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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1320257 
審判番号 不服2016-4882
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2016-10-04 
意匠に係る物品 天井直付け灯 
事件の表示 意願2015- 4491「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2015年)3月2日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は,本願の願書の記載によれば「天井直付け灯」であり,本願意匠の形態は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の記載によれば,「正面図に示すように1つのベースに2つのLEDユニットが取り付けられて」おり,「透光部分を示す参考正面図および透光部分を示す参考拡大右側面図において薄墨の着色で示す部分が透光部分である。」(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。
特許庁発行(発行日:平成26年(2014年)10月27日)の意匠公報に記載された意匠登録第1510212号(意匠に係る物品,天井直付け灯)の意匠(破線部を含む。以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。
なお,同公報の記載によれば,「「透光部を示す参考斜視図」中,斜線部は透光性を有する。」

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井直付け灯」である。

2 本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。例えば,引用意匠の【底面図】に表された形態を【正面図】の形態として認定し,引用意匠の【正面図】に表された形態を【平面図】の形態として認定する。
(1)共通点
両意匠には,以下の共通点が認められる。
(A)全体の構成についての共通点
全体が,正面から見て,横長状で厚みのある基台部の前方に,横長状の透光部を設けて一体としたものである。
(B)基台部の態様についての共通点
基台部は,右側面から見て,左向きの略扁平台形状であって,右端の上下角が水平状に形成されている。
また,側面視基台部の中央には略倒U字状部が形成されている。
(C)透光部の態様についての共通点
側面から見た透光部の厚みは,基台部の最大横幅の約1/2であり,側面から見た透光部の前端形状は,略弧状に膨出している。
(2)差異点
一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。
(a)基台部の態様についての差異点
(a-1)基台部の正面の態様
本願意匠の基台部では,正面全体の横幅:縦幅の比が約16:1であり,上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比が約10:21:10である(「内部機構を省略したA-A拡大断面図」から認定した。)。
これに対して,引用意匠の基台部では,正面全体の横幅:縦幅の比が約11:2であり,上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比が約1:1:1である。
(a-2)基台部の側面の態様
側面から見た基台部の縦幅:横幅の比は,本願意匠では約5:1であり,引用意匠では約6:1である。そして,側面から見た基台部の略扁平台形状斜辺は,本願意匠では急傾斜に表されているが,引用意匠では緩傾斜で表されている。
(a-3)小円形部の有無
本願意匠の側面視基台部には,略倒U字状部の上下に小円形部が表されているが,引用意匠にはそのような小円形部はない。
(b)透光部の態様についての差異点
(b-1)透光部の正面の態様
本願意匠では,正面から見て2つの透光部が横方向に並んで配されており,2つの透光部を合わせた横幅:縦幅の比が約36:1であるが,引用意匠では,透光部は1つであり,横幅:縦幅の比は約18:1である。
また,引用意匠の透光部の横幅は基台部の横幅よりも小さく,そのために透光部の左右の基台部中央平坦面に余地部が表れているが,本願意匠では,2つの透光部を合わせた横幅が基台部の横幅とほぼ同じであるので,そのような余地部は表れていない。
(b-2)透光部の側面の態様
側面から見て,本願意匠の透光部では,横幅(厚み):縦幅の比が約1:4.5であるが,引用意匠の透光部ではその比が約1:3であり,引用意匠の透光部の方が本願意匠の透光部に比べて膨出の程度が大きい。
(c)透光部と基台部の関係についての差異点
引用意匠では,側面から見た透光部の最大縦幅が基台部の略扁平台形上底の縦幅よりも僅かに小さいので,正面から見ると,透光部の上端(又は下端)と基台部略扁平台形上底上端(又は下端)が離れて2重線状に表れているが,本願意匠では,両者は離れておらず,2重線状に表れていない。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠は,共に天井直付け灯であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 天井直付け灯の意匠の類否判断
天井直付け灯は天井面に設置される照明器具であり,通常の使用状態において看者が天井直付け灯を観察するに当たっては,その天井直付け灯を主として正面方向又は正面斜め方向から眺めることとなり,透光部の正面視態様,基台部の正面視態様及び正面から見た両者の構成態様について特に注意を払うことになる。したがって,天井直付け灯の物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点で指摘した,(A)全体の構成についての共通点及び(B)基台部の態様についての共通点については,本願の出願前に「天井直付け灯」の物品分野においては普通に見受けられるものであり,例えば,基台部に略倒U字状部が形成された意匠も本願の出願前に公然知られている(意匠登録第1501834号の意匠。以下「参考意匠」という。別紙第3参照。)。そうすると,看者はこれらの共通点に特に注目するということはできない。
また,共通点(C)で指摘した,透光部の厚みが基台部の最大横幅の約1/2である点や,透光部の前端形状が略弧状に膨出している点についても,「天井直付け灯」の物品分野においては透光部と基台部の横幅の関係には様々なものがあり,透光部の前端を略弧状にすることもありふれていることから,いずれも看者が注視する共通点であるとはいい難い。
したがって,共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 両意匠の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(b-1)で指摘した,正面から見た透光部の個数と並びについての差異(本願意匠では2つが横方向に並び,引用意匠では1つのみ。)は,看者が一見して気付く差異であって,2つの透光部を合わせた横幅:縦幅の比が約36:1となる本願意匠は,約18:1である引用意匠と比べて2倍横長であるから,この差異は看者に別異の美感を与えることとなる。そして,透光部の左右の基台部中央平坦面に表れる余地部の有無の差異についても,両意匠を正面方向又は正面斜め方向から眺める看者が抱く美感に変化を加えているというべきである。したがって,差異点(b-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(a-1)で指摘した,基台部の正面全体の横幅:縦幅の比の差異(約16:1であるか約11:2であるかの差異)は,透光部の個数の差異から派生した差異であって,上記(b-1)の差異とあいまって,看者に別異の美感を与えることとなるので,この差異は両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
そして,差異点(a-1)で指摘した,正面視基台部の上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比の差異(約10:21:10であるか約1:1:1であるかの差異)は,差異点(a-2)で指摘した,側面から見た基台部の縦幅:横幅の比の差異(約5:1であるか約6:1であるかの差異)及び基台部略扁平台形状斜辺の傾きの程度の差異(急傾斜であるか緩傾斜であるかの差異)とあいまって,看者に異なる視覚的印象を与えているから,これらの差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
他方,差異点(a-3)で指摘した,側面視基台部における略倒U字状部上下の小円形部の有無の差異(本願意匠にはあるが,引用意匠にはない。)については,その小円形部が小さいものであって比較的目立たず,略倒U字状部の上下に小円形部を設けた意匠が本願の出願前に「天井直付け灯」の物品分野において既に見受けられる(例えば,上記参考意匠。)ことを踏まえると,看者がその小円形部に特段の注意を払うとはいい難い。
また,差異点(b-2)で指摘した,側面視透光部の横幅(厚み)と縦幅の比の差異(約1:4.5であるか約1:3であるかの差異)は,「天井直付け灯」の物品分野において,透光部の厚みや基台部に占める割合には様々なものがあることを踏まえると,看者がこれらの差異を殊更注視するとはいい難く,差異点(c)で指摘した,透光部の上端及び下端に表れる2重線の有無の差異(引用意匠にはあるが,本願意匠にはない。)も,両意匠の視覚的印象を異にして,上述した両意匠の共通点を大きく損ねるほどのものであるとはいい難い。
そうすると,差異点(a-3),差異点(b-2)及び差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

5 総合判断
以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両意匠の形態の差異点(a-1),差異点(a-2)及び差異点(b-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく,その余の形態の差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても,形態の共通点を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。

6 小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両意匠の形態についても,共通点は差異点を圧して両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすので,両意匠を全体として比較した際には両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-09-21 
出願番号 意願2015-4491(D2015-4491) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
渡邉 久美
登録日 2016-10-14 
登録番号 意匠登録第1563050号(D1563050) 
代理人 田中 達也 
代理人 吉田 稔 
代理人 鈴木 泰光 
代理人 小淵 景太 
代理人 土居 史明 
代理人 鈴木 伸太郎 
代理人 臼井 尚 

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