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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E4
管理番号 1320259 
審判番号 不服2016-5490
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-14 
確定日 2016-10-11 
意匠に係る物品 電気ギター 
事件の表示 意願2015- 8147「電気ギター」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)4月10日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「電気ギター」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」ともいう。)(別紙第1参照)

第2 原審における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠がその出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似する,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する,とするものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁意匠課が2005年12月26日に受け入れた「Acoustic Mind 2005 PRODUCT CATALOG」 第34頁所載のサイレントギターの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC17060732号。以下,この引用した意匠を「引用意匠」といい,引用意匠における本願部分に相当する部分を「引用部分」という。)(別紙第2参照)であって,具体的な理由は以下のとおりである。
「本願意匠は,意匠に係る物品を「電気ギター」とし,そのヘッド及び弦を除いた部分について,意匠登録を受けようとする部分としたものです。両意匠の形態について,ボディは略ティアドロップ形状の左肩をなだらかに突出させた態様の帯板状フレームからなり,右肩には角状の部材が設けられ,ボディの空洞部を縦断するように,略紡錘形の指板及びネック,その右側にピックガードが設けられているという特徴が顕著に共通し,この共通点が見る者に強い共通の美感を与えるものです。一方,両意匠は,ボディ右肩のフレームがネックに向かって屈曲しているか否か,また,ピックガードや角状部材の湾曲の態様等に僅かな違いがありますが,いずれも部分的な差異であって,それぞれの形態が異なる印象を与えるものではなく,それらが相まって生じる効果を考慮しても,上記共通点が与える強い共通の美感を凌駕する程ではありません。したがって,両意匠は類似するものであるといえます。」とするものである。
また,拒絶査定において,「本願意匠と引用意匠における正面視した場合のボディ部の輪郭形状は,略瓢箪型の右肩部分を角状に突出させた形状であり,この形状は,一般的にレスポールタイプともいわれる電気ギターにおいて従来から広く一般的な形状ですが,概略的な輪郭形状としては,そのような一般的な形状としつつ,両意匠は,指板及びネック部をボディ部下部まで延長した部分と,右肩の角状部分を残し,ボディ部輪郭形状を湾曲帯状板体により形取って,その余のボディ部を空洞状にしているものであり,この態様は,電気ギターの分野において,両意匠のみが有する非常に特徴的な態様であり,また,両意匠の意匠全体の基調を形成し,見る者に両意匠が共通することを強く印象づけるものといえます。 」とするものである。

第3 請求人の主張
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。
1 本願意匠が登録されるべき理由
(1)原審の拒絶査定の認定ついて
拒絶査定における「両意匠は,指板及びネック部をボディ部下部まで延長した部分と,右肩の角状部分を残し,ボディ部輪郭形状を湾曲帯状板体によって形取って,その余のボディ部を空洞状にしているものであり」という指摘については,参考意匠をもって示したとおり,「指板及びネック部をボディ部下部まで延長した部分」,「その余のボディ部を空洞状にしているものであり」という点は,新規な特徴とは言えず,したがって,当該指摘は,「両意匠のみが有する非常に特徴的な態様」とは言えない。
そして,残る「右肩の角状部分を残し」,「ボディ部輪郭形状を湾曲帯状板体によって形取って」というポイントについても,顕著な差異を有するものであり「共通点」として簡単に一言で片付けるべき部分ではない。

(2)両意匠の差異点
両意匠には,以下の差異点がある。
(A)ボディ右肩のフレームがネックに向かって屈曲しているか否か
(B)ピックガード湾曲の態様
(C)角状部材の湾曲の態様
(D)物品下部(ヘッドの対極側)のストラップピン近傍の形状
(E)胴部内のネック等延長部分における操作部
(F)左肩の形状
(G)ネックとボディの接合部分形状
差異点(A)及び(B)は,「右肩の角状部分を残し」という点に係る差異であり,ギターそのもののスタイルに大きく影響するものであると共に,演奏者等でない者にとっても一見して看て取れる大きな形態上の差異であり,差異点(C)も含めてみれば,本願意匠は,一体としてアコースティックギター正面視の形状となるよう特段の配慮の上でなされたデザイン上の重要な差異となる。
更に,差異点(F)や(C)は,「ボディ部輪郭形状を湾曲帯状板体によって形取って」という点にも関係する差異であり,演奏者の体に触れるだけでなく,快適な演奏ポジションの安定に直接影響を与える箇所における差異である。その他の差異点も,演奏者等の需要者が,演奏及び演奏の準備段階等において,実際に触れて,調整等を行うための部分であり,必ず注目される差異点である。
そして,これらの差異点は,本願意匠の起源をアコースティックギターとすることに端を発するものである。こうした差異点に,物品の細部の差が演奏に大きな影響を与えることを当たり前に,かつ,身をもって知っている本願意匠に係る物品の分野における演奏者をはじめとする需要者が価値を認めない,注目しない,などということは全くあり得ないことであり,これらの差異点は,必ず需要者によって注視され,かつ詳細に確認,検討されるものである。

(3) むすび
以上のとおり,本願意匠及び引例意匠における当該差異点が両意匠の類否判断に与える影響は甚大であり,共通点を遥かに凌駕するものであるので,本願意匠は,引例意匠とは非類似の意匠である。よって,本願意匠は,引例意匠との関係で意匠法第3条第1項第3号に該当するものではなく,登録されるべきものである。

第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「電気ギター」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「サイレントギター」である。

(2)本願部分と引用部分(以下,「両部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,願書添付図面において破線で表されたヘッド及び弦を除いた,ネック・指板部及びボディ部から成る部分であり,引用部分は本願部分に相当するヘッド及び弦を除いた,ネック・指板部及びボディ部から成る部分である。

(3)両部分の形態
両部分には,主に以下の共通点と相違点がある。(本願意匠及び引用意匠共に,そのヘッドを上方にした向きとして,以下述べる。)
ア 共通点
<基本的構成態様>
(ア)全体をフレーム状にしたボディ部とそのボディ部の中央に上下に貫いて伸びるネック・指板部とから構成されるものである。
(イ)ボディ部は,その正面視の輪郭形状を,ギターの典型的な形状である略瓢箪型としつつ、その右肩の小膨らみに相当する部分の上方の指板側を切り欠いて(カットアウェイして),右下の大きな膨らみから続く右肩の小膨らみの下方の弧状部分を角(つの)状に突出した形状(この全体の正面視の輪郭形状は,一般に「レスポールタイプ」と呼ばれる電気ギターの分野において広く知られた普通に見られる形状である。また、角(つの)状に突出した形状の部分を、以下「角状部分」という。)とし、その角状部分を除いたボディ部の内側を空洞にして輪郭形状をフレーム状としたもの(以下、「ボディフレーム」という。)である。
(ウ)ネック・指板部は,ボディ部の上部に突き出たネックから指板がボディ部中央を縦断してボディ部下端まで延びて連続する長い帯板状の一体のものであり,また、その帯板状のボディ部中央部分から下端寄りの正面側にはブリッジ・テールピース部を設け、その背面側には調整機構・操作部(筐体)を設けている。

<具体的態様>
(エ)ボディフレームは帯板状を湾曲させて輪郭を象ったものであって,正面視の左半分は半瓢箪型とし,右半分は半瓢箪型の下の大きな膨らみのみとして,右側フレームは瓢箪型の括れに当たる位置よりやや上方でネック・指板部と結合するものとし,右側の瓢箪型の上の小さい膨らみに相当する部分に位置する角状部分は、内側に湾曲した平板の部材(以下,当該角状平板部材を「角(つの)部材」という。)をボディフレームに取り付けている。
(オ)ネック・指板部は,ボディフレームの瓢箪型の下の膨らみの中央位置付近にブリッジとテールピース部を設け,そのテールピース部付近を最大幅として,上方をほんの僅かに徐々に拡幅する略直線状とし,下方を緩やかな曲線状に徐々に縮幅させて,縦長の下端が截切された略紡錘状とし,その下端にストラップ(エンド)ピンを取り付けている。そのネック・指板部のボディ部中央部分の背面側には,ボディフレームの帯板と略同幅の厚みの調整機構・操作部を設けている。
(カ)ネック・指板部の右側の指板の下方付近からブリッジ・テールピース部までにかけての位置に,縦長で裾広がりの形状のフィンガーボード(ピックガード)を取り付けている。

イ 相違点
<具体的態様>
(A)右側ボディフレーム部の正面視形状及びネック・指板部への取り付け態様
本願部分は,右側ボディフレームがその曲線状のまま左斜め上に延びてネック・指板部に対して斜めに接合しているのに対して,引用部分は,右側ボディフレームが取付部の手前で内側に屈曲して短く左に伸びてからネック・指板部に対して概ね垂直に接合している。
(B)角部材の態様
本願部分は,右側ボディフレームのネック・指板部との接合部位近くの部位に,正面視やや幅広で三角形様の厚みのあるものを,左側ボディフレームとほぼ同位置に左右対称状に設けているのに対して,引用部分は,右側ボディフレームのネック・指板部との接合部から少し離れた手前の屈曲部の右下に,正面視やや幅狭で棒の様なやや厚みの薄いものを,対比となる左側ボディフレームよりも少し外側にはみ出した離れた位置に設け,左右対称状となっていない。
(C)ピックガード(フィンガーボード)の態様
本願部分は,右側ボディフレームとの接合部位からテールエンド部までの縦長で,右側の上部が緩やかな小凸弧状で右下に僅かに反るようにして裾広がりした後左下方に切り返すようなやや大きな凸弧状を描く形状のもので,フィンガーボード上方部分が右側ボディフレームとの接合部位に被さる位置に配しているのに対して,引用部分は,右側ボディフレームとの接合部位よりやや下がった位置からテールエンド部までの、本願部分よりやや縦が短い、右側ボディフレームに沿うような傾斜辺を有する下方が裾広がりの略凸四角形状のものであり,右側ボディフレームとの接合部に被さることなく,右側ボディフレームと一定間隔の空間を形成する様に配している。
(D)ネック・指板部のボディ下端部分(ヘッドの対極側)の態様
本願部分は,その下端がボディフレームから外方に突出せず,円弧形状フレーム内に収まっているのに対して,引用部分は,下端がボディフレームの円弧形状フレーム内に収まらずに外方に僅かに突出している。
(E)指板・ネック部における調整機構・操作部の態様
本願部分は,該部の操作つまみ等が背面側には一切設けられておらず,かつ,指板・ネック部のブリッジ部より下方に設けられているのに対して,引用部分は,背面側の態様は不明であり,また左側面側の操作つまみ等がブリッジ部より上方(ネック側)にも設けられている。
(F)左側ボディフレーム部の上方肩部分の態様
本願部分は,当該部分のフレームの幅が,緩やかな凸弧状を描くように背面側に拡幅しているのに対して,引例部分は,当該部分のフレームの幅が,背面側に僅かに拡幅しているように現れて見えるが,斜視図のみであるため詳細は不明である。

2.両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「電気ギター」である一方,引用意匠に係る物品は,原審において「サイレントギター」と認定されているが,「サイレントギター」は商品としての呼び名であり,意匠に係る物品としては,本願意匠と同じく,弦の振動を電気に変換して,音量の増幅/減衰をすることができる「電気ギター」であって,意匠に係る物品は共通する。

(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両部分は共に,ヘッド及び弦を除いた,ネック・指板部及びボディ部から成る部分であり,用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

(3)両部分の形態
ア 共通点について
基本的構成態様の共通点(ア)については,本願意匠が属するギター等の弦楽器等の物品分野におけるごく一般的かつ基本的な概略構成の共通性であるから,両部分の類否判断に影響を及ぼすものではない。
共通点(イ)のボディ部の態様のうち,その輪郭形状については,この種物品分野において従来からの広く知られている一般にレスポールタイプと呼ばれる広く知られた電気ギターにおいて見られる形状に近いものであるから,その点のみでは類否判断に及ぼす影響は大きいものとはいえず,また,ボディ部の正面視輪郭形状を象ってフレーム状にした点についても,この種物品分野において既に概略同様に形成した態様は見られるところであり,またそのフレームを帯板状を湾曲させて形成したものは,ギターの分野においては他に多く見られない態様であるが,バイオリンやチェロ等の弦楽器も含む物品分野全体を見てみると,同様の態様のものが相応に先行する意匠として見られることから,ボディフレームを帯板状によって構成する態様については,両意匠のみに見られる態様とまで評価することはできず,両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものといえる。
共通点(ウ)については,ブリッジ・テールピース部分より下方に延びて,共通点(イ)のボディ部をフレームによって形成した態様において,対比的に中央を貫通してフレームと結合して非空洞部分を形成する部分であるが,この種物品分野におけるネック及び指板の基本的な態様であって,その点には変わりはないから,両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして,具体的態様の共通点(エ)については,ボディ部のフレームを帯板状を湾曲させて形成したものは,ギターの分野においては他に多く見られない態様であるが,バイオリンやチェロ等の弦楽器も含む物品分野全体を見てみると,同様の態様のものが相応に先行する意匠として見られることから,ボディフレームを帯板状によって構成する態様については,両意匠のみに見られる態様とまで評価することはできず,両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものといえる。
しかし、ボディ部右上のシングルカットアウェイされて残った角状部分を,帯板状のフレーム状とせずに,平板状の部材(角部材)を取り付けた点は,ボディ部をフレーム状とした造形に変化(アクセント)を付けて看者の注意を惹くものとなっており,両部分の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものといえる。
共通点(オ)については,共通点(ウ)と同様,非空洞部を形成する部分であり,本体ボディ部を貫く大きな部分の態様であり,当該部分の,テールピース部付近を最大幅とする縦長略紡錘状とし,ブリッジとテールピースを近くに配して,それ例外は表面に多くの装飾的なものを表さずにまとめた態様は,看者にシンプルな造形的な印象を与えるものではあるが,比較的普通の態様をそのまま残したものともいえ,両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものといえる。
共通点(カ)のフィンガーボード(ピックガード)の共通性については,共にやや縦長で下方が幅のある略変形凸四角形状ではあるもの,相違点(B)のとおり,その具体的形状としては違いもあり,またその取り付け位置についても,概略すればこの種物品において通常見られる位置に設けられているという程度の共通性であるから,その相違が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。

以上を総合すると,両部分の形態の共通点は,基本的構成態様の共通点(イ)と具体的な態様(エ)が相まって,ボディフレームを帯板状としつつ,右上に角部材を設けたものとした点において,両意匠の類否判断に相当程度の影響を及ぼすものといえるが,その両意匠における特徴的な部分である当該角部材を含むボディ部右上付近において,後述するように相当の相違があることから,意匠全体としては,その他の具体的な態様の共通点(オ)等も加味したとしても,共通点全体は,従来から見られる態様の印象を含むものであって,両意匠のみの強い共通性を醸成しているとまではいえず,両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まる。

イ 相違点について
相違点(A)の右側ボディフレームの正面視輪郭形状及びネック・指板部への取り付け態様については,右側ボディフレームの正面視の輪郭形状の違いと取り付け角度が一体となって大きな違いとして現れており,フレーム全体を帯板状としている共通性はあるとしても,目に付くものといえ、両部分の類否判断に影響を及ぼすものといえる。
相違点(B)角部材の態様については,共通点(エ)のボディ部右上のシングルカットアウェイされて残った角状部分を,やや厚みのある平板の部材をボディフレームに取り付けている共通性の範囲内の相違ともいえるが,本願部分と引用部分では,まずその角状の正面視形状において大きな相違があり,かつ、角状が対比される左側ボディフレームとの位置関係においても,本願部分が左側とほぼ左右対称にまとまって配されているのに対して,引用部分はやや外側にはみ出して左右対称性がやや崩れて配されており,相違点(A)の相違と相まって,その相違は両部分の類否判断に強い影響を及ぼすものといえる。
また,相違点(C)のピックガードの態様の相違についても,形状及び大きさ(縦方向の長さ)に違いがあり,それが取り付け位置の違いともなって,結果として右側ボディフレームと形成する空洞の形状の相違として大きく現れていることから,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼしているものといえる。
そして,これらの相違点(A)(B)(C)は,両部分の特徴を最も表している右肩部分の態様の相違として,相まって別異の強い印象を生み出している。
他方、相違点(D)については,相違点ではあるものの,両部分のネック・指板部全体の態様の共通性においては何ら変わらぬままであり,引用部分のネック・指板部下端のボディフレームの外方への突出の程度もごく僅かであって,本願部分のものとほとんど差がなく,ボディフレームと形成する空洞状の印象を崩す程のものでもないから,この相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(E)については,指板・ネック部の背面及び両側面における相違であり,かつ調整機構・操作部の態様であり,そのつまみの配置等の細部の相違であって,指板・ネック部の表側の造形に影響をほとんど及ぼさないものであり,意匠的にその相違を高く評価することはできないから,この相違点(E)が両部分の類否判断に及ぼす影響はほとんどないといえる。
相違点(F)については,引用部分が一般の公知資料であって側面及び背面側から見る帯板状の幅の形状が不明であるが,共に緩やかなカーブを描くようにやや拡幅している範囲内での相違であり,使用者(演奏者)の身体に接する側の形状である点で重要な部分ではあるとしても,意匠的に見ればやはり側面及び背面側の比較的目立たない部分の細部の相違といわざるを得ず,その相違が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。

以上を総合すると,両部分の形態の相違点は,本体ボディ部の右上部分の具体的な態様の相違点(A)(B)(C)が相まって,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえ,上記アのとおりの一定程度に留まる両部分の共通の印象を覆して別異の意匠であると認識させるまでに及んでいるといえる。

(4)総括
そうすると,本願意匠と引用意匠は,意匠に係る物品が共通し,本願部分と引用部分の用途及び機能が共通し,またその位置,大きさ及び範囲も共通するが,両部分の形態の相違点が類否判断に及ぼす影響が共通点のそれを凌駕し,別異の意匠であることを印象付けるものであるから,本願意匠は引用意匠に類似するものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2016-09-26 
出願番号 意願2015-8147(D2015-8147) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E4)
最終処分 成立 
前審関与審査官 伊藤 翔子竹下 寛 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 本多 誠一
渡邉 久美
登録日 2016-10-21 
登録番号 意匠登録第1563634号(D1563634) 
代理人 秋元 輝雄 
代理人 吉澤 大輔 
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