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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1320262 
審判番号 不服2016-4624
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-30 
確定日 2016-10-17 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2014- 28984「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2014年6月30日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴って,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)12月25日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「一点鎖線で囲まれた部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。破線で表された部分は,その他の部分である。」(以下,本願の意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,この意匠登録出願の意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

この出願前から,画像において,矩形のグラフや写真の表示部の上下に帯状の文字表示部を設け,上側の帯状の文字表示部の左下を下方に三角形状に小さく突出させ,同部の右上には円形に目と口が表されたアイコンを設けたもの(以下,「グラフ等表示単位」といいます。)を一単位として,複数の単位を縦に並べたものが公然知られています(引用画像1及び引用画像2)。また,棒グラフとして,種々の高さ,幅,間隔及び明暗調子のものが知られています(例えば,引用画像1ないし3)。さらに,錠形状のアイコンも公然知られています(引用画像4)。
そうすると,本願意匠は,出願前から公然知られたグラフ等表示単位を,縦に四つ並べて,上から一番目,二番目及び四番目のグラフ等表示単位については,中央をグラフ表示部として,棒グラフの高さ,幅,間隔及び明暗調子を適宜変更したものを表し,また,三番目のグラフ等表示単位については,中央を写真表示部とし,左下に公然知られた錠形状のアイコンを表して,携帯情報端末に係る,健康管理の情報を表示する画像の部分として表した程度であるから,容易に創作することができたものと認められます。
なお,人の顔のイラスト及びサンドイッチの写真は,この物品にあらかじめ記録された画像ではないと推察されるため,意匠を構成する要素として認められません。

<引用画像1> (別紙第2参照)
1.情報源
インターネット
2.情報のアドレス
http://web.archive.org/web/20130721171649/http://uthmag.com/up-by-jawbone-uthmag-review
3.ウェブページの表題
INTERNET ARCHIVE wayback machine
Up by Jawbone | UthMag Review
4.掲載日
2013年7月21日
5.検索日
2015年6月22日
6.内容
「TEAM」という項目に表された画像

<引用画像2> (別紙第3参照)
1.情報源
インターネット
2.情報のアドレス
http://japan.cnet.com/news/commentary/35041214/2/
3.ウェブページの表題
cnet Jawboneの新型フィットネスバンド「UP24」レビュー - (page 2)
4.掲載日
2013年12月16日
5.検索日
2015年6月22日
6.内容
「主な健康関連機能」という項目において左側に表された画像

<引用画像3> (別紙第4参照)
1.情報源
インターネット
2.情報のアドレス
http://web.archive.org/web/20121219224326/http://app-review.JP/ios/71878
3.ウェブページの表題
INTERNET ARCHIVE wayback machine APPREVIEW
UP?FUELBAND?あなたにピッタリの活動量計はコレだ!
4.掲載日
2012年12月19日
5.検索日
2015年6月22日
6.内容
「睡眠トラッキング」という項目に表された画像

<引用画像4> (別紙第5参照)
1.情報源
インターネット
2.情報のアドレス
http://web.archive.org/web/20130808162819/http://www.assiston.co.JP/2351
3.ウェブページの表題
INTERNET ARCHIVE wayback machine assiston UP JAWBONE
4.掲載日
2013年8月8日
5.検索日
2015年6月22日及び24日
6.内容
「食品の記録」という記載のある画像の左下に表されたアイコン

第3 請求人の主張の要点
本願意匠は,各表示単位の上下方向の長さについて,上から1番目,2番目,4番目の表示単位を21%とし,上から3番目の表示単位を27%として,各表示単位を等間隔に配置したものである。このような本願意匠の4つの表示単位の特徴的な配置は,引用画像1?4のいずれにも示されておらず,表示単位に関して種々の縦横比の表示枠形状が知られていたとしても,原査定において示されたような縦スクロールによる画像の表示態様における表示単位の数や大きさ等の単なる調整を優に超えるものであり,引用画像1?4に基づいて当業者が容易に創作できたものではない。
さらに,グラフおよびコンテンツならびに錠形状のアイコンをどこに,どのような大きさで,どのような順序で配置するかについて,無数の組み合わせが存在する。その無数の組み合わせの選択肢の中から特定の組み合わせを選択して配置することで,需要者に異なる美感を提供する。すなわち,本願意匠においては,4つの表示単位のうち,上から1番目,2番目,4番目にグラフを,上から3番目にコンテンツを表示し,かつ,コンテンツを表示する表示単位内の左下部に錠形状のアイコンを配する態様を選択したことによって,画像全体のまとまりとしての美感と,個々の表示単位の形状に基づく美感とのバランスが発揮される。
本願意匠の特定の位置,大きさ,順序での4つの表示単位の配置の仕方は,本願意匠の特徴的な着想によるものであり,引用画像1?4の存在を前提として容易に導き出せるものではないため,本願意匠は,当業者が容易に創作できたものではないというべきである。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」ともいう。)が容易に創作することができたものであるか否か,について検討する。

1 本願意匠の認定
本願意匠は,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,本願部分の用途及び機能については,本物品の有する健康管理のための機能を果たすために使用者の活動,健康,睡眠,カロリー摂取,および,他の同様の情報に関連する情報を記録し,追跡し,表示するための画像であり,本願部分の位置,大きさ及び範囲については,扁平な直方体形状の機器の正面全域を本願部分とし,その領域内の周囲に僅かな縁状の余地部を残して,縦横比を約3対1とする縦長長方形状の画像表示領域(以下「画面」という。)を設け,画面の全面に白黒のモノクロによる濃淡調子の画像(以下,本願の画像部分を「本願画像」という。)が表れているものである。
そして,本願画像の形態について,全体は縦横比を約3対1とする縦に細長い長方形とし,その全面にわたり4つの略横長長方形状の表示単位(以下,単に「表示単位」ともいう。)を,一定の間隔を空けて縦に一列に並べたものである。表示単位の周囲は暗調子とし(上から4段目の表示単位の下方は除く),その周囲,つまり本願画像の周囲に設けてある余地部は明調子としたものである。
そして,4つの表示単位のうち1段目,2段目及び4段目については,いずれも全体の縦横比を3対4とする略横長長方形状とし,その領域内の上下に帯状部を設け,上側の帯状部については,左端寄りの下端を下向きの三角形状に小さく突出させ,その上方に写真等のコンテンツを表示する略正方形の表示部を設けるとともに,その右脇に文字表示部を設け,右端寄り上部には円形に目と口が表されたアイコンを上方へ少し突出させて設けたものであり,下側の帯状部については,左端寄りに文字表示部を設けたものであり,上下の帯状部に挟まれた中央の領域は,棒グラフの表示部とし,その背景の態様については,1段目の表示単位は,濃い暗調子で均一に表し,2段目の表示単位は,上方に向かって徐々に濃くなる暗調子のグラデーション調とし,4段目の表示単位は,下方に向かって徐々に濃くなる暗調子のグラデーション調としたものである。他方,3段目の表示単位は,全体を略正方形状とし,その他の構成態様については1段目,2段目及び4段目のものと同様としつつ,左下隅に南京錠の形状(四角形状の上部に半円環状の突出部を設けた形状)をしたアイコンを設け,上下の帯状部に挟まれた中央の領域は写真等のコンテンツの表示部としたものである。
なお,4段目の表示単位については,明調子で表れている下方の帯状部が,明調子の余地部と接しているために,当該帯状部の下辺の形状線を認識することができないが,明調子の余地部との境界線部分を下辺であるとして認定している。なお,4段目の表示単位の縦横比は,1段目及び2段目の表示単位と同様の約3対4であり,請求人も1段目,2段目及び4段目の表示単位は,その上下方向の長さが同じである旨主張しているところであるから,当該境界線部分を4段目の表示単位の下辺と認定することに特段の支障はない。
また,文字表示部に具体的に表われている文字は,意匠を構成するものではない。

2 引用画像の認定
(1)引用画像1
引用画像1は,画像全体の縦横比を約7対4とする縦長長方形状とし,その領域内の上部に,ほぼ左右にわたり帯状に表れている表示部(以下「ヘッダー部」という。)を設け,その下方に,縦横比を約3対4とする略長方形状の表示単位を,周囲に暗調子の余地部を設けて,縦に2つ並べたものである。いずれの表示単位もその領域内の上下に帯状部を設け,上側の帯状部については,左端寄りの下端を下向きの三角形状に小さく突出させ,その上方に写真等のコンテンツを表示する略正方形状の表示部を設けるとともに,その右脇に文字表示部を設け,右端寄り上部には円形に目と口が表されたアイコンを上方へ少し突出させて設けたものである。また,下側の帯状部については,左端寄りに文字表示部を設けたものである。そして,上下の帯状部に挟まれた中央の領域は,棒グラフの表示部とし,背景も含め棒グラフが濃淡によって表れており,背景の態様については,上段の表示単位は,上方に向かって徐々に濃くなる暗調子のグラデーション調とするとともに,下部中央から放射状に拡がる帯状部が明暗交互に縞状に表れているものであり,下段の表示単位は,上方に向かって徐々に濃くなる暗調子のグラデーション調としたものである。

(2)引用画像2
引用画像2は,画像全体の縦横比を約7対4とする縦長長方形状とし,その領域内の上部に,ヘッダー部を設け,その下方に,棒グラフを表示した表示単位と写真を表示した表示単位を,周囲に暗調子の余地部を設けて(上段の表示単位の上方は除く),縦に並べたものである。
上段の表示単位は,上部がヘッダー部で隠れており,全体の縦横比や上部の態様を具体的に認定することができないが,上部の一部が帯状に表れたものであり,下部の帯状部は左端寄りに文字表示部を設けたものであり,上下の帯状部に挟まれた中央の領域は,棒グラフの表示部とし,背景も含め棒グラフが濃淡によって表れており,背景の態様については,上方に向かって徐々に濃くなる暗調子のグラデーション調としたものである。
下段の表示単位は,全体を略正方形状とし,その領域内の上下に帯状部を設け,上側の帯状部については,左端寄りの下端を下向きの三角形状に小さく突出させ,その上方に写真等のコンテンツを表示する略正方形状の表示部を設けるとともに,その右脇に文字表示部を設け,右端寄り上部には円形に目と口が表されたアイコンを少し突出させて設けたものであり,下側の帯状部については,左端寄りに文字表示部を設けたものである。そして,上下の帯状部に挟まれた中央の領域には写真等のコンテンツの表示部としたものである。

(3)引用画像3
引用画像3は,画像全体の縦横比を約7対4とする縦長長方形状とし,その領域内の上部に,ヘッダー部を設け,その下方の約上半部には,背景も含め濃淡によって表された棒グラフ部が上方に余地部を大きく設けて表示され,背景の態様は,上方の余地部の左右両側付近を他よりもやや濃い暗調子としたものである。また,約下半部には,複数の区画を設け,各区画を文字表示部としたものである。

(4)引用画像4
引用画像4は,画像全体の縦横比を約7対4とする縦長長方形状とし,その領域内の上部に,ヘッダー部を設け,その下方に写真等のコンテンツ表示部や文字表示部を上下に並べて設け,左下隅に,南京錠の形状(四角形状の上部に半円環状の突出部を設けた形状)をしたアイコンが表れているものである。

3 創作容易性の判断
長方形等の同形状の表示単位を複数縦に並べることは,当該意匠の属する物品分野においてありふれた態様であるところ,棒グラフを表示した表示単位を縦に並べた態様は,引用画像1に見られるとおり,また,棒グラフが表示された表示単位と写真が表示された表示単位を縦に並べた態様も,引用画像2に見られるとおり,いずれも本願出願前から既に見られるものである。
次に,表示単位の形態として,全体の縦横比を約3対4とする略横長長方形状や略正方形状とし,その領域内の上下に帯状部を設け,上側の帯状部を,左端寄りの下端を下向きの三角形状に小さく突出させ,その上方に写真等のコンテンツを表示する略正方形状の表示部を設けるとともに,その右脇に文字表示部を設け,右端寄り上部には円形に目と口が表されたアイコンを上方へ少し突出させて設けたもの,及び,下側の帯状部の形態として,左端寄りに文字表示部を設け,その上下の帯状部に挟まれた中央の領域を棒グラフ(あるいは写真)の表示部としたものは,引用画像1の表示単位や引用画像2の下段の表示単位に見られるように,本願出願前に公然知られた形態といえる。
更に,アイコンの形態として,南京錠の形状をしたものは,引用画像4に見られるとおり公然知られた形態といえ,また,アイコンの配置として,特定の領域の左下隅に設けた態様は,ありふれた態様といえる。
そして,画像全体を白黒による濃淡調子とすることに,格別な創作は認められず,また,棒グラフの背景を上方に向かって徐々に濃くした(あるいは淡くした)暗調子のグラデーション調とすることにも,徐々に濃くした態様のものが引用画像1の下段の表示単位や引用画像2の上段の表示単位にみられるとおり公然知られた形態であるから,格別な創作は認められない。

しかしながら,携帯情報端末の意匠の属する物品分野の意匠において,機器の正面の周囲に余地部を残して設けた画面を,本願部分のように縦横比が約3対1の縦長長方形とし,その全面にわたり4つ前後の個数の表示単位を,一定の間隔を空けて縦に一列に並べたものが存在せず,仮に,本願意匠の表示単位の形態が,当業者において,引用画像1ないし引用画像4に基づいて容易に導き出せる形態であるといえたとしても,その表示単位の形態を上下に一列に4つ並べることが,当該意匠の属する物品分野におけるありふれた手法に基づき配置した程度のものであるということはできない。
なお,棒グラフの長さや本数は,使用者の測定日や時間毎の生活状況に応じて,あるいは使用者の個別のデータにより様々な態様が表れるものであるから,創作容易性の判断に大きな影響を与えるものとは認められない。

したがって,本願意匠は,引用画像1ないし4に基づき,当該意匠の属する物品分野においてありふれた手法により,公然知られた形態を単なる組合せや置き換え等により創作がなされたに過ぎないもの,ということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-10-05 
出願番号 意願2014-28984(D2014-28984) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 博康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
江塚 尚弘
登録日 2016-10-28 
登録番号 意匠登録第1564361号(D1564361) 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 

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