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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 B9 |
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管理番号 | 1323568 |
審判番号 | 不服2016-13162 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-02 |
確定日 | 2017-01-18 |
意匠に係る物品 | スライドファスナー用スライダーカバー |
事件の表示 | 意願2015- 15200「スライドファスナー用スライダーカバー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成27年(2015年)7月8日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「スライドファスナー用スライダーカバー」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙参照) 2.原査定における拒絶の理由及び本意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願当初の願書に記載した本意匠,意願2015-15199号(以下,「本意匠」という。)に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。 その理由として,本願意匠は,その形態が前記本意匠と相違し,両意匠は類似しない,としたものである。 本意匠は,平成27年(2015年)7月8日に出願されたものであって,その意匠は,意匠に係る物品が「スライドファスナー用スライダーカバー」であり,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,いずれもスライドファスナーのスライダーに取り付けて使用される,「スライドファスナー用スライダーカバー」であるから,意匠に係る物品は,一致する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 (1)共通点 (A)全体を,中央に孔を設けた環状の上側部材(以下,「上側部材」という。)と,上側部材の上端部の接続部(以下,「接続部」という。)を介して接続し,薄い板状の下側部材(以下,「下側部材」いう。)とで構成し,側面視して略倒コ字状に形成して上側部材と下側部材の間にスライドファスナーのスライダーを挟み込む空間を設けている点, (B)上側部材は上方を突出させた略下向き矢印状で,正面視した各端部を隅丸状とし,正面視中央に大きな略楕円形状の孔を設け,孔の内側左右に厚みのある壁状の縁状部を設けている点, (C)下側部材は,薄い板状で上方に略滴状の背面側に突出した嵌合部(以下,「嵌合部」という。)を設け,下側部材の内側に段差部を設けて下方寄り中央を薄くし,下側部材の背面側には,小型半球状の凸部を複数設けている点, (D)接続部は,正面視略滴形状の略楕円柱状で,側面視すると上側部材の上端寄りから凸弧状に連続して,下側部材に嵌合させ,下側部材の背面側に突出した嵌合部の内側に背面視略二の字状の突条部を設けている点, (E)上側部材と下側部材の側面視した長さの割合が約5:4である点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)下側部材を背面視した形状について,本願意匠は,左右両側に袖状に突出部があり,横幅が広く,縦横比が約1:1であるのに対して,本意匠は,全体が略五角形状で横幅が狭く,縦横比が約1.2:1である点, (イ)下側部材の背面側の態様について,本願意匠は,背面視した左右外側寄りに凹弧状の細い突条があり,小型半球状の凸部を嵌合部の左右にそれぞれ4個ずつで計8個,下端寄り中央に2個,突条の内側に沿って合計10個設けているのに対して,本意匠は,左右に弧状の突条がなく,小型半球状の凸部を下端寄りに4個,その上の左右両端に2個,上方寄りの嵌合部の左右に3個2列ずつで計12個,合計18個設けている点, (ウ)上側部材を側面視した正面側の態様について,本願意匠は,正面側の上端部寄りが凸弧状に膨出して略S字状であるのに対して,本意匠は,正面側が平坦面状である点, (エ)下側部材の背面側の突出した嵌合部の態様について,本願意匠は,上端寄りが丸みを帯びた略長円形状に近い略滴状であるのに対して,本意匠は,背面側に突出した嵌合部が略縦長滴状で細長い点, (オ)下側部材の内側の形状について,本願意匠は,側面視した下方が薄く段差があるのに対して,本意匠は,側面視した下方までほぼ同じ厚みで下端部寄りに略水滴状の面落ち部がある点, (カ)上側部材の孔の内側左右の壁状の縁状部について,本願意匠は,左右に凹みがないのに対して,本意匠は,左右に凹弧状の凹みがある点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,中央に孔を設けた環状の上側部材と,上側部材の上端部の接続部を介して接続し,薄い板状の下側部材とで構成し,側面視して略倒コ字状に形成して上側部材と下側部材の間にスライドファスナーのスライダーを挟み込む空間を設けた態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に普通に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,両意匠の各部位には差異点が多数見受けられ,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるものである。 次に,共通点(B)についても,上側部材が上方を突出させた略下向き矢印状で,正面視した各端部を隅丸状とし,正面視中央に大きな略楕円形状の孔を設け,孔の内側左右に厚みのある壁状の縁状部を設けている態様が共通しているが,両意匠の各部位には差異点が多数見受けられ,この共通点を有するものが両意匠の他にも見られるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 また,共通点(C)についても,下側部材を大雑把に捉えたときには,その構成が共通しているが,この種の物品分野においては,他にも既に見られる態様といえるものであって,格別の特徴がないものといえ,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点(D)についても,接続部が正面視略滴形状の略楕円柱状で,側面視すると上側部材の上端寄りから凸弧状に連続して,下側部材に嵌合させ,下側部材の背面側に突出した嵌合部の内側に背面視略二の字状の突条部を設けている点が共通しているが,接続部の構成は共通しているものの,その具体的な各部位には差異点が見られ,また,この種の物品分野においては,他にも既に見られる態様といえるものであって,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 さらに,共通点(E)についても,側面視した長さの割合のみでは目立つものとはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の下側部材を背面視した形状について,左右両側に袖状に突出部があり,横幅が広い本願意匠と,全体が略五角形状で横幅が狭い本意匠とは,背面側から見た印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の下側部材の背面側の態様についても,本願意匠の左右外側寄りの凹弧状の細い突条は,他には見られない特徴的なものといえ,目立つものといえ,小型半球状の凸部の配列や数の差異と相俟って,本意匠とは,視覚的な印象を異ならせるものといえ,その差異は,需要者の注意を強く惹く部分であるから,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)の上側部材を側面視した正面側の態様について,正面側の上端部寄りが凸弧状に膨出して略S字状である本願意匠の態様は,部分的な特徴ではあるが,需要者の注意を惹く部分であるから,本願意匠は,上側部材が丸みを帯びた印象を与えるもので,平坦な印象の本意匠とは,前記差異点(イ)と相俟って,需要者に与える印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 そして,差異点(エ)の下側部材の背面側の突出した嵌合部の態様について,上端寄りが丸みを帯びた略長円形状に近い略滴状である本願意匠の態様は,略縦長滴状で細長い本意匠とは,視覚的な印象を異ならせるものといえ,その差異は,需要者の注意を強く惹く部分であるから,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(オ)の下側部材の内側の形状や,差異点(カ)の上側部材の孔の内側左右の壁状の縁状部について,内側の態様で目立たない部位における差異といえるものであるが,差異点(イ)の下側部材の背面側の態様や差異点(ウ)の上側部材を側面視した正面側の態様の差異とも相俟って,異なる印象を醸し出すもので,細部に係る態様ではあるが,これらの差異を全く無視することができず,これらの差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 (3)小括 以上のとおり,本願意匠と本意匠は,出願人及び出願日に関して意匠法第10条第1項の要件を満たし,意匠に係る物品が一致するものであるが,両意匠の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 (4)請求人による補正 なお,請求人により本件審判請求と同日付けで提出された平成28年9月2日付の手続補正書によって,本願の「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされた。 5.むすび 以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当せず,本願意匠は,本意匠を意願2015-15199号とする関連意匠としては意匠登録を受けることができない。 しかしながら,請求人により提出された手続補正書によって,原審の拒絶の理由は既に解消しており,この理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-01-05 |
出願番号 | 意願2015-15200(D2015-15200) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(B9)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 奈良田 新一 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 須藤 竜也 |
登録日 | 2017-01-27 |
登録番号 | 意匠登録第1570338号(D1570338) |