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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1323557 
審判番号 不服2016-13287
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-06 
確定日 2017-01-10 
意匠に係る物品 注射器用ガスケット 
事件の表示 意願2015- 21074「注射器用ガスケット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成27年(2015年)9月25日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「注射器用ガスケット」であり,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成17年(2005年)4月4日)に記載された意匠登録第1235031号(意匠に係る物品,注射器)に表された注射器用ガスケットの意匠であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 請求人の主な主張の要点

これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

(1)引用意匠と本願意匠の基本的構成態様
引用意匠と本願意匠とに共通する基本的構成態様は,以下の通りである。
a)底面側にネジ山用の凹部を備え,平面側を略短円錐状とする,全体として略短円柱状とされ,
b)当該略短円柱の周側面の上端,略中央,及び,下方に,緩やかに隆起するフランジ状凸部が各1列形成されている。

しかし,上記基本的構成態様は,この種物品の分野においては,引用意匠の出願前から既に公知,且つ,ありふれたものである。
また,上記基本的構成態様a)のうち,「底面側にネジ山用の凹部を備え」という構成は有しないものの,その余の構成態様は,引用意匠の出願前から既に公知となっている。
さらに,上記基本的構成態様a)及びb)は,引用意匠の出願後から本願意匠登録出願前においても公知であることから,この種物品の意匠の分野において,上記基本的構成態様は既にありふれたものであることがより一層明らかであると云え,上記基本的構成態様は,単独で,需要者に新たな美感を提供するものではない。
よって,本件類否判断においては,両意匠に共通する基本的構成態様が意匠全体の美感に与える影響は軽視され,両意匠において相違する具体的構成態様にこそ需要者の注意を惹く美感を創出する部分が存在し,意匠全体の美感に大きな影響を与えるものであると思料し,以下の通り比較する。

(2)本願意匠と引用意匠の具体的構成態様における比較
1)本願意匠の具体的構成態様
ア)天面は,正面視において,その下端に僅かな幅で形成された小さな角度の斜面部と,その斜面より角度の大きな斜面で形成された略短円錐状部とからなるものである。
イ)上端のフランジ状凸部は,正面視において,天面の外縁から下方に向けて裾広がりで平坦に形成された斜面と,その下方に形成された略垂直面と,さらにその下方の緩いカーブで形成された斜面とからなる。
ウ)上端フランジ状凸部は,正面視において,上方斜面と略垂直面とがそれぞれ下方斜面の約3倍程度の縦幅に形成されており,上端フランジ状凸部は,略中央及び下方のフランジ状凸部よりも,その縦幅が2倍以上に長く形成されている。

2)引用意匠の具体的構成態様
ア’)天面は,正面視において,その下端から頂点までが一直線状を呈する斜面により形成された略短円錐状とされている。
イ’)上端のフランジ状凸部は,正面視において,略垂直面と,その下方の斜面とからなる。
ウ’)下方フランジ状凸部は,正面視において,上端フランジ状凸部とほぼ同じ縦幅に形成されている。

3)両意匠の具体的構成態様の比較
・具体的構成態様ア)と具体的構成態様ア’)との比較
引用意匠の天面は,正面視において,その下端から頂点までが一直線状を呈する斜面により形成された略短円錐状とされているため,全体として単調且つシンプルな印象を与えているのに対し,
本願意匠の天面は,その下端に僅かな幅で形成された小さな角度の斜面部と,その斜面より角度の大きな斜面とで形成された略短円錐状部とからなるものであることから,需要者に全体として変化に富んだ印象を与えている点で引用意匠とは全く異なる外観を提供している。

本願意匠の具体的構成態様ア)に関し,拒絶査定において,『本願意匠のように円錐状天面下端部に角度の異なる面を形成するものは,本願出願前より既に見られる態様であって(例えば,意匠登録第1455696号,同第1458493号,同第1460623号等),本願意匠に固有の特徴を構成するものとはいえません。』と述べている。
しかし,拒絶査定書で例示された意匠の様に,確かに円錐状天面下端部において角度の異なる面,即ち,平坦面部は形成されているが,本願意匠のように斜面部が形成されているわけではない。
そのため,拒絶査定書で例示された意匠の正面視においては,天面下端のやや内側から略短円錐形が形成されているように表れるが,本願意匠の正面視においては,その下端に形成された小さな角度の斜面部と,略短円錐状部を形成してなる角度の大きな斜面との,2つの斜面が表れている。
従って,本願意匠における具体的構成態様ア)は,拒絶査定書で例示された意匠において公知ではなく,本願意匠に固有の特徴を構成すると云える。

・具体的構成態様イ)と具体的構成態様イ’)との比較
引用意匠の上端のフランジ状凸部は,正面視において,略垂直面と,その下方の斜面とからなるため,引用意匠が需要者に与える全体として単調且つシンプルな印象を与えているのに対し,
本願意匠の上端のフランジ状凸部は,正面視において,天面の外縁から下方に向けて裾広がりで平坦に形成された斜面と,その下方に形成された略垂直面と,さらにその下方の緩いカーブで形成された斜面とからなるため,本願意匠が需要者に与える全体として変化に富んだ印象を強調している点で,本願意匠は引用意匠とは相違している。

・具体的構成態様ウ)と具体的構成態様ウ’)との比較
引用意匠の下方フランジ状凸部は,上端フランジ状凸部とほぼ同じ縦幅に形成されているため,引用意匠が需要者に与える全体として単調且つシンプルな印象を助長しているのに対し,
本願意匠の上端フランジ状凸部は,正面視において,上方斜面と略垂直面とがそれぞれ下方斜面の約3倍程度の縦幅に形成されており,上端フランジ状凸部は,略中央及び下方のフランジ状凸部よりも,その縦幅が2倍以上に長く形成されていることから,本願意匠が需要者に与える全体として変化に富んだ印象を強調している点で,本願意匠は引用意匠とは相違している。

さらに,上記個々の具体的構成態様の比較に加え,本願意匠の上記具体的構成態様ア)に同イ)及び同ウ)を組合せた構成態様における新規性を検討すると,本願意匠のように,上記具体的構成態様ア)に同イ)を合わせ持つものすら,その他の公知意匠にも全く存在していない。
従って,本願意匠の具体的構成態様ア)に同イ)を組合せた構成態様は勿論のこと,具体的構成態様ア)に同イ)及び同ウ)を組合せた構成態様は,なお一層に新規性及び高い創作性を十分に有しており,この部分にこそ本願意匠の意匠的要部が存在し,両意匠に共通する基本的構成態様に重きをおくのではなく,この具体的構成態様の相違に重きをおいて類否判断が為されるべきであって,この具体的構成態様ア)乃至ウ)とア’)乃至ウ’)とにおける相違が全体に与える美感の影響は大きいものであると思料する。

従って,引用意匠と本願意匠とを対比するに際しても,具体的構成態様ア)とア’),イ)とイ’)及びウ)とウ’)における相違は重要視されるべきであると考える。

(3)両意匠の類否判断
よって,両意匠の具体的構成態様における相違が夫々集約された結果,引用意匠は,全体として直線的で単調且つシンプルな印象を需要者に与えるのに対し,本願意匠は,全体として複雑で変化に富んだ印象を与えているものであって,両意匠が需要者に与える印象は全く異なるものであることが明らかであり,係る美感上の相違は両意匠を別異のものとして認識させるに十分であると思料する。

2.まとめ
以上の通り,本願意匠と引用意匠は基本的構成態様を共通とするものの,係る共通する基本的構成態様a)及び同b)は引用意匠出願前から公知,且つ,ありふれたものであると云えることから,この種物品の分野の意匠において需要者の注意を惹く部分ではなく,その余の具体的構成態様に需要者の注意を惹く部分が存在するものと思料する。
そして,具体的に比較を行った結果,本願意匠における具体的構成態様ア)乃至ウ)の組合せは,引用意匠及び従来の意匠にはない新規性且つ高い創作性があることから,両意匠の類否判断においては,両意匠の共通点である上記基本的構成態様が意匠全体の美感に与える影響よりも,その余の具体的構成態様における相違点が意匠全体の美感に与える影響が大きいものであると考えられ,その結果,両意匠は前述の通り,異なる美感を提供するものであり,本願意匠は引用意匠には類似しないものと思料する。

更に,本願意匠と引用意匠との具体的構成態様の相違及びその相違に基づく美感の相違は,上記基本的構成態様が共通するにも関わらず,僅かに相違する具体的構成態様に重きをおいて登録された登録意匠や引用意匠,そして,上記基本的構成態様及び一部の具体的構成態様が共通するにも関わらず,僅かに相違する具体的構成態様に重きをおいて登録された登録意匠の具体的構成態様の相違及びその相違に基づく美感の相違の程度と同程度のものであり,本願意匠は引用意匠とは非類似であると判断することの妥当性を裏付けるものと思料する。
以上の通り,本願意匠は引用意匠の存在にも係わらず,意匠法第3条第1項第3号に該当せず別個独立の意匠として意匠登録を受けることのできるものと確信する。


第4 当審の判断

1.両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「注射器用ガスケット」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「注射器」であるが,その注射器のガスケットを引用意匠としていることから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下の通りの共通点及び差異点がある。

(2-1)共通点
両意匠は,基本的構成態様として,
全体は,略円柱形状として上面を扁平な略円錐形状としたもの(以下,「本体部」という。)であって,下面に注射器のプランジャーを取り付けるため凹部を設け,雌ねじ部としている点において共通する。

両意匠は,具体的構成態様として,
(ア)本体部周側面に円環状の突条を3つ配している点,
(イ)3つの突条のうち,上端の突条は,注射器のシリンジの内壁に接する略垂直面を設けている点,
(ウ)3つの突条のうち,下二つは,頂点を丸くしている点,
において共通する。

(2-2)差異点
具体的構成態様として,
(A)本願意匠の本体部の上面の略円錐形状は,端部の手前で角度の異なる斜面を形成し,平面視で端部を円環状とする態様であるのに対して,引用意匠の本体部の上面の略円錐形状は,端部まで略円錐形状の稜線の角度を変えておらず,平面視で円環状部がない態様としている点,
(B)本願意匠の本体部周側面の上端の突条は,他の2つの突条に比べて幅が広く,注射器のシリンジの内壁に接する略垂直面から本体部の上面にかけて平坦な斜面を有し,側面視ではっきりと帯状としていることが視認できるのに対し,引用意匠の上端の突条は,他の2つの突条に比べて幅が広いものの,注射器のシリンジの内壁に接する略垂直面上端部と本体部の上面をつなげ,略垂直面上に斜面を有していない点,
(C)本願意匠の下二つの突条は,ほぼ同じ幅としているのに対して,引用意匠の下二つの突条は,中段のものを下端のものに比べてやや幅を小さくしている点,

2.両意匠の類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品の評価
両意匠は,意匠に係る物品が共通する。

(2)両意匠の形態についての共通点の評価
基本的構成態様に係る共通点については,意匠全体としてみた場合には,この種の注射器の分野においては,注射器のガスケットの本体部を略円柱形状とし,上面を扁平な略円錐形状とする共通点は,ありふれた態様といえるもので,格別目立つ態様とはいえず,具体的構成態様に係る本体部周側面に3つの突条を配したとする共通点(ア),本体部周側面の上端の突条に略垂直面を設けたとする共通点(イ),本体部周側面の下二つの突条を,凸部の頂点を丸くしたとする共通点(ウ)についても,ありふれた態様であって,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。

(3)両意匠の形態についての差異点の評価
一方,差異点(A)の本体部上面の形態の差異は,本体部の平面視で円環状部があるものとないものとでは,見る者の印象が異なることから,その差異は軽視することができず,両意匠の類否判断にある程度の影響を及ぼすものである。

次に,差異点(B)の上端の突条に略垂直面から本体部の上面にかけて平坦な斜面を有しているか否かの差異は,本願意匠は,上端の突条の略垂直面の上に側面視ではっきりと帯状とする斜面を視認できることから,ガスケットを挿入しやすいものであると認識でき,見る者に異なる印象を与え,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。

また,差異点(C)の本体部側面の下二つの突条の幅の差異は,一定程度,需要者は目にするため,下二つの突条の幅の違いは需要者に与える印象を異ならせるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は小さいが,見る者に与える印象は異なるものである。

そうすると,本体部上面の形態の差異点(A)及び本体部周側面の上端の突条の差異点(B)は,いずれも非常に目に付き易い部位に係るものであって,本体部側面の下二つの突条の幅の差異点(C)が相俟った視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
以上の通り,両意匠は,意匠に係る物品,基本的構成態様が共通するものであるが,両意匠の具体的構成態様において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。


第5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとはいえないので,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-13 
出願番号 意願2015-21074(D2015-21074) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 加藤 真珠 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 山田 繁和
正田 毅
登録日 2017-01-20 
登録番号 意匠登録第1569927号(D1569927) 
代理人 小谷 悦司 
代理人 並川 鉄也 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 上田 知恵 
代理人 川瀬 幹夫 
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