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審決分類 審判 判定   属する(申立成立) G2
管理番号 1321288 
判定請求番号 判定2016-600005
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2016-02-22 
確定日 2016-10-24 
意匠に係る物品 自動二輪車用タイヤ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1308870号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の写真及びその説明により示された「自動二輪車用タイヤ」の意匠は,登録第1308870号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由

1.請求の趣旨
判定請求人は,「イ号意匠は,登録第1308870号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と申し立て,その理由として,判定請求書に記載のとおり主張し,甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。

2.請求の理由
(1)判定請求の必要性
本件判定請求人(住友ゴムエ業株式会社)は,物品「自動二輪車用タイヤ」にかかる登録第1308870号意匠(甲第1号証,以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
本件判定請求人はイ号意匠(甲第2号証)にかかるタイヤ(以下「イ号物件」という。)が国内において,被請求人により実施(販売・譲渡)されている事実を発見した。
請求人と被請求人との間には何ら取引関係はなく,現在,本件イ号物件を巡って請求人と被請求人との間に特に交渉もない。しかしながら,イ号意匠の実施は本件登録意匠にかかる意匠権を侵害するものであると請求人は考えるので,税関に対して輸入差止申請を行うことを検討している。輸入差止申請に際して,侵害の事実を疎明するための資料として特許庁による判定書の提出が求められているので,本件判定を求める。
(2)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,第1号証に見られるとおりの構成である。具体的には,自動二輪車用タイヤのトレッド面の溝の形状にかかる意匠であり,甲第4号証に見られるように,主溝1,主溝2,副溝1及び副溝2からなる。
(3)イ号意匠の説明
イ号意匠は,第2号証に見られるとおりの構成である。具体的には,自動二輪車用タイヤのトレッド面の溝の形状にかかる意匠であり,第4号証に見られるように,主溝1,主溝2,副溝1及び副溝2からなる。
(4)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
ア 物品について
本件登録意匠及びイ号意匠は,いずれも自動二輪車用タイヤのトレッド面に関する意匠という点で共通する。
イ 意匠について
本件登録意匠と,イ号意匠は下記の点で共通する。
(ア)いずれも主溝1,主溝2,副溝1及び副溝2からなる一定のパターンが周方向に連続するという点。
(イ)いずれも主溝1及び主溝2により,正面視において右下方向に主溝2が大きく流れている略「人」字状の溝がトレッド面の赤道面に形成されている点。
一方,本件登録意匠とイ号意匠は以下の点で相違する。
(ウ)副溝1及び副溝2について,本件登録意匠においては正面視において水平方向に対してゆるやかな角度で配置されているのに対し,イ号意匠においては本件登録意匠に比べてやや急な角度で配置されている点。
(5)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
まず,意匠の類否判断は比較の対象となる意匠の共通点及び差異点を全体的に観察し,両意匠が需要者に与える美感が共通するかどうかで判断されるべきである。そして,共通点及び差異点の評価は一般的に,見えやすい部分(要部)は相対的に影響が大きく,要部であってもありふれた形態の部分は相対的に影響が小さいとされている。
そこでかかる基準に照らして,本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を検討する。
確かに,上記の差異点(ウ)において述べたとおり,本件登録意匠とイ号意匠との間には副溝1及び2の配置される角度において差異がみられる。
しかしながら,当該差異点は自動二輪車用タイヤの意匠においては見えにくいショルダー部における相違であるので,意匠の美感に与える影響は小さい。
この点,ショルダー部に配置された短溝の形状の相違が意匠の全体の美感に与える影響が小さいことは,下記の意匠が類似関係にある関連意匠として登録されている事実からも明らかである。
1)登録第1308870号(本件登録意匠)と登録第1308566号(甲第5号証)
2)登録第1316167号と登録第1317170号(甲第6号証及び甲第7号証)
したがって,本件登録意匠とイ号意匠が上述の点で相違していても,両意匠が非類似であるとする理由とはならない。
むしろ,本件登録意匠及びイ号意匠の属するこの種の自動二輪車用タイヤにおいては,需要者及び取引者は共通点(ア)及び(イ)に着目すると思料する。
つまり,上記共通点(ア)及び(イ)は見えやすい部分(要部)である上に,タイヤの意匠においてトレッド面の赤道面に施される溝の形状やその配置は意匠の形態を特徴づける極めて大きな要素であり,需要者の注意を強く惹く部分である。
そして,このような赤道面における主溝1及び2から構成されるパターンはありふれた形態でもない。したがって,かかる共通点が意匠の類否に与える影響は大きいものと思料する。
具体的には,上述した共通点(ア)及び(イ)から生じる全体的な印象として,本件登録意匠及びイ号意匠から共に,正面視において右下に流れる略「人」字状の印象が与えられ,両者の印象は共通する。
結局,上記のような共通点により,本件登録意匠とイ号意匠とは,意匠全体の基調が共通するとともに,需要者に与える美感も共通する,互いに類似の意匠であるというべきである。
(6)むすび
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので,請求の趣旨どおりの判定を求める。

3.証拠方法
甲第1号証 意匠登録第1308870号に関する公報の写し
甲第2号証 イ号意匠の写真
甲第3号証 イ号物件の譲渡に関する伝票の写し
甲第4号証 本件登録意匠とイ号意匠とを並べて配置した参考図
甲第5号証 意匠登録第1308566号に関する公報の写し
甲第6号証 意匠登録第1316167号に関する公報の写し
甲第7号証 意匠登録第1317170号に関する公報の写し

第2 判定被請求人の答弁

特許庁より被請求人に対し,平成28年7月29日に判定請求書を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。
よって,本件については,被請求人の反論は利用できない。

第3 当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は,本意匠を意願2006-30212号(意匠登録第1308566号)とする関連意匠の意匠登録出願であって,平成18年(2006年)11月6日に出願(意願2006-30213号)され,平成19年7月27日に登録の設定(意匠登録第1308870号)がなされ,同年8月27日に意匠公報が発行されたものであって,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「自動二輪車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,具体的な形態は,以下のとおりである。(別紙第1参照)
(1)全体は,タイヤ外周面に設けられた断面視略円弧状のトレッド部と,タイヤの左右側面部に設けられたタイヤ内側に向かって傾斜したサイドウォール部を,一体的に形成した構成をもつ環状体であって,正面視において,
(2)トレッド部の赤道の直線よりやや左側部分を起点とする,タイヤの右外側に向かって僅かに湾曲しつつ右上がりに傾斜し,その溝幅が終点に向かって漸次拡がる長い溝(以下「右主溝部」という。)と,赤道の直線よりやや右側部分を起点とする,右主溝部と左右対称形の長い溝(以下「左主溝部」といい,右主溝部と合わせて「左右主溝部」という。)を,左右交互にほぼ等間隔となるように一周に渡って左右一組として全部で13組形成し,左右主溝部の終点側端部を,タイヤ周方向に直線状に切断したような形態とし,
(3)上下の右主溝部の終点を結ぶ仮想上の直線の下から約1/3の付近からタイヤの右外側に向かって右主溝部より大きく湾曲しつつ右上がりに傾斜し,その溝幅が終点に向かって漸次拡がる短い溝部(以下「右副溝部」という。)を,上下の副溝部がほぼ等間隔になるように一周に渡って全部で13個形成し,上下の左主溝部の終点を結ぶ仮想上の直線の下から約1/3の付近に,右副溝部と左右対称形の短い溝(以下「左副溝部」といい,右副溝部と合わせて「左右副溝部」という。)を,上下の副溝部がほぼ等間隔になるように一周に渡って全部で13個形成したものである。

2.イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書と同時に提出された甲第2号証のイ号意匠の写真の写しにより示されたものであって,意匠に係る物品は「自動二輪車用タイヤ」であると認められ,その形態を,イ号意匠の写真の写しにより表されたとおりとしたものであり,具体的な形態は,以下のとおりである。(別紙第2参照)
なお,本件登録意匠の図面における正面,平面等の向きを,イ号意匠にもあてはめることとし,イ号意匠の平面方向からの写真を180°回転させたものを「正面図」とする。
(1)全体は,タイヤ外周面に設けられた断面視略円弧状のトレッド部をもつ環状体であって,正面視において,
(2)トレッド部の赤道の直線よりやや左側部分を起点とする,タイヤの右外側に向かって僅かに湾曲しつつ右上がりに傾斜し,その溝幅が終点に向かって漸次拡がる右主溝部と,赤道の直線よりやや右側部分を起点とする,右主溝部と左右対称形の左主溝部を,左右交互にほぼ等間隔となるように一周に渡って左右一組として全部で10組程形成しているように類推でき,左右主溝部の終点側端部を,タイヤ周方向と直行する方向に直線状に切断したような形態とし,
(3)上下の右主溝部の終点を結ぶ仮想上の直線の下から約1/3の付近からタイヤの右外側に向かって右主溝部とほぼ同じ湾曲で右上がりに傾斜し,その溝幅が終点に向かって漸次拡がる右副溝部を,上下の副溝部がほぼ等間隔になるように一周に渡って全部で10個程形成しているように類推でき,上下の左主溝部の終点を結ぶ仮想上の直線の下から約1/3の付近に,右副溝部と左右対称形の左副溝部を,上下の副溝部がほぼ等間隔になるように一周に渡って全部で10個程形成しているように類推でき,左右副溝部の終点側端部も,タイヤ周方向と直行する方向に直線状に切断したような形態としたものである。

3.本件登録意匠とイ号意匠との対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は,「自動二輪車用タイヤ」であり,イ号意匠の意匠に係る物品も,「自動二輪車用タイヤ」と認められるものであるので,本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,一致する。
(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点として,
(A)全体は,タイヤ外周面に設けられた断面視略円弧状のトレッド部をもつ環状体である点,
(B)トレッド部の赤道の直線よりやや左側部分を起点として,タイヤの右外側に向かって僅かに湾曲しつつ右上がりに傾斜し,その溝幅が漸次拡がる右主溝部と,赤道の直線よりやや右側部分を起点として,右主溝部と左右対称形の左主溝部を,左右交互にほぼ等間隔となるように形成している点,
(C)上下の右主溝部の終点を結ぶ直線の下から約1/3の付近に,タイヤの右外側に向かって右上がりに傾斜し,その溝幅が漸次拡がる右副溝部を,上下の副溝部がほぼ等間隔になるように形成し,上下の左主溝部の終点を結ぶ直線の下から約1/3の付近に,右副溝部と左右対称形の左副溝部を,上下の副溝部がほぼ等間隔になるように形成している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)左右副溝部の態様について,本件登録意匠は,タイヤの外側に向かって左右主溝部より大きく湾曲し,左右主溝部の傾斜より緩傾斜とし,副溝部の終点側端部を略円弧状の形態に形成しているのに対して,イ号意匠は,タイヤの外側に向かって左右主溝部とほぼ同じ僅かな湾曲とし,左右主溝部の傾斜とほぼ同じ傾斜とし,副溝部の終点側端部をタイヤ周方向と直行する方向に直線状に切断したような形態に形成している点,
(イ)左右主溝部の終点側端部の態様について,本件登録意匠は,タイヤ周方向に直線状に切断したような形態に形成しているのに対して,イ号意匠は,タイヤ周方向と直行する方向に直線状に切断したような形態に形成している点,
(ウ)左右主溝部及び左右副溝部の数について,本件登録意匠は,左右主溝部が一周に渡って左右一組として全部で13組,左右副溝部が一周に渡って左右に全部で13個ずつ形成しているのに対して,イ号意匠は,左右主溝部が一周に渡って全部で10組程,左右副溝部が一周に渡って左右に全部で10個程形成しているように類推できる点,
(エ)タイヤの左右側面部の態様について,本件登録意匠は,タイヤのトレッド部とタイヤ内側に向かって傾斜したサイドウォール部を一体的に形成した構成であるのに対して,イ号意匠は,タイヤのサイドウォール部の形態が不明である点,
が認められる。

4.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本件登録意匠の出願前に存在する公知意匠を参酌し,新規な形態や需要者の注意を最も引きやすい部分を考慮した上で,本件登録意匠とイ号意匠が類似するか否かについて,考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様については,車体を傾けて走行する自動二輪車のタイヤの形態として,極普通に見られる態様であるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的である。
しかしながら,共通点(B)の左右主溝部の態様,及び共通点(C)の左右副溝部の態様は,需要者が特に注意して観察するタイヤの走行性能に直結する部分であるから,各溝部の幅や長さ及びそれらの配置態様がほぼ共通している両意匠は,需要者に対して共通した印象を強く与えるものである。
そして,これら共通点(A)ないし(C)が相まって生じる視覚的効果においても,各溝部の大きさ及びその配置態様がほぼ共通する溝部が,断面視略円弧状である曲面からなるトレッド面に沿って形成されたことによって,需要者にさらに共通する視覚的印象が与えられているといえるから,上記の共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。

これに対し,上記の相違点(ア)ないし(エ)は,いずれもタイヤ形状やトレッド部のパターンについての具体的態様における細部に係るものであるから,これらの相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。
すなわち,相違点(ア)左右副溝部の態様について,この副溝部は,二輪車の車体を大きくバンクさせた場合にはじめて接地するトレッド部左右端部の部分に形成されたものであって,通常の走行の際に接地面となるトレッド部の中央部分に形成された左右主溝部に比べ,需要者がそれほど重視する部位でない上に,左右副溝部の傾斜の相違や終点側端部の態様の相違は,トレッド部に形成された各溝部のパターン全体から見れば一部位に局限された微弱なものにすぎず,これらの相違が両意匠の印象を異ならせているとまではいえないものであるから,この相違点(ア)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度のものである。
次に,相違点(イ)左右主溝部の終点側端部の態様については,タイヤ周方向に直線状に切断したような形態に形成しているものは,この物品分野において既に存在しているところであるから(参考意匠:日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成11年2月15日)に掲載された,意匠登録第1025160号の類似第1号(意匠に係る物品,自動二輪車用タイヤ),別紙第3参照),この態様をイ号意匠のみがもつ特徴であると高く評価することはできず,この相違が両意匠の印象を大きく異ならせているとまではいえないので,この相違点(イ)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,相違点(ウ)左右主溝部及び左右副溝部の数について,溝部の数の増減は,ホイールのサイズや用途に応じて様々なバリエーションが展開されるタイヤの分野においては,極普通に行われる変更に過ぎず,ありふれた範囲内の差異にすぎないものであるから,溝のパターンが共通する両意匠にあっては,需要者に別異であるとの印象を与えることはできず,この相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
さらに,相違点(エ)タイヤの左右側面部の態様については,サイドウォール部の形態は,本件登録意匠のようにタイヤ内側に向かって傾斜した態様のものか,その断面視が略円弧状の態様としたものかのいずれかの形態であるので,イ号意匠が本件登録意匠と相違する上記の略円弧状の態様であったとしても,この態様をイ号意匠のみがもつ特徴であるとはいうことはできず,また,タイヤの左右側面部の態様は,トレッド部の態様に比べて,さほど注目される部位でないので,この相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして,これらの相違点(ア)ないし(エ)が相まって生じる視覚的効果を考慮したとしても,これらの相違点は,前記共通点(A)ないし(C)が与える共通の印象を覆して,両意匠の類否判断を左右する程のものとはいえない。

5.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品において一致し,その形態においても,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいのに対して,相違点が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから,意匠全体として見た場合,本件登録意匠とイ号意匠は類似するものと認められる。

第5 むすび

以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2016-10-14 
出願番号 意願2006-30213(D2006-30213) 
審決分類 D 1 2・ 113- YA (G2)
最終処分 成立 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2007-07-27 
登録番号 意匠登録第1308870号(D1308870) 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 
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