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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立不成立) F4
管理番号 1325934 
判定請求番号 判定2016-600029
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 判定 
判定請求日 2016-06-24 
確定日 2017-03-06 
意匠に係る物品 包装箱 
事件の表示 上記当事者間の登録第1494832号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「包装箱」の意匠は,登録第1494832号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 請求の趣旨及び理由の要点
1.請求の趣旨
請求人は,「イ号図面並びにその説明書に示す包装用容器の意匠は登録第1494832号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない,との判定を求める。」と申立て,その理由として,要旨以下のとおりの主張をした。

2.請求の理由の要点
(1)判定請求の必要性
本件判定請求人(株式会社NAKADA)は,イ号意匠の包装箱(以下,「イ号物件」という。)の製造販売を計画する者である。判定請求人は,イ号物件の製造販売にあたり,イ号物件またはこれに類似する意匠の登録の有無を確認したところ,被請求人(江崎グリコ株式会社)の登録意匠「包装箱」(以下「本件登録意匠」という。)を確認した。
そこで,本判定請求人は,イ号物件を製造販売した場合に他人の意匠権を侵害しないことを確認すべく,包装箱(イ号物件)が被請求人の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないことについて,特許庁による判定を求める。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出 願 平成25年 1月 9日(意願2013-000191)
登 録 平成26年 3月14日(登録第1494832号)

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「包装箱」とし,その形態の要旨を次のとおりとする(資料1:本件登録意匠の登録原簿,資料2:本件登録意匠の意匠公報)。
(A)基本的構成態様
(a)本件登録意匠は,略縦長直方体状の包装箱であって,
(b)本件登録意匠の正面視の左辺及び右辺は緩やかな曲線であり,幅方向(左右方向)に波打ち,
(c)正面の面は奥行き方向(前後方向)に波打ち,
(d)正面の面が幅方向の中央を境にして左右対称であって,
(e)正面視の上辺及び下辺(左辺及び右辺以外の辺)が直線で形成されている。

(B)具体的態様
(a)正面の左辺及び右辺は,正面視においては,本件登録意匠の上端から中程に従って外側に向けて曲線でやや膨らみ,上端から1/5辺りで最も膨らんだ後,下方に従って内側に向けて曲線でやや凹み,下端から1/3辺りで最も凹んだ後,さらに下方に従い外側に向けて曲線でやや膨らむように形成されている。
(b)正面の左辺及び右辺は,側面視においては,本件登録意匠の上端から中程に向けて内側に曲線で凹み,上端から1/5辺りで最も凹んだ後,下方に従い外側に向けて曲線でやや膨らみ,下方から1/3辺りで最も膨らんだ後,下端に従い内側に向けて曲線でやや凹むように形成されている。
(c)本件登録意匠は,その正面視と側面視において,本件登録意匠の上端からの凹みと膨らみの位置が同じであり,正面で膨らんでいるところは側面では凹み,正面で凹んでいるところは側面では膨らむ形状である。
(d)正面の面は平坦な面であって,奥行き方向(前後方向)に波打つように形成されている。
(e)左右両側面は平坦面ではなく,それぞれ中央付近を境に山折りに二分され,正面側部分が捻じられたような波打った形状の曲面に形成されるとともに,背面側部分がほぼ平坦面に形成されている。

(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は,「包装箱」であり,その形態の要旨を次のとおりとする(資料3:イ号意匠の図面)。
(A)基本的構成態様
(a)イ号意匠は,略縦長直方体状の包装箱であって,
(b) 正面の左辺及び右辺が正面視において緩やかな曲線であり,幅方向(左右方向)に波打ち,
(c)正面の面は奥行き方向(前後方向)に波打ち,
(d)正面の面が幅方向の中央を境にして左右対称であって,
(e)正面視の上辺及び下辺(左辺及び右辺以外の辺)が直線で形成されている。

(B)具体的態様
(a)正面の左辺及び右辺は,正面視においては,イ号意匠の上端から中程に従って外側に向けて曲線でやや膨らみ,上端から1/6辺りで最も膨らんだ後,下方に従って内側に向けて曲線でやや凹み,下端から1/2.7辺りで最も凹んだ後,さらに下方に従い外側に向けて曲線でやや膨らむように形成されている。
(b)正面の左辺及び右辺は,側面視においては,イ号意匠の上端から中程に向けて内側に曲線で凹み,上端から1/6辺りで最も凹んだ後,下方に従い外側に向けて曲線でやや膨らみ,下方から1/2.7辺りで最も膨らんだ後,下端に従い内側に向けて曲線でやや凹むように形成されている。
(c)イ号意匠は,その正面視と側面視において,イ号意匠の上端からの凹みと膨らみの位置が同じであり,正面で膨らんでいるところは側面では凹み,正面で凹んでいるところは側面では膨らむ形状である。
(d)正面の面は平坦な面であって,奥行き方向(前後方向)に波打つように形成されている。
(e)左右両側面は平坦面ではなく,それぞれ中央付近を境に山折りに二分され,正面側部分が捻じられたような波打った形状の曲面に形成されるとともに,背面側部分がほぼ平坦面に形成されている。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(5-1)両意匠の共通点(資料4:本件登録意匠の各部分の形態を示す図,
資料5:イ号意匠の各部分の形態を示す図)
意匠に係る物品は,両意匠とも「包装箱」であり,同一物品である。
(A)基本的構成態様の共通点
(a)両意匠は,略縦長直方体状の包装箱であって,
(b)両意匠の正面視の左辺及び右辺は緩やかな曲線であり,幅方向(左右方
向)に波打ち,
(c)正面の面は奥行き方向(前後方向)に波打ち,
(d)正面の面が幅方向の中央を境にして左右対称であって,
(e)正面視の上辺及び下辺(左辺及び右辺以外の辺)が直線で形成されている,
点で共通している。

(B)具体的態様の共通点
(a)正面の左辺及び右辺は,正面視においては,両意匠の上端から中程に従って外側に向けて曲線でやや膨らみ最も膨らんだ後,下方に従って内側に向けて曲線でやや凹み下端付近で最も凹んだ後,下方に従い外側に向けて曲線でやや膨らむように形成されている点で共通している。
(b)正面の左辺及び右辺は,側面視においては,両意匠の上端から中程に向けて内側に曲線で凹みつつ上方で最も凹んだ後,下方に従い外側に向けて曲線でやや膨らみ,下方で最も膨らんだ後,下端に従い内側に向けて曲線でやや凹むように形成されている点で共通している。
(c)両意匠の正面視と側面視との関係において,両意匠の上端からの凹みと膨らみの位置が同じであって,正面側で膨らんでいるところは側面側で凹み,正面側で凹んでいるところは側面側で膨らむように形成されている点で共通している。
(d)正面の面は平坦な面であって,奥行き方向(前後方向)に波打つように形成されている点で共通している。
(e)両意匠の両側面は平坦面ではなく,それぞれ中央付近を境に山折りに二分され,正面側部分が捻じられたような波打った形状の曲面に形成されるとともに,背面側部分がほぼ平坦面に形成されている点で共通している。

(5-2)両意匠の差異点
(A)基本的構成態様の差異点
(a)本件登録意匠では,平面及び底面が略正方形であるのに対して,イ号意匠では,平面及び底面が台形である点で異なっている。さらに,イ号意匠の平面と底面の台形は,それぞれ上底と下底以外の一組の対辺(以下,「脚」という。)の長さが異なり,また,台形の長辺の位置が対向(平面の台形の長辺は背面側,底面の台形の長辺は正面側)している。

(B)具体的態様の差異点
(B-1)【くびれの位置】
本件登録意匠は,正面が,上端から1/5辺りの位置で最も膨らんで幅広の部分が形成された後,下方に従い幅方向内側に向けて曲線でやや凹み,下端から1/3辺りの位置で最も凹んでくびれた部分が形成されているのに対し,イ号意匠は,正面が,上端から1/6辺りの位置で最も膨らんで幅広の部分が形成された後,下方に従い幅方向内側に向けて曲線でやや凹み,下端から1/2.7辺りの位置で最も凹んでくびれた部分が形成されている点で異なっている。
(B-2)【正面視の形状】
本件登録意匠は,最も凹んでくびれた部分と最も膨らんで幅広な部分との比が約1:1.45であるのに対し,イ号意匠は,最も凹んでくびれた部分と最も膨らんで幅広な部分との比が1:1.25である点で異なることから,正面視において本件登録意匠は下方のくびれた部分が全体としてスリムな印象を受けるのに対し,イ号意匠はわずかにくびれた程度であって全体としてどっしりした印象を受ける点で,両意匠は全体的な印象を全く異にする。
(B-3)【全体の形状】
本件登録意匠は,正面の面において上述のとおりの膨らみと凹みを有するが,平面及び底面が略正方形であることから正面を除く背面,右側面及び左側面の三面が略平坦な角柱であって正面の面が中央からやや下方において最も膨らみ,どっしりして安定した印象を受ける。一方,イ号意匠は,正面において上述のとおりの膨らみと凹みを有し,背面,右側面及び左側面の三面が略平坦な角柱であるとしても,平面と底面において台形の脚の長さが異なるため正面視における平面の左右辺(台形の脚)が底面の左右辺(同)より長く奥行きかおり,さらに,平面の台形と底面の台形とが互い違いである(平面の台形の長辺と底面の台形の長辺とが対向する)ため,側面視ではほっそりしてやや頭勝ちで不安定な印象を受け,また,正面視においては最も膨らんだ部分の幅(長さ)と下辺の長さとが同じであることから,のっぺりと幅広の印象を受ける。以上の点て,両意匠は全体的に受ける印象を全く異にする。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明
(6-1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠
資料6:公知資料 刊行物名「ドイツ意匠公報」
2001年12月10日23巻
第5502頁所載

(6-2)本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠の創作の要点について述べれば,本件登録意匠に係る曲面を有する包装箱のような物品における意匠上の創作の主たる対象は,正面の面の辺に曲線を有すると共に,包装箱の上方及び下方に凹みと膨らみがあることは明らかで,本件登録意匠については,正面の面の左右両辺において左右対称の曲線を有しており,その曲線は包装箱の上方及び下方で凹みと膨らみがあり,その曲線の曲り具合に従い正面は左辺及び右辺と同じ奥行を持った平行な面となっていて,正面幅方向の中央を境に左右対称である態様が相侯って,本件登録意匠全体の基調を表出している。

(6-3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
そこで,本件登録意匠とイ号意匠の共通点,及び差異点を比較検討する。
(A)両意匠の共通点は,基本的な構成態様に係るものであり,正面左右辺において緩やかな曲線が幅方向(左右方向)に波打ち,正面の面が奥行き方向(前後方向)に波打ち,さらに正面の面が幅方向の中央を境に左右対称であり,正面の面の上辺及び下辺が直線で形成されている点である。
また,具体的態様においては,包装箱の上方に膨らみがあり,下方に凹みがあり,正面視と側面視との関係において,膨らみと凹みの位置が同じであって,正面側で膨らんでいるところは側面側で凹み,正面側で凹んでいるところは側面側で膨らむように形成されている点である。
しかしながら,
(B)両意匠の差異点については,
(a)基本的構成態様では,イ号意匠の平面及び底面が台形に形成されていることから,包装箱全体から受ける印象を全く異にするものであって,さらに,イ号意匠は台形の脚の長さが平面と底面では異なり,台形の長辺の位置が対向していることからも,より一層,包装箱全体から受ける印象を顕著に異ならせるものである。
(b)両意匠の差異点(5-2)の具体的態様の差異点(B-1)【くびれの位置】については,イ号意匠の最も膨らんだ幅広の部分が包装箱の上端から1/6辺りの高い位置に形成されており,一方で,最も凹んでくびれた部分が包装箱の下端から1/2.7辺りの中間に近い位置に形成されていることから,正面視において膨らみと凹み(くびれ)の位置が本件登録意匠と相違することにより受ける包装箱全体の印象が全く異なるものである。
(c)また,具体的態様の差異点(B-2)【正面視の形状】については,イ号意匠の最も凹んでくびれた部分と最も膨らんで幅広な部分との比が1:1.25であって,本件登録意匠と比べてくびれた部分と膨らんだ部分との幅の差異が少ないことから,イ号意匠は全体として幅広であって僅かにくびれている程度のずん胴な印象を与えるに過ぎず,この点も顕著な相違といえる。
(d)さらに,具体的態様の差異点(B-3)【全体の形状】については,イ号意匠の平面及び底面が台形で長辺が対向していることと,台形の脚の長さが平面と底面とで異なることとが相侯って,側面視においてほっそりしていて頭勝ちで不安定な印象を受ける一方,正面視においてはのっぺりして幅広であり,斜視においても扁平な印象を受けることから,この点においても特段顕著な相違といえ,類否の判断に与える影響は大きい。
(C)以上の認定,及び判断を前提にして両意匠を全体的に考察すると,両意匠の差異点は,類否の判断に与える影響が看過できない程に大きなものであって共通点を凌駕するものといえ,全体に受ける印象を全く異にするものであるから,両意匠の類否の判断に及ぼす影響は,その結論を左右するに至るものである。

(7)むすび
したがって,イ号意匠は,登録第第1494832号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないので,請求の趣旨のとおりの判定を求める。

3.証拠方法
(1)本件登録意匠の先行周辺意匠に関するもの

4.添付書類の目録
(1)意匠登録原簿謄本(資料1)
(2)本件登録意匠の意匠公報(資料2)
(3)イ号意匠図面(資料3)
(4)本件登録意匠の各部分を示す図(資料4)
(5)イ号意匠の各部分を示す図(資料5)
(6)先行周辺意匠1及び2(資料6)

第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由の要点
1.答弁の趣旨
被請求人は,「イ号図面並びにその説明書に示す包装用容器の意匠は,意匠登録第1494832号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおりの主張をした。

2.答弁の理由の要点
イ号図面並びにその説明書に示す包装用容器の意匠(以下,「イ号意匠」という。)の包装箱は,被請求人所有の意匠登録第1494832号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)と明らかに類似関係にある。まずは,被請求人の考える類否判断を主張した上で,請求人の主張について反論する。

(1)本件登録意匠とイ号意匠との類似関係
(イ)本願意匠の形態
以下において,本願意匠の形態を特定する。
(イ-1)基本的構成態様
(a)本願意匠は,略縦長直方体状の包装箱である。
(b)正面視において,正面の左辺及び右辺は緩やかな曲線であり,幅方向左右に波打っている。
(c)正面の面自体も奥行き方向前後に波打っている。
(d)正面視は幅方向の中央を境にして左右対称である。
(e)正面の左辺及び右辺以外の辺は直線である。
(f)平面および底面は四角状である。
(イ-2)具体的構成態様
(a)正面の左辺および右辺は,正面視においては,上端から下方に向けてやや外側に向けて曲線で膨らみ,上方1/5辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹み,下方1/3辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみをもつという形状である。
(b)正面の左辺および右辺は,側面視においては,上端から下方に向けて曲線で凹み,上方1/5辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみ,下方1/3辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹むという形状である。
(c)正面は,その正面視と側面視において,凹みと膨らみが同じ高さにおいて,正面で膨らんでいるところは側面では凹み,正面で凹んでいるところは側面で膨らむという形状である。
(d)正面は,その左辺および右辺と同じ奥行きを持つ面となっていて,平坦な面が奥行き方向前後に波打っている形状である。
(e)左右両側面は,平坦面ではなく,正面下方の幅方向に凹んでいる部分を左右から絞るような面となっていて,左右対称である。
(f)背面,平面および底面は,全体が平坦な面として形成されている。
(g)平面および底面は正方形状である。

(ロ)イ号意匠の形態
(ロ-1)基本的構成態様
(a)イ号意匠は,略縦長直方体状の包装箱である。
(b)正面視において,正面の左辺及び右辺は緩やかな曲線であり,幅方向左右に波打っている。
(c)正面の面自体も奥行き方向前後に波打っている。
(d)正面視は幅方向の中央を境にして左右対称である。
(e)正面の左辺及び右辺以外の辺は直線である。
(f)平面および底面は四角状である。
(ロ-2)具体的構成態様
(a)正面の左辺および右辺は,正面視においては,上端から下方に向けてやや外側に向けて曲線で膨らみ,上方1/6辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹み,下方1/2.7辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみをもつという形状である。
(b)正面の左辺および右辺は,側面視においては,上端から下方に向けて曲線で凹み,上方1/6辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみ,下方1/2.7辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹むという形状である。
(c)正面は,その正面視と側面視において,凹みと膨らみが同じ高さにおいて,正面で膨らんでいるところは側面では凹み,正面で凹んでいるところは側面で膨らむという形状である。
(d)正面は,その左辺および右辺と同じ奥行きを持つ面となっていて,平坦な面が奥行き方向前後に波打っている形状である。
(e)左右両側面は,平坦面ではなく,正面下方の幅方向に凹んでいる部分を左右から絞るような面となっていて,左右対称である。
(f)背面,平面および底面は,全体が平坦な面として形成されている。
(g)平面および底面は,平面は背面側の辺が僅かに長く,また,底面は正面側の辺が僅かに長い台形状である。

(ハ)本件登録意匠とイ号意匠との共通点と相違点
(ハ-1)基本的構成態様における共通点と相違点
本件登録意匠とイ号意匠とは,全ての基本的構成態様において共通している。すなわち,略縦長直方体状の包装箱であって,正面の左辺及び右辺は緩やかな曲線であり幅方向左右に波打っていて,正面自体も奥行き方向前後に波打っていて,正面視は幅方向の中央を境にして左右対称であって,正面の左辺及び右辺以外の辺は直線であり,平面および底面は四角状であるという点である。
一方で,両意匠に基本的構成態様における相違点はない。よって,両意匠は骨格における形態が共通している。
(ハ-2)具体的構成態様における共通点と相違点
また,両意匠は,具体的構成態様のほとんどの点においても共通している。
すなわち,正面の左辺および右辺における横方向および前後方向における膨らみ及び凹みの大まかなバランス,正面視と側面視における膨らみと凹みの相関性,左右の両側面の絞り形状,背面・平面および底面は全体が平坦な面として形成されている点において共通している。
一方,両意匠は,正面の左辺および右辺における横方向および前後方向における膨らみ及び凹みの細かなバランスにおいて相違がある。すなわち,本件登録意匠では,正面視で左辺および右辺は上方1/5辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹み,下方1/3辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみをもつという形状であるのに対して,イ号意匠では,上方1/6辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹み,下方1/2.7辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみをもつという形状になっている。側面視においても,本件登録意匠では上端から下方に向けて曲線で凹み,上方1/5辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみ,下方1/3辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹むという形状であるのに対して,イ号意匠では,上方1/6辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみ,下方1/2.7辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹むという形状になっている点が異なる。
しかし,この割合における相違点が,上方1/5辺りであるか1/6辺りであるか,また,下方1/3辺りであるか1/2.7辺りであるかは,些細な相違であることは明らかである。全体における膨らみや凹みの切り替えが同様の位置において行なわれているという点においてはむしろ共通点とも認識することができる。よって,膨らみと凹みの細かな位置に関するこれら相違点は,両意匠の基本的構成態様および具体的構成態様の共通点から受け取る美的印象に埋没する程度のものである。
また,本件登録意匠に関する平面および底面は正方形状であるのに対して,イ号意匠の平面および底面は,平面は背面側の辺が僅かに長く,また,底面は正面側の辺が僅かに長い台形状である点で相違する。
しかし,イ号意匠の平面および底面における台形状は,上辺および下辺の長さの違いに大差はなく,長方形に近い台形ということができ,「四角状」の平面および底面との認識に埋没する程度の相違でしかない。よって,平面および底面の違いについても大きく評価することはできない。

(ニ)類否
(ニ-1)本件登録意匠の要部
本件登録意匠に関する平成25年7月11日提出の意見書中でも述べたように,本件登録意匠が持つ形状で,他の公知意匠にないものというと,「正面左右の両辺において,左右対称の曲線を有しており,その曲線は上方1/5および下方1/3の周辺で凹みと膨らみかおり,その曲線に従い正面は左辺および右辺と同じ奥行きを持った平行な面となっていて,正面左右その他の辺は全て直線でもって形成されていて,正面視において幅方向中央をもって左右対称である」という点であり,これが本件登録意匠の要部である。請求人が提出した先行意匠1および2(これらは同じ意匠であるので,まとめて「先行意匠」という。)においては,波打っている面の右辺が直線であり,本件登録意匠の前記要部を備えていない。よって,先行意匠は本件登録意匠の要部を否定する根拠とはならない。
(ニ-2)本件登録意匠とイ号意匠の類否
前記のような本件登録意匠の要部認定のもと,本件登録意匠とイ号意匠とを比較すると,基本的構成態様と具体的構成態様における共通点で明らかにしたように,本件登録意匠の要部にかかる「正面左右の両辺において,左右対称の曲線を有しており,その曲線は上方1/5および下方1/3の周辺で凹みと膨らみがあり,その曲線に従い正面は左辺および右辺と同じ奥行きを持った平行な面となっていて,正面左右その他の辺は全て直線でもって形成されていて,正面視において幅方向中央をもって左右対称である」において共通している。この要部における共通の形態から,需要者は両意匠から共通の美的印象を受け取る。
一方で,前記の通り,両意匠の相違点は,正面の左辺および右辺における横方向および前後方向における膨らみ及び凹みの細かなバランス,および,平面および底面の具体的な四角状にある。しかし,これらはごく細かな相違であって,いずれも,両意匠の共通点および要部における共通点における共通の美的印象に埋没する程度の相違であるから,相違点を大きく評価することは全くできない。
よって,本件登録意匠とイ号意匠とは類似している。

(2)請求人の主張に対する反論
(2-1)両意匠の基本的構成態様の差異点に対する反論
請求人は,判定請求書(以下,「請求書」という。)第5頁「(5-2)両意匠の差異点(A)基本的構成態様の差異点」において,本件登録意匠では,平面及び底面が略正方形であるのに対して,イ号意匠では,平面および底面が台形である点で異なっていると述べている。
しかし,請求書における両意匠の基本的態様の特定において,平面および底面の基本的態様の特定はなく,基本的態様の差異点としてここでいきなり平面および底面における相違が挙げられている。形態の特定もなく,いきなり相違点として挙げられることに大きな違和感があるが,この点については,前述のように,イ号意匠の台形状は上辺と下辺における長さの違いがあまりなく,台形状または長方形状と言える・程度のものであって,平面および底面において,両意匠は「四角状」という基本的構成態様の共通点が大きく評価され,その具体的構成態様における「正方形状」と「台形状」というのは,形態上は微差に過ぎない。
また,請求人は,イ号意匠の平面および底面における台形状の上辺と下辺の長さの違いが,平面と底面では入れ替わると述べている。この点もイ号意匠の形態特定のところでは全く記載がないので違和感があるが,些細な形状である。前述の両意匠ともに平面および底面は「四角状」という印象の枠内に収まるものであり,またその具体的形状においても大きな相違と言える程度のものではない。

(2-2)両意匠の具体的構成態様の差異点に対する反論
請求人は,請求書第6頁「(B)具体的態様の差異点(B-1)くびれの位置」において,両意匠における正面の左辺および右辺における横方向および前後方向における膨らみ及び凹みの細かなバランスにおける相違点について主張する。すなわち,本件登録意匠では,正面視で左辺および右辺は上方1/5辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹み,下方1/3辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみをもつという形状であるのに対して,イ号意匠では,上方1/6辺りで最も膨らみ,そこから下方に向けて曲線で凹み,下方1/2.7辺りで最も凹み,そこから下方に向けて曲線で膨らみをもつという点である。前述したように,この割合における相違点が,上方1/5辺りであるか1/6辺りであるか,また,下方1/3辺りであるか1/2.7辺りであるかは,些細な相違であることは明らかであって,両意匠の要部およびその他の共通点から生じる美的印象に埋没する程度のものであることは明らかである。
請求人は,請求書第6頁「(B)具体的態様の差異点(B-2)正面視の形状」において,本件登録意匠は,最も凹んでくびれた部分と最も膨らんで幅広な部分との比が約1:1.45であるのに対して,イ号意匠は1:1.25であると主張する。これは正面上方の最も膨らんでいるところと,正面下方のくびれ部分の最も凹んでいるところの比率と思われるが,この比率計算は正しくない。
当方にて計測したところ,本件登録意匠では4:6であるのに対して,イ号意匠では4.5:6である。よって,数字において大きな差は全くない。また,下表の通り,目視で捉えても,最も膨らんでいる箇所と凹んでいる箇所の割合に大きな差がないことは明らかである。よって,正面視における膨らみと凹みの相違も大きな相違ではない。
請求人は,請求書第6頁「(B)具体的態様の差異点(B-3)全体の形状」において,本件登録意匠は「どっしりして安定した印象」との美的印象の一方,イ号意匠は「やや頭勝ちで不安定な印象」でかつ「のっぺりと幅広」の美的印象とした上で,両意匠から受ける印象は異なると主張する。全体をみれば分かるように,両意匠を相対的に比較した場合の美的印象は,本件登録意匠の底辺よりもイ号意匠の底辺の方がやや長い印象を受けるのみで,両者は正面が同様に波打って立体的な正面を有していて,全体的に縦長のほっそりとした包装箱という印象において共通している。よって,請求人が主張する美的印象の相違は失当である。

(2-3)本件登録意匠の先行周辺意匠および要部に対する反論
請求書第7頁「(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明」において,(6-1)で先行周辺意匠を挙げた上で,(6-2)において本件登録意匠の要部を特定している。しかし,先行周辺意匠については書誌情報を記載したのみで,本件登録意匠との比較を全く行っておらず,公知意匠との比較において本件登録意匠の要部を丁寧に特定していない。このような誤った方法に基づいて行われた本件登録意匠の要部認定など失当であることは当然である。なお,請求人は,本件登録意匠の要部について「正面の左右両辺において左右対称の曲線を有しており,その曲線は包装箱の上方および下方で凹みと膨らみかおり,その曲線の曲がり具合に従い正面は左辺及び右辺と同じ奥行きを持った平行な面となっていて,正面幅方向の中央を境に左右対称である態様」と特定している。これは,結果として,前述したように,当方も考える本件登録意匠の要部の一部であって,イ号意匠もこの形態を有しており,請求人自らもイ号意匠が本件登録意匠の要部に係る形態を有することを認めるところになっている。

(2-4)本件登録意匠とイ号物件との類否の考察に対する反論
請求書第7頁「(6-3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察」において,特に(B)において差異点について比較を行っている。しかし,請求人の考える差異点については,前述の通り,いずれも些細なものである。請求人が述べるところの,「平面および底面の形状の違い」は些細な形状の違いであって,ともに「四角形」の範躊に属するものであって,見た目の印象も近い。「くびれの位置」については上方1/5および下方1/3の亘辺という要部にかかる点で共通しており,これ以上詳細な特定をした上で顕著な相違とするのは誤りである。
「正面視の形状」においては請求人の計測ミスに基づく数値を挙げられているが,視認上もほぼ同割合の膨らみと凹みの割合であることが分かる。「全体の形状」についても顕著な違いと請求人は述べるが,本件登録意匠の底辺よりもイ号意匠の底辺の方がやや長い印象を受けるのみで,両者は「正面が波打った立体的な面となっていて,全体的に縦長のほっそりとした包装箱」という印象において共通している。
よって,請求人の類否に関する主張は失当である。

(3)結語
イ号意匠は,本件登録意匠の要部に係る形態を有するものであり,また,共通点から共通の美的印象が生じる。また,両意匠の相違点については,いずれも些細な割合の違い,または,請求人の誤解に基づくものであって,相違点を大きく評価することはできない。そうすると,需要者は共通点から生じる共通の美的印象を強く認識するため,両意匠は類似している。
よって,イ号意匠は本件登録意匠の意匠権の範囲に属する。

第3 請求人による判定請求弁駁書
当審は請求人に対して,答弁書副本送付時に弁駁書を提出する機会を与えたが,請求人からの応答はなかった。

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1494832号)は,平成25年(2013年)1月9日に意匠登録出願され,平成26年(2014年)3月14日に意匠権の設定の登録がなされ,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装箱」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照)
本件登録意匠の形態については,具体的には,以下のとおりのものと認められる。
<基本的な構成態様>
(1)全体は,正面を正面視及び側面視において波打った曲面とする,略縦長直方体形状としたものである。
(2)正面は,(2-1)正面視左辺が緩やかな略S字形状,正面視右辺が緩やかな略逆S字形状に波打ち,上方に凸弧状の幅の広い部分(以下「凸弧状幅広部」という。),下方に凹弧状の幅の狭い部分(以下「凹弧状幅狭部」という。)を有し,上辺及び下辺を水平な直線とする,左右対称形であり,(2-2)側面からみても正面は緩やかな略S字形状に波打ち,凸弧状幅広部は側面視凹弧状に窪み(以下「側面視凹弧状部」ともいう。),凹弧状幅狭部は側面視凸弧状に膨んだ(以下「側面視凸弧状部」ともいう。)ものである。
(3)左右両側面は,(3-1)緩やかな略S字形状(右側面視においては略逆S字形状)に波打った正面側の辺を除いた3辺を直線,つまり,上辺及び下辺を水平な直線,背面側の辺を垂直な直線とし,側面を背面寄りの面と正面寄りの面とに2分する山折り状の稜線が横方向の略中央に直線として表れたものであり(以下,この稜線部分を単に「稜線部」ともいう。),(3-2)左側面の形状と右側面の形状とは左右対称であり,(3-3)左右両側面は,全面的に緩やかな起伏のある面の構成としたものである。
(4)平面は,外形を左右対称の略四角形状としてものである。
(5)底面は,外形を左右対称の略四角形状としたものである。
(6)背面は,外形を略縦長長方形状としたものである。

<具体的な構成態様>
(7)全体は,正面視の横幅(底辺の長さ)と高さとの構成比率を,約1対3とし,側面視の横幅(底辺の長さ)と高さの構成比率を,約1対3としたものである。
(8)正面は,(8-1)凸弧状幅広部については,上端から約5分の1のあたりで最も広く,凹弧状幅狭部については,下端から約3分の1のあたりで最も狭くし,(8-2)側面視凹弧状部については,上端から約5分の1のあたりで最も窪み,側面視凸弧状部については下端から約3分の1のあたりで最も膨らみ,(8-3)左右両辺の略S字形状(右辺は略逆S字形状)に波打った態様と,側面視正面側の辺の略S字形状(右側面は略逆S字形状)に波打った態様とを,その湾曲の位置や大きさについて同程度とし,(8-4)凹弧状幅狭部の最も幅の狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅の広い部分との比率を,約1対1.45とし,(8-5)凸弧状幅広部の最も広い部分の幅を下辺の長さよりも広く,凹弧状幅狭部の最も狭い部分の幅を上辺の長さよりも狭くし,(8-6)側面視において,側面視凸弧状の最も膨らんでいる部分が上辺の位置よりも前方に突出したものである。
なお,被請求人は,凹弧状幅狭部の最も幅の狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅の広い部分との比率について,請求人の計算は正しくない旨主張するが,審判合議体の計算によれば上記のとおりである。
(9)左右両側面は,稜線部を,上方が僅かに正面視緩やかな凸弧状に膨らみ,下方が僅かに正面視緩やかな凹弧状に窪んだものとし,稜線部を境にして,背面寄りの面については,上方を,A-A拡大断面図によれば背面側から稜線部に向けて平面視横幅を徐々に広くし,下方を,B-B拡大断面図によれば背面側から稜線部に向けて平面視横幅を徐々に狭くし,正面寄りの面については,上方を,A-A拡大断面図によれば稜線部から正面側に向けて平面視横幅を一定幅とし,下方を,B-B拡大断面図によれば稜線部から正面側に向けて平面視横幅を徐々に狭くしたものである。
(10)平面は,(10-1)外形を略正方形状とし,背面側の辺の左右両端に直線状の切り込み部を形成し,(10-2)全面を平坦としたものである。
(11)底面は,(11-1)外形を略正方形状とし,背面側の辺の左右両端に直線状の切り込み部を形成し,(11-2)全面を平坦としたものである。
(12)背面は,(12-1)上辺中央に半円形状の切り欠き部を形成し,(12-2)全面を平坦な面としたものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は,請求人が判定請求書と同時に資料3として提出したイ号意匠図面により示されたものであり,意匠に係る物品は「包装箱」(請求人は請求書の請求の趣旨では「包装用容器」,請求の理由では「包装箱」と記載している。本審決においては「包装箱」とする。)であると認められ,その形態を,イ号意匠図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第2参照)
イ号意匠の形態については,具体的には,以下のとおりのものと認められる。
<基本的な構成態様>
(1)全体は,正面を正面視及び側面視において波打った曲面とする,略縦長直方体形状としたものである。
(2)正面は,(2-1)正面視左辺が緩やかな略S字形状,正面視右辺が緩やかな略逆S字形状に波打ち,上方に凸弧状の幅の広い部分,下方に凹弧状の幅の狭い部分を有し,上辺及び下辺を水平な直線とする,左右対称形であり,(2-2)側面からみても正面は緩やかな略S字形状に波打ち,凸弧状幅広部は側面視凹弧状に窪み,凹弧状幅狭部は側面視凸弧状に膨んだものである。
(3)左右両側面は,(3-1)緩やかな略S字形状(右側面視においては略逆S字形状)に波打った正面側の辺を除いた3辺を直線,つまり,上辺及び下辺を水平な直線,背面側の辺を垂直な直線とし,側面を背面寄りの面と正面寄りの面とに2分する山折り状の稜線が横方向の略中央に直線として表れたものであり,(3-2)左側面の形状と右側面の形状とは左右対称であり,(3-3)全面的に緩やかな起伏のある面の構成としたものである。
(4)平面は,外形を左右対称の略四角形状としたものである。
(5)底面は,外形を左右対称の略四角形状としたものである。
(6)背面は,外形を略縦長長方形状としたものである。

<具体的な構成態様>
(7)全体は,正面視の横幅(底辺の長さ)と高さとの構成比率を,約1対2.5とし,側面視の横幅(底辺の長さ)と高さの構成比率を,約1対3.8としたものである。
(8)正面は,(8-1)凸弧状幅広部については,上端から約6分の1のあたりで最も広く,凹弧状幅狭部については,下端から約2.7分の1のあたりで最も狭くし,(8-2)側面視凹弧状部については,上端から約6分の1のあたりで最も窪み,側面視凸弧状部が下端から約2.7分の1のあたりで最も膨らみ,(8-3)左右両辺の略S字形状(右辺は略逆S字形状)に波打った態様と,側面視正面側の辺の略S字形状(右側面は略逆S字形状)に波打った態様とを,その湾曲の位置や大きさについて同程度とし,(8-4)凹弧状幅狭部の最も幅の狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅の広い部分との比率を,約1対1.25とし,(8-5)凸弧状幅広部の最も広い部分の幅と下辺の長さを同程度,凹弧状幅狭部の最も狭い部分の幅と上辺の長さを同程度とし,(8-6)側面図によれば,側面視凸弧状部の最も膨らんだ部分が,上辺と同程度の位置まで前方に突出し,また,下辺は,上辺よりも後方に位置したものである。
なお,被請求人は,凹弧状幅狭部の最も幅の狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅の広い部分との比率について,請求人の計算は正しくない旨主張するが,審判合議体の計算によれば上記のとおりである。
(9)左右両側面は,稜線部を,背面視上下両端寄りから一定幅で膨らんだものとし,稜線部を境にして,背面寄りの面については,上端寄りから下端にわたり,背面側から稜線部に向けて平面視横幅を徐々に広くし,正面寄りの面については,上方を,稜線部から正面側に向けて平面視横幅を一定幅とし,下方を,稜線部から正面側に向けて平面視横幅を徐々に狭くしたものである。
(10)平面は,(10-1)外形を正面側の辺が背面側の辺よりも短い略等脚台形状とし,正面側の辺は,底面の正面側の辺よりも短く,背面側の辺は,底面の背面側の辺と同程度の長さとし,(10-2)全面を平坦としたものである。
(11)底面は,(11-1)外形を正面側の辺が背面側の辺よりも長い略等脚台形状とし,正面側の辺は,平面の正面側の辺よりも長く,背面側の辺は,平面の背面側の辺と同程度の長さとし,(11-2)全面を平坦としたものである。
(12)背面は,全面を平坦としたものである。

3.本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)との対比
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共に「包装箱」であるから,共通する。
(2)形態について
両意匠の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
(2-1)共通点
<基本的な構成態様>
(A)全体は,正面を正面視及び側面視において波打った曲面とする,略縦長直方体形状としたものである。
(B-1)正面は,正面視左辺が緩やかな略S字形状,正面視右辺が緩やかな略逆S字形状に波打ち,上方に凸弧状幅広部,下方に凹弧状幅狭部を有し,上辺及び下辺を水平な直線とする,左右対称形としたものである。
(B-2)正面は,側面からみても緩やかな略S字形状に波打ち,正面視凸弧状幅広部は側面視凹弧状に窪み,正面視凹弧状幅狭部は側面視凸弧状に膨んだものである。
(C-1)左右両側面は,緩やかな略S字形状(右側面視においては略逆S字形状)に波打った正面側の辺を除いた3辺を直線,つまり,上辺及び下辺を水平な直線,背面側の辺を垂直な直線とし,側面を背面寄りの面と正面寄りの面とに2分する山折り状の稜線が横方向の略中央に直線として表れたものである。
(C-2)左右両側面は,左側面の形状と右側面の形状とを左右対称としたものである。
(C-3)左右両側面は,全面的に緩やかな起伏のある面の構成としたものである。
(D)平面及び底面は,外形を左右対称の略四角形状としたものである。
(E)背面は,外形を略縦長長方形状としたものである。
<具体的な構成態様>
(F)正面は,左右両辺の略S字形状(右辺は略逆S字形状)に波打った態様と,側面視正面側の辺の略S字形状(右側面は略逆S字形状)に波打った態様とを,その湾曲の位置や大きさについて同程度としたものである。
(G)平面,底面及び背面は,いずれも全面を平坦な面としたものである。

(2-2)相違点
基本的な構成態様については相違点が存在せず,具体的な構成態様について,以下のとおり相違点が存在する。
(ア)全体について,本件登録意匠は,正面視の横幅(底辺の長さ)と高さとの構成比率を,約1対3とし,側面視の横幅(底辺の長さ)と高さの構成比率を,約1対3としたものであるのに対して,イ号意匠は,正面視の横幅(底辺の長さ)と高さとの構成比率を,約1対2.5とし,側面視の横幅(底辺の長さ)と高さの構成比率を,約1対3.8としたものであり,本件登録意匠は,正面視においてはイ号意匠よりも細く,側面視においてはイ号意匠よりも厚みのあるものである。
(イ-1)正面について,本件登録意匠は,凸弧状幅広部が上端から約5分の1のあたりで最も広く,凹弧状幅狭部が下端から約3分の1のあたりで最も狭くしたものであるのに対して,イ号意匠は,凸弧状幅広部が上端から約6分の1のあたりで最も広く,凹弧状幅狭部が下端から約2.7分の1のあたりで最も狭くしたものである。
(イ-2)正面について,本件登録意匠は,凹弧状幅狭部の最も幅の狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅の広い部分との比率を,約1対1.45としたものであるのに対して,イ号意匠は,凹弧状幅狭部の最も幅の狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅の広い部分との比率を,約1対1.25としたものであり,本件登録意匠は,イ号意匠よりも広狭の差が大きいものである。
(イ-3)正面について,本件登録意匠は,側面視凹弧状部が上端から約5分の1のあたりで最も窪み,側面視凸弧状部が下端から約3分の1のあたりで最も膨らんでいるものであるのに対して,イ号意匠は,側面視凹弧状部が上端から約6分の1のあたりで最も窪み,側面視凸弧状部が下端から約2.7分の1のあたりで最も膨らんでいるものである。
(イ-4)正面について,本件登録意匠は,側面視凸弧状部の最も膨らんでいる部分が,上辺の位置よりも前方に突出したものであるのに対して,イ号意匠は,側面視凸弧状部の最も膨らんでいる部分が,上辺と同程度の位置まで前方に突出したものであり,また,下辺は,上辺よりも後方に位置したものである。
(ウ)左右両側面について,本件登録意匠は,稜線部を,上方が僅かに正面視緩やかな凸弧状に膨らみ,下方が僅かに正面視緩やかな凹弧状に窪んだものとし,稜線部を境にして,背面寄りの面については,上方を,A-A拡大断面図によれば背面側から稜線部に向けて平面視横幅を徐々に広くし,下方を,B-B拡大断面図によれば背面側から稜線部に向けて平面視横幅を徐々に狭くし,正面寄りの面については,上方を,A-A拡大断面図によれば稜線部から正面側に向けて平面視横幅を一定幅とし,下方を,B-B拡大断面図によれば稜線部から正面側に向けて平面視横幅を徐々に狭くしたものであるのに対して,イ号意匠は,稜線部を,背面視上下両端寄りから一定幅で膨らんだものとし,稜線部を境にして,背面寄りの面については,上端寄りから下端にわたり,背面側から稜線部に向けて平面視横幅を徐々に広くし,正面寄りの面については,上方を,稜線部から正面側に向けて平面視横幅を一定幅とし,下方を,稜線部から正面側に向けて平面視横幅を徐々に狭くしたものである。
つまり,下方の面の平面視横幅について,本件登録意匠は背面側から稜線部,稜線部から正面側に向けて徐々に狭くしたものであるのに対して,イ号意匠は背面側から稜線部に向けて徐々に広くしてから,稜線部から正面側に向けて徐々に狭くしたものである。
(エ-1)平面及び底面について,本件登録意匠は,平面及び底面の外形を略正方形状としたものであるのに対して,イ号意匠は,平面の外形を正面側の辺が背面側の辺よりも短い等脚台形状とし,底面の外形を正面側の辺が背面側の辺よりも長い等脚台形状とし,平面の正面側の辺は,底面の正面側の辺よりも短く,平面の背面側の辺と底面の背面側の辺とは同じ長さとしたものである。
(エ-2)平面及び底面について,本件登録意匠は,背面側の辺の左右両端に直線状の切り込み部を形成したものであるのに対して,イ号意匠は,そのような切り込み部を形成していないものである。
(オ)背面について,本件登録意匠は,上辺中央に半円形状の切り欠き部を形成したものであるのに対して,イ号意匠は,そのような切り欠き部を形成していないものである。

4.両意匠の共通点及び相違点の評価
以下,共通点と相違点が存在する形態について,評価する。
まず,共通点については,全体の基本的な構成態様の共通点(A)と,正面の基本的な構成態様の共通点(B-1)及び(B-2),並びに正面の具体的な構成態様(F)を備えた両意匠の形態は,他の包装箱や包装用容器の意匠には見られず,特に正面の正面視及び側面視において波打った態様は両意匠の要部といえるものであって,両意匠共に下方がくびれたスリムな印象を需要者に与えるものであり,その他の共通点(C-1)ないし(E)及び(G)も加わり,両意匠の全体の形態を特徴付けているから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

一方,相違点については,以下のとおり,いずれも両意匠の共通点に埋没する程度の相違であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(ア)の正面視及び側面視の横幅(底辺の長さ)と高さとの構成比率の相違は,本件登録意匠が,正面視においてはイ号意匠よりも細く,側面視においてはイ号意匠よりも厚みのあるものであるとしても,正面の波打った態様の特徴を備えた両意匠においては,さほど目立つ相違ではなく,両意匠の共通点に埋没する程度の相違と認められる。
相違点(イ-1)の凸弧状幅広部の最も幅が広い部分及び凹弧状幅狭部の最も幅が狭い部分の上下両端からの位置の相違,及び相違点(イ-2)の凹弧状幅狭部の最も幅が狭い部分と凸弧状幅広部の最も幅が広い部分との比率の相違は,どちらの相違点も,緩やかな略S字形状の左辺と緩やかな略逆S字形状の右辺を向かい合わせにし,上下両辺を水平な直線とした左右対称形の共通態様における軽微な相違であって,両意匠の視覚的な印象を異なるものとする程のものではないから,両意匠の共通点に埋没する程度の相違と認められる。
相違点(イ-3)の側面視凹弧状部の最も窪んでいる部分及び側面視凸弧状部の最も膨らんでいる部分の上下両端からの位置の相違,及び相違点(イ-4)の側面視凸弧状部の最も膨らんでいる部分が上辺の位置よりも突出しているか否か等の相違は,どちらの相違点も,側面視緩やかな略S字形状とした共通態様における軽微なものであり,定規を当ててみて気が付く程度の相違といえるものであるから,両意匠の共通点に埋没する程度の相違と認められる。
相違点(ウ)の左右両側面における下方の面構成についての相違は,平面視横幅の広がり方及び狭まり方の程度がそれほど大きなものではなく,イ号意匠の稜線部についても本件登録意匠の稜線部と同様に目立たない態様としたものであり,また,正面寄りの面の下方においては,稜線部から正面側に向けて平面視横幅を徐々に狭くしている点において共通しており,正面方向から観察した場合,相違点(ウ)は,正面の波打った態様と比べると目立ちにくいものであるから,両意匠の共通点に埋没する程度の相違と認められる。
相違点(エ-1)の平面及び底面の具体的な形状の相違は,基本的な構成態様としては両意匠共に略四角形状とした点において共通しており,イ号意匠の略等脚台形状も正面側の辺と背面側の辺の長さの差が大きいといえる程のものではなく,真上や真下から観察した場合に気付く程度のものといえるから,意匠全体として見れば,両意匠の共通点に埋没する程度の相違と認められる。
相違点(エ-2)の平面及び底面における切り込み部の有無の相違,及び相違点(オ)の背面における切り欠き部の有無の相違は,本件登録意匠に形成された切り込み部及び切り欠き部の態様が,極めて部分的なものであり,包装箱の蓋の開閉を考慮して形成される態様としてよく見られるものであり,一方のイ号意匠のように切り込み部や切り欠き部を形成しないものも極普通に見られるものであるから,これらの相違は,両意匠の共通点に埋没する程度の相違と認められる。

なお,請求人は,イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明において,「資料6」を提出し,本件登録意匠に関する先行周辺意匠として,ドイツ意匠公報(2001年12月10日23巻,第5502頁)所載の包装用箱の意匠(正面及び左側面が表れている斜視図)(別紙第3参照)を示したが,この先行意匠は,正面の左辺が正面視においても左側面視においても緩やかな略S字形状に波打っているものの,右辺は垂直線状に表れており,左右対称形のものではない点が大きく異なるものであるから,この先行意匠の存在は,両意匠の類否判断に何ら影響を及ぼすものではない。
また,請求人は,イ号意匠について,側面視ではほっそりしてやや頭勝ちで不安定な印象を受ける旨主張するが,イ号意匠は,上端直下から側面視凹弧状に窪んだものであり,上辺は,下辺よりも前方に位置しているとしても,下辺からかなり離れた位置にあり,その間には側面視波打った面も形成されているため,請求人が主張する程にイ号意匠の上端寄りが突出している印象は受けず,また,上方が側面視凹弧状に窪み,下方が側面視凸弧状に膨らんでいるものであるから,安定している印象を需要者に与えるものと認められる。したがって,請求人の主張は採用することができない。
更に,請求人は,イ号意匠について,正面視において凸弧状幅広部の最も幅の広い部分と下辺の長さとが同じであるから,のっぺりと幅広の印象を受ける旨主張するが,本件登録意匠においても凸弧状幅広部の最も幅の広い部分と下辺の長さとは大きく相違せず,両意匠共に左右両辺の下方は正面視末広がりに表れているため,請求人が主張する程に両意匠から受ける印象が相違するものではなく,両意匠は,どちらも下方がくびれたスリムな印象を需要者に与えるものであるから,請求人の主張は採用することができない。

5.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品において共通し,その形態においても,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいのに対して,相違点が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから,意匠全体として見た場合,両意匠は需要者に共通の美感を起こさせるものである。
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠に類似するものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2017-02-24 
出願番号 意願2013-191(D2013-191) 
審決分類 D 1 2・ 1- YB (F4)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 江塚 尚弘
正田 毅
登録日 2014-03-14 
登録番号 意匠登録第1494832号(D1494832) 
代理人 川崎 仁 
代理人 宗助 智左子 
代理人 松井 宏記 
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