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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L4
管理番号 1322357 
審判番号 不服2016-12362
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-16 
確定日 2016-11-22 
意匠に係る物品 天井吊下型防振具 
事件の表示 意願2015-18534「天井吊下型防振具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2015年)8月24日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「天井吊下型防振具」とし,形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
そして,本願意匠の形態について,主に以下の点を認めることができる。

(A)長方形状の板の長手方向の両側を直角に折り曲げて,上方水平板部,鉛直板部及び下方水平板部で構成される略コ字状となっている点。
(B)上方水平板部には,長手方向に沿って略U字状のスリットを設け,二股状の端部を下方に折り曲げている点。
(C)下方水平板部の中央に円形貫通穴を設けている点。
(D)スリットの間隔に対して,貫通穴の直径は略1.4倍大きい点。
(E)上方水平板部と下方水平板部の水平方向長さが一致し,その水平方向長さと鉛直板部の高さの比率が,略1:2である点。
(F)上方及び下方水平板部の水平方向長さと幅の比率が,略2:3である点。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は,天井吊下型防振具にかかるものですが,この種吊り金具において,上吊りボルトと下吊りボルトの間に等幅の平板を略縦長コ字状に折り曲げ,その水平板部に取付穴を設けた吊り金具が,【公知意匠1】に見られるように,本願の出願前に公然と知られているところです。
また,上吊りボルトを取り付けるため,水平板部の先端側中央部をボルト挿通用に略U字状に切欠き,その両側を下方に折り曲げたものが,【公知意匠2】に見られるように,本願の出願前に公然と知られているところです。
そうすると,本願の意匠は,本願の出願前に公然と知られた【公知意匠1】の吊り金具をほとんどそのまま表し,その上吊りボルトを取り付けるための水平板部を単に【公知意匠2】の取付部に置き換えて表した程度にすぎませんので,当業者であれば容易に創作をすることができた意匠と認められます。」

また,原査定における拒絶の理由で引用された意匠は,以下のとおりである。
【公知意匠1】(別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載 特開2001-152559【図5】(a)及び【図6】(a)に表された吊り金具(64)の意匠

【公知意匠2】(別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載 特開2007-070978【図1】に表された補強金具の意匠

第3 当審の判断
公知意匠1及び公知意匠2は,以下のとおりのものである。なお,各公知意匠の向きを,本願意匠の図面の向きに合わせることとする

1.公知意匠1
公知意匠1は,意匠に係る物品を「吊り金具」とし,公知意匠1に係る公報の記載から見て,吊りボルトに天井下地等を支持する用途及び機能を有するものである。
また,公知意匠1の形態について,主に以下の点を認めることができる。

(1a)長方形状の板の長手方向の両側を直角に折り曲げて,上方水平板部,鉛直板部及び下方水平板部で構成される略コ字状となっている点。
(1b)上方及び下方水平板部の中央に円形貫通穴を設けた点。
(1c)上方水平板部と下方水平板部の水平方向長さが一致し,その水平方向長さと鉛直板部の高さの比率が,略1:4である点。
(1d)上方及び下方水平板部の水平方向長さと幅の比率が,略1:1である点。

2.公知意匠2
公知意匠2は,意匠に係る物品を「補強金具」とし,公知意匠2に係る公報の記載から見て,吊りボルトと天井構造枠との繋がり強度を高める用途及び機能を有するものである。
また,公知意匠2の形態について,主に以下の点を認めることができる。

(2a)正面視略H字状の鉛直板部の上端中央から,背面上方に斜めに延びる傾斜板部を設け,傾斜板部上端から正面側に水平に延びる水平板部を設けている点。
(2b)水平板部には,長手方向に沿って略U字状のスリットを設け,二股状の端部を下方に折り曲げている点。
(2c)鉛直板部の左右端部及び下方端部に,正面側に延びる短いフランジを設けている点。

3.創作容易性の判断
本願意匠の創作容易性,すなわち本願意匠が容易に創作することができたか否かについて検討し,判断する。
原査定における拒絶の理由で説示するとおり,「吊り金具において,上吊りボルトと下吊りボルトの間に等幅の平板を略縦長コ字状に折り曲げ,その水平板部に取付穴を設けた」形態,すなわち本願意匠における(A)点及び(C)点に示す形態は,公知意匠1の(1a)点及び(1b)点に見られるように,本願の出願前に公然と知られている。
また,「上吊りボルトを取り付けるため,水平板部の先端側中央部をボルト挿通用に略U字状に切欠き,その両側を下方に折り曲げた」形態,すなわち本願意匠における(B)点に示す形態は,公知意匠2の(2b)点に見られるように,本願の出願前に公然と知られている。
しかし,本願意匠における(D)点ないし(F)点に示す形態,すなわちスリットの間隔に対して,貫通穴の直径が略1.4倍大きい形態,上方及び下方水平板部の水平方向長さと鉛直板部の高さの比率が,略1:2である形態,並びに上方及び下方水平板部の水平方向長さと幅の比率が,略2:3である形態は,公知意匠1及び公知意匠2には示されていないから,本願意匠は,本願の出願前に公然と知られた公知意匠1の吊り金具をほとんどそのまま表し,公知意匠1の上方水平板部を単に公知意匠2の水平板部に置き換えて表した程度のものとはいえない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-11-07 
出願番号 意願2015-18534(D2015-18534) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-12-22 
登録番号 意匠登録第1568039号(D1568039) 
代理人 五十嵐 和壽 

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