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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 E2 |
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管理番号 | 1323555 |
審判番号 | 不服2016-6551 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-02 |
確定日 | 2016-12-20 |
意匠に係る物品 | パチンコゲーム機の前面枠 |
事件の表示 | 意願2015-10936「パチンコゲーム機の前面枠」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)5月20日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「パチンコゲーム機の前面枠」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で図示した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であり,当該部分は,パチンコゲーム機で実行される演出の進行や切り換えを行うために遊技者が回転操作可能な操作ハンドルに係る。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 当審における拒絶の理由及び引用意匠 当審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものである。その理由は,おおむね,パチンコゲーム機の前面枠の縦中心線上の遊戯盤面より下方の位置にジョイスティック型操作部を設けることは,引用意匠1に示すように公然知られた形態であり,ゲーム機の操作に用いられる,ステアリングハンドル型操作部として,略円環状であって,外周線と内周線が丸みを帯びている形態は,引用意匠2に示すように公然知られた形態であり,ゲーム機の画面の表示を操作する操作部として,ジョイスティック型のもの,ステアリングハンドル型のもの,十字方向キー型のものが存在することは,広く知られているところ,パチンコゲーム機の遊戯盤面内の画面の表示を,そのような操作部で操作することは,引用意匠1及び引用意匠3に示すように,ありふれた手法であるから,本願実線部分は,引用意匠1に示す公然知られたところの,パチンコゲーム機の前面枠の縦中心線上の遊戯盤面より下方の位置に設けたジョイスティック型操作部を,上記のありふれた手法により,引用意匠2に示す公然知られた形態,すなわち略円環状であって,外周線と内周線が丸みを帯びているステアリングハンドル型操作部に置き換えて構成したにすぎないので,本願意匠は,当業者が容易に創作することができたものと認められる,というものである。 また,拒絶の理由で示した引用意匠は,以下のとおりである。 引用意匠1(別紙第2参照 破線部を含む) 日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成24年(2012年)5月21日)に記載された意匠登録第1360898号(意匠に係る物品,パチンコゲーム機用枠体)の意匠 引用意匠2(別紙第3参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成19年(2007年)11月6日に受け入れた,内国雑誌「アミューズメント産業」の11号36巻の58ページに所載されたゲーム機(製品名:チェイスH.Q.2)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号HA19014149) 引用意匠3(別紙第4参照) 日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成22年(2010年)2月8日)に記載された意匠登録第1379516号(意匠に係る物品,パチンコゲーム機の枠体)の意匠 第3 当審の判断 当審の拒絶の理由に対して,請求人が平成28年10月5日に提出した意見書の主張を踏まえて,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1.本願実線部分 本願実線部分は,パチンコゲーム機で実行される演出の進行や切り換えを行う用途で,回転操作が可能な機能を有しており,パチンコゲーム機の前面枠の縦中心線上であって,遊戯球を貯留する上皿の前面から利用者に向かうように斜め上方に突出した位置にあり,パチンコゲーム機の前面枠の横幅の略1/3にわたる大きさ及び範囲を占めている。また,本願実線部分の形態は,略円環状であって,外周線と内周線は丸みを帯びている。 2.引用意匠 (1)引用意匠1 引用意匠1は,意匠に係る物品を「パチンコゲーム機用枠体」とし,本願実線部分に相当するジョイスティック部分の用途及び機能は,パチンコゲーム機で実行される演出の進行や切り換えを行う用途で,傾動操作が可能な機能を有しており,ジョイスティック部分は,パチンコゲーム機用枠体の縦中心線上であって,遊戯球を貯留する上皿の下方の部分に突設されて,上皿の一部を切り欠いた略弧状面部に収まる位置にあり,パチンコゲーム機の前面枠の横幅の略1/15にわたる大きさ及び範囲を占めている。 (2)引用意匠2 引用意匠2は,意匠に係る物品を「ゲーム機」とし,本願実線部分に相当するステアリングハンドル部分の用途及び機能は,ゲーム機の画面の表示を操作する用途で,回転操作可能な機能を有しており,ステアリングハンドル部分は,ゲーム機の縦中心線上であって,ゲーム機の略半分の高さから利用者に向かうように斜め上方に突出した位置にあり,ゲーム機の横幅の略1/2にわたる大きさ及び範囲を占めている。また,ステアリングハンドル部分の形態は,略円環状であって,外周線と内周線は丸みを帯びている。 (3)引用意匠3 引用意匠3は,意匠に係る物品を「パチンコゲーム機の枠体」とし,本願実線部分に相当する上下左右方向キー部分の用途及び機能は,パチンコゲーム機の遊戯盤面内の画面の表示を操作する用途で,上下左右方向の押圧操作が可能な機能を有しており,上下左右方向キー部分は,パチンコゲーム機の前面枠の縦中心線よりも右であって,遊戯球を貯留する上皿の前側上面の位置にあり,ゲーム機の横幅の略1/13にわたる大きさ及び範囲を占めている。 3.本願意匠の創作容易性について 上記1.に示すとおり,本願実線部分は,パチンコゲーム機で実行される演出の進行や切り換えを行う用途で,回転操作が可能な機能を有しており,パチンコゲーム機の前面枠の縦中心線上であって,遊戯球を貯留する上皿の前面から利用者に向かうように斜め上方に突出した位置に設けられているところ,引用意匠1ないし引用意匠3のいずれにも,パチンコゲーム機の演出の進行や切り換えを行う用途で,何らかの操作が可能な部分を,パチンコゲーム機の上皿から利用者に向かうように突出した位置に設ける点が示されていない。 むしろ,引用意匠1及び引用意匠3を見れば,パチンコゲーム機の演出の進行や切り換えを行う操作部分を設ける場合には,操作部分が利用者に向けて突出しないように,ゲーム機本体の内側寄りに設けることが一般的であるといえる。そうすると,パチンコゲーム機の操作部分を上皿から利用者に向かうように突出した位置に設けた点は,本願意匠に特有のものであって,引用意匠1及び引用意匠3からは導き出すことはできない。 また,引用意匠2に示すような,車の運転を仮想的に楽しむゲーム機に,車の操作を行うステアリングハンドルを設けることが,ありふれた手法であるとしても,パチンコゲームは,車の運転を仮想的に楽しむゲームではないから,パチンコゲーム機で実行される演出の進行や切り換えを行う用途で,パチンコゲーム機にステアリングハンドルを設けることがありふれているとまではいうことができない。 したがって,本願意匠は,引用意匠1ないし引用意匠3に基づいて,当業者が容易に創作することができたものとはいえない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,当審で通知した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであり,その拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-12-06 |
出願番号 | 意願2015-10936(D2015-10936) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(E2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 渡邉 久美 |
登録日 | 2017-01-06 |
登録番号 | 意匠登録第1568755号(D1568755) |
代理人 | 石井 豪 |