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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1323560 
審判番号 不服2016-11265
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-27 
確定日 2017-01-10 
意匠に係る物品 複合基板 
事件の表示 意願2014- 28117「複合基板」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
願書の記載によれば,本願は,平成26年(2014年)12月17日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「複合基板」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて,両意匠という。)は,特許庁が平成22(2010)年8月5日に発行した公開特許公報掲載の特開2010-171955号,第11ページ所載の【図4】(d)に表された「複合基板」の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)
なお,上記引用意匠は,断面形状が表されたものであるが,「複合基板」の物品分野の当業者の知識に基づけば,略円板状の複合基板の断面形状と推認できる。

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「複合基板」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「複合基板」であって,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。
(2-1)共通点
基本的構成態様として,
(A)全体形状を周縁部に段差を設けた,薄い略円板状とし,下層基板部(支持基板部)の上に上層基板部(圧電基板部)を設けた構成とした点,
具体的構成態様として,
(B)下層基板部は,周側部に円弧状の面取りを施した薄い略円板状とし,上層基板部は下層基板部より薄くて一回り小さい略円板状とした点,
(C)上層基板部の全周及び下層基板部の縁部上面をごく僅かに切削して形成している点,
が共通している。
(2-2)相違点
基本的構成態様として,
(ア)本願意匠は,接着層のない,下層基板部の上に直接接合した上層基板部からなる構成としたものであるのに対し,引用意匠は,下層基板部の上に接着層を介して積層した上層基板部からなる構成としたものである点,
(イ)本願意匠は,正面視において,周縁部一部について全幅に対し約3分の1長さの直線状に切り落としたような辺部(以下,直線状辺部)を形成しているのに対し,引用意匠は直線状辺部の有無は不明である点。
具体的構成態様として,
(ウ)本願意匠の上面端部より外方は,下層基板部上面半ばまで緩やかな内方へ向けた湾曲面となり下層基板部外縁部の平担部へなだらかに連なっているのに対し,引用意匠の上面端部より外方は,垂直面からなる周側面とその下端から外縁まで略水平面からなる下層基板部上面となっている点,
(エ)上層基板部より外方の下層基板部の上面部(以下,外方余地部という。)
については上層基板部と下層基板部の境界から周端部までであって,本願意匠は,その幅は全幅の約42分の1であるのに対して,引用意匠は,約13分の1である点,
において相違している。

2.両意匠の類否
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の意匠全体としての類否を検討し,判断する。

両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態については,以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また,具体的構成態様としてあげた共通点(B)も複合基板の分野において上層基板部の加工に際して常套的に用いられる手法(周側面が研磨される上層基板部に対し下層基板部(支持基板部)は当初の外径であることによって,同じ外径の規格の装置,治具を使用することができる)によるものであり,極めて普通に見受けられるものであるからこの点が類否判断に与える影響は小さい。共通点(C)も複合基板の分野においてごく普通に見受けられる加工手法に基づく概括的な態様であって,この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
よって,共通点(A)ないし共通点(C)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は共に小さく,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して,相違点(ア)は,基本的構成態様に関わるものであるが,接着層の有無については,複合基板の物品分野においては,接着層を介して接合したものも直接接合したものも,双方共によく見られるものであるから,この相違点が類否判断に与える影響は小さい。また(イ)も,意匠登録出願前に複合基板の分野において,円板状基板部に直線状辺部(結晶方位を示すために形成されるオリエンテーションフラット部)を設けたものも,設けられないものも,ごく普通に見受けられ,設けたもののうち,全幅の約3分の1の長さの直線状辺部とすることもよく見受けられることから,この点が,看者の注意を惹くものとはいえず,この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
次に両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は,相違点(ウ)については,上層基板部の態様は,看者が注目するところであって,その上面端部から下層基板部上面へかけての上層基板部の端部周辺の態様に関わり,緩やかな内方へ向けた湾曲面からなるものか,垂直面と略水平面からからなるものかでは,大きく視覚的印象を異にし,また,内方へ向けて緩やかな湾曲面である態様は,本願意匠の特徴的態様であるといえるから,類否判断に極めて大きな影響を与えるものである。相違点(エ)は,複合基板全体からみれば,部分的な相違ではあるが,外方余地部についての具体的態様に係り,両意匠の外縁周辺の印象に影響を与えるものであって,この点が類否判断に与える影響も一定程度あるものといえる。
そうすると,相違点(ア)及び相違点(イ)は類否判断に与える影響は小さいものの,相違点(ウ)については類否判断に与える影響は極めて大きく,相違点(エ)については類否判断に一定程度の影響を与えるものであって,それら相違点(ア)ないし相違点(エ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2016-12-28 
出願番号 意願2014-28117(D2014-28117) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-01-20 
登録番号 意匠登録第1569926号(D1569926) 
代理人 松井 宏記 
代理人 宗助 智左子 

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