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審決分類 審判    C3
管理番号 1324931 
審判番号 無効2014-880018
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-12-10 
確定日 2017-01-25 
意匠に係る物品 バケツ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1509040号「バケツ」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第1509040号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は,平成26年12月10日付けの審判請求書において,「登録第1509040号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として甲第1ないし33号証の書証を提出した。

1.意匠登録無効の理由の要点
(無効理由1)
本件登録意匠(登録第1509040号意匠)は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー801」に係る意匠(以下,「引用意匠1」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項により無効とすべきである。
(無効理由2)
本件登録意匠は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー102」に係る意匠(以下,「引用意匠2」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項により無効とすべきである。

2.手続の経緯
出願 平成25年11月28日
登録 平成26年9月12日

3.本件登録意匠を無効とすべき理由
イ 本件登録意匠の説明(要旨等)
本件登録意匠の構成は,次の通りである。
1)本体と蓋体とからなる蓋付きバケツである。
2)本体の上端部には,外側に向かって水平に突出するフランジが全周に亘って設けられている。
3)本体は,前記フランジ下の直径が底部の直径よりもやや大きく,また,その高さが底部の直径よりもやや短く形成されており,平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状をなしている。
4)本体の周側面には,前記フランジ下から底部までに亘って縦方向の山形の突条が多数連続して形成されている。
5)前記突条の山形は,中央部が峰をなしており,左右が対称をなしている。
6)前記突条は,上端側から下端側に向かって幅が緩やかに狭くなっている。
7)本体上端の開口外側の対向する位置には,平面視半円状に形成された細板状の取っ手の端部が取り付けられている。
8)蓋体は,円板状の天板と,その下面の外周近傍の内側に同心円状に設けられた突片とから構成されている。
9)蓋体の天板の上面には,同一幅の山形の突条が全面に亘って多数連続して形成されている。
10)前記突条の山形は中央部が峰をなしており,左右が対称をなしている。
11)蓋体の裏面に設けられた前記突片の内側には,同一幅の山形の突条が全面に亘って多数連続して形成されており,その突条と平行をなす二本の突片とその突条と直交する二本の突片が井桁状に形成されている。
12)蓋体の裏面の中央には,直交する細い円柱体とその先端部に設けられた小さくて薄い円板とからなる蓋体引掛け部が形成されている。
口 引用意匠1の説明(要旨等)
1)本体と蓋体とからなる蓋付きバケツである。
2)本体の上端部には,外側に向かって水平に突出するフランジが全周に亘って設けられている。
3)本体は,前記フランジ下の直径が底部の直径よりもやや大きく,また,その高さが底部の直径よりもやや短く形成されており,平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状をなしている。
4)本体の周側面には,前記フランジ下から底部までに亘って縦方向の山形の突条が多数連続して形成されている。
5)前記突条の山形は,中央部が峰をなしており,左右が対称をなしている。
6)前記突条は,上端側から下端側に向かって幅が緩やかに狭くなっている。
7)本体上端の開口外側の対向する位置には,平面視半円状に形成された細板状の取っ手の端部が取り付けられており,その取っ手の両端部はやや幅広となっていて,その端部の一方に小さい円形の透孔が設けられている。
8)蓋体は,円板状の天板と,その下面の外周近傍の内側に同心円状に設けられた突片とから構成されている。
9)蓋体の天板の上面には,同一幅の山形の突条が全面に亘って多数連続して形成されている。
10)前記突条の山形は中央部が峰をなしており,左右が対称をなしている。
ハ 引用意匠2の説明(要旨等)
1)本体と蓋体とからなる蓋付きバケツである。
2)本体の上端部には,外側に向かって水平に突出するフランジが全周に亘って設けられている。
3)本体は,前記フランジ下の直径が底部の直径よりもやや大きく,また,その高さが底部の直径よりもやや長く形成されており,平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状をなしている。
4)本体の周側面には,前記フランジ下から底部までに亘って縦方向の山形の突条が多数連続して形成されている。
5)前記突条の山形は,中央部が峰をなしており,左右が対称をなしている。
6)前記突条は,上端側から下端側に向かって幅が緩やかに狭くなっている。
7)本体上端の開口外側の対向する位置には,平面視半円状に形成された細板状の取っ手の端部が取り付けられており,その取っ手の両端部はやや幅広となっていて,その端部の一方に小さい円形の透孔が設けられている。
8)蓋体は,円板状の天板と,その下面の外周近傍の内側に同心円状に設けられた突片とから構成されている。
9)蓋体の天板の上面には,同一幅の山形の突条が全面に亘って多数連続して形成されている。
10)前記突条の山形は中央部が峰をなしており,左右が対称をなしている。
ニ 本件登録意匠と引用意匠との類否
(ア)意匠法にいう「意匠」とは,物品(物品の部分を含む。)の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいうのであり(意匠法第2条第1項),同法第3条第1項第3号が,同項第1号,第2号の意匠(公知意匠)と並んで,これに類似する意匠についても意匠登録を受けることができない旨規定しているのは,公知意匠に係る物品と同一又は類似の物品につき,公知意匠に類似する美感を起こさせるような意匠については,独占的実施権である意匠権を付与するに値しないと考えられるからであり,意匠権の効力が,登録意匠に類似する意匠,すなわち,登録意匠に係る物品と同一又は類似の物品につき,登録意匠と類似の美感を起こさせる意匠について及ぶものとされている(同法第23条)ことと裏腹の関係にあるものである。
したがって,同法第3条第1項第3号に係る意匠の類否判断とは,同号該当の有無が問題とされている意匠と公知意匠のそれぞれから生ずる美感の類否についての判断をいうものであり,その判断は,意匠に係る物品の全体に係る構成態様及び各部の構成態様について認定した共通点及び差異点を,それらが類否判断に与える影響を各々評価した上で,それらを総合して行うべきものである。
(イ)本件登録意匠と引用意匠1及び2の意匠に係る物品は,いずれも「バケツ」であるから同一である。
(ウ)本件登録意匠と引用意匠1の共通点及び差異点
本件登録意匠と引用意匠1は,各構成態様1)ないし6),8)ないし10)において共通している。また,両者は,構成態様7)において,「本体上端の開口外側の対向する位置には,平面視半円状に形成された細板状の取っ手の端部が取り付けられて」いる点で共通しており,引用意匠1では,その取っ手の両端部がやや幅広となっていて,その端部の一方に小さい円形の透孔が設けられている点で相違する。さらに,本件登録意匠の構成態様11)及び12)は,引用意匠1には存在しておらず,相違する。
しかし,これらの相違点は,両意匠を全体的に観察した場合,前述した共通点に比べていずれも僅かな違いであるから,美感に影響を及ぼす効果はきわめて限定的である。
(エ)本件登録意匠と引用意匠2の共通点及び差異点
本件登録意匠と引用意匠2は,構成態様1)及び2),4)ないし6),8)ないし10)において共通している。また,両者は,構成態様3)において,「本体は,前記フランジ下の直径が底部の直径よりもやや大きい」点,及び,本体が「平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状をなしている」点において共通しており,引用意匠2では本体の「高さが底部の直径よりもやや長く形成されて」いる点で相違している。また,構成態様7)において,「本体上端の開口外側の対向する位置には,平面視半円状に形成された細板状の取っ手の端部が取り付けられて」いる点で共通しており,引用意匠2では,その取っ手の両端部がやや幅広となっていて,その端部の一方に小さい円形の透孔が設けられている点で相違する。
本件登録意匠の構成態様11)及び12)は,引用意匠2には存在しておらず,相違する。
しかし,これらの相違点は,両意匠を全体的に観察した場合,前述した共通点に比べていずれも僅かな違いであるから,美感に影響を及ぼす効果はきわめて限定的である。
(オ)特段の事情
(i)引用意匠1及び2の際立った特徴
引用意匠1及び2に係るバケツは,後述のとおり,平成5年(1993年)に,請求人が創作して製品化したものであり,現在に至るまで,20年以上の長きに渡って製造,販売を継続しているものである。
引用意匠1に係るバケツは,甲第1号証に示す製品名「Way-be 801(フタ)」製品番号050919(VE),050834(G),050841(B),甲第2号証に示す製品名「Way-beカラーバケット(フタ付き)801」製品番号216629(BL),216636(RD),216643(YE),甲第3号証に示す製品名「Fraichair Bucket S/フレイチェアーバケット S」製品番号230588(GR),230595(PK),230601(YE),甲第4号証に示す製品名「omnioutil S/オムニウッティ S」製品番号223757(PL),223764(PK),223771(OR),223788(TB),223795(GR),228240(BL),228257(IV),228264(RPK),228271(CA),228288(BR),228783(WH),228790(BK)である。
引用意匠2に係るバケツは,甲第1号証に示す製品名「Way-be102(フタ)」製品番号050926(VE),050933(G),050940(B),甲第2号証に示す製品名「Way-be カラーバケット(フタ付き)102」製品番号216650(BL),216667(RD),216674(YE),甲第3号証に示す製品名「Fraichair Bucket L/フレイチェアーバケット L」製品番号230618(GR),230625(PK),230632(YE),甲第4号証に示す製品名「omnioutilL/オムニウッティL」製品番号223873(PL),223880(PK),223897(OR),223903(TB),223910(GR),228295(BL),228301(IV),228318(RPK),228325(CA),228332(BR),228806(WH),228813(BK)である。
その間に他人が類似したデザインのバケツを販売した事実は,本件登録意匠に係るバケツを除き,存在していないものである。そのため,引用意匠1及び2は,本件登録意匠の登録出願前のバケツというジャンルにおいて際立った特徴を有していたものである。
なお,引用意匠1と引用意匠2は,構成態様3)において,本体の高さがわずかに異なるだけで,その他は同一であるから,実質的に同一の意匠である。
(ii)グッドデザイン賞の受賞
引用意匠1及び2に係るバケツ(製品名「ウェイビー801」及び「ウェイビー102」)は,平成6年(1994年)に通商産業大臣から「グッド・デザイン商品選定証」を授与され,また,中小企業庁長官から「グッド・デザイン中小企業庁長官賞」を受賞した(甲第5号証ないし甲第7号証)。
(iii)グッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞
引用意匠に係るバケツは,平成22年(2010年)に「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞した(甲第8号証,甲第9号証)。このように,引用意匠に係るバケツは,グッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞によって,長年にわたり生活者に愛され支持され続けた優れたデザインを有する製品であることが公的に認定されたものである。
(iv)引用意匠の周知性
引用意匠に係るバケツは,平成5年から発売を開始し,最近5年間の販売個数は,平成21年に約7万個,平成22年には約19万5000個,同23年には約15万7000個,平成24年には約17万5000個,平成25年には13万5000個に達している(甲第10号証)
(v)グッドデザイン賞としてのPR
グッドデザイン賞を主催する公益財団法人日本デザイン振興会(JDP)は,以下の広報活動を通じて,グッドザイン賞の受賞作品の普及とPRに努めており,平成22年にグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した引用意匠に係るバケツも,公益財団法人日本デザイン振興会の実施する以下の広報活動を通じて,世間一般に対して,広くPRされ,周知された(甲第11号証)。
a)メディア向けPR活動
国内向けプレスリリースを通年で合計15回配信。
うちグッドデザイン賞事業関連は12回配信。
b)主な媒体掲載
〈グッドデザイン賞関連〉
・サンデー毎日2010年10月27日号に掲載
〈グッドデザイン大賞関連〉
・2010年11月10日 YAHOO!newsトップ
・2010年11月10日 news every (日本テレビ)
・日経デザイン 2011年1月号
・モノマガジン 2011.1.2-16号
・ブレーン 2011年1月号
c)JDPメールマガジンによる広報
一般向けの情報発信として,JDPメールマガジンを各月1回ずつ合計12回定期配信(各回の配信件数は約1万件)。
(vi)雑誌での紹介
引用意匠に係るバケツの販売個数の急増に伴い,雑誌に取り上げられることが多くなり,平成22年中に6回,同23年中に3回,同24年中に4回,同25年中に4回(合計17回),主に女性を対象にした生活情報関連の全国誌を中心に取り上げられた(甲第12号証ないし甲第29号証)。
その中で,ESSE(月刊誌)は,引用意匠に係るバケツを,平成22年3月号,同年10月号で紹介しており,その発行部数は,それぞれ51万3100部,62万4667部(いずれも3か月累計)に達している。「MART」(月刊誌)は,平成22年11月号,同23年10月号,同24年10月号で紹介しており,その発行部数は,それぞれ21万1467部,21万0034部,23万9400部(いずれも3か月累計)となっている。さらに,「素敵な奥さん」(月刊誌)も,平成23年6月,同25年1月で紹介しており,発行部数は,それぞれ21万4167部,19万1350部(いずれも3か月累計)となっている。
(vii)インターネットWEBショップにおける引用意匠に係るバケツに対するレビュー数は,バケツ部門で第一位となっている(甲第30号証)。
また,楽天ショップにおける引用意匠に係るバケツに対するレビュー数も多数に及んでいる(甲第31号証)。
(viii)以上の諸事情に照らすと,引用意匠に係るバケツの前記の形態上の特徴は,遅くとも平成23年初頭ころまでには,インテリアファッションに関心を抱いている需要者層に,請求人の製造販売に係る商品であることを示す商品表示としても広く認識されていたものである。また,引用意匠に係るバケツの形態上の特徴は,遅くとも平成23年初頭ころまでには,インテリアファッションに関心を抱いている需要者層に広く知られるようになり,請求人の製造販売に係る商品であることを示す商品表示としても周知となったものである。
(ix)被請求人が本件登録意匠を出願するに至った経緯
請求人と披請求人は,平成25年2月,請求人製品(引用意匠に係るバケツ)を被請求人の10店舗程度の店舗にて試験販売することに合意し,請求人は,被請求人の仕入先商社に対し,請求人製品の販売を開始し,販売個数は累計で1248個に達した(甲第32号証)。
ところが,それから数か月も経たない平成25年9月,披請求人は,突然,請求人製品の販売を中止し,平成25年10月19日,被請求人の仕入先商社を通じて,請求人製品の流通在庫203個を返品してきた(甲第33号証)。そして,被請求人は,請求人製品の試験販売を中止した直後,被請求人製品の販売を開始し,その後,平成25年11月28日に本件登録意匠を出願したものである。したがって,本件登録意匠が,引用意匠に基づいて創作されたことは明らかである。
(カ)引用意匠1及び2の構成態様1)ないし10)は,請求人がその製造販売する蓋付きバケツに施してきたものであって,かかる意匠を施した蓋付きバケツが,請求人の製造販売する商品として,長年にわたり,多量に市場に流通してきたために,本件登録意匠の登録出願前までに,かかる構成態様1)ないし10)は,請求人の商品表示としても需要者に広く知られるに至っていたものである。かかる構成態様1)ないし10)は看者の注意を引くものというべきである。
構成態様1)乃至10)は,両意匠の意匠に係る物品におけるその位置関係,意匠全体に占めるその割合,その機能等にかんがみて,両意匠の最も特徴的な部分であり,看者の注意を強く引くものであると認めることができ,本件登録意匠と引用意匠は,このような構成態様において共通するものである。これに対し,構成態様11)及び12)は,いずれも看者の注意を引かない微差である。
そうすると,その余の差異点も含め,本件登録意匠と引用意匠との差異点は,両意匠の最も特徴的な部分であり看者の注意を強く引くものであると認められる各構成態様1)ないし10)における共通点を凌駕するものとはいえず,両意匠が意匠全体として異なる美感を起こさせるものではないから両意匠は類似するというべきである。
4.むすび
したがって,本件登録意匠は,引用意匠と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

5.証拠方法
引用意匠が本件登録意匠の出願前に,公然知られた意匠であったことを証するため甲第1号証ないし甲第29号証を提出する。
(1)甲第1号証 ウェイビー 販促用リーフレット(1993年発行)
(2)甲第2号証 ウェイビー 販促用リーフレット(2004年6月発行)
(3)甲第3号証 フレイチェアーバケット 販促用リーフレット(2013年10月発行)
(4)甲第4号証 八幡化成商品カタログ(2014年1月発行)
(5)甲第5号証 平成6年度グッド・デザイン商品選定証 写し
(6)甲第6号証 平成6年度グッド・デザイン中小企業庁長官特別賞 賞状 写し
(7)甲第7号証 公益財団法人日本デザイン振興会のウェブページ 写し
(8)甲第8号証 2010年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞 賞状 写し
(9)甲第9号証 公益財団法人日本デザイン振興会のウェブページ 写し
(10)甲第10号証 陳述書 写し
(11)甲第11号証 公益財団法人日本デザイン振興会からのPR活動確認書FAX 写し
(12)甲第12号証 雑誌「Mart」2010年10月号 写し
(13)甲第13号証 雑誌「Mart」2012年11月号 写し
(14)甲第14号証 雑誌「Mart」2013年10月号 写し
(15)甲第15号証 雑誌「ESSE」2010年3月号 写し
(16)甲第16号証 雑誌「ESSE」2010年10月号 写し
(17)甲第17号証 雑誌「すてきな奥さん」2011年6月号 写し
(18)甲第18号証 雑誌「すてきな奥さん」2013年1月号 写し
(19)甲第19号証 雑誌「ELLE DECOR」2011年4月号 写し
(20)甲第20号証 雑誌「EFiL」2010年5月号 写し
(21)甲第21号証 雑誌「趣味の園芸 やさいの時間」2012年9月号 写し
(22)甲第22号証 雑誌「きょうの健康」2012年9月号 写し
(23)甲第23号証 雑誌「ガーデン&ガーデンきょうの健康」2012年春号 写し
(24)甲第24号証 雑誌「NEW MINI STYLE MAGAZINE」 2010年春号 写し
(25)甲第25号証 雑誌「男のインテリアバイブル」2011年秋冬号 写し
(26)甲第26号証 雑誌「クロワッサン」2010年5月25日号 写し
(27)甲第27号証 雑誌「住まいの提案,岐阜。」2013年秋冬号 写し
(28)甲第28号証 通販カタログ「FAMiLY MAiL」2014年 3・4月号 写し
(29)甲第29号証 雑誌「ふくふく」2013年11月号 写し
(30)甲第30号証 楽天市場のウェブページ 写し
(31)甲第31号証 楽天市場のウェブページ 写し
(32)甲第32号証 売上伝票 写し
(33)甲第33号証 売上伝票 写し


第2 被請求人の答弁及び理由
1.答弁の趣旨
被請求人は,請求人の申立及び理由に対して,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」旨の答弁をした。

2.答弁の理由
平成26年12月10日付の審判請求書において,請求人は,被請求人の所有する意匠登録第1509040号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)が,甲第1号証乃至甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー801」に係る意匠(以下,「引用意匠1」という。)及び製品名「ウェイビー102」に係る意匠(以下,「引用意匠2」という。また,引用意匠1と引用意匠2を併せて,単に「引用意匠」ということがある。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべき旨を主張した。
これに対し,被請求人は,本件登録意匠が,本件審判請求書に記載の上記無効理由に該当しない旨を,審判請求書の「請求の理由」の主な記載内容に対応させる形で,以下の通り答弁する。

(1)「本件登録意匠を無効とすべき理由」について
請求人は,3.本件登録意匠を無効とすべき理由の項で当該理由について述べているが,先ず,これらの記載中,不正確な点につき指摘する。
イ 本件登録意匠の説明(要旨等)
請求人は,5)において,「突条の山形は,中央部が峰をなしており」と記載しているが,本件登録意匠の「A-A線拡大端面図」及び「B部拡大図」から明らかなように,「突条の山型は,中央部が鋭く尖った頂点を形成」していると捉えるのがより適切である(乙第1号証として示す両意匠の対比図の「本件登録意匠」B部拡大図の青色折れ線部参照)。
更に付言すれば,「山型の構成を呈していることにより,山と谷のいずれにおいてもその頂点及び底部に直線が形成され,その結果,本体の周側面に多数の直線が表出している」との捉え方が妥当である。
蓋体部における突条についての10)記載についても,上記と同様,「突条の山型は,中央部が鋭く尖った頂点を形成」していると捉えるのが適切である。その結果,「多数の直線が表出している」点も上記と同様である。
尚,3)において,「平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状」と記載しているが,平面視は,あくまで平面図に表われているような円形であるため,「逆円錐台形状」として認識し得るのはおそらく斜視であると考えられる。
7)において,「平面視半円状に形成された細板状の取っ手の端部」と記載されているのも,おそらく「側面視半円形状?」の誤りであると思われる。
ロ 引用意匠1の説明(要旨等)
請求人は,4)において,「フランジ下から底部までに亘って縦方向の山形の突条が多数連続して形成」と記載しているが,突条の態様は,山型というよりは,なだらかに波打ったような「波型」と捉えるのが妥当である。
また,5)においても,「突条の山形は,中央部が峰をなしており」と記載しているが,「突条の波型は,なだらかに波打ったように形成」されていると捉えるのが適切である(乙第1号証として示す両意匠の対比図の「引用意匠」甲第30号証(抜粋)の青色波線部参照)。
更に付言すれば,「波型の構成を呈しているため,山型のように多数の直線が表出することはなく,波の隆起部が,光の方向によってやや幅のある陰影を形成するにすぎない」との捉え方が妥当である。
蓋体部についての9),10)における突条の記載も,[波型]と捉えるのが妥当である。その結果,「山型のように多数の直線が表出することがない」点等も上記と同様である。
また,7)における取っ手の端部の態様につき,「平面視半円状」で「やや幅広」とあるが,「平面視」が,おそらく側面視の誤りであるのは前記(イ 本件登録意匠の説明(要旨等))と同様であり,「半円状」で「やや幅広」とあるのも適切な表現ではなく,「取っ手部より明らかに幅の広くなった隅丸長方形状」とするのが適切である。
「端部の一方に小さい円形の透孔」との記載もあるが,単に「小さい円形」ではなく,「隅丸長方形状の取っ手部寄りに大きく形成された円形」と捉えるのが適切である。
尚,3)において,「平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状」と記載しているが,平面視は,あくまで平面図に表われているような円形であるため,「逆円錐台形状」として認識し得るのはおそらく斜視であると考えられる。
ハ 引用意匠2の説明(要旨等)
請求人は,4)において,「フランジ下から底部までに亘って縦方向の山形の突条が多数連続して形成」と記載しているが,突条の態様は,山型というよりは,なだらかに波打ったような「波型」と捉えるのが妥当である。
また,5)においても,「突条の山形は,中央部が峰をなしており」と記載しているが,「突条の波型は,なだらかに波打ったように形成」されていると捉えるのが適切である(乙第1号証として示す両意匠の対比図の「引用意匠」甲第30号証(抜粋)の青色波線部参照)。
更に付言すれば,「波型の構成を呈しているため,山型のように多数の直線が表出することはなく,波の隆起部が,光の方向によってやや幅のある陰影を形成するにすぎない」との捉え方が妥当である。
蓋体部についての9),10)における突条の記載も,「波型」と捉えるのが妥当である。その結果,「山型のように多数の直線が表出することがない」点等も上記と同様である。
また,7)における取っ手の端部の態様につき,「平面視半円状」で「やや幅広」とあるが,「平面視」が,おそらく側面視の誤りであるのは前記(イ 本件登録意匠の説明(要旨等))と同様であり,「半円状」で「やや幅広」とあるのも適切な表現ではなく,「取っ手部より明らかに幅の広くなった隅丸長方形状」とするのが適切である。
「端部の一方に小さい円形の透孔」との記載もあるが,単に「小さい円形」ではなく,「隅丸長方形状の取っ手部寄りに大きく形成された円形」と捉えるのが適切である。
尚,3)において,「平面視できわめて緩やかな逆円錐台形状」と記載しているが,平面視は,あくまで平面図に表われているような円形であるため,「逆円錐台形状」として認識し得るのはおそらく斜視であると考えられ,また,引用意匠2は,引用意匠1よりも垂直方向への長さが明らかに長いことから,「縦長の逆円錐台形状」と捉えるのがより正確である。
ニ 本件登録意匠と引用意匠との類否
請求人の主張する(ア)(イ)については,特に争うところではない。
(ウ)本件登録意匠と引用意匠1の共通点及び差異点
請求人が「共通点」と主張している構成態様のうち,
1)「本体と蓋体からなる蓋付きバケツ」
2)「本体上端部のフランジ」
3)「フランジ下直径が底部直径よりやや大きく,高さが底部直径よりやや長く形成された,逆円錐台形状」
6)「本体周側面の突条の幅が,上端から下端に向かって緩やかに狭くなっている」
8)「蓋体が円板状の天板と,下面外周近傍同心円状の突片とから構成」については,特に争うところではない。
しかしながら,以下の4),5),7),9),10)については共通点では無く,寧ろ,両意匠の美感を全く別異のものとしている差異点であると考えられる。即ち,請求人は,4)として「本体周側面に縦方向の山形の突条が多数連続して形成されている」点を両意匠の共通点であると主張しているが,上記のように,引用意匠1では,突条の態様は,山型というよりは,なだらかに波打ったような「波型」と捉えるのが妥当であり,山型の態様からなる本件登録意匠とは明らかに異なるため,この点が差異点であるといえる。
更に,請求人は,5)として「突条の山形は中央部が峰をなし左右対称」である点も両意匠の共通点としているが,上記の通り,本件登録意匠においては,「突条の山型は,中央部が鋭く尖った頂点を形成」している態様であるのに対し,引用意匠1においては,「突条の波型は,なだらかに波打ったように形成」していると捉えるのが適切であるから,この点も両意匠の対照的な差異点であるといえる。このような差異点に派生して,本件登録意匠には,多数の直線が表出しているが,引用意匠1には,山型のように多数の直線が表出することはなく,波の隆起部が,光の方向によってやや幅のある陰影を形成するにすぎない,といった更なる差異点も存在する。
請求人が共通点として主張する7)の構成態様,即ち,取っ手の端部の態様についても,本件登録意匠においては「半円状」であるが,引用意匠1では,上記したように「取っ手部より明らかに幅の広くなった隅丸長方形状」と捉えるのが適切であるから,この点も寧ろ明白な差異点である。
請求人が,共通点として主張する9),10)の構成態様,即ち,蓋体における「山形」についても,本願意匠と引用意匠1とでは,上記の本体周側面と同様に,態様が明らかに異なるため,これらも両意匠の差異点である。
また,請求人自身が両意匠の「差異点」と認めている構成態様としては,以下の点が挙げられる。
7)「取っ手の両端部の幅及び円形の透孔の有無」
11)「蓋体裏面に形成された井桁状の突片等」(本件登録意匠のみに存在)
12)「蓋体裏面中央の蓋体引掛け部」(本件登録意匠のみに存在)
これらの差異点につき,請求人は,「いずれも僅かな違い」などと主張しているが,かかる主張は,極めて大雑把,かつ,何らの具体的根拠のない主張であると言える。
先ず,取っ手の両端部の態様は,取っ手部が本体部とどのように連結して,どのように回動するか等,バケツの操作性,把持性にも影響するため,取引者,需要者の注意を強く惹きつけるものであり,当該部分における差異は,「僅かな違い」の一言で片付けられるような差異ではない。
また,引用意匠1の円形の透孔については,請求人が主張するような「小さい円形」ではなく,上記の通り,幅の広くなった隅丸長方形状に大きく形成されているため,非常に存在感があり,ホースを固定できるという機能面も影響することから,取引者,需要者の注意を強く惹きつける。
本件登録意匠のみに存在する蓋体裏面中央の引掛け部も,バケツの開口部に掛止するという機能面やバケツの使用方法等にも大きく影響するものであるから,取引者,需要者の視覚に強く訴える部分である。
本件登録意匠の蓋体裏面に形成された井桁状の突片等も,引用意匠1には見られない独創的な特徴を備えたものであり,本件登録意匠においては,蓋がバケツの台座としても機能することに鑑みれば,裏面が取引者,需要者の目に触れる機会も多く,裏面の上記態様は,非常に取引者,需要者の目を惹くものであると言える。
よって,上記の各差異点は,いずれも「僅かな違い」などと言うには程遠いものであり,各部の機能面をも考慮すれば,取引者,需要者の注意を強く惹きつけるものであるから,両意匠全体の類否判断においても十分に評価されるべきであり,意匠全体の美感にも多大な影響を与えるものである。
請求人が共通点と主張した突条の態様も,上記のように,寧ろ両意匠の差異点であり,これより生ずる美感も以下のように全く別異なものである。
先ず,本件登録意匠においては,当該突条は,山型で中央部が鋭く尖った頂点を形成し,その山と山の間隔も狭いことから,鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象を感じ取ることができる。
一方,引用意匠1においては,当該突条は,なだらかに波打ったような波型に形成され,波と波の間隔も比較的広いことから,緩やかで柔らかい印象が強く感じられ,本件登録意匠のような鋭敏さやギザギザした印象は感じられない点において,本件登録意匠とは真逆ともいえる程の差異を有している(乙第1号証として示す両意匠の対比図の青色折れ線部及び青色波線部参照)。
引用意匠に関しては,甲第2号証乃至甲第4号証をはじめ,多くの証拠資料において,「腰掛け」「簡易スツール」としての用途・機能も積極的に紹介されていることから,ソフトな座り心地につながる蓋体部のなだらかな波型の態様及びそれに繋がる本体周側面の態様は,本件登録意匠のシャープな山型の態様とは対照的な引用意匠独自の特徴として,類否判断において十分に考慮されるべきである。
1994年グッドデザイン賞の紹介文(乙第2号証)においても,「段ボール紙のギャザー形状をテクスチュアとして取り入れることで,従来のバケツが持つプラスッチック成型の無機質な表情を脱し,ナチュラルで新鮮なイメージを持たすことに成功した家庭用バケツ。」と記載されており,段ボールから作った手作りクラフト品のような,柔らかくて温かみのある引用意匠の印象が評価されていると言える。
(エ)本件登録意匠と引用意匠2の共通点及び差異点
共通点,差異点ともに,基本的には上記した(ウ)の項の本件登録意匠と引用意匠1の共通点及び差異点と同様であるが,引用意匠2は,引用意匠1よりも垂直方向への長さが明らかに長いことから,「縦長の逆円錐台形状」である点も本件登録意匠との差異点となり,本件登録意匠においては感じられない垂直方向へのスマートな印象が,引用意匠2において看取できる。
(オ)特段の事情
請求人は,引用意匠が継続実施されている事実を多数の証拠資料をもって示し,種々述べているが,いずれも本件の類否判断に影響を与えるものではない。
例えば,グッドデザイン賞等の受賞の事実や,周知性,雑誌での紹介等は,市場における一定の評価や,需要者における認識度等を示す指標となるものではあるが,商標法における未登録周知商標の保護規定(商標法第4条第1項第10号,同項第15号等)のような規定は意匠法には存在せず,上記事実が,本件意匠登録の有効性を否定する根拠とは到底なり得ない。
商標法においては,商標を継続的に使用すればするほど,その商標に業務上の信用が化体し,保護価値も増大するという側面があるが,意匠法においては事情が異なる。あくまで,各構成態様を客観的に捉えた上で,新たに創出された意匠全体としての創作的価値を評価し,それより生じる美感が共通するかが類否判断の基準となる。
仮に,市場における評価や業務上の信用等といった意匠とは直接関係のない要素を徒に重視し,意匠が長きに亘り継続実施されていることを以ってその意匠を過剰に保護するとすれば,意匠法の枠を超えて,本来,保護対象として予定していないものまで保護することとなり,意匠法の制度趣旨と合致しないばかりか,意匠が過剰に保護された結果として第三者に不測の不利益をもたらすことにもなり,意匠の創作活動の停滞,創作意欲減退,ひいては,新規な意匠の創作を保護せんとする法目的にも反する事態を招くこととなる。
以上より,請求人が多数の証拠資料をもって主張しているグッドデザイン賞等の受賞の事実や,周知性,雑誌での紹介等は,本件意匠登録の有効性を否定する根拠とはなり得ないものである。
請求人が(ix)の項で主張する「被請求人が本件登録意匠を出願するに至った経緯」についても,単に商取引の事実関係を時系列的に示したに過ぎず,この事実も,本件意匠登録の有効性に何ら影響を与えるものではない。
(カ)総合判断
先ず,引用意匠が需要者に広く知られている事実が,本件意匠登録の有効性を否定する根拠となり得ないことは上記の通りである。
請求人は,「構成態様1)ないし10)が,物品における位置関係,意匠全体に占める割合,機能等に鑑みて,両意匠の最も特徴的な部分であり,看者の注意を強く引くものである」「構成態様11)及び12)は,いずれも看者の注意を引かない微差である」などと述べているが,全くもって大雑把,かつ,抽象的な主張であり,構成態様1)ないし10)が何故に両意匠の最も特徴的な部分となるのか,また,構成態様11)及び12)が何故に看者の注意を引かない微差であるのかにつき,具体的な記載が一切なされておらず,そのように解すべき具体的根拠も何ら示されていない。このような主張は,請求人が何らの根拠も無く恣意的に共通点,差異点を述べているだけであり,請求人の単なる希望的見解であるとしか評価し得ない。
本件登録意匠及び引用意匠を全体として対比し,各構成態様を客観的に捉えれば,前記の通り,本件登録意匠のみに存在する蓋体裏面の井桁状の突片等(構成態様11))は,引用意匠1には見られない独創的な特徴を備えたものであり,本件登録意匠においては,蓋がバケツの台座としても機能することに鑑みれば,裏面が取引者,需要者の目に触れる機会も多く,取引者,需要者の目を惹くものであると言え,また,本件登録意匠のみに存在する蓋体裏面中央の引掛け部(構成態様12))も,バケツの開口部に掛止するという機能面等が大きく影響するため,いずれも,単なる「微差」というには程遠いものであり,引用意匠には存在しない,本件登録意匠独自の特徴として十分に評価されるべきである。
請求人が本件登録意匠及び引用意匠の共通点と捉えている本体周側面及び蓋体上面の突条の態様も,前記の通り,寧ろ差異点であり,かかる差異より生ずる美感も全く別異のものである。
以上を踏まえた上で,本件登録意匠と引用意匠の意匠全体における美感につき比較すると,やはり,本体周側面及び蓋体上面の突条の態様の差異が,意匠全体の美感にも大きな影響を与えていると言える。
当該態様は,面積的にも意匠全体に占める割合が大きいことから,意匠全体としても,本件登録意匠からは,鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象を感じ取ることができるのに対し,引用意匠からは,緩やかで柔らかい印象が強く感じられる。
引用意匠においては,上記のような緩やかな印象が感じられる一方で,取っ手の端部の態様が,取っ手部より明らかに幅の広くなった隅丸長方形状を呈しており,更にその端部の一方の隅丸長方形状の取っ手部寄りに,非常に存在感のある大きな円形で形成された透孔も存在することから,取っ手部と本体部との連結部付近では,変化に富んで動きのある印象も感じられ,意匠全体の中においても,非常にアクセントのあるものとなっている。
これに対し,本件登録意匠においては,取っ手部が端部まで同幅で形成され,引用意匠のような存在感のある大きな円形の透孔も設けられていないことから,取っ手部と本体部との連結部付近は比較的シンプルで落ち着いた印象であり,本体周側面及び蓋体上面の突条の態様から看取できる鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象をより際立たせていると言え,この点においても,引用意匠とは対照的である。
引用意匠のうち,引用意匠2に関しては,前記の通り,引用意匠1よりも垂直方向への長さが明らかに長いことから,本件登録意匠においては感じられない垂直方向へのスマートな印象が感じられ,引用意匠1よりも,更に本件登録意匠の印象とはかけ離れたものとなっている。
ちなみに,乙第3号証として示す本件登録意匠に関する意匠公報(意匠登録第1509040号公報)への掲載事項のうち,【参考文献】の欄に「特許庁意匠課公知資料番号HC13008776」なる記載を確認することができる。この特許庁意匠課公知資料番号HC13008776は,乙第4号証として示す通りの公知資料であり,これは請求人が提出した甲第1号証と実質的に同一の資料である。つまり,本件登録意匠に係る出願の審査においては,引用意匠そのものが参考文献として参酌されていたことになる。よって,本件登録意匠に係る出願の審査においては,決して引用意匠の存在が看過された訳ではなく,寧ろ,わざわざ参考文献として公報に掲載される程,引用意匠の存在が十分に認識された上で本件登録意匠に係る出願の審査が行われたのである。
このように,本件登録意匠に係る出願の審査においては,引用意匠の存在が認識された上で,本件登録意匠との類否に関する詳細な検討がなされており,その結果,本件登録意匠は,引用意匠とは非類似の意匠であるとして,その登録が認められているのであるから,この事実は,専門家たる審査官の判断として十分に尊重されるべきである。
以上より総合的に判断すれば,本件登録意匠と引用意匠は,全く異なる美感を生じさせる非類似の意匠である。
(2)むすび
以上,詳述した通り,本件意匠登録に瑕疵はなく,意匠法第3条第1項第3号に該当するものではないことは明白である。よって,本件審判の請求は,理由がないので成り立たない旨の審決を切に希求する次第である。

3.証拠方法
(1)乙第1号証 本件登録意匠と引用意匠の対比図
(2)乙第2号証 1994年グッドデザイン賞 バケツ[ウェイビー]102の紹介文
(3)乙第3号証 意匠登録第1509040号公報 写し
(4)乙第4号証 特許庁意匠課公知資料番号HC13008776に係る公知資料 写し


第3 口頭審理
本件審判について,当審は,平成27年10月27日に口頭審理を行った。(平成27年10月27日付口頭審理調書)(口頭審理において,審判長は,両者に対して審理を終結する旨を告知した。)

1.請求人
1-1 口頭審理陳述要領書
平成27年9月28日付け口頭審理陳述要領書において,請求人は以下のとおり主張した。
(1)被請求人の平成27年7月21日付け審判事件答弁書(以下,「答弁書」
という。)に対し,次の通り弁駁する。
なお,審判請求書第2頁最終行の「平面視」は「側面視」,同第3頁8行の「平面視半円状」は「側面視半円状」,同27行の「平面視」は「側面視」,同第4頁5行の「正面視」は「側面視」,同20行の「平面視」は「側面視」,同28行の「正面視半円状」は「側面視半円状」,同第6頁1行の「正面視半円状」は「側面視半円状」,同13行の「平面視」は「側面視」,同16行の「平面視半円状」は「側面視半円状」の誤記であるので,修正する。
(2)被請求人は,「請求人は,4)として『本体周側面に縦方向の山形の突条が多数連続して形成されている』点を両意匠の共通点であると主張しているが,上記のように,引用意匠1では,突条の態様は,山型というよりは,なだらかに波打ったような「波型」と捉えるのが妥当であり,山型の態様からなる本件登録意匠とは明らかに異なるため,この点は差異点であるといえる。」(答弁書第6頁6行?10行)と主張している。
しかしながら,「山形」とは,「山に似た形(の物)」「山のような形」を意味する語であって,引用意匠1はそのような「山形」が多数連続して設けられた形状であるから,「なだらかに波打ったような『波型』」という形容ないし比喩は明らかに誇張である。むしろ,本件登録意匠も「山形」が多数連続して設けられた形状であることは明らかであるから,この点で引用意匠1と共通しているというべきである。
したがって,被請求人の上記主張は失当である。
(3)被請求人は,「請求人は,5)として「突条の山形は中央部が峰をなし左右対称である点も両意匠の共通点としているが,上記の通り,本件登録意匠においては,「突条の山型は,中央部が鋭く尖った頂点を形成」している態様であるのに対し,引用意匠1においては,「突条の波型は,なだらかに波打ったように形成」していると捉えるのが適切であるから,この点も両意匠の対照的な差異点であるといえる。」(答弁書第6頁11行?16行)と主張している。しかし,引用意匠1の突条の山形は左右に偏ることなく山形の中央部が峰をなしているものであって,「波打ったように形成」されているものではない。むしろ,本件登録意匠もその突条の山形の中央部が峰をなしているものであるから,両意匠はこの点においても共通しているというべきである。
したがって,被請求人の上記主張は失当である。
(4)被請求人は,「このような差異点に派生して,本件登録意匠には,多数の直線が表出しているが,引用意匠1には,山型のように多数の直線が表出することはなく,波の隆起部が,光の方向によってやや幅のある陰影を形成するにすぎない,といった更なる差異点も存在する。」(答弁書第6頁16行?19行)と主張している。
しかしながら,引用意匠1の「蓋付きバケツ」の本体の周側面及びその蓋体の上面の全面に亘って多数連続して設けられている突条の山形も,その中央部が峰をなしていることから,多数の直線を表出し,中央部の峰が光の方向によって陰影を形成するから,両意匠はこの点においても共通しているというべきである。
したがって,被請求人の上記主張は失当である。
(5)被請求人は,「請求人が共通点と主張した突条の態様も,上記のように,寧ろ両意匠の差異点であり,これより生ずる美感も以下のように全く別異なものである。
先ず,本件登録意匠においては,当該突条は,山型で中央部が鋭く尖った頂点を形成し,その山と山の間隔も狭いことから,鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象を感じ取ることができる。
一方,引用意匠1においては,当該突条は,なだらかに波打ったような波型に形成され,波と波の間隔も比較的広いことから,緩やかで柔らかい印象が強く感じられ,本件登録意匠のような鋭敏さやギザギザした印象は感じられない点において,本件登録意匠とは真逆ともいえる程の差異を有している(乙第1号証として示す両意匠の対比図の青色折れ線部及び青色波線部参照)。」(答弁書第7頁26行?8頁7行)と主張している。
しかしながら,本件登録意匠の【B部拡大図】によれば,本件登録意匠の山形の中央部の峰の内角は鋭角ではなく,鈍角(110度)をなしていることから,本件登録意匠の山形は中央部の峰を中心として左右対称のなだらかな山形を形成しているものである。そして,山も谷も何れも110度の角度をなして連続していることから,本件登録意匠はなだらかな山形が多数連続して設けられていると見るのが妥当である。
したがって,本件登録意匠と引用意匠を対比すれば,両意匠の山形には中央部の峰の先端が尖っているか丸いかの違いはあるものの,その峰を中心として左右対称のなだらかな山形である点で共通しており,かかる山形が多数連続して設けられていることから,両意匠が看者に与える印象(美感)も共通しているというべきである。
(6)被請求人は,「以上を踏まえた上で,本件登録意匠と引用意匠の意匠全体における美感につき比較すると,やはり,本体周側面及び蓋体上面の突条の態様の差異が,意匠全体の美感にも大きな影響を与えていると言える。
当該態様は,面積的にも意匠全体に占める割合が大きいことから,意匠全体としても,本件登録意匠からは,鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象を感じ取ることができるのに対し,引用意匠からは,緩やかで柔らかい印象が強く感じられる。」(答弁書第10頁25行?11頁1行)と主張している。
しかしながら,両意匠を構成する山形の突条は,対比する両意匠に係るバケツの本体の周側面及びその蓋体の上面の全面に亘って多数連続して設けられており,面積的にも意匠全体に占める割合がきわめて大きいことから,山形の突条が多数連続して設けられた本体周側面及び蓋体上面の構成態様が,意匠全体の美感に大きな影響を与えているというべきである。そして,本件登録意匠と引用意匠を対比すれば,両意匠の山形には中央部の峰の先端が尖っているか丸いかの違いはあるものの,その峰を中心として左右対称のなだらかな山形である点で共通しており,かかる山形が多数連続して設けられていることから,両意匠が看者に与える印象(美感)も共通しているというべきである。
したがって,被請求人の上記主張は失当である。
(7)被請求人は,「引用意匠においては,上記のような緩やかな印象が感じられる一方で,取っ手の端部の態様が,取っ手部より明らかに幅の広くなった隅丸長方形状を呈しており,更にその端部の一方の隅丸長方形状の取っ手部寄りに,非常に存在感のある大きな円形で形成された透孔も存在することから,取っ手部と本体部との連結部付近では,変化に富んで動きのある印象も感じられ,意匠全体の中においても,非常にアクセントのあるものとなっている。
これに対し,本件登録意匠においては,取っ手部が端部まで同幅で形成され,引用意匠のような存在感のある大きな円形の透孔も設けられていないことから,取っ手部と本体部との連結部付近は比較的シンプルで落ち着いた印象であり,本体周側面及び蓋体上面の突条の態様から看取できる鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象をより際立たせていると言え,この点においても,引用意匠とは対照的である。」(答弁書第11頁2行?13行)と主張している。
しかしながら,両意匠の「取っ手」は,側面視半円状に形成された細板状をなしており,本体上端の開口外側の対向する位置に設けられている点で共通しており,前述した本体周側面及び蓋体上面の突条の態様が意匠全体の美感に大きな影響を与えていることと相侯って,引用意匠の両端部がやや幅広となっているとか,その一方の端部に小さい円形の透孔が設けられているとかは,両意匠が看者に与える印象(美感)に影響を及ぼすものではないというべきである。
したがって,被請求人の上記主張は失当である。
なお,被請求人は,答弁書第7頁10行?13行においても同様の主張をしているが,上記の通り失当である。
(8)被請求人は,本件登録意匠の蓋体裏面中央の設けられた引掛け部が取引者・需要者の視覚に強く訴える部分であり,また,蓋体裏面に設けられた井桁状の突片も取引者,需要者の目を惹くものであると主張している(答弁書第7頁14行?21行)。
両意匠を構成する山形の突条は,対比する両意匠に係るバケツの本体の周側面及びその蓋体の上面の全面に亘って多数連続して設けられており,面積的にも意匠全体に占める割合がきわめて大きいことから,山形の突条が多数連続して設けられた本体周側面及び蓋体上面の構成態様こそが,看者に強い印象(美感)を与えるのに対し,蓋体の裏面はきわめて目立たない存在であることから,取引者・需要者の視覚に強く訴えることもないし,また,取引者・需要者の目を惹くこともないというべきである。
(9)被請求人は,「請求人が多数の証拠資料をもって主張しているグッドデザイン賞等の受賞の事実や,周知性,雑誌での紹介等は,本件登録意匠の有効性を否定する根拠とはなり得ないものである。」と主張し,続けて「請求人が(ix)の項で主張する『被請求人が本件登録意匠を出願するに至った経緯』についても単に商取引の事実関係を時系列的に示したに過ぎず,この事実も,本件登録意匠の有効性に何らの影響を与えるものではない。」(答弁書第8頁26行?9頁24行)と主張している。
しかしながら,引用意匠は,平成6年度グッドデザイン中小企業庁長官特別賞,及び2010年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞しているものであり,請求人は小規模ながら引用意匠に係る「蓋付きバケツ」の国内製造及び拡販に長期間に亘り相当の努力を続けてきたものである。一方,被請求人は,平成25年2月頃から同年9月頃まで,請求人から引用意匠に係る「蓋付きバケツ」を仕入れて販売していたことから,引用意匠が優れたデザインであり人気があることを知悉していたものである。そして,被請求人は,引用意匠が意匠登録されていないことを奇貨としてその具体的な構成にほんの僅かな変更を加えて平成25年11月28日に本件登録意匠を出願したものである。被請求人が繰り返し主張するようにこのような事情が本件登録意匠の有効性に何らの影響も与えないとすれば,意匠を保護することによって産業の健全な発達を図ろうとする意匠法の趣旨に反することは明らかである。
1-2 上申書
平成27年10月27日付けの上申書において,請求人は以下のとおり主張した。
被請求人は,平成27年10月19日付け上申書において,請求人が自社のウェブサイトにおいて,引用意匠1と同様の構成からなるフタ付きバケツにつき,「段ボールの波々をモチーフにデザインし,」と説明していることを指摘したうえで,請求人自身も当該態様について「波々」をモチーフにしている旨を積極的にアピールしているとし,最早引用意匠1の上記態様を「波型」と捉えるのが妥当であることは争いがないなどと主張する。
しかし,意匠の類否判断は,意匠が類似するか否かの判断であって,需要者の立場からみた美感の類否についての判断をいうのである。また,意匠の類否判断は,もとより人間の感覚的な部分によるところが大きいが,その判断を行う際には,意匠創作に係る創作者の主観的な視点を排し,需要者が観察した場合の客観的な印象をもって判断するものである。これらのことは,意匠審査基準にも明記されているところである。
請求人のウェブサイトにおける「波々」との記載は,引用意匠1の創作者である請求人が主観的な観点から記載したものにすぎないものである。したがって,請求人のウェブサイトにおける「波々」との記載は,そもそも,意匠の類否判断に影響を与えるものにはなり得ないものである。

2.被請求人
2-1 口頭審理陳述要領書
平成27年10月13日付けの口頭審理陳述要領書において,被請求人は以下のとおり主張した。
請求人は,平成27年9月28日提出の口頭審理陳述要領書(以下,「要領書」という。)において,誤記の訂正,及び,種々の主張を行っているが,誤記の訂正以外の主張(要領書中の「5.陳述の要領(2)?(9)」の項目における主張)は,いずれも失当であり,本件意匠登録の有効性を否定するに足りるものではない。
以下,請求人の提出した要領書中の「5.陳述の要領」の各項目に対応させる形で答弁する。
(1)について
単に誤記の訂正であるため,この項については特に争うところではない。
(2)について
請求人は,引用意匠1の本体周側面に形成された突条の態様は,あくまで「山型」であり,「波型」という形容ないし比喩は明らかに誇張である旨を主張する(尚,請求人は「山型」を「山形」と記載しているが,単なる漢字表記上の相違に過ぎないため,本要領書においては,「山型」の表記で統一する)。
しかしながら,「波型」という表現を,「明らかに誇張である」と捉えるのは,単に請求人の主観に過ぎない。
被請求人が答弁書において既に示した乙第1号証の対比図中の「引用意匠」甲第30号証(抜粋)の青色波線部を参照すれば明らかなように,引用意匠1の当該突条の態様は,なだらかな曲線が規則的に連続した態様を呈しており,本件登録意匠のように突条の中央部に尖った頂点も存在しないことから,これを「山型」ではなく「波型」と捉えるのは極めて自然で,客観的な事実に基づく的確な表現であるから,決して「誇張」ではない。
請求人は,引用意匠1の当該突条の態様が,あくまで「山型」である点に固執しているが,敢えて,請求人と同様,「山」,「山型」という表現に拘った見方をしてみると,一般的に,「山」の一番高い箇所を「山頂」,即ち,「山の頂(いただき)」と称するが,特に物品の形状を例えるのに「山」,「山型」といった表現を用いる際に,「頂(いただき)」といった場合,通常,「頂点」を連想し,「頂点」とは角の端にある点である。とすると,上記したように,曲線が連続した態様からなる引用意匠1の突条には,「頂点」は存在しないこととなる。よって,敢えて「山」,「山型」という表現に拘った見方をしてみても,「頂点」が存在しない引用意匠1の当該突条の態様を「山型」と捉えるのは妥当ではなく,「山型」である点を本件登録意匠と引用意匠1の共通点であるとした請求人の主張は失当である。
(3)について
請求人は,引用意匠1の本体周側面に形成された突条の態様は,左右に偏ることなく山型の中央部が峰をなしているものであって,「波打ったように形成」されているものではない旨を主張する。
しかしながら,引用意匠1の当該突条の態様を「山型」と捉えるのは妥当ではなく,これを「波型」と捉えるのが自然である点は,上記(2)の項で既に述べた通りであるので,これを「山型」であることを前提とした請求人の上記主張も明らかに失当である。
(4)について
請求人は,引用意匠1の本体周側面等に設けられている突条の山型も,その中央部が峰をなしていることから,多数の直線を表出し,中央部の峰が光の方向によって陰影を形成するから,両意匠はこの点においても共通していると主張する。
しかしながら,再三述べているように,先ず,引用意匠1の突条の態様が「山型」であることを前提とした請求人の認識に誤りがあることは前記の通りである。そして,突条の中央部に尖った頂点が形成されて,明確な形状線が多数表出した本件登録意匠と,波の隆起部が光の方向によってやや幅のある陰影をぼんやりと形成しているに過ぎない引用意匠1とでは,構成態様が全く異なり,この点が両意匠の明らかな差異点と言えるため,これを共通点であるとした請求人の主張は失当である。
(5)について
請求人は,本件登録意匠の【B部拡大図】によれば,本件登録意匠の山型の中央部の峰の内角は鋭角ではなく,鈍角(110度)をなしていることから,本件登録意匠の山型は中央部の峰を中心として左右対称のなだらかな山型を形成しており,山も谷も何れも110度の角度をなして連続しているため,本件登録意匠はなだらかな山型が多数連続して設けられていると見るのが妥当である旨を主張する。
また,両意匠の山型には中央部の峰の先端が尖っているか丸いかの違いはあるものの,その峰を中心として左右対称のなだらかな山型である点で共通しており,かかる山型が多数連続して設けられていることから,両意匠が看者に与える印象(美感)も共通している旨を主張する。
しかしながら,被請求人が答弁書において,本件登録意匠の印象(美感)として主張したのは,「鋭敏・シャープなイメージ,細かく刻まれたギザギザした印象」(答弁書7頁最終行?8頁1行目)であるという点であり,これは請求人が,本件登録意匠の山型の中央部の峰の先端が「尖っている」と自ら認めている(要領書4頁11行目?12行目)ように,山型の中央部が尖っているが故に,看取し得る印象である。つまり,中央部の峰の内角が,鋭角であれ,鈍角であれ,請求人自身が明確に認めているように,本件登録意匠の山型の中央部が「尖っている」ことに変わりは無く,この点が上記のような鋭敏さやギザギザした印象等を生じさせているのであるから,細かい角度に拘泥した上で,鋭角なのか,鈍角なのかを論じる必要性は全く無い。
そして,この山型の中央部において,本件登録意匠のように尖った頂点が存在するのか,逆に,請求人が「丸い」と表現した引用意匠の山型中央部の峰の先端のように,頂点が存在せずになだらかに波打ったような態様となっているかの差異は,その山型・波型が,左右対称で多数連続して設けられているという共通点を圧倒的に凌駕するほど,両意匠の美感に影響を与えている。
よって,請求人の上記主張は失当である。
(6)について
請求人は,両意匠の山型の突条が多数連続して設けられた本体周側面及び蓋体上面の構成態様が,意匠全体の美感に大きな影響を与えており,両意匠は,その峰を中心として左右対称のなだらかな山型である点が共通し,両意匠が看者に与える印象(美感)も共通している旨を主張する。
しかしながら,先の項目でも再三述べたように,引用意匠の当該突条の態様を「山型」と捉えるのがそもそも妥当ではなく,これを「波型」と捉えるのが妥当であるから,これを「山型」であることを前提として,左右対称の山型の態様,及び,それより生じる印象(美感)が共通するとした請求人の上記主張は明らかに失当である。
(7)について
請求人は,両意匠の「取っ手」は,側面視半円状に形成された細板状をなしており,本体上端の開口外側の対向する位置に設けられている点で共通し,本体周側面及び蓋体上面の突条の態様が意匠全体の美感に大きな影響を与えていることと相侯って,引用意匠の両端部がやや幅広となっているとか,その一方の端部に小さい円形の透孔が設けられているとかは,両意匠が看者に与える印象(美感)に影響を及ぼすものではない旨を主張する。
しかしながら,被請求人が答弁書でも既に主張している通り,取っ手の両端部の態様は,取っ手部が本体部とどのように連結して,どのように回動するか等,バケツの操作性,把持性にも影響するため,取引者,需要者の注意を強く惹きつけるものであり(答弁書7頁6行目?8行目),当該部分における差異は,単に,本体周側面及び蓋体上面の突条の態様が意匠全体の美感に大きな影響を与えていることや,本体上端の開口外側の対向する位置に設けられているという点等が共通していることを理由として,相対的に軽視されるべきものでもない。
特に,取っ手部に設けられた円形の透孔については,これも既に被請求人が答弁書でも述べている通り,決して「小さい円形」ではなく,幅の広くなった隅丸長方形状に大きく形成されているため,非常に存在感があり,ホースを固定できるという機能面も影響することから,取引者,需要者の注意を強く惹きつける(答弁書7頁10行目?13行目)のであり,当該円形の透孔の有無の差異は,両意匠の印象(美感)に多大な影響を与えるものである。
よって,請求人の上記主張は失当である。
(8)について
請求人は,両意匠における,山型の突条が多数連続して設けられた本体周側面及び蓋体上面の構成態様こそが,面積的にも意匠全体に占める割合がきわめて大きいことから,看者に強い印象(美感)を与えるのに対し,蓋体の裏面はきわめて目立たない存在であることから,取引者・需要者の視覚に強く訴えることもないし,取引者・需要者の目を惹くこともない旨を主張する。
しかしながら,このような,単に「蓋体の裏面は目立たない」といった程度の主張では,依然として具体的根拠に欠け,極めて大雑把な主張であると言わざるを得ない。たとえ,蓋体の裏側であっても,本件登録意匠のように,引掛け部がその中央に設けられている場合には,バケツの開口部に掛止するという機能面や,バケツの使用方法等にも大きく影響するものであるから,取引者,需要者の視覚に強く訴える部分となり得るのである。請求人は,この点を全く考慮しておらず,またこのような事情があってもなお,蓋体の裏面の態様を軽視すべき根拠を何ら示していない。
ちなみに,答弁書において乙第3号証として示した本件登録意匠に関する意匠公報(意匠登録第1509040号公報)への掲載事項のうち,【参考文献】の欄に,実開昭50-109749,実開平1-11146,実開平7-33243という3件の公報が挙げられているが,これらの公報からは,蓋の裏側に,本件登録意匠の引掛け部に相当するようなものが設けられている態様が見受けられ(乙第5号証乃至乙第7号証),これは,本件登録意匠に係る出願の審査においても,蓋体の裏側における態様に十分な注意が注がれ,当該態様についても詳細な検討がなされたことを意味する。請求人の主張するように,単に「蓋体の裏面は目立たない」という認識で類否判断が行われるのであれば,上記のような公報が3件も【参考文献】として列挙されることは無い。よって,請求人の上記主張は失当である。
(9)について
請求人は,審判請求書における主張と同様,引用意匠に係る「蓋付きバケツ」の国内製造及び拡販に長期間に亘り相当の努力を続けてきている点や,被請求人が本件登録意匠を出願するに至った経緯について繰り返し述べた上で,このような事情が本件意匠登録の有効性に何らの影響も与えないとすれば,意匠を保護することによって産業の健全な発達を図ろうとする意匠法の趣旨に反することは明らかである旨を主張する。
しかしながら,披請求人が答弁書でも既に述べた通り(答弁書9頁12行目?20行目),上記のような事情が存在することを以ってその意匠を過剰に保護するとすれば,意匠法の枠を超えて,本来,保護対象として予定していないものまで保護することとなり,意匠法の制度趣旨と合致しないばかりか,意匠が過剰に保護された結果として第三者に不測の不利益をもたらすことにもなり,意匠の創作活動の停滞,創作意欲減退,ひいては,新規な意匠の創作を保護せんとする法目的にも反する事態を招くこととなる。つまり,請求人が主張する上記のような事情を根拠として,本件意匠登録が無効であると認定されるような事態を招くことこそ,産業の健全な発達を図ろうとする意匠法の趣旨に反すると言える。
そもそも,本件審判請求においては,本件登録意匠が引用意匠と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号,及び,同法第48条第1項第1号の規定により,本件意匠登録を無効とすべき,といった点が無効理由として挙げられているのであるから,本件意匠登録が無効と認定されるか否かは,本件登録意匠が引用意匠と類似するか否かという点によってのみ決せられるべきである。請求人は,要領書においても,審判請求書における主張と同様,単に上記のような事情を漫然と記載しているに過ぎず,上記のような事情が両意匠の類否判断に,具体的にどのように影響するのか,その因果関係を詳細に述べてはいない。また,両意匠の類否判断とは別に,特段の事情を考慮して,本件意匠登録を無効とすべきとの主張を行うのであれば,少なくともその根拠となる規定が存在しなければならないが,請求人は,その根拠となる条文を形式的に示すことすら行っていない。
従って,請求人が述べた上記事情は,やはり本件意匠登録の有効性に何らの影響を与えるものでもないため,請求人の上記主張は失当である。
(総括)
以上の通りであるので,請求人の主張はいずれも失当であって,本件意匠登録に瑕疵はなく,意匠法第3条第1項第3号に該当するものではないことは明白である。よって,本件審判の請求は,理由がないので成り立たない旨の審決を切に希求する次第である。
(証拠方法)
(1)乙第5号証 実開昭50-109749号公報 写し
(2)乙第6号証 実開平1(昭和64)-11146号公報 写し
(3)乙第7号証 実開平7-33243号公報 写し
2-2 上申書
平成27年10月19日付けの上申書において,被請求人は以下のとおり主張した。
被請求人は,平成27年10月13日付けで提出した口頭審理陳述要領書の「陳述の要領」の項において,引用意匠1の本体周側面に形成された突条の態様を「波型」と捉えるのは極めて自然で,客観的な事実に基づく的確な表現であるから,「波型」という形容ないし比喩を明らかに誇張であるとした請求人の主張は失当である旨を述べた。
この点,請求人は,自社のウェブサイトにおいて,引用意匠1と同様の構成からなるフタ付きバケツにつき,「段ボールの波々をモチーフにデザインし・・・」との説明の下,当該製品を紹介している(乙第8号証 黄色ハイライト部分参照)。
請求人は,平成27年9月28日付けの口頭審理陳述要領書においては,「引用意匠1は・・・『山型』が多数連続して設けられた形状であるから,『なだらかな波打ったような〔波型〕』という形容ないし比喩は明らかに誇張である。」と主張しておきながら,上記ウェブサイトにおいては,自ら,引用意匠1と同様の構成からなるフタ付きバケツのデザインを,段ボールの「波々」をモチーフにしている旨を積極的に記載している。
この事実は,請求人自身も,引用意匠1の本体周側面に形成された突条の態様を,明らかに「波型」であると認識していることを裏付けるものである。そもそも,当該態様が「波型」であることは,被請求人が再三主張しているとおり,客観的な事実に基づく的確な表現であるが,上記のように,請求人自身も当該態様につき「波々」をモチーフにしている旨を積極的にアピールしているのであるから,最早,引用意匠1の上記態様を「波型」と捉えるのが妥当であることは争い様のない事実であると言える。
また,「バケツ」とは異なるが,引用意匠1と同様,本体周側面に「波型」の突条が形成された「ゴミ箱」についても,請求人は,自社のウェブサイト「八幡化成オンラインストア」において,自ら「波型ゴミ箱」と称している事実も確認し得る(乙第9号証 黄色ハイライト部分参照)。
請求人が審判請求書において示した甲第1号証等によって,引用意匠1が「ウェイビー801」,引用意匠2が「ウェイビー102」といったような特定がなされているが,上記に「ゴミ箱」についても,同様の「ウェイビー」シリーズであることは,乙第9号証から明らかであり,おそらく「ウェイビー」という名称は,「ウェイブ(波)」の語から派生した造語であると推測されることから,これらの本体周側面の構成態様が,いずれも「波型」で共通するのは当然であるといえ,この点からも,やはり引用各意匠の本体周側面に形成された突条の態様を「波型」と認識するのが,妥当であるといえる。
(証拠方法)
(1)乙第8号証 「八幡化成オンラインストア」omnioutil オムニウッティ 使い方は無限大?フタ付きバケツのウェブページ
(http://www.hachimankasei-store.jp/products/sceltevie/omnioutil.html) 写し
(2)乙第9号証 「八幡化成オンラインストア」waybe bin collection ウェイビー ビンコレクションのウェブページ(http://www.hachimankasei-store.jp/products/waybe/waybe-c.html) 写し

3.口頭審理調書
(1)請求人
請求の趣旨及び理由は,審判請求書,平成27年9月28日付け口頭審理陳述要領書及び平成27年10月27日付け上申書に記載のとおり陳述。被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第9号証の成立を認める。
(2)被請求人
答弁の趣旨及び理由は,平成27年7月21日付け審判事件答弁書,平成27年10月13日付け口頭審理陳述要領書及び平成27年10月19日付け上申書に記載のとおり陳述。請求人の提出した甲第1号証ないし甲第33号証の成立を認める。
(3)審判長
甲第1号証ないし甲第33号証及び乙第1号証ないし乙第9号証について取り調べた。
本件の審理を終結する。


第4 当審の判断
請求人は,無効理由1として,本件登録意匠(登録第1509040号意匠)は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー801」に係る意匠(引用意匠1)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項により無効とすべきである,とし,また,無効理由2として,本件登録意匠は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー102」に係る意匠(以下,「引用意匠2」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項により無効とすべきであると主張している。
当審は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において公然知られた意匠である引用意匠1に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号が規定する意匠に該当することにより,無効理由1によって意匠登録を受けることができないものであると判断する。その理由は,以下のとおりである。

1.本件登録意匠(乙第3号証)(別紙第1参照)
本件登録意匠(意匠登録第1509040号の意匠)は,平成25年(2013年)11月28日に意匠登録出願され,平成26年(2014年)9月12日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「バケツ」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に現されたとおりのものである。
すなわち,本件登録意匠は,取っ手のある蓋付きの「バケツ」であって,その形態については,以下のとおりである。
すなわち,全体がバケツ本体部(以下,「本体部」という。),蓋部,取っ手により構成されたもので,本体部周側面及び蓋部の全体に,一様の凹凸形状を形成したものである。
本体部は,下方向にごく僅かにテーパーのついた略円筒形状とし,本体部の高さが本体部上面の直径よりも短く,本体部上面の周縁に外方に逆L字状に小さく突出する細幅で蓋部と略同厚の縁部を有し,前記縁部から下方に向かって設けられた扁平直方体状の取っ手取り付け部(以下,「取っ手取り付け部」という。)を正面視左右の対向する位置に配し,周側面全体に全高(上端縁部を除く。)にわたる縦方向の細い筋状の凹凸形状を周方向に連続して多数施したものであり,本体部の内周側面及び底部の内外面は,平滑面である。
取っ手は,細幅薄板状体を正面視略半円弧状のアーチ状とし,両端の先端部を側面視略U字状としたもので,本体部の取っ手取り付け部の外側に設けたものである。
蓋部は,本体部上端縁と略同径の円板状とし,その表裏の表面ほぼ全面を細い筋状の凹凸形状に形成して,裏面の外周端部に細幅の平坦面部を設けて,その内側に外周に沿うように細幅帯状の薄い凸状枠部(以下,「凸状枠部」という。)を設け,また,その内側に細い突条が縦横2本ずつ互いに交差する井桁状の補強用のリブを設け,裏面中央に本体部への掛部となる短い円柱の先端に底面視小型円形状板体を設けた突起部(以下,「突起部」という。)を配したものである。
本体部と蓋部に形成された凹凸形状は,細幅の平坦な斜面から成る,先端が尖った断面視山型状の突条を連続して繰り返した態様のものである。
蓋部は,やや明調子で,本体部と取っ手は,蓋部より暗調子としたものである。

2.無効理由1
審判請求書の「1.意匠登録無効の理由の要点」によれば,請求人は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー801」に係る意匠を引用意匠1とし,意匠法第3条第1項第3号の規定により,意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項により無効とすべきであるとしている。
そこで,甲第1号証ないし甲第4号証を見てみると,
甲第1号証は,八幡化成株式会社発行の「ウェイビー」販促用リーフレットであり,製品名「Way-be 801(フタ)」製品番号050919(VE),製品番号050834(G),製品番号050841(B),のナチュラルベージュ,フラットグリーン,フラットブラックの3色の単色のバケツが示されている。なお,審判請求書には,本リーフレットは1993年に発行されたものである旨記載されているが,甲第1号証には発行日は記載されていない。
甲第2号証は,八幡化成株式会社発行の「ウェイビー」販促用リーフレットであり,製品名「Way-be カラーバケット(フタ付き)801」製品番号216629(BL),製品番号216636(RD),製品番号216643(YE),のブルー,レッド,イエローの3色の単色のバケツが示されている。なお,審判請求書には,本リーフレットは,2004年6月に発行されたものである旨記載されているが,甲第2号証には発行日は記載されていない。
甲第3号証は,八幡化成株式会社発行の「フレイチェアーバケット」販促用リーフレットで,製品名「Fraichair Bucket S/フレイチェアーバケット S」の製品番号230588(GR)(グリーンの蓋にベージュの本体),製品番号230595(PK)(明るいピンクの蓋に濃いピンクの本体),製品番号230601(YE)(イエローの蓋にグレーの本体)の3種類のバケツが示されている。なお,審判請求書には,本リーフレットは2013年10月に発行されたものである旨記載されているが,甲第3号証には発行日は記載されていない。
甲第4号証は,八幡化成株式会社発行のカタログ「sceltevie」で,第12頁ないし第15頁に掲載された製品名「omnioutil S/オムニウッティ S」(フタ付きバケット)製品番号223757(PL)(濃いピンクの蓋にパープルの本体),製品番号223764(PK)(オレンジの蓋に濃いピンクの本体),製品番号223771(OR)(ターコイズブルーの蓋にオレンジの本体),製品番号223788(TB)(パープルの蓋にターコイズブルーの本体),製品番号223795(GR)(ブラウンの蓋にグリーンの本体),製品番号228240(BL)(濃いブルーの蓋に明るいブルーの本体),製品番号228257(IV)(ブラウンの蓋にベージュの本体),製品番号228264(RPK)(グレーの蓋に明るいピンクの本体),製品番号228271(CA)(レッドの蓋にベージュの本体),製品番号228288(BR)(明るいグリーンブラウンの蓋にブラウンの本体),製品番号228783(WH)(単色のホワイト),製品番号228790(BK)(単色のブラック)12種類のバケツが掲載されている。なお,審判請求書には,本カタログは2014年1月に発行されたものである旨記載されているが,甲第4号証には発行日は記載されていない。
前記のとおり,製品名が「ウェイビー801」と明示されたバケツは,甲第2号証ないし甲第4号証には現されていないものである。
しかし,審判請求書の「3.本件登録意匠を無効とすべき理由」の「ニ 本件登録意匠と引用意匠との類否 (オ)特段の事情(i)引用意匠1及び2の際立った特徴」には,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名が列記されており,また,甲第2号証ないし甲第4号証に現された意匠は,いずれもSサイズのもので,その形状も容量も甲第1号証に現された製品名「ウェイビー801」の意匠と同様のバケツであると認められることから,請求人は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された上記の各意匠を,同一形態の色彩が異なるバケツとして,引用意匠1としているものと推認することができる。
しかしながら,無効理由を構成する先行の公知意匠(引用意匠)を特定しなければならないので,当審は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された前記の意匠群の中から,本体部の内側や蓋部の表裏等形態がより明確に表されており,本体部と蓋部の明暗調子が本件登録意匠と共通するバケツである甲第4号証の八幡化成株式会社発行のカタログ「sceltevie」の第12頁及び第13頁に掲載された製品名「omnioutil S/オムニウッティ S」(フタ付きバケット)223764(PK)の「バケツ」の意匠(別紙第2参照)を引用意匠1と認定し,以下,本件登録意匠との類否について判断する。
なお,甲第4号証の刊行物は,審判請求書の記載によれば,2014年1月に発行されたもので,すなわち,その記載は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)11月28日)以後に発行されたものであるが,甲第4号証に表された製品名「omnioutil S/オムニウッティ S」(フタ付きバケット)223764(PK)のバケツの意匠は,甲第9号証(別紙第3参照)によれば,財団法人日本産業デザイン振興会主催の2010年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞対象一覧に掲載されていることが示されており,グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞製品は,遅くとも受賞年度中に公表されているものであることから,甲第4号証に現された「omnioutil S/オムニウッティ S」(フタ付きバケット)223764(PK)のバケツの意匠は,少なくとも平成23年(2011年)3月末には,公然知られたものであったことを推認することができる。
また,甲第26号証により,平成22年(2010年)5月25日発行の雑誌「クロワッサン」781号2010年5月25日号の第137頁に「フタ付きバケット」として甲第4号証と同じSサイズのバケツの写真が紹介されている。
さらに,インターネットアーカイブ社のWayback Machineで記録,提供されている情報によれば,平成23年(2011年)1月2日に公開されていた,八幡化成株式会社のホームページに甲第4号証と同じSサイズのフタ付きバケツ「オムニウッティ」が掲載されている。(参考意匠1:別紙第4参照)
したがって,甲第4号証の八幡化成株式会社発行のカタログ「sceltevie」の第12頁及び第13頁にも掲載された製品名「omnioutil S/オムニウッティ S」(フタ付きバケット)223764(PK)の「バケツ」は,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)11月28日より以前に公然と知られていた蓋然性は高いものであると認められる。
そして,甲第1号証ないし甲第4号証が,本件登録意匠の出願前に公然知られていたことについて,被請求人も疑義を呈していない。

そうすると,引用意匠1は,製品名「omnioutil S/オムニウッティ S」(フタ付きバケット)223764(PK)のバケツ(以下,このバケツの意匠を「引用意匠1」とする。)であり,その形態は,甲第4号証の八幡化成株式会社発行のカタログ「sceltevie」の第12頁及び第13頁に掲載された写真等に現されたとおりのものである。
引用意匠1は,取っ手のある蓋付きの「バケツ」であって,その形態については,以下のとおりである。
すなわち,全体が本体部,蓋部,取っ手により構成されたもので,本体部周側面及び蓋部の全体に,一様の凹凸形状を形成したものである。
本体部は,下方向にごく僅かにテーパーのついた略円筒形状とし,本体部の高さが本体部上面の直径よりも短く,本体部上面の周縁に外方に逆L字状に小さく突出する細幅で蓋部と略同厚の縁部を有し,前記縁部から下方に向かって設けられた扁平直方体状の取っ手取り付け部を正面視左右の対向する位置に配し,周側面全体に全高(上端縁部を除く。)にわたる縦方向の細い筋状の凹凸形状を周方向に連続して多数施したものであり,本体部の内周側面及び底部の内外面は,平滑面である。
取っ手は,細幅薄板状体を正面視略半円弧状のアーチ状とし,両端側の板状体をやや幅広の隅丸長方形状とし,その先端部を緩やかな弧状としたもので,その隅丸長方形状部分を本体部の取っ手取り付け部の外側に設け,一方の隅丸長方形状部分の上方寄りに縁部を有する小型円形状孔部を設けたものである。
蓋部は,本体部上端縁と略同径の円板状とし,その表裏の表面ほぼ全面を細い筋状の凹凸形状に形成して,裏面の外周端部に細幅の平坦面部を設けて,その内側に外周に沿うように細幅帯状の薄い凸状枠部を設けたものである。
本体部と蓋部の凹凸形状は,細幅の曲面から成る断面視波状の突条を連続して繰り返した態様のものである。
蓋部と取っ手は明調子の明るい黄色で,本体部はそれより暗調子の濃いピンク色である。

3.本件登録意匠と引用意匠1(以下,「両意匠」という。)との対比
(1)意匠に係る物品
まず,意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「バケツ」であって,引用意匠1も「バケツ」であり,いずれも取っ手のある蓋付きのバケツであるから,意匠に係る物品は一致する。
(2)形態における共通点
両意匠は,
(A)全体が本体部,蓋部,取っ手により構成されたもので,本体部周側面及び蓋部の全体に,一様の凹凸形状を形成したものである点,
(B)本体部を,下方向にごく僅かにテーパーのついた略円筒形状とし,本体部の高さが本体部上面の直径よりも短く,本体部上面の周縁に外方に逆L字状に小さく突出する細幅で蓋部と略同厚の縁部を有し,正面視左右の対向する位置であって前記縁部から下方に向かって設けられた扁平直方体状の取っ手取り付け部を配し,全高(上端縁部を除く。)にわたる縦方向の細い筋状の凹凸形状を周方向に連続して多数施したものである点,
(C)蓋部は,本体部上端縁と略同径の円板状とし,その表裏の表面ほぼ全面を細い筋状の凹凸形状に形成して,裏面の外周端部に細幅の平坦面部を設けて,その内側に外周に沿うように細幅帯状の薄い凸状枠部を設けたものである点,
(D)取っ手は,細幅薄板状体を正面視略半円弧状のアーチ状とし,両端の先端部を弧状とし,本体部の取っ手取り付け部の外側に設けたものである点,
(E)蓋部はやや明調子で,本体部はそれより暗調子である点,において主に共通する。
(3)形態における差異点
両意匠には,
(ア)取っ手の態様について,本件登録意匠は,両端部を側面視略U字状に形成したものであるのに対して,引用意匠1は,両端側の板状体をやや幅広の隅丸長方形状とし,一方の隅丸長方形状部分の上方寄りに縁部を有する小型円形状孔部を設けたものである点,
(イ)本体部と蓋部の凹凸形状について,本件登録意匠は,断面視形状がやや先端が尖った山型状の突条を連続した態様であるのに対して,引用意匠1は,先端がやや緩やかな波型状の突条を連続した態様である点,
(ウ)蓋部の裏面の態様について,本件登録意匠は,裏面中央に本体部への掛部となる短い円柱の先端に底面視小型円形状板体を設けた突起部を配し,凸状枠部の内側に細い突条が縦横2本ずつ互いに交差する井桁状の補強用のリブを設けたものであるのに対して,引用意匠1は,突起部も井桁状の補強用のリブも有していないものである点,
(エ)取っ手の明暗調子について,本件登録意匠は,本体部と同様の暗調子であるのに対して,引用意匠1は,蓋部と同様の明調子である点,
に主な差異が認められる。

4.両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,一致するから,以下,両意匠の形態の共通点及び差異点について評価し,両意匠の類否について判断する。
(1)共通点
共通点(A)については,全体を本体部,蓋部,取っ手により構成したもので,両意匠の形態の骨格を形成している。しかし,本体部,蓋部,取っ手から成る構成そのものは,普通に見られる態様であって,それのみでは両意匠に強い共通感を与えるものとはいえないが,その本体部及び蓋部の外観全体に,ともに一様の細かい凹凸形状を形成した態様は,全体の統一感を生じさせ,両意匠の極めて強い共通感を看者に与えるものといえるから,両意匠の類否判断に影響を与えるものである。
次に,共通点(B)について,本体部を,底面側に向かって径を徐々に窄めた略円筒形状とし,本体部の高さが本体部上面の直径よりも短く,本体部上面の周縁に外方に逆L字状に突出する細幅で蓋部と略同厚の縁部を有し,正面視左右の対向する位置であって前記縁部から下方に向かって伸びる扁平直方体状の取っ手取り付け部を配した態様については,この種のバケツの分野においては,他にも既に見られる態様といえるものであるが,両意匠のように周側面全体に全高(上端縁部を除く。)にわたる縦方向の細い筋状の凹凸形状を周方向に連続して多数施した態様のバケツは,引用意匠1の公開以前には見られない独特の形態であり,本体部の態様の共通性が需要者に与える印象が極めて強く,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
また,共通点(C)の蓋部を本体部上端縁と略同径の円板状とし,その表裏の表面ほぼ全面を細い筋状の凹凸形状に形成して,裏面の外周端部に細幅の平坦面部を設けた態様については,本体部と同じ細い筋状の凹凸形状を円形の蓋部にも連続して施した点で極めてユニークな外観を形成するものであり,また蓋部が凹凸形状を表すものでありながらも,本体部上端縁と略同径の最低限の大きさで簡素である上に,本体部と隙間なく当接しているシンプルな態様であることがさらに特徴を増して需要者の目を惹き,両意匠のみに見られる特徴的な態様といえるもので,両意匠に共通する印象を与えるものといえ,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
そして,共通点(D)についても,取っ手を細幅薄板状体で正面視略半円弧状のアーチ状とし,両端の先端部を弧状とし,取っ手取り付け部の外側に設けた態様は,この種のバケツにおいては,既に知られた態様といえるものであり,両意匠のみに見られる格別の特徴とはいえないものであるが,細幅薄板状体でシンプルな点が共通する印象を醸し出すもので,細い筋状の凹凸形状を連続して施した本体部及び蓋部と対比した場合にそのシンプルさが際立つもので,前記共通点(A)の全体構成と相俟って両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,共通点(E)の蓋部はやや明調子で,本体部はそれより暗調子である点についても,部分的な共通点ではあるが,明暗調子を共通とすることで,共通した印象が増すものといえるから,他の共通点とも相まって,両意匠の類否判断に僅かながらも影響を与えるものといえる。
そうすると,前記共通点(A),共通点(B)及び共通点(C)に係る態様は,それらが相乗して生じる視覚的な効果をも考慮すれば,基本的な造形や特徴における共通性が極めて高く,需要者に共通の美感を強く起こさせ,とりわけ,共通点(B)及び共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は大きく,また,共通点(D)及び共通点(E)に係る態様は,それらのみでは両意匠の類否判断に与える影響が大きいとはいえないが,共通点(A)ないし(C)と相俟って需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,共通点(A)ないし(E)の共通点が両意匠の類否判断を決定付けるものである。
(2)差異点
これに対し,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱に留まり,両意匠の共通する美感を凌駕するまでのものとはいえない。
すなわち,差異点(ア)の取っ手の先端部の態様については,両意匠を全体として比較したときには,取っ手の先端部のみという限られた部分における差異に係るもので,その差異が格別目立つものとはいえず,前記共通点(A)ないし(C)に係る態様における両意匠全体の共通する印象に埋没してしまう程度の部分的な細部の差異といえるものであり,また,本件登録意匠の側面視した下方の先端部を略U字状に形成した態様は,この種のバケツの物品分野においては,ありふれた普通に見られる態様(例えば,参考意匠2 意匠登録第805878号の意匠:別紙第5参照)といえるもので,本件登録意匠の独自の態様ともいうことができず,その差異が両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものとはいえない。
次に,差異点(イ)の本体部と蓋部の凹凸形状の差異については,確かに先端が尖っているか,やや緩やかであるかの差異であって,細部においては相応の違いではあるものの,その差異は,前記共通点(A)及び共通点(C)に係る細い筋状の凹凸形状を周側面全体に全高(上端縁部を除く。)にわたる縦方向に,また円形の蓋部にも同様に表して,本体部外側全体に表した極めてユニークな態様における共通する印象に埋没してしまう程度の微弱な差異といえるもので,この点における差異が両意匠を別異のものとする程の大きな差異とはいえず,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものとはいえない。
また,差異点(ウ)の蓋部の突起部及び補強用のリブの有無については,本件登録意匠の蓋部のあくまでも裏面側における差異であり,また,掛部となる突起部があることも付加的な差異であり,補強用のリブについても補助的なもので,その存在が意匠全体の美感を左右する程のものとはいえず,意匠全体からすれば,蓋の裏面という目立ちにくい部分の,いずれも付加的,補助的な細部の差異に過ぎず,この点における差異が両意匠を別異のものとする程の大きな差異とはいえず,依然として両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものとはいえない。
そして,差異点(エ)の明暗調子については,この種のバケツの分野においては,様々なカラーバリエーションがあることが普通で,その明暗調子についても,様々な組合せがあり,また,取っ手はその全体に対する面積比が小さいものであるから,取っ手を蓋部と同様の明調子とするか,本体部と同様の暗調子とするかの差異が目立つものとはいえず,前記共通点(A)ないし(C)に係る態様における両意匠全体の共通する印象に埋没してしまう程度の差異といえるもので,その差異が両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものとはいえない。
(3)被請求人の主張について
なお,被請求人は,凹凸形状の差異について,請求人が,自社のウェブサイトにおいて,引用意匠1と同様の構成からなるフタ付きバケツについて,「段ボールの波々をモチーフにデザインし・・・」との説明の下,当該製品を紹介しているとして,引用意匠1の本体部と蓋部の凹凸形状がなだらかな波型状で,本件登録意匠の山型状のものとは異なる旨主張するが,前記差異点(イ)について述べたとおり,両意匠の本体部と蓋部の凹凸形状の差異は,先端が尖っているか,やや緩やかであるかの差異であり,その凹凸形状の細部の形状の差異よりも,やはりシンプルな本体部と蓋部の外観全体に一様に凹凸形状を施した共通の印象が強く,その差異は,その意匠全体の基調をなす強い共通する印象に埋没してしまう程度の微弱な差異といえるもので,この点における差異が両意匠を別異のものとする程の大きな差異とはいえない。
また,被請求人は,蓋部の底部側であっても,本件登録意匠のように,突起部がその中央に設けられている場合には,バケツの開口部に掛止するという機能面や,バケツの使用方法等にも大きく影響するものであるから,取引者,需要者の視覚に強く訴える部分となり得る旨主張するが,突起部が,たとえ蓋部の裏面側の中央に設けられているとしても,意匠全体からすれば,部分的かつ限定的な範囲での差異といえるもので,前記共通点(A)ないし(C)の細い筋状の凹凸形状を本体部周側面全体に全高にわたる縦方向に,蓋部も同様に本体部外側全体に表したという顕著な共通性の中に埋没してしまう程度の微弱な差異というほかなく,両意匠の類否判断に影響を与えるものとはいうことができない。
(4)まとめ
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態においても,前記差異点を総合しても,その視覚に訴える意匠的効果としては,とりわけ共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に与える影響が大きく,共通点が生じさせる効果が差異点のそれを凌駕し,意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,本件登録意匠は引用意匠1に類似する。
そうすると,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に掲載された意匠である引用意匠1と類似する意匠であるから,意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当する。

5.無効理由2
審判請求書の「1.意匠登録無効の理由の要点」によれば,請求人は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー102」に係る意匠を引用意匠2とし,意匠法第3条第1項第3号の規定により,意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項により無効とすべきであるとしている。
甲第1号証は,八幡化成株式会社発行の「ウェイビー」販促用リーフレットであり,製品名「Way-be 102(フタ)」の製品番号050926(VE),製品番号050933(G),製品番号050940(B),のナチュラルベージュ,フラットグリーン,フラットブラックの3色の単色のバケツが示されている。なお,審判請求書には,本リーフレットは1993年に発行されたものである旨記載されているが,甲第1号証には発行日は記載されていない。
甲第2号証は,八幡化成株式会社発行の「ウェイビー」販促用リーフレットであり,製品名「Way-beカラーバケット(フタ付き)102」の製品名「Way-beカラーバケット(フタ付き)102」製品番号216650(BL),製品番号216667(RD),製品番号216674(YE),ブルー,レッド,イエローの3色の単色のバケツが示されている。なお,審判請求書には,本リーフレットは,2004年6月に発行されたものである旨記載されているが,甲第2号証には発行日は記載されていない。
甲第3号証は,八幡化成株式会社発行の「フレイチェアーバケット」販促用リーフレットであり,製品名「Fraichair Bucket L/フレイチェアーバケット L」の製品番号230618(GR),(グリーンの蓋にベージュの本体),製品番号230625(PK)(明るいピンクの蓋に濃いピンクの本体),製品番号230632(YE)(イエローの蓋にグレーの本体)の3種類のバケツが示されている。なお,審判請求書には,本リーフレットは2013年10月に発行されたものである旨記載されているが,甲第3号証には発行日は記載されていない。
甲第4号証は,八幡化成株式会社発行のカタログ「sceltevie」であり,第12頁ないし第15頁に掲載された製品名「omnioutil L/オムニウッティ L」(フタ付きバケット)製品番号223873(PL)(濃いピンクの蓋にパープルの本体),製品番号223880(PK)(オレンジの蓋に濃いピンクの本体),製品番号223897(OR)(ターコイズブルーの蓋にオレンジの本体),製品番号223903(TB)(パープルの蓋にターコイズブルーの本体),製品番号223910(GR)(ブラウンの蓋にグリーンの本体),製品番号228295(BL)(濃いブルーの蓋に明るいブルーの本体),製品番号228301(IV)(ブラウンの蓋にベージュの本体),製品番号228318(RPK)(グレーの蓋に明るいピンクの本体),製品番号228325(CA)(レッドの蓋にベージュの本体),製品番号228332(BR)(明るいグリーンブラウンの蓋にブラウンの本体),製品番号228806(WH)(単色のホワイト),製品番号228813(BK)(単色のブラック)12種類のバケツが掲載されている。なお,審判請求書には,本カタログは2014年1月に発行されたものである旨記載されているが,甲第4号証には発行日は記載されていない。
審判請求書の「1.意匠登録無効の理由の要点」によれば,請求人は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名「ウェイビー102」に係る意匠を引用意匠2としているが,製品名が「ウェイビー102」と明示されたバケツは,前記のとおり甲第2号証ないし甲第4号証には現されていないものである。しかし,審判請求書の「3.本件登録意匠を無効とすべき理由」の「ニ 本件登録意匠と引用意匠との類否 (オ)特段の事情(i)引用意匠1及び2の際立った特徴」には,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された製品名が列記されており,また,甲第2号証ないし甲第4号証に現された意匠は,甲第1号証に現された製品名「ウェイビー102」の意匠と色彩が異なる同一の形態の意匠と認められることから,請求人は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された上記の各意匠を,同一形態の色彩が異なるバケツとして,引用意匠2としているものと推認することができる。
甲第1号証ないし甲第4号証に記載された上記の各意匠は,いずれもLサイズのもので,その形状も容量も同様のバケツであると認められる。
無効理由を構成する先行の公知意匠(引用意匠)を特定しなければならないので,当審は,甲第1号証ないし甲第4号証に記載された前記の意匠群の中から,本体部の内側や蓋部の表裏等形態がより明確に表されており,本体部と蓋部の明暗調子が本件登録意匠と共通するバケツである甲第4号証の八幡化成株式会社発行のカタログ「sceltevie」の第12頁及び第13頁に掲載された製品名「omnioutil L/オムニウッティ L」(フタ付きバケット)230595(PK)の「バケツ」の意匠(別紙第2参照)を引用意匠2と認定する。

6.本件登録意匠と引用意匠2との対比及び類否判断
しかしながら,引用意匠2は前述の引用意匠1と同じリーフレットに掲載され,その掲載された態様は引用意匠1とほぼ同様であり,本件登録意匠の出願日前に公然知られた意匠であるといえるものであるが,引用意匠2は,引用意匠1とは本体部の高さが僅かに高い点で形状及び容量が異なるが,それ以外の点では,ほぼ同形状の意匠といえるものであり,引用意匠1のサイズ違いであると認められる。したがって,本件登録意匠と比較すると,その高さの分だけ引用意匠1よりも差異が大きくなる関係のものであるから,引用意匠1との類否判断に加えて,引用意匠2を本件登録意匠と比較検討し,類否を判断するまでもない。

7.小括
よって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に掲載された意匠である引用意匠1と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定された意匠に該当することにより意匠登録を受けることができないものであり,無効理由を有するものであると判断する。

第5 むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項3号に規定された意匠に該当し,意匠登録を受けることができないものであるにもかかわらず意匠登録を受けたものである(無効理由1)から,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,その登録を無効とすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2016-06-02 
出願番号 意願2013-27943(D2013-27943) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (C3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 久保田 大輔
斉藤 孝恵
登録日 2014-09-12 
登録番号 意匠登録第1509040号(D1509040) 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 安部 聡 
代理人 志賀 正武 
代理人 渡辺 久 
代理人 高田 修治 
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