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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B2 |
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管理番号 | 1323553 |
審判番号 | 不服2016-12075 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-09 |
確定日 | 2016-12-19 |
意匠に係る物品 | 子守帯 |
事件の表示 | 意願2015- 3288「子守帯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への2014年8月18日の出願に基づくパリ条約による優先権等の主張を伴う,平成27年(2015年)2月18日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「子守帯」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁特許情報課が平成18年(2006年)1月24日に受け入れた2006年1月24日に欧州共同体商標意匠庁が発行した欧州共同体意匠公報(登録番号000411525-0001号)に掲載された意匠(以下,「引用意匠」という。)(特許庁意匠課公知資料番号HH18200476号)に表された「子守帯」の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも布にバックルや紐を付け,本物品を肩にかけ,身体にたすき掛けして,下部に乳児が入るよう寝床部(以下,「寝床部」という。)を広げて前方側で乳児を抱くための「子守帯」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 なお,両意匠を対比するため,引用意匠の図面の向きを本願意匠の図面の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。 (1)共通点 (A)全体を,バックルで繋いだ状態において帯状の環状とし,肉厚のある肩当て部(以下,「肩当て部」という。)と寝床部を設け,調節紐と安全紐を有している点, (B)寝床部の上方の端部に横長長方形状の接続部(以下,「接続部」という。)を配し,接続部の上方に肉厚で縦長直方体状の肩当て部を設け,肩当て部の反対側の端部に横長長方形状の肉厚部(以下,「肉厚部」という。)と,肉厚部を覆うように大きなバックル部(以下,「大バックル部」という。)を設け,大バックル部を介して肩当て部と調節紐を接続して帯状の環状とし,寝床部に安全紐を設けている点, (C)寝床部は,広げた状態をハンモック状に中央部を舟形にしたもので,寝床部の上方の端部は接続部の幅と同様の幅とし,反対側の端部を接続部の幅よりやや幅広とし,左右に肉厚の縁部分を設けている点 (D)調節紐は,全体が細帯状の紐で寝床部の下方寄り左右から延伸し,大バックル部を介して肉厚部と繋げ,全体の長さを調節可能なものとしている点, (E)安全紐は,細帯状の紐である点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)肩当て部の態様について,本願意匠は,肩に掛けた場合に肩に掛かる力を分散できるように,肩当て部が長めで横幅の1/2ずつ2本に分割されているのに対して,引用意匠は,肩当て部が本願意匠よりやや短めで,2本には分割できない点, (イ)調節紐の形状について,本願意匠は,細帯状の同幅の紐部がループ状に繋がっている態様であるのに対して,引用意匠は,2本の紐それぞれを大バックル部に繋げており,端部が幅広で,大バックル部の先端側は端部が途切れている点, (ウ)安全紐とバックル部の態様について,本願意匠は,安全紐が寝床部の下方寄り中央付近から延伸し,肉厚部と大バックル部の間の小さなバックル部(以下,「小バックル部」という。)と繋がっているのに対して,引用意匠は,安全紐と小バックル部の態様が明確ではない点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)については,この種の子守帯の機能を担う全体の基本構成ではあるが,全体を,バックルで繋いだ状態において帯状の環状とし,肉厚のある肩当て部と寝床部を設け,調節紐と安全紐を有している態様は,この種の子守帯においては両意匠以外にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,共通点(B)についても,寝床部の上方の端部に横長長方形状の接続部を配し,接続部の上方に肉厚で縦長直方体状の肩当て部を設け,肩当て部の反対側の端部に横長長方形状の肉厚部と,肉厚部を覆うように大バックル部を設け,大バックル部を介して肩当て部と調節紐を接続して帯状の環状とし,寝床部に安全紐を設けている点についても,両意匠の各部位には差異点が見受けられ,全体の基本構成や大バックル部や調節紐部及び安全紐部を有する態様が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(C)についても,寝床部が広げた状態をハンモック状に中央部を舟形にしたもので,寝床部の上方の端部は接続部の幅と同様の幅とし,反対側の端部を接続部の幅よりやや幅広とし,左右に肉厚の縁部分を設けている態様が共通しているが,寝床部をハンモック状に中央部を舟形に広げて使用できるようにした子守帯は他にも普通に見られ,それが両意匠のみの格別の態様とはいえず,また,接続部側の反対側をやや幅広とすることも,ありふれた態様といえるもので,それだけで両意匠全体が共通する印象までには至らないものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 また,共通点(D)及び共通点(E)についても,調節紐の全体が細帯状の紐で,寝床部の下方寄り左右から延伸し大バックル部を介して肉厚部と繋げ,全体の長さを調節可能なものとしている点と,安全紐が細帯状の紐である点が共通しているが,調節紐が大バックル部を介して肉厚部と繋がっている態様が共通するとしても,部分的で細部に係るものといえ,その点によってのみでは,両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,それが両意匠のみの格別の態様とはいえず,また,安全紐は,バックルが外れた際に乳児が脱落することを防ぐためのもので付加的に設けられているもので,安全紐の態様自体に特徴があるものとはいえず,意匠全体から見た場合には,目立つ部分ともいえず,両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,これらの差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の肩当て部の態様について,子守帯が肩からずれるのを防ぐために肩当て部がどのような態様であるかについては,需要者の関心が強いこの種の物品分野において,肩当て部が長めで横幅の1/2ずつ2本に分割され,肩に掛けた場合に肩や首に掛かる負担を分散でき,ずれにくい態様である本願意匠の態様は,肩当て部がやや短めで,2本には分割できない態様である引用意匠とは,明確に差異が認められ,目立つ部分における差異であって,両意匠の使用時の態様における印象が異なり,両意匠全体の構成に影響を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の調節紐の形状については,調節紐は,需要者が長さを調節する場合に注意を惹く部位であるため,細帯状の同幅の紐部がループ状に繋がって調節しやすい態様である本願意匠と,2本の紐それぞれが大バックル部に繋がっており,端部が幅広で,大バックル部の先端側は端部が途切れ,使用時に調節しにくい引用意匠とは,需要者に与える印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)の安全紐とバックル部の態様について,安全紐自体は細帯状の紐部であって,それ自体が目立つものとはいえないが,乳児の脱落防止のため設けられたものであるから,需要者は,その態様に一定の関心を払うものといえ,安全紐部が寝床部の下方寄り中央付近から延伸し,肉厚部と大バックル部の間の小バックル部と繋がっている本願意匠とそれらの態様が明確に表されていない引用意匠とは,需要者に与える印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。 差異点(ア)ないし(ウ)の態様とその他の差異点とが相俟って,それぞれの差異が,意匠全体として需要者に与える印象を異ならせるもので,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-12-06 |
出願番号 | 意願2015-3288(D2015-3288) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 康平、並木 文子 |
特許庁審判長 |
山田 繁和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2017-01-20 |
登録番号 | 意匠登録第1569875号(D1569875) |
代理人 | 野間 悠 |
代理人 | 山口 和弘 |
代理人 | 池田 成人 |
代理人 | 野田 雅一 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 酒巻 順一郎 |