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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5
管理番号 1324915 
審判番号 不服2016-13154
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-02 
確定日 2017-01-16 
意匠に係る物品 シューズ用カバー 
事件の表示 意願2015- 16938「シューズ用カバー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,オーストラリアへの2015年1月30日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成27年(2015年)7月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「シューズ用カバー」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠は,欧州共同体商標意匠庁が2011年7月6日に発行した欧州共同体意匠公報に掲載された「靴用滑り止め」(登録番号001282057-0001)の意匠(以下,「引用意匠」という。)(特許庁意匠課公知資料番号第HH23205487号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠(以下,本願意匠と引用意匠を「両意匠」という。)を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「シューズ用カバー」であり,引用意匠は,「靴用滑り止め」であるが,いずれも靴の外側を覆うように装着して使用するためのカバーであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠を対比するため,本願意匠の斜視図を引用意匠の第1番目の図面(0001.1)の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。
(1)共通点
(A)全体を,足を覆う甲皮(以下,「甲皮部」という。)と靴底(以下,「靴底部」という。)で構成し,靴底部の周囲を甲皮部で囲み,甲皮部の周側に,略隅丸三角形状の孔と略隅丸逆三角形状の孔を交互に配している点,
(B)つま先側と踵側の履き口の上部に略台形状のつまみ部(以下,「つまみ部」という。)を突出して設けた点,
(C)甲皮部のつま先側において,つまみ部の下方に閉じた部分を設け,その両側から踵側に向かって左右対称に略隅丸三角形状の孔を設けた点,
(D)靴底部の中央部やや踵寄りに略釣鐘形状の大きな孔部(以下,「釣鐘状孔部」という。)を設けた点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)甲皮部の踵部の態様について,本願意匠は,靴底部寄りに略隅丸三角形状の孔を左右に設けているのに対して,引用意匠は,横長長円状の孔と略楕円形状の孔を上下に設けて,背面視で略「二」の字状としている点,
(イ)靴底部の底の面の態様について,本願意匠は,つま先側に略隅丸三角形状の板状部を,踵側に略馬蹄形状の板状部を設け,それぞれの板状部に小型円形状の留め部をそれぞれ3個ずつ設け,つま先側の板状部と釣鐘状孔部の間に,全体が略長方形状で多数の略八角形状の凸状を配した凹凸状の滑り止め部(以下,「凹凸状滑り止め部」という。)を設けているのに対して,引用意匠は,底の面に,中心に小さな円柱状の凸状部を設けた扁平な小型円形状の滑り止め具(以下,「滑り止め具」という。)をつま先側に7個,踵側に5個設けた態様としている点,
(ウ)靴底部の上面の靴の内側表面の態様について,本願意匠は,つま先側及び踵側に小型三角形状の凸状部を多数配し,釣鐘状孔部のつま先側には曲線状の凹状模様部を設けているのに対して,引用意匠は,扁平な小型円柱形状の凸状部をつま先側に7個,釣鐘状孔部より踵側に5個設けている点,
(エ)甲皮部の周側面の孔の態様について,本願意匠は,略隅丸三角形状と略隅丸逆三角形状の孔を左右両側面にそれぞれ5個ずつ設けているのに対して,引用意匠は,左右両側面にそれぞれ7個ずつ設けている点,
(オ)踵側のつまみ部の態様について,本願意匠は,つまみ部の甲皮部外側に横方向の筋状の凸状を設けているのに対して,引用意匠は,つまみ部の甲皮部内側に横方向の筋状模様を設けている点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,この種のシューズ用カバーの基本構成ではあるが,全体を,靴底部の周囲を甲皮部で囲んだ構成とし,甲皮部の周側に,略隅丸三角形状の孔と略隅丸逆三角形状の孔を交互に配した態様は,概括的な共通点といえるもので,この共通点によってのみでは,両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まる。
次に,共通点(B)についても,つま先側と踵側の履き口に略台形状のつまみ部を突出して設けた点が共通しているが,つまみ部を設けることは,この種の物品分野においては両意匠以外にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,意匠全体から見た場合には,目立つ部分とはいえないことから,つまみ部が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであって,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)についても,甲皮部のつま先側において,つまみ部の下方に閉じた部分を設け,その両側から踵側に向かって左右対称に略隅丸三角形状の孔を設けた態様が共通しているが,閉じた部分自体に特徴があるものとはいえず,意匠全体から見た場合には,目立つ部分とはいえないものであり,そして,その両側から踵側に向かって左右対称に略隅丸三角形状の孔を設けた態様が共通するとしても,その点によってのみでは,両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
さらに,共通点(D)についても,靴底部の底面視した中央部やや踵寄りに大きな釣鐘状孔部を設けた点が共通しているが,両意匠の靴底部の態様は,特に底面視した態様において,多数の差異点が見受けられ,釣鐘状孔部を設けたという共通点のみで,靴底部全体を類似と判断する程の大きな特徴点とはいうことができず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の甲皮部の踵部の態様について,この種の物品分野において,甲皮部については外側から見える部分であり,その踵部についてもカバーを装着する際に着目する部分であるため需要者の関心が強く,靴底部寄りに略隅丸三角形状の孔を左右に設けている本願意匠の態様は,横長長円状の孔と略楕円形状の孔を上下に設けて,背面視で略「二」の字状としている引用意匠とは,明確に差異が認められ,左右に横方向に分割している本願意匠と上下に縦方向に分割し,踵部が大きく開いた引用意匠とは,踵側の態様が需要者に与える印象が大きく異なり,目立つ部分における差異であって,両意匠の甲皮部の印象に影響を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の靴底部の底の面の態様について,つま先側に略隅丸三角形状の板状部を,踵側に略馬蹄形状の板状部を設け,それぞれの板状部に小型円形状の留め部をそれぞれ3個ずつ設け,つま先側の板状部と釣鐘状孔部の間に,全体が略長方形状で多数の略八角形状の凸状を配した凹凸状の滑り止め部を設けて,タップダンスをすることを可能としている態様が特徴的なものである本願意匠と,滑り止め具の一つずつが滑り止めの機能を果たすため,底の面に,中心に小さな円柱状の凸状部を設けた扁平な小型円形状の滑り止め具をつま先側に7個,踵側に5個設けた態様とする引用意匠とは,見た目の印象のみならず,その用途及び機能も明確に異なるものであり,需要者に与える印象が大きく異なり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の靴の内側表面の態様について,目立たない部分ではあるが,使用時に靴とカバーのずれを防止する機能を持つため,使用者が本願物品を使用する際には,注意を惹く部分であり,つま先側及び踵側に小型三角形状の凸状部を多数配し,釣鐘状孔部のつま先側には曲線状の凹状模様部を設けている本願意匠と,扁平な小型円柱形状の凸状部をつま先側に7個,釣鐘状孔部より踵側に5個設けている引用意匠とは,平面視した場合の印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)の甲皮部の周側面の孔の数の差異について,その数の違いが目立つものとはいえないが,甲皮部の周側面の孔の数の違いは,前記した差異点(ア)の甲皮部の踵側の態様における差異点と相俟って,シューズ用カバーの装飾が変化し,需要者に与える印象が異なっており,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(オ)の踵側のつまみ部の態様における差異については,細部における部分的な差異といえるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は僅かなものである。
そうして,差異点(ア)ないし(オ)の差異点が相俟って,それぞれの差異が,意匠全体として需要者に与える印象を異ならせるもので,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-16 
出願番号 意願2015-16938(D2015-16938) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B5)
最終処分 成立 
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 正田 毅
斉藤 孝恵
登録日 2017-02-10 
登録番号 意匠登録第1571491号(D1571491) 
代理人 沖中 仁 
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