証には明確には表されていないものの,例えば甲第27号証,甲第42号証及び甲第44号証に記載された意匠に見られるように,基礎杭の取付基板部の平面視外形状の形態としては,本件登録意匠の出願の日前からありふれているものであり,この形態(d)は,当業者が容易に創作することができた形態であるということができる。
そして,形態(e)については,取付基板部中央に円形の小孔を設けた形態は,甲第33号証第2頁目の左側上方に表された基礎杭の取付基板部中央や,甲第57号証に表された基礎杭の取付基板部中央に小孔が設けられていることが認められ,これらの小孔の形状は,記載が不鮮明なために明確に認識することはできないが,このような小孔の形状を単なる円形とすることに,特段の創作を要したと認めることはできないから,この形態(e)は,当業者が容易に創作することができた形態であるということができる。
また,形態(f)については,杭本体部に移動阻止環を設けていない形態は,水平安定翼を設けない基礎杭は,本件登録意匠の出願の日前から,基礎杭が属する物品分野においてはありふれていたということができ,移動阻止環は,水平安定翼の上下方向の移動を阻止するものであるから,移動阻止環を設けていない形態も,本件登録意匠の出願の日前から,基礎杭が属する物品分野においてはありふれていたということができるから,この形態(f)は,当業者が容易に創作することができた形態であるということができる。
よって,本件登録意匠の形態(b)ないし形態(f)は,甲第18号証に記載された意匠の形態に当業者にとってありふれた改変を加えた形態に置き換えられたもの,または当業者にとってありふれた形態に置き換えられたものであるということができる。

しかし,形態(a)については,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とし,そのテーパー状部分のやや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けている形態は,請求人が提出したいずれの証拠に記載された意匠もその形態を備えていないものであって,とりわけ,「杭本体部の略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とした形態」,と「そのテーパー状部分の上端のやや上方にリブ部の上端が位置する形態」を組み合わせた形態は,本件登録意匠の出願前にはほとんど見受けられない形態であり,当業者にとってありふれた形態であるということはできない。

よって,本件登録意匠は,公知意匠1の構成要素の一部を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証ないし甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものであるといえず,また,甲第18号証ないし甲第26号証に記載された意匠の形態に限らず,当業者にとってありふれた形態に置き換えて構成したにすぎないものであるともいえないから,当業者であれば容易に創作することのできる意匠ということはできない。
したがって,請求人が主張する無効理由2-1は成立しない。

(2)無効理由2-2
請求人は,本件登録意匠は公知意匠2の構成要素の一部を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証ないし甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものである,と主張し,その理由を,本件登録意匠は公知意匠2の構成要素のうち,杭本体を周知の形状(甲第18号証ないし甲第26号証)である下半身から先端先鋭部にかけて若干先細り状に絞られている形状に置換し,取付板中央に小孔を周知の円形状に置換して構成したにすぎない意匠である,としている。
しかし,本件登録意匠と公知意匠2の形態の相違点は,前記「2 無効理由1について」の「(2)無効理由1-2」の「エ 本件登録意匠と公知意匠2の対比」の「(ウ)形態の相違点」において述べたとおりであるから,請求人は,本件登録意匠の形態のうち,公知意匠2と相違するすべての形態について容易に創作することができたとする理由を述べているとはいえない。そこで,当審において,前記第1の「1 意匠登録無効の理由の要点(2)」の趣旨を踏まえて,本件登録意匠は公知意匠2の構成要素の一部を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証ないし甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものであるか否かについて総合的に検討する。

まず,本件登録意匠の公知意匠2と形態が相違する部分,及びその形態は,以下のとおりである。

(a)杭本体部の形態を,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とし,そのテーパー状部分のやや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けている。
(b)リブ部の形態を,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状で,巻き数を7つとしている。
(c)杭本体部の下端部の形態を,円錐状に尖らせている。
(d)取付基板部中央に設けた小孔を円形状としている。

そこで,上記各形態が,当業者にとってありふれた手法によって甲第18号証ないし甲第26号証に記載された意匠の形態に置き換えられたものであるか見てみると,まず,形態(b)については,リブ部を,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4の高さとした,厚みが一定の板状とした態様は,甲第18号証の基礎杭のリブ部が,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/6の高さとした,厚みが一定の板状であり,高さが約1/4か約1/6かの相違は認められるものの,例えば公知意匠2のような本件登録意匠より高いリブ部がすでに多数存在していることから,本件登録意匠のリブ部の,杭本体部の略円柱状部分の直径の約1/4とした高さは,基礎杭のリブ部の高さとしては従来から見られる範囲内のものであり,また,巻き数を7つとしている点も,甲第18号証や甲第44号証に,本件登録意匠よりも巻き数を多くしたリブ部を設けた基礎杭が表れており,本件登録意匠のリブ部を巻き数7としたことは,基礎杭のリブ部の巻き数としては従来から見られる範囲内のものであるから,この形態(b)は,甲第18号証に記載された基礎杭のリブ部の形態に基礎杭が属する物品分野においてありふれた改変を加えた形態に置き換えたものということができる。
また,形態(c)については,杭本体部の下端部を円錐状に尖らせている形態は,甲第18号証ないし甲第26号証には明確には表されていないものの,例えば甲第44号証に記載された意匠に見られるように,基礎杭本体部の下端部の形態としては,本件登録意匠の出願の日前からありふれているものであり,この形態(c)は,当業者が容易に創作することができた形態であるということができる。
さらに,形態(d)については,取付基板部中央に設けた小孔を円形状とした形態は,このような小孔の形状を単なる円形とすることに,特段の創作を要したと認めることはできないから,この形態(d)は,当業者が容易に創作することができた形態であるということができる。
よって,本件登録意匠の形態(b)ないし形態(d)は,甲第18号証に記載された意匠の形態に当業者にとってありふれた改変を加えた形態に置き換えられたもの,または当業者にとってありふれた形態に置き換えられたものであるということができる。

しかし,形態(a)については,杭本体部の略上半分を略円柱状とし,略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とし,そのテーパー状部分のやや上方から下端付近までにわたって螺旋状のリブ部を設けている形態は,請求人が提出したいずれの証拠に記載された意匠もその形態を備えていないものであって,とりわけ,「杭本体部の略下半分を下方に向かって緩やかに窄ませたテーパー状とした形態」と「そのテーパー状部分の上端のやや上方にリブ部の上端が位置する形態」を組み合わせた形態は,本件登録意匠の出願前にはほとんど見受けられない形態であり,当業者にとってありふれた形態であるということはできない。

よって,本件登録意匠は,公知意匠2の構成要素の一部を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠(甲第18号証ないし甲第26号証)に置き換えて構成したにすぎないものであるといえず,また,甲第18号証ないし甲第26号証に記載された意匠の形態に限らず,当業者にとってありふれた形態に置き換えて構成したにすぎないものであるともいえないから,当業者であれば容易に創作することのできる意匠ということはできない。
したがって,請求人が主張する無効理由2-2は成立しない。


第6 むすび

以上のとおりであって,本件登録意匠は無効理由1-1又は無効理由1-2によっては,意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当せず,また,無効理由2-1又は無効理由2-2によっては,意匠法第3条第2項にいう当業者であれば容易に創作することができた意匠にも該当しないから,その意匠登録が第3条の規定に違反してされたものとはいえず,請求人による意匠法第48条第1項第1号の規定に基づいた本件意匠登録を無効とする請求は成立しない

また,審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2016-07-12 
出願番号 意願2013-29565(D2013-29565) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (L2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 濱本 文子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
久保田 大輔
登録日 2014-05-09 
登録番号 意匠登録第1499504号(D1499504) 
代理人 中尾 真一 
代理人 笠本 秀一 
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