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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1322349 
審判番号 不服2016-5133
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2016-11-08 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2015- 6937「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)3月30日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「赤色に着色した部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願の意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(本願の出願前発行の刊行物に掲載された意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願の出願前に特許庁発行の意匠公報に掲載された意匠登録第1128949号(意匠に係る物品,包装用瓶)の意匠(以下,「引用意匠」という。)における,本願部分に相当する部分(以下,「引用部分」という。)であり,その形態は,同公報に掲載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)。
また,原査定における拒絶理由の通知書において,本願部分の隅丸長方形状の凹部内に形成された横長溝部のように両端部を細くした態様の横長溝部は,本願出願前から見られるものであるとして,参考意匠(意匠登録第1226573号の包装用容器の意匠:別紙第3参照)が付記されたものである。

第3 当審の判断
以下,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,引用意匠に類似するか否かについて判断する。
なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願が物品の部分について意匠登録を受けようとするものであるから,本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲を対比し,それらを踏まえて,両部分の形態を対比する。

1.両意匠の共通点及び相違点の認定
(1)両意匠の共通点の認定
意匠に係る物品は,本願意匠は「包装用容器」であり,引用意匠は「包装用瓶」であるが,両意匠共に,容器に係るものであるから,共通する。
両部分の位置,大きさ及び範囲については,両部分共に,縦長の略有底四角筒形状の口の細い容器において,その周側面の正面やや下方寄りの左右中央部分に形成した縦長の略隅丸長方形状の凹みの底部に位置し,縦幅を容器全体の高さの約5分の2,横幅を容器正面の最大幅の約5分の2とする大きさの略隅丸縦長長方形状の底部全領域を範囲とするものであるから,共通する。
両部分の形態については,主に,凹部内の縦横比を約7対2とする隅丸縦長長方形状の平坦面において,その全縦幅にわたり複数の同形状の横長溝部を縦一列に均等に設けた点が,共通する。

(2)両意匠の相違点の認定
両部分の形態について,主に,以下の(ア)及び(イ)の点が相違する。
(ア)横長溝部の形態について,本願部分のそれは,正面視形状を,最大縦幅と横幅の構成比が約1対7からなる,上辺を上方に緩やかな凸弧状,下辺を下方に緩やかな凸弧状とした略細長楕円形状とし,底部を,左右両端の深さが中央部よりも浅い平面視凹弧状としたものであるのに対して,引用部分のそれは,正面視形状を,縦幅と横幅の構成比が約1対5からなる,左右両端の角を丸くした略細長長方形状とし,底部を,左右にわたり一定の深さからなる平坦面としたものである。

(イ)横長溝部の個数について,本願部分は,9個配し,横長溝部の縦の間隔が狭いものであるのに対して,引用部分は,6個配し,横長溝部の縦の間隔は本願部分に比べ広いものである。

2.両意匠の共通点及び相違点の評価
以下,共通点及び相違点が存在する両部分の形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。
(1)共通点についての評価
両部分の共通点である,隅丸縦長長方形状の平坦面の全縦幅にわたり複数の同形状の横長溝部を縦一列に均等に配した態様は,本願意匠の属する物品分野において,よく見られる態様であり,未だ概括した態様の共通点にすぎないものであるといえるから,当該共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえない。
(2)相違点についての評価
相違点(ア)は,横長溝部の形態についての相違であるが,その正面視形状や深さの態様が大きく相違し,それが複数形成された態様も,本願部分が軽やかな印象を与えるものであるのに対して,引用部分は重厚な印象を与えるものであって,意匠全体に与える印象が大きく異なるものであり,また,当該部分は,需要者の注意を引く部分であるため,相違点(ア)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
なお,参考意匠の横長溝部の態様は,本願部分と同様に正面視略細長楕円形状とし,左右両端部の深さが中央部よりも浅いものであるが,深さの具体的な態様については,平面視において緩やかに凸弧状に膨らんだ正面に対して側面から見ると,膨らんだ面を溝の底において平坦になるように削り取って形成したものであるから,斜視図に見られる本願部分のように平坦面に対して平面視凹弧状にえぐり取るように形成したものとは相違し,また,横長溝部の位置や正面に占める大きさ等も本願部分とは相違している。したがって,本願部分の横長溝部の形態は,以前から見受けられる態様とまではいうことができず,両部分の類否判断において,相違点(ア)を過小評価することはできない。

相違点(イ)は,横長溝部の個数及び間隔の相違であるが,当該相違は,見た目の印象に大きな相違があるとはいえないものの,相違点(ア)と相俟って,この種の容器が結露した際の滑りにくさに影響を与えるものであり,需要者の注意を引く相違といえるから,相違点(イ)が両部分の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。

そうすると,両部分の相違点は,特に相違点(ア)が両意匠に視覚的に異なる印象を与えるものであり,その余の相違点(イ)と相俟って,両部分の類否判断を決定づけるものといえる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲についても共通するものであるが,両部分の形態において,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,両部分について異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

第4 むすび
以上のとおりであり,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-10-25 
出願番号 意願2015-6937(D2015-6937) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 正田 毅
江塚 尚弘
登録日 2016-12-16 
登録番号 意匠登録第1567561号(D1567561) 
代理人 佐藤 泰和 
代理人 朝倉 悟 
代理人 中村 行孝 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 永井 浩之 

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