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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H6
管理番号 1323556 
審判番号 不服2016-13682
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2016-12-22 
意匠に係る物品 電子計算機 
事件の表示 意願2015- 26829「電子計算機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2015年)12月1日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「電子計算機」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠に係る物品の説明】には「本物品は,キーボード,マウス,ディスプレイ等が接続され通信回線に接続してデータの送受信をするために用いられるデスクトップ型の電子計算機である。各部の名称を示すA-A部分拡大参考図に示されているように,細かな略正方形状の多孔質フィルターが縦横にそれぞれ3つ並ぶようにフィルター指示部で区分けされ,これら9つの多孔質フィルターをひとまとまりとした略正方形状が規則的に配列され吸気孔として形成されている。」と記載されており,【意匠の説明】には「各部の名称を示す参考図中,平行斜線を施した部分は透明であり裏面より印刷を施している。」と記載されている(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。
特許庁意匠課が平成18年(2006年)1月13日に受け入れた
株式会社東芝が発行した内国カタログ
「産業用パソコン FA3100S model 9000」
第2頁所載
産業用電子計算機の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)
(特許庁意匠課公知資料番号第HC17063502号)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「電子計算機」である。これに対して,引用意匠の意匠に係る物品は「産業用電子計算機」である。
なお,引用意匠が掲載されている上記カタログによれば,引用意匠である「FA3100S model 9000」が「産業用パソコン」として説明されている。

2 本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。すなわち,上記カタログ第2頁の写真版に現された引用意匠の形態(別紙第2参照)は,正面右斜め上方から見た引用意匠の形態であると認定する。
(1)共通点
両意匠の形態には,以下の共通点が認められる。
(A)全体が,略扁平直方体状であって,前面にやや厚みのある蓋部が設けられており,その正面に多数の吸気孔が形成されたものである。
(B)蓋部の構成態様について
正面から見て,上辺に沿って左端から右端にわたって横長帯状部が配されており,その縦幅は正面の縦幅の約1/5を占めており,横長帯状部内には小円形のロックキーが1つ設けられている。また,吸気孔は全て同形同大の略小正方形状であって,横長帯状部下方のパネル部内に上下左右ほぼ等間隔に並んでおり,縦方向の段数が5つないし6つであり,横方向の列数が20前後である。
(2)差異点
一方,両意匠の形態には,以下の差異点が認められる。
(a)蓋部上部の立体形状について
本願意匠の横長帯状部は前方にやや突出しており,その突出部を含む蓋部の上面が浅く凹んで平面視横長の手掛け部が形成されている。そして,突出した横長帯状部の左右角部が丸面状に形成されている。これに対して,引用意匠の横長帯状部は突出しておらず,下方のパネル部と面一致状に現されており,横長帯状部が蓋部の上部に嵌め込まれているように現されている。
(b)吸気孔の配列と余地部について
本願意匠の吸気孔は6段22列に並んでおり,パネル部の上辺及び左辺寄りの余地部が下辺及び右辺寄りの余地部に比べて広く形成されているので,吸気孔の配置は上下又は左右に非対称となっている。これに対して,引用意匠の吸気孔は,最下段の左隅4列を除いて5段18列に並んでおり,左右の余地部が等幅に形成されて左右対称に配置されており,上辺寄りの余地部は殆どなく,下辺寄りの余地部が広く形成されている。
(c)小パネル部の有無について
引用意匠には正面左隅に横長の小パネル部が設けられているが,本願意匠にはそのような小パネル部は無い。
(d)透明表示部の有無に
本願意匠には上辺寄りの余地部の右端寄りに横長矩形状の透明表示部が有るが,引用意匠にはそのような表示部は無い。
(e)LEDインジケータの位置及び個数について
本願意匠のLEDインジケータは,上記透明表示部の左右に8個,左辺寄りの余地部内に6個の合計14個配されているが,引用意匠のインジケータは,横長帯状部の右半部に3個配されている。
(f)面分割線の有無とロックキーの位置の差異
本願意匠の横長帯状部下方のパネル部には左右を約2:3に区画するような垂直の面分割線が表されており,その左右の面が面一致状に表されているが,引用意匠にはそのような面分割線は無い。また,本願意匠のロックキーは横長帯状部の右端寄りに配されているが,引用意匠のロックキーは,横長帯状部の中央に配されている。
(g)吸気孔内の形状について
本願意匠の吸気孔内は格子状に区画されており,9つの小矩形部が表されているが,引用意匠吸気孔内は格子状に区画されておらず,小円形部が千鳥状に現れている。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,本願意匠の意匠に係る物品は「電子計算機」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「産業用電子計算機」であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)及び(B)に関して,全体が略扁平直方体状であって前面にやや厚みのある蓋部が設けられ,正面から見て上辺に沿って左端寄りから右端寄りにかけてロックキーを有する横長帯状部が配されて,略小正方形状である複数の吸気孔が横長帯状部下方のパネル部内に上下左右ほぼ等間隔に並んでいる意匠は,本願の出願前に公然知られている(例えば,意匠登録第1257228号。別紙第3参照。)ことから,看者が共通点(A)及び(B)に特に注目するということはできないので,共通点(A)及び(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。

3 両意匠の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a)で指摘した蓋部上部が前方にやや突出している本願意匠の形状は,蓋部上部が突出しておらず横長帯状部が蓋部の上部に嵌め込まれている引用意匠の形状に比べて,特異なものとして看者が一見して気付く差異であって,蓋部上面の手掛け部の存在とあいまって,看者に独特の美感を与えているというべきであるから,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(b)で指摘した,吸気孔の配置が左右非対称で(本願意匠)あるか左右対称(引用意匠)であるかの差異,及び上辺寄りの余地部が広いか(本願意匠)下辺寄りの余地部が広いか(引用意匠)の差異は,差異点(c)の小パネル部の有無の差異とあいまって,看者が抱く視覚的印象に変化を与えているというべきであるから,差異点(b)及び差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
そして,差異点(e)で指摘した透明表示部の有無,及びLEDインジケータの位置及び個数についての差異は,本願意匠の透明表示部やLEDインジケータがパネル部の上辺及び左辺寄りの余地部に配されていることから,上記(b)の差異とあいまって看者が抱く視覚的印象に変化を与えているというべきであるから,差異点(e)も両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
他方,差異点(f)で指摘した本願意匠の面分割線については,面分割線の左右表面には段差が形成されておらず,面分割線自体もありふれた垂直線であるので比較的目立たないので,面分割線は看者が特に着目するほどのものではない。また,ロックキーは,両意匠共に小円形でありふれた形状のものであり,看者がロックキーの位置に特段注意を払うとはいい難く,差異点(g)で指摘した吸気孔内の形状の差異についても,1つ1つの吸気孔自体が小さいものであるから,その内部の区画の態様や,内部要素の形状や並び方の差異が両意匠を全体として見たときに別異の美感を与えるほどの差異であるということはできない。したがって,差異点(f)及び差異点(g)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 総合判断
以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ず,形態の差異点が共通点を圧して,両意匠を全体として別異のものと印象付けるということができる。

5 小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通するが,両意匠の形態については,差異点が共通点を圧して両意匠を全体として別異のものと印象付けるので,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-12 
出願番号 意願2015-26829(D2015-26829) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H6)
最終処分 成立 
前審関与審査官 木村 智加石川 愛恵 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
渡邉 久美
登録日 2017-01-13 
登録番号 意匠登録第1569289号(D1569289) 
代理人 原 拓実 
代理人 美甘 徹也 
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