• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 F4
管理番号 1322342 
審判番号 不服2016-11145
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-25 
確定日 2016-11-04 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2015- 19749「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成27年(2015年)9月7日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙参照)

第2 審判請求までの経緯について

1.原査定における拒絶の理由
本願意匠に対する原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとしたものであって,具体的には,「この意匠登録出願に係る意匠は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載を総合的に判断しても,下記の理由により一の意匠を特定することができませんので,意匠が具体的ではありません。すなわち,本願意匠に係る物品は「包装用容器」であり,蓋部を取り外して使用するものと認められるところ,願書に添付した図面には蓋部を取り外した状態の図が表されておらず,意匠に係る物品の使用の状態が不明であり,一の意匠を特定することができません(「意匠審査基準」第2部第1章21.1.2(1)マル1。「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」第3部1.1.1も参照)。」としたものである。

2.請求人の意見書の主張について
出願人(請求人)は,原査定における拒絶の理由に対し,平成28年3月11日に意見書を提出し,要旨以下のとおり主張した。

(1)本願意匠の登録性について
ア 意匠の要旨
本願意匠に係る物品(包装用容器)は,蓋が取り付けられた状態で市場に流通するものである。そのため,需要者は,蓋が取り付けられた状態に外観上の美感を感じる結果,購買意欲が惹起されるものである。
需要者が蓋を取り外すことができるのは,物品の購入後であり,そのときに初めて蓋で覆われていた内部形状の形態を認識することができる。そのため,購入時において形態を認識することができない内部形状は,需要者の購買意欲を惹起するものではなく,この内部形状を意匠と認めることはできないものである。
本願意匠の特徴は,蓋が取り付けられた状態での外観にあり,この特徴的な外観が,需要者の購買意欲を惹起するものである。

(2)「意匠審査基準」第2部第1章21.1.2(1)マル1について
拒絶理由通知書で挙げられた「意匠審査基準」第2部第1章21.1.2(1)マル1には,「意匠に係る物品の使用の目的,使用の状態等が不明な場合」に意匠が具体的でないと認められるものと記載されており,この記載は,「意匠に係る物品」が意匠分類に記載されていないものである場合や,記載されているものであっても極めて特異な形態をしていることから物品の使用状態が不明である場合に,意匠が具体的でないものと認定されるものと認められるものである。
しかしながら本願意匠は,拒絶理由通知書で認定されているように,意匠に係る物品を「包装用容器(意匠分類F4)」とするものであり,その使用は,蓋部を取り外して行うものである。そのため本願意匠は,物品,使用状態ともに明確であり,具体的な意匠であると認められるものである。

(3)「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」第3部1.1.1について
拒絶理由通知書で挙げられた「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」第3部1.1.1は,本体と蓋体とからなる意匠について,隠れた部分を具体的に表さなければならない例について記載されており,当該記載で例に挙げられているのは,「万年筆のペン先部分」である。これが例に挙げられている理由は,「万年筆のペン先部分」は,万年筆という物品において意匠的に重要な部分であるからだと考えられるからである。そのため,万年筆を販売する店頭などにおいても,万年筆の蓋を取り外して需要者に試し書きを許容する販売方法をとっているのがほとんどである。すなわち,万年筆という物品においては,需要者がその購入時に,蓋を取り外した状態のペン先部分を外観上で認識することができるようになっている。
一方で,本願意匠に係る物品である包装用容器は,蓋を取り外した状態に意匠的重要性はなく,ましてや,蓋が取り付けられた状態で市場に流通し,需要者は購入時においてその隠れた部分を外観上認識することができないものである。
従って,本願意匠に係る物品である「包装用容器」を,「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」第3部1.1.1の例に当てはめるのは,妥当ではない。
更に,「意匠等登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」の「はじめに」という項には,「本手引きは,願書及び図面の作成方法についての基本的な内容の説明と,典型的な例示を記載したものですので,願書及び図面等の記載内容を義務づけるものではありません」と記載されている。
そのため,本手引きの記載内容に従っていないことは,本願意匠を拒絶する根拠(または証拠)となり得ない。
過去の登録例(意匠公報)を見ても,物品が包装用容器に係る意匠について,蓋を取り外した状態の図面を示さなくても,意匠が具体的であると認められ,登録されている例が数多く散見されている。

(4)むすび
以上申したように,本願意匠は意匠法第3条第1項柱書に掲げる意匠に該当するので,拒絶されるべきではない。

3.審査官の拒絶査定について
上記の意見書の主張に対し,原査定の審査官は,「本願意匠は,出願人も認めるとおり蓋部を取り外して使用するものであるところ,蓋部と容器本体との境界が不明りょうであるため本願意匠のどこからどこまでの部分が蓋として分離するのか明らかではなく,また,蓋部を取り外した際に現れるであろう口部の形状が明らかではありません(例えば単なる開口となっているのか,吐出具のような形状となっているのか不明です)。これらの点については,包装用容器分野における通常の知識に基づいて,出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面等から判断しても,具体的な一の意匠の内容が直接的に導き出されるものとはいえません。そうしてみると,本願意匠に係る物品の使用の状態は依然として不明であり,一の意匠を特定することができません。したがって,意見書の主張を採用することはできず,本願は先の拒絶理由通知書に記載のとおり,拒絶すべきものと判断されます。」として,平成28年6月29日付けで拒絶査定を行っている。

4.審判請求書の主張について
請求人は,平成28年7月25日に手続補正書を提出し,出願当初の添付図面に「蓋を外した状態の参考正面図」及び「蓋を外した状態の参考斜視図」を追加する補正を行うとともに,審判請求を行い,「本願意匠は,同時提出の補正書により,『蓋を外した状態の参考正面図』及び『蓋を外した状態の参考斜視図』を追加し,蓋と容器本体の境界が明瞭となり,また蓋を取り外した状態の口部の形状も明瞭になったと思料される。」と主張して,原査定は取り消す,この出願の意匠はこれを登録すべきものとする,との審決を求めている。

第4 当審の判断

そこで,願書の記載及び添付図面の記載から本願意匠について認定した上で,請求人の主張を踏まえ,本願意匠は意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するか否かについてさらに検討する。

1.本願意匠
本願意匠は,容器本体(以下「容器本体部」という。)の上部に,ボトル注ぎ口(以下「ボトル注ぎ口部」という。)を配し,ボトル注ぎ口部の注ぎ口部分を覆うようにキャップ(以下「キャップ部」という。)を設けた「包装用容器」であって,その形態は,容器本体部は,ほぼ一定の奥行きをもつ正面視略逆U字形状の形態とし,平面視で略円弧状に膨出させた正面側を,略逆U字状に縁が表れるように縁の内側を切り欠き,背面側を略逆U字状に縁が表れるものの縁の内側部分全体を平面状に形成したものであり,ボトル注ぎ口部は,略円筒形状の上面側にくちばし状の注ぎ口部を立設させ,その略円筒形状部分の下側約1/6の高さまでを僅かに拡張して大径部としたものであり,キャップ部は,略有蓋円筒形状の下側に鍔部を設けたものであり,その鍔部は,高さを略有蓋円筒形状の約1/4とし,その径をボトル注ぎ口部の円筒形状部分と同径としたものであって,ボトル注ぎ口部と螺合して取り付けたものであり,容器本体部の上方部分は,ボトル注ぎ口部の大径部になだらかにつながるように傾斜面で形成し,容器本体部とボトル注ぎ口部との間及びボトル注ぎ口部とキャップ部との間には隙間があるものである。

2.本願意匠が工業上利用することができる意匠に該当するか否か
本願意匠は,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,出願時には,包装用容器の外形の形態のみを添付図面に記載して提出したものであって,原審において,本願の意匠に係る物品は「包装用容器」であり,蓋部を取り外して使用されるものであるが,願書に添付した図面には蓋部を取り外した状態の図が表されておらず,意匠に係る物品の使用の状態が不明であり,一の意匠を特定することができず,意匠が具体的でないとして拒絶の査定がなされたものである。
しかしながら,審判請求日と同日に提出した手続補正書の「蓋を外した状態の参考正面図」及び「蓋を外した状態の参考斜視図」によって,蓋部と容器本体部との境界が明確となり,また,蓋部を取り外した際に現れる容器本体部の上端部にある注ぎ口の形状も明確となることで,その使用方法等が明らかになったものである。
したがって,包装用容器分野における通常の知識に基づいて判断した場合,本願意匠は,一の意匠を特定することができるものであるので,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するものである。
なお,平成28年7月25日に提出された手続補正書による「蓋を外した状態の参考正面図」及び「蓋を外した状態の参考斜視図」を追加する補正は,出願当初の願書の記載及び添付図面の要旨を変更するものではない。

第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用できる意匠に該当するものであるので,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。


別掲
審決日 2016-10-18 
出願番号 意願2015-19749(D2015-19749) 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 奈良田 新一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2016-12-09 
登録番号 意匠登録第1567028号(D1567028) 
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ