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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) K1
管理番号 1323570 
判定請求番号 判定2015-600039
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 判定 
判定請求日 2015-12-22 
確定日 2017-01-05 
意匠に係る物品 切断用定規 
事件の表示 上記当事者間の登録第1524582号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の説明によって示されたイ号意匠は,登録第1524582号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 手続の経緯
平成26年 6月13日 意匠登録出願(意願2014-12874号)
平成27年 4月17日 意匠権の設定の登録(登録第1524582号)
平成27年12月22日 本件判定請求(本件判定請求人)
平成28年 6月27日 答弁書提出(本件判定被請求人)
平成28年 9月26日 弁駁書提出(本件判定請求人)

第2 請求の趣旨及び理由
1.請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,イ号意匠並びにその説明書に示す意匠は,登録第1524582号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求め,要旨,以下のとおり主張した。

2.請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人は,判定請求に係る登録意匠(以下「本件登録意匠」という。)の保有者であり,被請求人はイ号意匠(商品名「丸鋸一番Gガイド」)を製造,販売する者である。請求人は,イ号意匠は本件登録意匠に類似するものであると思量し,判定を請求するものである。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成26年6月13日
登録 平成27年4月17日
なお,本件登録意匠は,登録第1514220号意匠(以下「本件本意匠」という。)の関連意匠である。

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,物品「切断用定規」に係り,その態様は意匠公報記載のとおりのものである。なお,以下,正面側を「表面」,背面側を「裏面」という。
基本的構成態様において,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟が設けられ,横桟の上方及び下方に大きな窓を設け,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させたものとし,
具体的態様において,
(ア)上部の窓は隅丸直角三角形状,下部の窓は一縁を垂直とした隅丸台形(以下,一縁を垂直とした台形を「直角台形」といい,一縁を垂直とした隅丸台形を「隅丸直角台形」という。)状とし,
(イ)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率は約1:10であり,
(ウ)縦ガイド枠の下端部に丸孔が,傾斜ガイド枠の表裏下端部に四角形状の窪みが設けてあり,
(エ)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率は約3:2であり,
(オ)位置決め枠の表面左半分の位置に凸部を形成し,
(カ)位置決め枠の裏面下縁部に全長にわたり凸条を形成し,
(キ)この凸条の左半分は傾斜面を介して突出し,
(ク)横桟は表裏共にそのほぼ全域を段落としに造形し,
(ケ)前記位置決め枠の凸部上面,横桟の表面及び傾斜ガイド枠の裏面上部は濃いトーンとし,
(コ)縦ガイド枠の表裏に目盛りを刻印し,
(サ)縦ガイド枠の表面下端部から傾斜ガイド枠にわたり,45度を示す線を刻印したものである。

(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は,物品「切断用定規」に係り,その態様はイ号意匠説明書記載のとおりのものである。
すなわち,基本的構成態様において,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟が設けられ,横桟の上方及び下方に大きな窓を設け,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させたものとし,
具体的態様において,
(ア)上部の窓は隅丸直角三角形状,下部の窓は隅丸直角台形状とし,
(ア-1)各窓の輪郭は「段落とし」に造形し,
(ア-2)「段落とし」に造形された各窓の上下中央に,段落としに対応する奥行の位置に補助横桟が設けられ,
(イ)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率は約1.7:10であり,
(ウ)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端部に四角形状の孔が設けてあり,
(エ)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率は約2:3であり,
(オ)位置決め枠の表面下縁に全長にわたり凸条を形成し,
(カ)前記凸条の左半分は傾斜面を介して突出し,
(キ)位置決め枠の裏面下縁に全長にわたり凸条を形成し,
(ク)前記凸条の右半分は傾斜面を介して突出し,
(ケ)横桟は表裏共にそのほぼ全域が段落としに造形し,
(コ)前記位置決め枠の表裏における凸条の上方,横桟の正面側上面及び傾斜ガイド枠の背面側下部は濃いトーン(黒色)とし,
(サ)縦ガイド枠の表裏に目盛りが刻印され,
(シ)縦ガイド枠の表面下端から傾斜ガイド枠にわたり,45度を示す矢印付きの線を刻印したものである。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との対比
(5-1)物品について
本件意匠とイ号意匠とは,物品「切断用定規」に係るものである点で共通する。
(5-2)基本的構成態様について
基本的構成態様において,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟が設けられ,横桟の上方及び下方に大きな窓を設け,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させたものとした点で共通する。
(5-3)具体的態様について
(5-3-1)共通点
(A)上部の窓は隅丸直角三角形状,下部の窓は隅丸直角台形状とした点で共通する。
(B)位置決め枠の裏面下縁部に全長にわたり凸条が形成されている点で共通する。
(C)前記突起の背面側左半分は傾斜面を介して大きく突出している点で共通する。
(D)横桟は表裏共にそのほぼ全域を段落としに造形している点で共通する。
(E)横桟の表面が濃いトーンである点で共通する。
(F)縦ガイド枠の表裏に目盛りが刻印された点で共通する。
(G)縦ガイド枠の表面下部から傾斜ガイド枠にわたり45度の線を刻印した点で共通する。
(5-3-2)差異点
(a)イ号意匠においては,「段落とし」で造形された各窓の上下中央に,段落としに対応する奥行の位置で補助横桟が設けられている点に差異がある。
(b)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率おいて,本件登録意匠は,約1:10であるのに対し,イ号意匠では,約1.7:10である点に差異がある。
(c)ガイド枠下端部の処理において,本件登録意匠は,縦ガイド枠の下端部に丸孔が,傾斜ガイド枠の表裏下端部に四角形状の窪みが設けてあるのに対し,イ号意匠では,縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端部に四角形状の孔が設けてある点に差異がある。
(d)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率において,本件登録意匠は約3:2であるのに対し,イ号意匠では約2:3である点に差異がある。
(e)位置決め枠の表面の処理において,本件登録意匠では,左半分の位置に凸部が形成されているのに対し,イ号意匠では,全長にわたり凸条が形成され,この凸条の左半分は傾斜面を介して突出している点に差異がある。
(f)本件登録意匠においては,前記位置決め枠表面の凸部,及び傾斜ガイド枠の裏面上部は濃いトーンとしてあるのに対し,イ号意匠では,位置決め枠の表裏における凸条の上方,及び傾斜ガイド枠の裏面下部を濃いトーンとしてある点に差異がある。
(g)イ号意匠では45度を示す線が矢印付きである点に差異がある。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由
(6-1)周辺意匠
(ア)登録第1514220号意匠
本件本意匠である。本件登録意匠との差異点は,位置決め枠の下縁に全長にわたって形成された凹部の有無である。
(イ)登録第1535895号意匠
本件被請求人が保有する登録意匠(以下「被請求人登録意匠」という。)である。
被請求人は,イ号意匠は被請求人登録意匠の実施品であるとした上で,被請求人登録意匠が本件登録意匠と非類似の意匠として登録されていることを根拠に,イ号意匠は本件登録意匠と非類似である旨の主張をするものと推測される。
請求人は,イ号意匠が「被請求人登録意匠に類似する意匠」の実施品であるとしても,被請求人登録意匠とイ号意匠とは以下の差異があるのであって,この差異により,イ号意匠は本件登録意匠に類似するものになっていると考える次第である。
A.横桟上下の窓の処理において,図面で表された被請求人登録意匠においては,直角三角形及び直角台形の輪郭における段落としは極めて僅かであり,補助横桟の肉厚とその余の部分の板厚との差も極めて僅かであって,その結果,直角三角形及び直角台形の輪郭縁が強く認識されるものではない。
他方イ号意匠では,表裏共に板厚の1/4程度の深さで段落としされ,補助横桟の肉厚はその余の部分の板厚の1/2程度しかない薄いものとなっている。その結果,段落としされた輪郭が顕著であり,補助横桟の存在よりも輪郭の存在が強く印象づけられるものである。
B.被請求人登録意匠においては,濃いトーン(黒色着色部)が存在しないが,イ号意匠には濃いトーン(黒色着色部)が存在する。
登録意匠を検索したところ,この種の物品において全体形状を略三角形状としたものは,上掲意匠以外には発見されなかった。
また,Googleにおいて「丸鋸ガイド」「丸鋸定規」の画像を検索したところ,全体形状を略三角形状としたものとして,いくつかの周辺意匠が発見された。

(6-2)共通点・差異点の評価
(6-2-1)共通点
周辺意匠の存在を前提とすると,本件登録意匠における「基本的構成態様において,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において,2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に大きな窓部を設け,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させたものとした点」は,本件本意匠において初めて創作された造形である。
とりわけ,横桟の上下に窓を設ける点は,物品の機能の制約を受けることなく,自由に造形され得るものであって,この態様が採用されるべき必然性は全く存在しない。
したがって,本件登録意匠の基本的構成態様は,類否判断に及ぼす影響は極めて高いものということができる。
具体的態様に関しては,
(A)上部の窓を隅丸直角三角形状,下部の窓を隅丸直角台形状とした点は,本件登録意匠における顕著な特徴点である「窓」の形状に関するものであるから,類否判断に及ぼすウエイトは高い。
(B)位置決め枠の裏面下縁部に全長にわたり凸条が形成され,(C)前記突起の背面側左半分は傾斜面を介して大きく突出している点は,共通する態様を有する意匠は本件本意匠以前には一つの周辺意匠以外存在しないのであり,特徴的な態様として需要者の目に映るのであって,類否判断に一定の影響を持つものである。
(E)横桟の表面が濃いトーンである点は,アクセントとして印象づけられるので,類否判断に一定の影響を持つものである。
その他以下の点も共通する。
(D)横桟は表裏共にそのほぼ全域が段落としに造形されている点。
(F)縦ガイド枠の表裏に目盛りが刻印された点。
(G)縦ガイド枠の表面下部から傾斜ガイド枠にわたり45度の線が刻印された点
(6-2-2)差異点
(a)イ号意匠において,「段落とし」に造形された各窓の上下中央に,段落としに対応する奥行の位置で補助横桟が設けられている点は,段落としが表裏それぞれ板厚の1/4程度の深いものであること,そのために補助横桟の厚みはその余の部分の板厚の1/2程度の薄いものであることから,補助横桟の存在は三角形,台形という窓の輪郭に埋没する。加えて,大きな窓を設けた場合,そこに桟を設けることは常套手段であって,創作上の工夫は見られない。したがって,補助横桟が類否判断に与えるウエイトは低い。

(b)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率において,本件登録意匠は,約1:10であるのに対して,イ号意匠が約1.7:10である点は,二つのガイド枠の下端部を位置決め枠から突出させるという基本的構成態様の中に埋没するものであって,類否判断に与えるウエイトは低い。
(c)ガイド枠下端部の処理において,本件登録意匠は,縦ガイド枠の下端部に丸孔が,傾斜ガイド枠の表裏下端部に四角形状のへこみが設けてあるのに対し,イ号意匠では,縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端部に四角形状の孔が設けてある点は,突出した端部の常套的な処理であって,類否判断に与えるウエイトは低い。なお,孔はロープやカラビナを繋ぐためのものである。
(d)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率において,本件登録意匠は約2:3であるのに対して,イ号意匠では約3:2である点は,数字だけを見ると大きな差異ではあるが,この部分のみを注視して観察されることはないのであって,窓と一体として観察される。そうすると,この差異が類否判断に与えるウエイトは低い。
(e)位置決め枠の表面の処理において,本件登録意匠では,左半分の位置に凸部が形成されているのに対し,イ号意匠では,全長にわたり凸条が形成され,前記凸条の左半分は傾斜面を介して突出している点は,全長にわたって凸条を設けることは,周辺意匠にも見られる普通の造形であり,一側を突出させた点は本件登録意匠における裏面の態様と共通する。したがって,この差異が類否判断に与えるウエイトは低い。
(f)本件登録意匠においては,前記位置決め枠表面の凸部,及び傾斜ガイド枠の裏面上部は濃いトーンとしてあるのに対し,イ号意匠では,位置決め枠の表裏における凸条の上方,及び傾斜ガイド枠の裏面下部を濃いトーンとしてある点は,いずれの位置が濃いトーンになっているかということよりも,スポット的に濃いトーンとなっている点における共通性の中に埋没するのであり,この差異が類否判断に与えるウエイトは低い。
(g)イ号意匠では傾斜ガイド枠に矢印付きの直線が刻印されている点は,これが造形状の特徴と認識されることはなく,類否判断に与えるウエイトは低い。

(6-3)全体観察
上記共通点・差異点を総合して全体として観察すると,本件登録意匠における基本的構成態様,すなわち「縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に大きな窓部を設け,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させたものとした点」は従来この種の物品に見られなかった斬新な造形であって,本件登録意匠の美感を決定づけるものである。
前記2つの窓部の処理において,イ号意匠は補助横桟を設けている点において差異があるが,イ号意匠において「段落としが表裏それぞれ板厚の1/4程度の深いものであること,そのために補助横桟の厚みはその余の部分の板厚の1/2程度の薄いものであることから,三角形,台形という窓の輪郭に埋没する」ものであり,イ号意匠も本件登録意匠と共通する美感を起こさせるものである。
そして,具体的態様における共通点である上記A,B及びEも類否に一定の影響を持つものである。
他方,上記差異点aないしgは類否判断に与えるウエイトは低く共通性の中に埋没するものである。とりわけ「スポット的に濃いトーンとなっている」という態様はこの種の物品の意匠として見られない態様であるから,位置の違いは意識されず,「濃いトーン」の位置の差異に関する差異点(f)は,「スポット的に濃いトーンとなっている」という共通の美感を起こさせるというべきである。
したがって,イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。

(7)結び
以上の次第であるから,イ号意匠は本件登録意匠に類似する意匠の範囲に属するものである。

3.証拠方法
(1)甲第1号証:被請求人のウェブサイトの写し
http://mkk-tools.com/scale/MG-200.html
イ号意匠が,被請求人の実施に係るものであることを立証する。
(2)甲第2号証:登録第1514220号意匠公報の写し
本件本意匠を立証する。
(3)甲第3号証:登録第1535895号意匠公報の写し
被請求人登録意匠を立証する。
(4)甲第4号証:Webサイト
「Yahoo shoppingシンワ丸鋸ガイド定規トライアングルAL」
http://store.shopping.yahoo.co.jp/okaidoku-kiyosi/78108.html
シンワ丸鋸ガイド定規トライアングルALの発売日を立証する。

第3 被請求人の答弁
1.答弁の趣旨
イ号意匠並びにその説明書に示す意匠は,登録第1524582号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。

2.答弁の理由
(1)「第2 請求の趣旨及び理由」中の「2.(1)判定請求の必要性」に対する反論
請求人は,被請求人が製造,販売するイ号意匠に対し,2015年7月16日付をもって,請求人が所有する意匠登録第1524582号に類似するとして警告してきた。これに対し,被請求人は,本判定請求日前の平成27年8月上旬に,イ号意匠と全く同じ形態のものを意願2015-000388(意匠に係る物品「丸鋸用ガイド具」。出願日:平成27年1月13日)として出願し,平成27年7月22日付をもって登録査定となった旨,請求人代理人宛てにFAX及び書面にて送信しており,請求人は係る事実を確知しているにもかかわらず,本件判定請求に及んでいる。
被請求人としては,イ号意匠が新規性及び非創作容易性をクリアして登録査定になり,意匠登録第1535895号として権利設定にまでなったものに対し,判定請求を請求されたことに対し残念至極である。

(2)「第2 請求の趣旨及び理由」中の「2.(1)判定請求の必要性」以外の反論
ア.(ア)本件登録意匠の基本的構成態様である縦ガイド枠と傾斜ガイド枠と位置決め枠で,2つの頂角が45度とした直角三角形状をしたものは,本件登録意匠の出願日前において公知の三角定規と同じ形態であって,デザイン上転用することは極めて容易であるし,乙第2号証に図示されているように公知である。
(イ)請求人が本件登録意匠について,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に窓部を設けたとする点は,乙第4号証のとおり公知である。
(ウ)縦ガイド枠の下端を位置決め枠から突出させたものは,乙第3及び4号証に示されているように公知である。
(エ)本件登録意匠が,板材を直角に切断することしかできない物品であることも,類否判断に与える影響が極めて重要とされる点であり,見落としてはならない。
(オ)本件登録意匠の窓部が,上下に三角形と台形の窓部が2つ形成されているのに対し,イ号意匠は,最上段に三角形状が,2,3段目と最下段が台形状と,4つの窓部が形成されており,2つと4つとでは類似する形態でないことが歴然としている。
(カ)請求人は,イ号意匠の補助横桟の厚みが薄いことから,窓の輪郭に埋没するものであると主張するが,補助横桟は,材料を節約して強度を持たせ,かつ手指によるつかみやすさと,切断作業時に手指による押さえやすさとを持たせるために創作されたもので,埋没するものでは全くない。
(キ)イ号意匠の位置決め枠が正面視と背面視において,同じ形状に形成させていることが,板材を直角と45度の角度で切断するために必須な形状,形態であること,さらにイ号意匠の位置決め枠の上方部に,細長い黒色のすべり止めゴムが貼着していることが需要者をして,注目せしめる部位であり,製品としては優れた機能を持ったものと評価されていることが両者の非類似としての大きな根拠の1つである。
(ク)濃いトーンの有無について,本件登録意匠は,位置決め枠の左側方の半分に濃いトーンが高さも台形状にして,かつ幅員も横桟の2倍もある,物品全体の高さよりも著しく突出し,突設されているのに対し,イ号意匠の表面と裏面とが全く同形状にて形成された位置決め枠には,本件登録意匠のような左側方の半分の濃いトーンに匹敵するものは全く存在していないので,共通の美感を起こしたりはしない。
(ケ)本件登録意匠の縦ガイド枠には,正面図と背面図の内側部が4つに仕切られた,四辺形状の凹となっていること,第2に,傾斜ガイド枠の正面図においても,内側部が細長い凹部が形成されていること,第3に,背面図には位置決め枠の2分の1の左半分と2分の1の右半分の内側部に,細長い形状の深さが異なる凹部がそれぞれ形成されていること,第4に,背面図の横桟の内側部にも細長い形状の凹部が形成されているのに対して,イ号意匠には,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠には,凹部がなく,厚みは同一である。
この形態は,本件登録意匠に対する需要者が注視する形態であるから,これらの形態は両者の類否判断に大きなウエイトをしめている。
(コ)イ号意匠は,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の表面に,細長いステンレス鋼ガイドが接着されているのに対して,本件登録意匠には全く存在しない。
(サ)以上のとおり,イ号物件は本件登録意匠と著しく相違しているので,非類似である。
(シ)イ号意匠と甲第3号証の関係について説明すると,甲第3号証は,イ号意匠を図面化したものであって,同一のものである。しかし,甲第3号証には,意匠に係る物品の説明の欄において,「すべり止めゴム」であることを明記しなかったが,輪郭は形成しており,その他の濃いトーンについても,説明はしていないが,輪郭を図示しているので,実質的には同一である。

イ.結び
以上の次第であるから,イ号意匠は本件登録意匠に類似する意匠の範囲に属しないものである。

3.証拠方法
(1)乙第1号証:イ号意匠のパンフレット
イ号意匠の実施に係るものであることを立証する。
(2)乙第2号証:実開昭58-42001の公開公報の写し
本件登録意匠の基本的構成態様である縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠が出願日前公知であることを立証する。
(3)乙第3号証:特開平11-129194公開特許公報の写し
本件登録意匠の縦ガイド枠と傾斜ガイド枠及び位置決め枠が本件登録意匠の出願日前公知であったことを立証する。
(4)乙第4号証:意匠登録第1288553号意匠公報の写し
本登録意匠の具体的態様である複数の窓部を形成することは,本件登録意匠の出願日前から公知であることを立証する。

第4 請求人による弁駁書
1.弁駁の理由
(1)「本件登録意匠の説明について」について
(ア)「登録意匠において,縦ガイド枠の表面下端部から傾斜ガイド枠に亘り,45度を示す線を刻印してあることが不鮮明であるとの指摘」について
被請求人は答弁書で,本件登録意匠は,45度を示す線が不鮮明で読み取ることができない旨を主張しているが,本件登録意匠の正面には45度を示す線が刻印されている。

(イ)「説明されていない形態」について
被請求人は,本件登録意匠の,
・縦ガイド枠において,表裏面の下端部から頂角まで,目盛と窓との間に細長四角形状の凹部が4個形成されている点,
・傾斜ガイド枠の表面に,中央部より頂角との間に形成されているへんぺいな台形の凹部が形成されている点,
・傾斜ガイド枠の表面には,位置決め枠の左側方に細長い凹部が形成されている点,
・位置決め枠の裏面に形成されている,約2分の1の左側方部に,深さがやや浅い細長長方形状の凹部と,その右側方に前記凹部よりも深い台形状の凹部が形成されている点,
について何ら言及していない,と主張しているが,被請求人の言う,各種凹部が本件登録意匠に存在することは認める。しかしながら,これらの態様は格別需要者が注目するものではなく,類否判断に影響するものではない。

(2)「イ号意匠の説明に対する反論」について
(ア)「窓の数など」について
被請求人は,イ号意匠の窓は2個ではなく4個形成している,と主張するが,「窓の数」を「打ち抜かれた部分の数」として数えるならば,被請求人が主張するとおり,その数は4個である。しかし,段落としは,第1の窓の輪郭から第2の窓の輪郭にわたり,連続して形成されている。このような段落としは,第1の窓と第2の窓とを視覚的に一体化させるための造形であり第1の窓と第2の窓を合わせて「一つの窓」と位置付けているのである。

また,被請求人は,横桟部分を「補助横桟」ではなく「つかみ易さ」「押し易さ」「補強」の面から形成されたもので「補助横桟」ではないと主張するが,この部分が「つかみ易さ」「押し易さ」「補強」に寄与するとしてもその度合いはきわめて小さいものと推認され,機能を離れた造形としてのみ把握し評価すべきものである。

(イ)「横桟の態様」について
被請求人は,「枠の厚さよりも薄く形成されている」と主張するが,周縁を窪ませた結果として,被請求人も認めるとおり「薄く形成されている」のである。

(ウ)「位置決め枠上方の濃いトーン」について
被請求人は,表面及び裏面の位置決め枠の上方部に形成された黒色部分は,黒色の止め部材を貼張したものであるから,単なる色彩との主張は妥当でない,と主張するが,ゴム製であるとしても「濃いトーン」であることに変わりはない。

(3)「本件登録意匠とイ号意匠との対比に対する反論」について
被請求人は,裏面下縁部に凸条が形成されている点については共通であるが,表面下縁部に凸条が形成されているか否かについては著しく相違している,と主張するが,本件登録意匠の表面下縁部には,位置決めのための凸部が形成されており,イ号意匠の「凸条」に対応するものであるから,「著しく相違する」と評価することはできない。
また,被請求人は,縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の表面に,ステンレス鋼ガイドが貼着されている点に差異がある旨主張する。イ号意匠のガイド枠の表面にステンレス製ガイドが貼着されていることは認めるが,類否に及ぼす影響は微弱である。

(4)「イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由に対する反論」について
(ア)「登録第1535895号意匠について」について
被請求人は,イ号意匠と被請求人登録意匠(意匠登録第1535895号の意匠)は類似し,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものであることは明らかであると主張するが,この項において請求人は,イ号意匠が被請求人登録意匠と同一ではないことを主張しているのであって,この点被請求人も「イ号意匠と被請求人意匠は類似し」と自認している。その上で,請求人は,イ号意匠が被請求人の登録意匠に類似することは認めるが,先願であって,類似の範囲である本件登録意匠に抵触することを主張するものである。

また,段落としの深さについて,「第1の段落としの部位を,イ号意匠を図面にて図示すると,縮小されただけで,拡大すれば,イ号意匠と同じになる」と主張するが,明らかに誤りである。
被請求人登録意匠の断面図によると,段落としの深さと「補助横桟」の厚さとの比率は,約1:4:1である。
そして,イ号意匠においては,約1:2:1である。イ号意匠に関するこの主張は,被請求人の主張「イ号意匠の横桟の厚みは,実測しても2分の1程度である」と一致する。

(5)「共通点に対する反論」について
(ア)公知意匠について
被請求人は,
・本件登録意匠の基本的構成態様である縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠は,本件登録意匠の出願日前において,公知意匠となっている。
・本件登録意匠の45度とした直角三角形状である点は,公知となっているし,横桟と窓部を設けたものも,本件登録意匠の出願日前において公知となっている。
・縦ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させることも,本件登録意匠の出願日前に公知となっている。
などと主張するが,請求人は,「縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に大きな窓部を設け,前記縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させた」造形が従来存在しないといっているのであり,個々の要素が初めての造形であると主張するものではない。
被請求人が提示する乙第2号証に開示された意匠は「縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状」ではあるものの,横桟及び窓部や突出部がなく,乙第3号証,乙第4号証に開示された意匠も,個々の要素の存在は認められるとしても,請求人が主張する形態をそなえたものではない。
乙第4号証に開示された意匠にしても,横桟の上下に窓部があるが,「縦ガイド枠,傾斜ガイド枠,位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状」ではない。
したがって,乙第2ないし4号証に開示された意匠が公知であることは,上記請求人が主張する態様が「初めて創作された造形である」との主張を否定するものとはなり得ない。
本請求は,「類似」を主張するものであって「創作非容易性」を論点とするものではない。
(イ)「具体的態様(A)に対する反論」について
被請求人は窓の形状が公知であると主張するが,乙第3号証の意匠は台形の窓二つの組み合わせであり,乙第4号証の意匠は三角形の窓一つである。請求人が(A)で主張するのは「直角三角形状」と「直角台形状」との組み合わせであり,単なる「窓」が特徴点だとは主張していない。
(ウ)「具体的態様(B)(C)の共通点に対する反論」について
被請求人は「位置決め枠を形成すること」が必要な形態であると主張するが,この主張はもっともである。請求人は「凸条」の存在ではなく,その具体的態様(傾斜を介した突起の存在)が類否に影響すると主張しているのである。
そして,このような態様のものが資料写真3(正確には,○に数字。「シンワ丸ノコガイド定規 トライアングル ポリカ」)以外に存在しないと主張しているところ,被請求人からはこの主張を否認する証拠は提出されていない。
(エ)「具体的態様(E)の共通点に対する反論」について
横桟表面の濃いトーンについて被請求人は,「この種物品においては,本件登録意匠の出願日前より業界では使用されてきた」と主張するが,「横桟」を設けたもの自体が乙第4号証の意匠程度と認められるのであり,「業界では使用されていた」という主張は根拠がない。
(オ)「具体的態様(D)の共通点に対する反論」について
被請求人は「段落とし」が製造上当然すぎる技術であると主張するが,普通に用いられる技術であることと,看者への造形としての訴求力とは別である。そして,段落としに造形する必然性はなく,事実,被請求人の意匠である乙第4号証の意匠では,横桟に段落としは採用されていない。

(6)「差異点に対する反論」について
(ア)「補助横桟の有無に対する反論」について
被請求人は「イ号意匠の横桟の厚みは,第1に,実測しても4分の1程度ではなく,2分の1程度である」というが,これは請求人の主張と同じであり,請求人の実測にもかなっている。
次に,被請求人は,全体と横桟は,同色であるから埋没しないと主張する。確かに,被請求人の言う第1の窓,第2の窓の物理的な存在が消えることはない。しかし,段落としで形成された隅丸直角三角形,隅丸直角台形がくっきりと浮かび上がり,強く認識されるのである。
そして,被請求人は,横桟は「つかみやすい」こと等を追求した構成であると主張するが,薄いのでつかみやすくはなく,つかみやすさを求めるのであれば段落としせずに,枠部と同じ厚さにするはずである。
すなわち,「横桟」は看者に「つかみやすい」という印象を与えるには不十分な存在であるから,機能との関係で看者が注視するという被請求人の主張には根拠がない。
なお,甲第4号証の指摘は,窓の態様が異なるので公知例とはならず,理由がない。
(イ)「ガイド枠下端の突出長の相違に対する反論」について
被請求人が,縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端を「突出」させることは公知であると主張するが,乙第2及び3号証いずれの意匠も,突出は1か所であり,2か所を突出させたものはなく,根拠がない。
2か所が突出しているものが存在しない以上,「2か所の突出」自体が類否判断におけるウエイトが高く,寸法の差異はこの共通性に埋没するのである。
(ウ)「ガイド枠下端部の形態の相違に対する反論」について
突出部の孔について,被請求人は「どちらの孔にも引っ掛け易く」と機能面から看者に注目される旨を主張するが,これとても,「2か所の突出部」という共通性に埋没するものである。
(エ)「位置決め枠と横桟の幅の相違に対する反論」について
当該部分は,全体のバランスを示す上のものである。「問題にすること自体妥当でない」ということが,類否に影響しない,という意味であれば被請求人の主張に同意する。
(オ)「位置決め枠の表面における形態の相違に対する反論」について
被請求人は,ガイドとなる凸部,凸条の態様の差異を「両面使用」の可否という機能を絡めて強調するが,理由がない。本件登録意匠も「両面使用」「反転使用」が可能なのであって,機能に差異はない。

(7)類否判断
(7-1)窓の視覚的印象
(ア)本件登録意匠とイ号意匠とは,窓の「物理的な数」において2つか4つかの差異があることは,被請求人が述べるとおりである。しかしながら,意匠の類否において評価すべきは「物理的な数」ではなく,視覚に起こさせる美感である。
被請求人は,上の窓と下の窓と間に設けられた補助横桟は,他の部分の厚みの1/2であるとか,色分けされていないことを理由に,上下二つの窓を囲む段落としに埋没しないと主張する。
しかし,意匠の創作において,二つの窓を一体的なものと印象づけるために,二つの窓を段落としで囲うことは常套手段である。また,大きな窓を補強その他の目的のために二つに分割することも常套手段である。常套手段であるということは,「段落としで囲まれた部分を補助横桟によって二つの窓に分割する」ことには創作的価値は認められないということになる。
(イ)この点に関し,大阪高判平成28年6月10日(ロッカー用ダイヤル錠付き把手)の判決のロジックに倣えば,イ号意匠の類似範囲を判断するに際して,「段落としされた三角形,台形の中に補助横桟を設けた態様」は,需要者の注意を惹く要部とは認められないことになる。
したがって,大きな窓一つであるか,二つに分割されているかの差異が,類否に大きな影響を与えるとする被請求人の主張には理由がない。
(ウ)本件とは物品が異なるが,二つの窓を一体的に見せるために段落としで囲うことが常套手段であり,二つの窓を一つにまとめる改造が行われている事実を示す。
事例は,国鉄時代に製造された103系通勤電車である。
製造時のものは,縦桟で仕切られた二つの窓が段落としによって囲われ,一つの大きな窓という印象を与えるように造形されている。秩父鉄道に移籍した後のものも含めて,縦桟は色分けされていないが,一体感が印象付けられる。
JR西日本によって改造されたものは,製造時には段落とし内に二つに分かれていた窓が大きな1つの窓となっている。

(7-2)2か所の突起
先に述べたように,2か所が突出しているものが存在しない以上,「2か所の突出」自体が類否判断におけるウエイトが高く,寸法の差異はこの共通性に埋没するのである。
被請求人は,孔が双方の突起部に存在することや孔の形状の差異を主張するが,「2か所の突出」が存在しない以上,細部の差異にすぎない。
なお,被請求人は,双方の突起部に孔が存在することを差異点として主張するが,理由がない。孔は安全ロープを取り付けるためのものであり,安全ロープは1本であるから,取り付け箇所が2か所であることが,需要者に注目されるとは考えられない。

(7-3)反転使用
被請求人は,イ号意匠は「反転使用」が可能であるが本件登録意匠は反転使用ができないと主張するが,全くの誤りであり,故意による誤認,主張である。
本件登録意匠も正面側を板などの対象物に押し当てて反転使用が可能なものである。

本件登録意匠においても,イ号意匠においても,共にガイド凸部のガイド縁を対象物に押し当てて使用するものであり,両者の機能に差異はないのである。
請求人のパンフレット(甲第5号証)においても「反転使用」が紹介されている。
甲第5号証において,[POINT1]の右方の,「表90°切り」が背面の突起をガイドとした使用例,「裏45°切り」が正面の突起をガイドとした使用例(被請求人のいう「反転使用」)である。
すなわち,「反転使用」が可能であるという機能においては共通するのであって,位置決め枠に形成された凸部の具体的態様が,全体観察においてどのように評価されるべきかという点に収斂されることになる。

(7-4)対称か否か
イ号意匠が,ガイド凸部が正面左側及び背面左側に設けられ,底面視及び平面視において対称に表れることは認める。
しかしながら,この種の物品を観察するに際して,通常の観察方向は正面側斜視又は背面側斜視であって,平面や底面から観察することはない。そして,上記のとおり,ガイド凸部の配置が対称であることと「反転使用」とは無関係であり,機能的な観点から配置の違いが強く認識されるということはできない。
したがって,ガイド凸部が底面視又は平面視において「対称」か否かが類否に及ぼす影響は小さいというべきである。

(8)結び
以上の次第であるから,イ号意匠は本件登録意匠の顕著な特徴である「三角形の窓と台形の窓の組み合わせ」及び「2か所の突起」において共通し,その他細部においても多くの共通点を備えたものであるから,全体として観察した場合,美感を共通にするものというべきである。
よって,イ号意匠は本件登録意匠に類似する。

(9)証拠方法
甲第5号証「道具袋に入る軽量・小型ガイド」
作成者:請求人
立証の趣旨:本件登録意匠は「反転使用」可能であること。

第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,その願書及び願書に添付した図面(図面代用写真)によれば,意匠に係る物品を「切断用定規」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現れたとおりのものである(別紙第1参照)。

すなわち,本件登録意匠は,基本的構成態様において,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた,正面視において2つの頂角を45度とした略直角三角形状で,縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上下に大きな窓を設け,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方より突出させたものであって,
具体的態様においては,
(ア)上側の窓は隅丸直角三角形状,下側の窓は隅丸直角台形状とし,
(イ)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率は約1:10であり,
(ウ)縦ガイド枠の下端突出部をややへんぺいな正方形(横長長方形)とし,
(エ)傾斜ガイド枠の下端突出部を平行四辺形とし,
(オ)縦ガイド枠の下端部に丸孔が,傾斜ガイド枠の表裏下端部に四角形状の窪みが設けてあり,
(カ)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率は約3:2であり,
(キ)位置決め枠の表面は,縦ガイド枠内側から,傾斜ガイド枠外側にかけて,一段突出しており,
(ク)一段突出した位置決め枠の表面左半分の位置に,凸部を形成し,
(ケ)位置決め枠の裏面下縁部に全長にわたり凸条を形成し,
(コ)背面視で,裏面側凸条の左半分は傾斜を介して突出し,
(サ)横桟は表裏共にそのほぼ全域に凹部を形成し,
(シ)前記位置決め枠の凸部上面,横桟の表面及び傾斜ガイド枠の裏面上部は濃い色調とし,
(ス)縦ガイド枠の表裏に目盛りを刻印し,
(セ)縦ガイド枠において,表裏面の下部から頂角まで,目盛の内側に,細長四角形状のへこみを4個形成し,
(ソ)傾斜ガイド枠の表面には,中央部より上側にへんぺいな台形のへこみを形成し,
(タ)縦ガイド枠の表面下部から傾斜ガイド枠にわたり,45度を示す線を刻印したものであり,
(チ)位置決め枠の裏面には,左側約2分の1に,やや浅い細長長方形状の凹部と,その右側に,より深い直角台形状の凹部を形成しているものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は,イ号意匠の説明書に示されたものであって,商品名を「丸鋸一番Gガイド」と称する「切断用定規」である(別紙第2参照)。
なお,両当事者の主張を総合すると,被請求人が製造及び販売するイ号意匠(商品名「丸鋸一番Gガイド」)に対し,本件登録意匠に類似するとして,請求人が警告していること,かつ,請求人は「色彩を除き意匠登録第1535895号の意匠と同一と認められるので,その公報の図面を引用する」としつつ,「……請求人は,イ号意匠が上掲登録意匠(当審注:意匠登録第1535895号の意匠)と同一ではないことを主張しているのであって,……」(弁駁書第4ページ)と主張するから,本判定においては,イ号意匠を「丸鋸一番Gガイド」と称する「切断用定規」の意匠と認定し,請求書のイ号意匠の説明に掲載されている丸鋸一番Gガイドに係る写真(正面図,背面図,正面側斜視図及び背面側斜視図)及び乙第1号証よりイ号意匠の形態を認定する。

すなわち,イ号意匠は,基本的構成態様において,縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に大きな窓を設け,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させたものとし,
具体的態様において,
(ア)上部の窓は隅丸直角三角形状,下部の窓は隅丸直角台形状とし,
(ア-1)各窓の輪郭は,本体の厚さの約4分の1の寸法分表裏面から「段落とし」に造形し,
(ア-2)「段落とし」に造形された各窓の上下中央に,段落としに対応する奥行の位置に,本体厚さの約2分の1の厚さの補助横桟を設け,
(イ)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率は約1.7:10であり,
(ウ)縦ガイド枠の下端突出部を倒立直角台形とし,
(エ)傾斜ガイド枠の下端突出部を平行四辺形とし,
(オ)縦ガイド枠の下端部に倒立角丸直角台形の大きな孔が,傾斜ガイド枠の下端部に角丸平行四辺形の大きな孔が,設けてあり,
(カ)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率は約2:3であり,
(キ)位置決め枠の表面下端に全長にわたり凸条を形成し,
(ク)この凸条の左半分は傾斜を介して突出し,
(ケ)位置決め枠の裏面下縁に全長にわたり凸条を形成し,
(コ)背面視で,裏面側凸条の右半分は傾斜面を介して突出し,
(サ)横桟は表裏共にそのほぼ全域に凹部を形成し,
(シ)前記位置決め枠の表裏における凸条の上方,横桟の表面及び傾斜ガイド枠の裏面下部は濃い色調とし,
(ス)縦ガイド枠の表裏に目盛りが刻印され,
(セ)縦ガイド枠の表面下部から傾斜ガイド枠にわたり,45度を示す矢印付きの線を刻印し,
(ソ)縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の外側側面にステンレス鋼ガイドを張り付けたものである。

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)を対比すると,意匠に係る物品については,共に「切断用定規」である。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として以下の共通点と相違点が認められる。
ア.共通点
(A)基本的構成態様において,(A-1)縦ガイド枠,傾斜ガイド枠及び位置決め枠を備えた正面視において2つの頂角を45度とした直角三角形状であって,(A-2)縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に大きな窓を設け,(A-3)縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させている点。
具体的態様においては,以下の点がある。
(B)上部の窓を隅丸直角三角形状,下部の窓を隅丸直角台形状とした点。
(C)傾斜ガイド枠の下端突出部を平行四辺形としている点。
(D)位置決め枠の裏面下縁部に全長にわたり凸条が形成されている点。
(E)裏面側凸条の半分は傾斜を介して突出している点。
(F)横桟は表裏共にそのほぼ全域に凹部を形成している点。
(G)横桟の表面が濃い色調である点。
(H)縦ガイド枠の表裏面の外側に目盛りが刻印された点。
(I)縦ガイド枠の表面下部から傾斜ガイド枠にわたり45度の線を刻印している点。

イ.相違点
(a)補助横桟につき,本件登録意匠は,設けていないのに対して,イ号意匠は,各窓の上下中央に補助横桟を設けている点。
(b)縦ガイド枠及び傾斜ガイド枠の下端突出長と全高の比率につき,本件登録意匠は,約1:10であるのに対して,イ号意匠は,約1.7:10である点。
(c)縦ガイド枠下端部の形状につき,本件登録意匠は,へんぺいな正方形であるのに対して,イ号意匠は,倒立直角台形である点。
(d)ガイド枠下端部の処理につき,本件登録意匠は,縦ガイド枠の下端部に丸孔を,傾斜ガイド枠の表裏下端部に四角形状の窪みを設けているのに対して,イ号意匠は,縦ガイド枠の下端部に倒立角丸直角台形の大きな孔を,傾斜ガイド枠の下端部に角丸平行四辺形の大きな孔を設けている点。
(e)位置決め枠の縦幅と横桟の縦幅の比率につき,本件登録意匠は,約3:2であるのに対して,イ号意匠は,約2:3である点。
(f)位置決め枠裏面側凸条の半分突出している部分につき,本件登録意匠は,背面視で左側が突出しているのに対して,イ号意匠は,背面視で右側が突出している点。
(g)位置決め枠の表面の処理につき,本件登録意匠は,縦ガイド枠内側から,傾斜ガイド枠外側にかけて,一段突出させて,その上,該突出部の左半分に凸部を形成しているのに対して,イ号意匠は,下端に全長にわたり凸条を形成し,この凸条の左半分は傾斜を介して突出している点。
(h)横桟の表面以外の濃い色調の位置につき,本件登録意匠は,位置決め枠表面の凸部及び傾斜ガイド枠の裏面上部であるのに対して,イ号意匠は,位置決め枠の表裏における凸条の上方,及び傾斜ガイド枠の裏面下部である点。
(i)45度を示す線につき,本件登録意匠は,単なる直線であるのに対して,イ号意匠は,上端側に矢印を付けた直線である点。
(j)縦ガイド枠における,表裏面の下部から頂角までの,目盛の内側に設けた細長四角形状の4つのへこみにつき,本件登録意匠は,設けているのに対して,イ号意匠は,設けていない点。
(k)傾斜ガイド枠の表面の,中央部より上側にある長方形のへこみにつき,本件登録意匠は,形成しているのに対して,イ号意匠は,形成していない点。
(l)位置決めガイド枠の裏面の凹部につき,本件登録意匠は,左側約2分の1がやや浅く,その余をやや深くした直角台形状の凹部を形成しているのに対して,イ号意匠は,形成していない点。
(m)枠の外側側面のステンレス鋼ガイドにつき,本件登録意匠は付けていないのに対して,イ号意匠は,張り付けている点。

4.類否判断
イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,検討する。
(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共に「切断用定規」であって,一致している。

(2)両意匠の形態
ア.共通点の評価
共通点(A-1)については,この種物品分野においてありふれており,両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点(A-2)については,ありふれていると言える程ではなくとも,本件登録意匠の出願前より存在する態様(乙4)であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点(A-3)については,縦ガイド枠の下端を位置決め枠の下方に突出させているものは,本件登録意匠の出願前より存在する態様(乙2?4)であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえるが,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠両方の下端を突出させたものは見受けられないから,両意匠の類否判断に相当の影響を与える。
共通点(B)については,本件登録意匠の出願前に見受けられないが,この種物品において重要と認められる各枠を,ほぼ同幅の帯状として,略中央に大きな開口部(窓)を設けることは,この種物品に係る意匠の創作としては常とう手段(乙4)といえ,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,横桟の上方及び下方に大きな窓を設けること(共通点(A-2))は,上記のとおり,本件登録意匠の出願前より存在する態様であるから,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の上下ほぼ中央に横桟を設け,その上側の窓を隅丸直角三角形状,下側の窓を隅丸直角台形状とした本件登録意匠の態様は,常とう手段及び以前より存在する方法によって創作できる形態であるから,この部分は本件登録意匠における独自性が高いとはいえず,両意匠において一定程度の共通感を醸し出すとはいえ,両意匠の類否判断において,それほど大きな影響を与えるとは認められない。
共通点(D)及び(E)については,使用時において重要な箇所の共通点であり,特徴的な態様として需要者の目に映るものであるが,裏面の限定的な部分における共通点であるから,全体観察をした場合においては,両意匠の類否判断に与える影響は限定的といえる。
共通点(F)及び(G)については,目に付きやすい意匠のほぼ中央には,会社名,商品名又は商品番号などを表示することが普通であって(イ号意匠の説明書,甲5),その方法として,別途印刷したシールをその場所に貼ることも通常の方法であり,その場合,被加工物に押し当てて使用する際に,擦過して当該シールの表面が傷付いたり,シールが剥がれたりすることを防ぐために,添付場所をへこませることは,常とう手段であるから,それほど高く評価ができない上に,その凹部の深さは僅かであるから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的といえる。
また,明るい色調の本体には,会社名などを表示する際に,目立つように濃い色調とすることは,常とう手段といえるから,横桟の表面が濃い色調であることも,両意匠の類否判断に与える影響は限定的といえる。
共通点(H)については,この種物品分野においては良く見受けられる形態であり,両意匠のみの特徴とはいえず,共通点(I)については,本体を刻印して設けた1本の直線であって,本体地肌と同じ色調であるから,それほど目立たず,両意匠の類否判断に与える影響は僅かなものであるといえる。

イ.相違点の評価
相違点(a)については,イ号意匠の上部窓及び下部窓は,段落とししており,その上下中央に補助横桟を設けても,視覚的に一体感を生じるようにしている点があり,補助横桟は,本体の厚さの約4分の1の寸法分表裏面から段落としした位置にある,本体厚さの約2分の1の厚さのものであるから,本体中央の横桟に比して,補助的な横桟と認められるが,一方で,その縦幅は,下部窓の高さ寸法の約3分の1の幅で,その窓の高さの3分の1を占める幅によって,視覚的にはもはや補助的な横桟とは見えないもので,かつ,下部窓下側開口部,下部窓補助横桟,下部窓上側開口部,上部窓下側開口部及び上部窓補助横桟が略同幅で,それらの部分がリズミカルに,繰り返し並んでいるように見えて,独特の美感を現しており,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(b)については,イ号意匠が,本件登録意匠の2倍弱突出しており,相違点(d)と合わさって,本件登録意匠に比べて,イ号意匠の方が,スリム又はシャープな印象を観者に与え,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(c)については,本件登録意匠は,傾斜ガイド枠及び縦ガイド枠が共に,枠の外側と内側が平行となっているのに対して,イ号意匠は,この部分のみが平行でなく,視覚的な印象を異にしているため,部分的な相違ではあるが,両意匠の類否判断に僅かながらも影響を及ぼしているといえる。
相違点(e)については,本件登録意匠は,会社名などを表すメインの表示部を手前(位置決め枠左側)に,サブの表示部を本体中央(横桟)に設けるために(甲第5号証より),位置決め枠の方を太くしているのに対して,イ号意匠は,サブの表示部が無く,メインの表示部を本体中央(横桟)に設けるために,横桟の方を太くしており,両意匠共にメインの方をより太い部分に表すという理にかなった同じ手法を用いつつ,メインの表示場所を異ならせた結果が,相違点(e)の相違につながっているのであるから,この点は,両意匠の類否判断に僅かながらも影響を及ぼしていると認められる。
相違点(g)については,本件登録意匠は,本体手前左側にメインの表示部を設けるのに適した形状とし,一見,反転使用ができないものに見えてしまうものであるのに対して,イ号意匠は,裏面の位置決め凸条と対称形の凸条を形成しているので,一見して反転使用ができるものと認識できる形態であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(h)については,本件登録意匠は,全て表示部であるのに対して,イ号意匠は,凸条の上方のものは表裏共に機能的なもの(すべり止めゴム)であって,表示部は傾斜ガイド枠の裏面下部のもののみであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
相違点(i)については,「共通点(I)について」で述べたとおり,本体地肌と同じ色調であり,それほど目立たない線の,更に上端のみの極小さな矢印の有無という相違であるから,この点については,両意匠の類否判断に与える影響は無いといえる。
相違点(j)については,共通点(H)で挙げた刻印された目盛と合わせて,本件登録意匠は,目盛と四角形状のへこみのある物差しの様相を呈しており,イ号意匠は,目盛のみの物差しの様相を呈しており,両意匠共に,縦ガイド枠の外側に物差し様の刻印を施しているという共通点と認められ,相違点(j)は,縦ガイド枠の外側に物差し様の刻印を施しているという共通点(H)に埋没するものであるため,両意匠の類否判断に与える影響は微弱といえる。
相違点(k)については,本体地肌と同じ色調であり,その深さは極僅かであるから,両意匠の類否判断に与える影響は微弱といえる。
相違点(l)については,やや大きな範囲を占める部分の相違であるが,本件登録意匠の具体的態様(キ)及び(ク)を具現化するとき,一定肉厚で形成したときに表れる受動的形態であり,かつ,裏面の形態であるから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的と考えられる。
相違点(m)については,枠の外側側面にステンレス鋼ガイドを貼り付けたものは,この種物品分野では珍しくなく,イ号意匠のみの特徴とはいえず,また限定的な箇所で,側面からの観察によって見えるものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は無いといえる。

また,相違点(b)ないし(d)によって,縦ガイド枠と傾斜ガイド枠の下端突出部の印象を大きく異にし,両意匠の類否判断に相当の影響を与えるとした共通点(A-3)が醸し出す印象を上回っていると認められる。

そして,イ号意匠では,被加工物を直角に切断する通常使用の場合も,斜めに切断する反転使用の場合も,位置決め枠下端の表裏の凸条がガイド縁に成るのに対して,本件登録意匠は,通常使用の場合は,位置決め枠裏面下端の凸条がガイド縁に成り,反転使用する場合は,位置決め枠の表面の一段突出した箇所の上端がガイド縁と成るものであるから,おおよそ位置決め枠の縦幅分(通常使用時の裏面ガイド縁から反転使用の表面ガイド縁までの長さ分)定規の位置が手前になるものである。これは,本件登録意匠は,反転使用時には,通常使用時に比べて,傾斜ガイド枠の下端が,被加工物下端より位置決め枠の縦幅分余計に突出することになり,その反面,イ号意匠に比べて本件登録意匠は,反転使用時には,位置決め枠の縦幅分だけ定規が手前に来るため,その分,切断有効長さが短くなる。この様に,使用時における使い勝手の違いが視覚を通じて認識できる相違点(g)は,両意匠の類否判断に及ぼす影響はとても大きいと認められる。
しかも,相違点(g)によって,本件登録意匠は,反転使用時のガイド縁を担う一段突出部分の左半分に,更に凸部を形成して目立たせ,その面を表示部としているから,横桟よりも幅を広くした(相違点(e))ことと相まって,より目に付く形態としているから,この点も含めて,意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。

したがって,両意匠の意匠に係る物品は一致するものの,その形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,類否判断に及ぼす影響が大きいと認められる相違点が幾つか存在し,意匠全体として見た場合には,これらの相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを上回って観者に別異の印象を与え,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。

5.結び
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2016-12-20 
出願番号 意願2014-12874(D2014-12874) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (K1)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 柵山 英生 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 刈間 宏信
橘 崇生
登録日 2015-04-17 
登録番号 意匠登録第1524582号(D1524582) 
代理人 特許業務法人レガート知財事務所 
代理人 庄司 修 
代理人 庄司 建治 
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