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審決分類 審判    F3
管理番号 1324923 
審判番号 無効2016-880002
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-03-22 
確定日 2017-01-10 
意匠に係る物品 手帳用紙 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1443217号「手帳用紙」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1443217号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 事案の概要

本件は,請求人が,被請求人が意匠権者である意匠登録第1443217号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)についての登録を無効とすることを求める事案である。

第2 手続の経緯の概要

本件登録意匠の意匠登録第1443217号に係る手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成23年11月24日:意匠登録出願(意願2011-027105号)
平成24年 3月29日:登録査定
平成24年 5月11日:意匠権設定の登録(登録第1443217号)
平成24年 6月11日:意匠公報発行
平成28年 3月23日:無効審判請求
平成28年 5月17日:請求書副本送達(被請求人)
平成28年 7月21日:書面審理通知書(請求人及び被請求人)
平成28年 8月 5日:審尋(請求人)
平成28年 8月22日:回答書及び証拠説明書の提出(請求人)
平成28年10月21日:回答書副本送達(被請求人)

第3 請求人の主張の概要

請求人は,平成28年3月22日付け審判請求書を提出し,結論同旨の審決を求めると申し立て,その理由として要旨以下のように主張するとともに,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。

1.無効理由の要点
本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された意匠に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。よって,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は,意匠登録第1443217号の意匠公報に記載のとおり,意匠に係る物品を「手帳用紙」とし,その形態は,基本的構成態様として,(イ)縦横比が略8対11の横長用紙であり,(ロ)用紙左半分には5列の週間予定欄が表され,用紙右半分左側には残り2列の週間予定欄が表され,その余に1列の自由記入欄が表されており,(ハ)前記週間予定欄には水平な罫線が形成され,(ニ)前記自由記入欄には規則的な升目又は空欄が形成されたものである。
そして,その形態の具体的構成態様として,(ホ)前記週間予定欄が日付欄とされる第1段目,時系列欄とされる第2段目から第21段目,学習時間集計欄とされる第22段目から第27段目の全27段から成り立っており,(ヘ)各行間の高さは,第1段目の高さは第2段目の約3倍となっており,第5段目から第12段目の高さは第2段目の約9割となっており,第22段目から第27段目の高さは第2段目の約6割となっており,第3段目,第4段目及び第13段目乃至第21段目の高さは第2段目の高さと同一となっている。(ト)前記週間予定欄のうち第5段目から第12段目までは各列左側一文字分の細幅分を除き暗調子で表されており,(チ)暗調子で表された部分のうち用紙左半分部分では罫線が表されず無模様となっている。(リ)第27段目は薄桃色に表されている。(ヌ)前記水平な罫線は細線又は破線により表されている。
また,(ル)前記自由記入欄は「今週の目標」,「メモ」,「1週間の振り返り」並びに「コメント」及び「学習の記入」と題され区分けされており,(ヲ)前記「コメント」及び「学習の記入」区分は上下に配置されており,(ワ)前記自由記入欄の欄外右側やや上方には濃桃色の略縦長長方形の模様が施されたものである。
なお,本件登録意匠の裏面には表面の模様が同一に表れる。

(2)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明
甲第1号証は,本件登録意匠の出願前,平成23年11月3日付け朝日新聞に掲載された「手帳用紙」の意匠であって,その形態は,基本的構成態様として,縦横比が略8対11の横長用紙であり,用紙左半分には5列の週間予定欄が表され,用紙右半分左側には残り2列の週間予定欄が表され,その余に1列の自由記入欄が表されており,前記週間予定欄には水平な罫線が形成され,前記自由記入欄には規則的な升目又は空欄が形成されたものである。
そして,その形態の具体的構成態様として,前記週間予定欄が日付欄とされる第1段目,時系列欄とされる第2段目から第21段目,学習時間集計欄とされる第22段目から第27段目の全27段から成り立っており,各行間の高さは,第1段目の高さは第2段目の約3倍となっており,第5段目から第12段目の高さは第2段目の約9割となっており,第22段目から第27段目の高さは第2段目の約6割となっており,第3段目,第4段目及び第13段目乃至第21段目の高さは第2段目の高さと同一となっている。前記週間予定欄のうち第5段目から第12段目までは各列左側一文字分の細幅分を除き暗調子で表されており,暗調子で表された部分のうち用紙左半分部分では罫線が表されず無模様となっている。なお,前記水平な罫線は細線により表されている。
また,前記自由記入欄は「今週の目標」・「忘れてはいけないことや,生活するうえでのメモ」・「1週間の振り返り」・「先生のコメント」及び「1週間のトータルの学習時間」と題され区分けされたものである。
朝日新聞記事によると,甲第1号証に記載の意匠は,山形県鶴岡中央高校で2011年度(文中では「今年度」と記載されている)から生徒全員に配られた特製の手帳に採用された手帳用紙に係る意匠であって,この手帳は(当時)2年の学年主任・加藤伸教諭が,東京の手帳メーカー「能率手帳プランナーズ」にかけ合って開発してもらったものである。
すなわち,甲第1号証に記載の意匠は,出願日前に頒布された刊行物に記載された意匠であるとともに,出願日前から山形県鶴岡中央高校の生徒に配布されていた手帳に係る手帳用紙の意匠として公然知られた意匠である。

(3)本件登録意匠と先行意匠との対比
意匠に係る物品は,両意匠共に「手帳用紙」に関するものであり,同一の物品である。
その形態については,下記の対比図からも明らかなように,前記基本的構成態様(イ)(ロ)(ハ)(ニ)において共通する。
また,本件登録意匠は,次の具体的構成態様において甲第1号証に記載の意匠と一致する。すなわち,
本件登録意匠の具体的構成態様の(ホ)週間予定欄が全27段からなる構成,及び(ヘ)各行間の高さが,第1段目の高さは第2段目の約3倍となっており,第5段目から第12段目の高さは第2段目の約9割となっており,第22段目から第27段目の高さは第2段目の約6割となっており,第3段目,第4段目及び第13段目乃至第21段目の高さは第2段目の高さと同一となっている点において一致する(一致点1))。
加えて,本件登録意匠の具体的構成態様の(ト)前記週間予定欄のうち第5段目から第12段目までは各列左側一文字分の細幅分を除き暗調子で表されており,(チ)暗調子で表された部分のうち用紙左半分部分では罫線が表されず無模様となっているという点において一致する(一致点2))。
更に,本件登録意匠の具体的構成態様の(ル)前記自由記入欄は「今週の目標」,「メモ」,「1週間の振り返り」並びに「コメント(先生のコメント)」及び「学習の記入(1週間のトータルの学習時間)」と題され区分けされている点において一致する(一致点3))。

一方,本件登録意匠は,次の具体的構成態様において甲第1号証に記載の意匠と相違する。すなわち,
本件登録意匠の具体的構成態様(リ)第27段目は薄桃色に表されている点が甲第1号証に記載の意匠にはない点において相違する(相違点1))。
本件登録意匠の具体的構成態様(ヌ)に記載のとおり,週間予定欄における水平な罫線が細線又は破線により表されているのに対して,甲第1号証に記載の意匠では,水平な罫線が細線により表されている点において相違する(相違点2))。
本件登録意匠の具体的構成態様(ヲ)前記「コメント」及び「学習の記入」区分は上下に配置されている点について,甲第1号証に記載の意匠では,同様の区分が左右に配置されている点において相違する(相違点3))。
本件登録意匠の具体的構成態様(ワ)前記自由記入欄の欄外右側やや上方には濃桃色の略縦長長方形の模様が施されている点が甲第1号証に記載の意匠にはない点において相違する(相違点4))。

(4)本件登録意匠と先行意匠との類否
両意匠の類否を検討すると,共通する基本的構成態様(イ)(ロ)(ハ)(ニ)は,具体的構成態様(ホ)(ヘ)(ト)(チ)(ル)の共通点と共に,両意匠の基調を形成している。すなわち,
本件登録意匠の週間予定欄が全27段からなる構成,及び各行間の高さが,第1段目の高さは第2段目の約3倍となっており,第5段目から第12段目の高さは第2段目の約9割となっており,第22段目から第27段目の高さは第2段目の約6割となっており,第3段目,第4段及び第13段目乃至第21段目の高さは第2段目の高さと同一となっている,という一致点1)は,学校で過ごす昼間の時間帯に該当するスペースを狭くして,その分,放課後や帰宅後の予定を詳しく記録できるように罫線をデザインした甲第1号証に記載の意匠に特有の特徴点をそっくりそのまま写したために生じたものである。
加えて,本件登録意匠の前記週間予定欄のうち第5段目から第12段目までは各列左側一文字分の細幅分を除き暗調子で表されており,暗調子で表された部分のうち用紙左半分部分では罫線が表されず無模様となっている,という一致点2)も,授業の予定は1時間単位ではなく時限単位で管理されることを考慮してデザインした甲第1号証に記載の意匠に特有の特徴点をそっくりそのまま写したために生じたものである。
更に,本件登録意匠の前記自由記入欄は「今週の目標」・「メモ」及び「1週間の振り返り」,並びに「コメント」及び「学習の記入」と題され区分けされているという一致点3)も,学生が1週間分の目標,忘れてはいけないことや生活するうえでの気づき,1週間の反省を記載する分量を考慮してデザインした甲第1号証に記載の意匠に特有の特徴点をそっくりそのまま写したために生じたものである。

一方,以下のとおり,両意匠の差異点が類否判断に与える影響は極めて微弱なものである。すなわち,
第27段目は薄桃色の調子で表されている点が甲第1号証に記載の意匠にはないという相違点1)は,縁部を薄く単色で塗りつぶしただけ過ぎないものである。
週間予定欄における水平な罫線が細線又は破線により表されているのに対して,甲第1号証に記載の意匠では,水平な罫線が細線により表されているという相違点2)は,文字を水平に記載していくための補助線の線種が異なっているにすぎないものである。なお,甲第2号証は,本件登録意匠と罫線線種が異なる「手帳用紙」に係る意匠が採用されている2013年度版「能率手帳スコラ」と称される手帳である。当該手帳の末尾ページには「意匠登録第1443217号」と本件登録意匠番号が記載されていることから,相違点2)程度の線種の相違が類否判断に与える影響は極めて微弱なものである,と被請求人自らも考えていることは明らかである。
本件登録意匠では「コメント」及び「学習の記入」の区分が上下に配置されているのに対し,甲第1号証に記載の意匠では,同様の区分が左右に配置されているという相違点3)については,同一領域内における左右分割を上下分割へ変更した程度のものである。
自由記入欄の欄外右側やや上方には濃桃色の略縦長長方形の模様が施されている点が甲第1号証に記載の意匠にはないという相違点4)については,手帳や辞書などの冊子において通常見受けられるインデックス模様を付したに過ぎないものである。
上記の通り,両意匠の差異点は,甲第1号証に記載の意匠に特有の個性を変更することなく,ごく一部の領域を有色又は無色で塗りつぶし,罫線の線種を変更した結果生じたものに過ぎず,本件意匠の需要者の視覚を通じて起させる美感に影響を及ぼすほどのものではない。

このように両意匠を意匠全体として観察する場合,両意匠の差異点は両意匠の共通感を凌駕するものではないから,両意匠は,需要者の視覚を通じて起させる美感を共通にしており,互いに類似するものである。

(5)むすび
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受ける事ができないものであり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とされるべきものである。

3.証拠方法
(1)本件登録意匠が,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであることを,甲第1号証及び甲第2号証により立証する。

(2)証拠の表示
ア 甲第1号証:
被請求人のウェブサイトにおいて公開されている2011年(平成23年)11月3日付け朝日新聞のプリントアウト(情報URL:http://www.noltyplanners.co.jp/pdf/media_asahi.pdf)及び掲載日が明示された同日付朝日新聞の該当箇所(一部抜粋)の写し

イ 甲第2号証:
被請求人((旧)株式会社能率手帳プランナーズ。その後,商号変更により,株式会社NOLTYプランナーズ。)が販売した2013年度版「能率手帳スコラ」(一部抜粋)の写真の写し

第4 被請求人の答弁

特許庁より被請求人に対し,平成28年5月18日に審判請求書を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。

第5 当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成23年(2011年)11月24日に意匠登録出願(意願2011-27105号)され,平成24年5月11日に登録の設定(意匠登録第1443217号)がなされ,平成24年6月11日に意匠公報が発行されたものであって,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「手帳用紙」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.請求人が主張する無効の理由
請求人が,意匠法第48条第1項第1号の規定に基づき本件登録意匠について主張する意匠登録無効事由は,以下のとおりである。

本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された意匠(以下「イ号意匠」という。)に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。
よって,意匠法第48条第1項第1号により,その登録は無効とされるべきものである。

3.イ号意匠
イ号意匠は,平成23年11月3日付けで発行された朝日新聞の朝刊第34頁に掲載された「中高生にビジネス手帳」の記事における「手帳用紙」の意匠であって,その形態は,同新聞に掲載された写真により現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

4.無効理由の検討
請求人の主張を踏まえ,本件登録意匠が,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否かについて,本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠が類似するか否かについて,以下検討する。

(1)両意匠の対比
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「手帳用紙」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

次に,両意匠の形態を対比すると,形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,イ号意匠では,綴じられた左右2枚の用紙からなる見開きの2頁が写真に現れているが,この手帳用紙の分野では,用紙の表面及び裏面を見開き2頁と同様の形態とし,それを複数枚綴じることで,見開きの状態では,用紙表面の右側と次の用紙裏面の左側が見開き2頁として表れるように構成されることが通常なされるところであるから,イ号意匠についても,本件登録意匠と同様に,左右2枚の用紙からなる見開き2頁と同様の形態が,手帳用紙1枚に施されたものであるとして,以下対比する。
また,イ号意匠における手書きによる文字及び図形の記載は,手帳用紙に後から記載された部分であるから,これらを類否判断の対象とはしない。

まず,共通点として,
(A)全体は,縦横比を約1:1.4とする横長長方形状とし,その四辺の縁部分,及び中央の縦方向に渡って細幅帯状の余白を設け,この余白以外の部分(以下「記入部分」という。)に縦横の枠線及び罫線からなる線模様,並びに図形及び文字を用紙の表面及び裏面に表したものであり,この記入部分は,左右を約7:3に分け,その左側には毎日の予定及び学習時間を記入する部分(以下「スケジュール記入欄」という。)とし,その右側には文章及び一週間の学習時間を記入する部分(以下「自由記入欄」という。)とする構成としている点,
(B)余白で囲まれた用紙の左半分側は,縦長長方形枠状の平日の予定を記入する記入欄(以下「平日予定欄」という。)を5列設け,左右両端部の平日予定欄においては,この予定欄を構成する外側の枠線のみ施されていないものであって,
(B-1)平日予定欄は,上から順番に,略正方形枠状の日付及び曜日を記入する記入欄(以下「日付欄」という。),欄の左寄り部分を垂直方向の罫線(以下「縦罫線」という。)で区切り,その左側に数字を縦方向に設け,その右側に上から4枠目をこの欄の約1/3の縦幅分を占める略縦長長方形状の白地部分(以下「授業記入欄」という。)とし,その余に12本の水平方向の罫線(以下「横罫線」という。)を施した構成からなる,略縦長長方形枠状の一日のスケジュールを記入する記入欄(以下「平日時系列欄」という。),平日時系列欄と同様に欄の左寄り部分を縦罫線で区切り,その右側に「/(スラッシュ)」記号及び「分」の文字を施し,4本の横罫線を等間隔に設けた,略横長長方形枠状の学習時間を記入する記入欄(以下「学習時間欄」という。),及び時系列欄と同様に,欄の左寄り部分を縦罫線で区切り,その左側に「計」の文字,その右側を学習時間欄と同じ形態とした,略横長長方形枠状の学習時間の合計を記入する記入欄(以下「集計欄」という。)を配置した構成としている点,
(C)余白で囲まれた用紙の右半分側は,その左側に休日の予定を記入する縦長長方形枠状の記入欄(以下「休日予定欄」という。)が2列設けられ,その右側に自由記入欄が設けられており,左側の休日予定欄においては,この予定欄を構成する左側の枠線のみ施されておらず,自由記入欄には,上から,自由記入欄の約1/7.7を占める略横長長方形枠状の今週の目標を記入する升目が施された記入欄(以下「目標欄」という。),自由記入欄の約1/2.4を占める略正方形枠状のメモを記入する升目が施された記入欄(以下「メモ欄」という。),略横長長方形枠状の一週間の振り返りについて記入する升目が施された記入欄(以下「一週間振り返り欄」という。)を配し,その下方に,略長方形枠状の先生からのコメントを記入する升目が施された記入欄(以下「コメント欄」という。),及び欄の左寄り部分を縦罫線で区切った略長方形枠状の一週間トータルの学習時間について記入する記入欄(以下「トータル学習時間欄」という。)を設けたものであって,用紙の右半分側上方に「〔 〕まで あと〔 〕週」と記載されている点,
(C-1)休日予定欄は,平日予定欄の授業記入欄に該当する部分を,欄の左寄り部分を縦罫線で区切り,その左側に数字を縦方向に設け,その右側にやや幅の狭い7本の横罫線を等間隔に施した構成とし,その余は,平日予定欄と同様な形態としている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)コメント欄,トータル学習時間欄の形態及び配置態様について,本件登録意匠は,自由記入欄の約1/12の縦幅分を占める横長長方形枠状のコメント欄と,自由記入欄の約1/5.8の縦幅分を占める横長長方形枠状のトータル学習時間欄を上下に配置しているのに対して,イ号意匠は,自由記入欄下部の約1/3.7の縦幅分を占める部分において,自由記入欄の約1/2.6の横幅の縦長長方形枠状のコメント欄の左側に,自由記入欄の約1/2.2の横幅の縦長長方形枠状のトータル学習時間欄を並べて配置している点,
(イ)一週間振り返り欄の態様について,本件登録意匠は,自由記入欄の約1/5.1の縦幅分を占める大きさとしているのに対して,イ号意匠は,自由記入欄の約1/5.4の縦幅分を占める大きさとしている点,
(ウ)平日及び休日時系列欄,並びに学習時間欄における縦及び横の罫線の態様について,本件登録意匠は,破線によって表しているのに対して,イ号意匠は,細線によって表している点
(エ)日付欄に施された略正方形小模様の数について,本件登録意匠は,日付欄左側に略正方形小模様を縦一列に3つ設けているのに対して,イ号意匠は,同様な模様を縦一列に4つ設けている点,
(オ)平日時系列欄の授業記載欄及び休日予定欄の授業記載欄に該当する部分の色彩の有無について,本件登録意匠は,当該欄の左端部に僅かな余地を残して薄桃色が施されているのに対して,イ号意匠には,そのような色彩が施されていない点,
(カ)集計欄の色彩の有無について,本件登録意匠は,当該欄に授業記載欄のものより僅かに濃い薄桃色が施されているのに対して,イ号意匠には,そのような色彩が施されていない点,
(キ)用紙右側縁部の余白に施された縦長長方形状の桃色模様の有無について,本件登録意匠は,用紙縦方向の上から約1/5の位置から,縦横比約2:1の縦長長方形状で明るい桃色の模様を施しているのに対して,イ号意匠には,そのような模様は施されていない点,
が認められる。

(2)両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様に加えて,共通点(B)ないし(C-1)の各部の態様までもがほぼ一致する両意匠は,意匠の基調において共通しているといえる。
とりわけ,共通点(B-1)の授業記入欄には罫線を設けずに白地部分とした点は,スケジュールの授業時間にあたる記載スペースの幅を狭め,他の部分の記載スペースを広くとるための工夫であって,このような従来にはない特徴的な態様までもが共通している両意匠は,需要者に対して共通した印象を更に強く与えるものである。
そして,これら共通点(A)ないし(C-1)が相まって生じる視覚的効果は,学生向け手帳として注視される各部位の形態の共通性と相まって需要者に共通する印象を強く与えるものであるから,上記の共通点(A)ないし(C-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいといえる。

これに対し,相違点(ア)ないし(キ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱にとどまるものであって,上記共通点(A)ないし(C-1)が与える強い共通の印象を覆すほどのものではない。
すなわち,請求人が主張する相違点(ア)コメント欄,トータル学習時間欄の形態及び配置態様については,この手帳用紙の分野において,左右に並べて配置した項目や欄を,その縦横比を変更して上下に並べ替えて配置することは極普通に行われており,本件登録意匠のトータル学習時間欄の形態も升目が施された横長長方形状の左側に長方形枠を6つ縦に並んで配設したまでのものであって,特段特徴があるとはいえないものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるものである。
次に,相違点(イ)一週間振り返り欄の態様,相違点(ウ)平日及び休日時系列欄,並びに学習時間欄における縦及び横の罫線の態様,相違点(エ)日付欄に施された略正方形模様の数については,この分野において,各欄の大きさを適宜変更すること,罫線を構成する線の種類を細線から破線へ変更すること,及び各項目の前の記号の増減程度の変更は極普通に行われており,これらの形態を特段特徴のあるものとして高く評価することはできず,それ以外の重要な各部位がほぼ一致する両意匠の共通性に埋没する程度のものであるから,これらの相違点(イ)ないし(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,相違点(オ)平日時系列欄の授業記載欄及び休日予定欄の授業記載欄に該当する部分の色彩の有無,及び相違点(カ)集計欄の色彩の有無については,手帳用紙の分野では,重要項目を見やすくするために,当該欄に薄い色を施すことは極普通に見られるところであり,その色彩が薄い桃色であることも特徴として評価をすることはできず,それ以外のスケジュール記入欄の各部位がほぼ一致する両意匠の共通性に埋没するものであるので,これらの相違点(オ)及び相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
更に,相違点(キ)用紙右側縁部の余白に施された縦長長方形状の桃色模様の有無については,この種物品分野では,インデックスのために該部位に縦長長方形状の色彩模様を施すことは極普通に行われているところであるから,該部位を本件登録意匠のみの特徴であると評価をすることはできず,この相違点(キ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱である。
そして,これらの相違点(ア)ないし(キ)が相まって生じる視覚的効果を考慮したとしても,これらの相違点は,前記共通点(A)ないし(C-1)が与える共通の印象を覆して,両意匠の類否判断を左右するほどのものとはいえない。

(3)両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,その形態においても,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいのに対して,相違点が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから,意匠全体として見た場合,本件登録意匠はイ号意匠に類似するものと認められる。

第6 むすび

以上のとおりであって,本件登録意匠は,意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであり,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないものであるにもかかわらず意匠登録を受けたものであるから,意匠法第48条第1項第1号に該当し,その意匠登録を無効とすべきものである。

審判に関する費用については,意匠法第52条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。

別掲


審理終結日 2016-10-18 
結審通知日 2016-10-21 
審決日 2016-11-29 
出願番号 意願2011-27105(D2011-27105) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (F3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 山田 繁和
江塚 尚弘
登録日 2012-05-11 
登録番号 意匠登録第1443217号(D1443217) 
代理人 砂山 麗 
代理人 永井 浩之 
代理人 宮嶋 学 
代理人 寺下 雄介 
代理人 副田 圭介 
代理人 高田 泰彦 
代理人 柏 延之 
代理人 黒川 朋也 
代理人 布施 哲也 
代理人 朝倉 悟 
代理人 鰺坂 和浩 
代理人 佐藤 英二 
代理人 長谷川 芳樹 
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