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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2
管理番号 1320240 
審判番号 不服2016-4902
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2016-09-06 
意匠に係る物品 電源供給器 
事件の表示 意願2015- 10656「電源供給器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成27年(2015年)5月15日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「電源供給器」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願において意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照)
すなわち,本願意匠部分は,放熱孔部の内周面及び吸気孔部の内周面であり,上記放熱孔部は電源供給器の上面の背面側左端付近に設けられ,上記吸気孔部は電源供給器の上面の正面側左端付近に設けられている。
また,上記放熱孔部は,中央に円形孔を配し,当該円形孔を取り囲む内側の環状孔(以下「内側環状孔群」という。)と,当該内側環状孔群を取り囲む外側の環状孔(以下「外側環状孔群」という。)から形成されている。そして,上記内側環状孔群は,環状に等間隔で配置された6個の湾曲した小さな長円孔(以下「小長円孔」という。)により形成され,各小長円孔は,上記円形孔を中心として,平面視において1時,3時,5時,7時,9時及び11時の位置に僅かに間隔を空けて設けられている。また,上記外側環状孔群は,上記内側環状孔群の外側に,環状に等間隔で配置された6個の湾曲した大きな長円孔(以下「大長円孔」という。)により形成され,各大長円孔は,上記円形孔を中心として,平面視において0時,2時,4時,6時,8時及び10時の位置に僅かに間隔を空けて設けられている。
また,上記吸気孔部は,平面視において上下方向に等間隔で設けられた13個のスリット状孔から形成され,各スリット状孔は,左右に細長い形状を有している。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2005年11月4日に受け入れたアメリカ合衆国で発行された外国雑誌「DESIGN NEWS 15号 60巻」(以下「引用刊行物」という。)第98頁所載のスイッチング電源器の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)において,本願意匠部分に相当するリング状に形成された放熱孔部及び直線状に形成された放熱孔部の二箇所の放熱孔部分の意匠(以下「引用相当部分」といい,本願意匠部分と合わせて「両意匠部分」という。)であって,その形態は,当該ページ所載の写真版に現されたとおりのものである。(特許庁意匠課公知資料番号第HB17011569号,別紙第2参照)

第3 当審の判断
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「電源供給器」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「スイッチング電源器」である。したがって,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも電源供給器であるので,共通する。

(2)両意匠部分の用途及び機能
引用刊行物には引用相当部分の用途及び機能について明記されていないが,電源器内部を冷却するために設けられたものであることは明らかである。そうすると,両意匠部分は,電源器内部の冷却のためのものである点において共通する。

(3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の位置,大きさ及び範囲を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。(当審注.以下では,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

<共通点>
(A)両意匠部分の放熱孔部及び吸気孔部(引用相当部分については,それぞれ,本願意匠部分の放熱孔部に相当する部分,及び本願意匠部分の吸気孔部に相当する部分をいう。以下において同じ。)は,いずれも上面左側に位置し,その大きさ及び範囲もおおむね一致する点。

<相違点>
(ア)本願意匠部分では,放熱孔部の左端及び吸気孔部の左端が,電源供給器の上面左端近傍の同一直線上に位置しているのに対し,引用相当部分の吸気孔部の左端は,上面左端から離れた位置に配置されており,放熱孔部の左端と同一直線上に位置していない点。

(4)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

<共通点>
基本的構成態様として,主に,
(B)二重環状の放熱孔部と,並列直線状の吸気孔部からなり,前記放熱孔部及び前記吸気孔部が同一の面に設けられている点,
において共通し,
具体的構成態様として,主に,
(C)放熱孔部が,内側環状孔群及び外側環状孔群からなり,上記内側環状孔群は,環状に等間隔で配置された6個の小長円孔により形成され,各小長円孔は,平面視において1時,3時,5時,7時,9時及び11時の位置に設けられ,上記外側環状孔群は,上記内側環状孔群の外側に,環状に等間隔で配置された6個の大長円孔により形成され,各大長円孔は,平面視において0時,2時,4時,6時,8時及び10時の位置に設けられている点,
(D)吸気孔部が,平面視において上下方向に等間隔で設けられた複数のスリット状孔から形成され,各スリット状孔は,左右に細長い形状を有している点,
において共通する。

<相違点>
具体的構成態様として,主に,
(イ)本願意匠部分では,放熱孔部の中央に1個の大きな円形孔が設けられているのに対し,引用相当部分では,放熱孔部の中央に4個の小円孔が格子状に間隔を空けて設けられている点,
(ウ)放熱孔部の内側環状孔群を形成する小長円孔,及び放熱孔部の外側環状孔群を形成する大長円孔の形状に関し,本願意匠部分では,両端が角張った略「く」の字状又は略逆「く」の字状であるのに対し,引用相当部分では,両端が丸みを帯びた略円弧状である点,
(エ)放熱孔部の内側環状孔群を形成する小長円孔,及び放熱孔部の外側環状孔群を形成する大長円孔の配置に関し,本願意匠部分は,引用相当部分よりも狭い間隔で配置されている点,
(オ)吸気孔部の数及び形状に関し,本願意匠部分は,両端が角張った略「く」の字状又は略逆「く」の字状のスリット状孔を13個形成しているのに対し,引用相当部分は,両端が丸みを帯びた略円弧状のスリット状孔を間隔を広くして5個形成している点。
において相違する。

(5)両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠部分の意匠全体としての類否を検討し,判断する。
共通点(A)について検討する。共通点(A)は,上面左側に放熱孔部及び吸気孔部を同程度の大きさで設けたという概念的な共通点に過ぎず,具体的態様についての共通点ではない。また,上記共通点(A)に係る態様は,当該物品分野において目新しいものではない。したがって,上記共通点(A)が類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に,上記共通点(B)について検討する。二重環状の放熱孔部や並列直線状の吸気孔部は,従前知られていたものであり,これらを同一の面に設けたものも,特段目新しいものとはいえない。したがって,上記共通点(B)が類否判断に及ぼす影響は,小さい。
次に,上記共通点(C)について検討する。湾曲した長円孔を環状に設けることによって環状の放熱孔部としたものは従前より知られており,また,内側の環状孔と外側の環状孔とをずらして配置したものも従前より知られていた。小長円孔及び大長円孔の数及び位置が一致する点を考慮したとしても,小長円孔及び大長円孔の形状が相違することに鑑みれば,上記共通点(C)が類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるといえる。
次に,上記共通点(D)について検討する。吸気孔部として,複数のスリット状孔を等間隔に設けたものは,従前より知られていた。したがって,上記共通点(D)が類否判断に及ぼす影響は,小さい。
次に,上記相違点(ア)について検討する。吸気孔部を端部近傍に設けた態様自体は特に目新しいものではないが,放熱孔部及び吸気孔部を上面左端近傍の同一直線上に配置した態様は,他には見られないものである。また,これに起因し,本願意匠は左端部に沿った直線的な空気の流れを想起させるのに対し,引用意匠はそうした空気の流れを想起させることはない。したがって,上記相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は,大きい。
次に,上記相違点(イ)について検討する。放熱孔部の中央に円形の孔部を設けることは,従前知られていたものである。したがって,上記相違点(イ)が類否判断に及ぼす影響は,小さい。
次に,上記相違点(ウ)ないし(オ)について検討する。上記相違点(ウ)ないし(オ)は,いずれも部分的な形状の相違に係るものであるから,個別に見た場合には,類否判断に及ぼす影響は限定的である。しかしながら,上記相違点(ウ)ないし(オ)があいまって生じさせる美感を勘案した場合,本願意匠は直線的でシャープな印象を与えるものであるのに対し,引用意匠は曲線的でソフトな印象を与えるものといえる。したがって,上記相違点(ウ)ないし(オ)があいまって類否判断に及ぼす影響は,大きい。
上記のとおり,共通点(A)ないし(D)が類否判断に及ぼす影響は,いずれも小さいか,あるいは一定程度にとどまるものであり,共通点全体としてあいまった効果を勘案しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至っていない。
これに対し,上記相違点(ア)及び(ウ)ないし(オ)が類否判断に与える影響は大きく,相違点全体があいまった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は共通点の印象を凌駕しており,両意匠が意匠全体として看る者に与える視覚的印象は,異なるというべきである。

(6)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能が共通するが,両意匠部分の位置及び形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対し,相違点のそれは,類否判断に支配的な影響を及ぼしており,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕して類否判断を決定づけているから,意匠全体として,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
したがって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審においてさらに審理した結果,本願について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-08-22 
出願番号 意願2015-10656(D2015-10656) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 須藤 竜也
江塚 尚弘
登録日 2016-10-07 
登録番号 意匠登録第1562391号(D1562391) 
代理人 田中 光雄 
代理人 中嶋 隆宣 
代理人 山田 卓二 
代理人 岡崎 博之 

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