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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1327047 
審判番号 不服2015-20389
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-16 
確定日 2016-04-05 
意匠に係る物品 エレベーター用操作盤 
事件の表示 意願2014- 23713「エレベーター用操作盤」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,本意匠を意願2014?23702号とする関連意匠として,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を秘密にすることを請求して,平成26年(2014年)10月23日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「エレベーター用操作盤」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとするものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとするものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前の平成22年(2010年)11月15日に特許庁が発行した意匠公報に記載された意匠登録第1401277号(意匠に係る物品,エレベータの乗り場用操作盤)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 請求人の主張の要点
請求人は,概要,本願意匠と引用意匠は,正面視に限り基本的構成態様に一部共通性を有するものの,本願意匠は,特に筐体を構成する各部材同士の嵌合構造に高い独自性を有しており,また,操作ボタン部についても,本願意匠は,引用意匠が持ち合わせない断面形状の工夫を有するものであって,これらの具体的構成態様の差異が与える印象が,基本的構成態様の共通性を凌駕しているため,両意匠が類似するとは到底言えず,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号の規定により登録を受けることができないものであるとした原査定は不当である,と主張した。

第4 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「エレベーター用操作盤」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「エレベータの乗り場用操作盤」であって,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
まず,共通点として,
(A)全体は,正面視略縦長長方形で板状の基盤の,前方正面上方寄り約2/5部分に,上方に余地を設けて表示部を配置し,下方約3/5部分を操作部として操作ボタンを配置した構成である点,
(B)基盤は,後方背面側を本体ボックスとして,前方をパネル(以下「操作パネル」という。)で被覆した構成とした点,
(C)表示部は,横幅が操作パネルの横幅と同幅で,正面視縦長長方形状であり,表示部全域が透光性を有する点,
(D)操作ボタンは,ボタン基部中央に,略細字ゴシック体様の矢印部を内嵌し,ボタン基部周囲に,細幅のボタン枠を外嵌した構成で,矢印部とボタン枠に透光性を有する部分を設けた点がある。
(E)操作ボタン等の配置態様が,操作部の略中央に上下に余地部をあけて,上向き矢印の操作ボタンと下向き矢印の操作ボタンを,間隔をあけて上下に2個配し,その下方に間隔をあけて円形鍵部を1箇配置した態様である点があり,

一方,相違点として,
(ア)基盤の態様について,
本願意匠は,
(i)薄い本体ボックスに,操作パネルをスライド蓋状に嵌合させた構成であって,
(ii)本体ボックスの左右両側面板は,上下板より僅かに正面側に突出して立ち上がる縁部を形成し,平面視扁平凹字状を呈するものであり,
(iii)操作パネルは,その本体ボックス正面側の左右両側縁部の立ち上がり部よりも僅かに薄いものであって,その縁部間の凹字状に上下にスライドするように嵌合され,段落ち面状に表れるものであり,操作パネルの木口面は,その上下については,本体ボックスの上下面板からごく僅かに内側に本体ボックス上下面板に対してしゃくり面状に露出しており,その左右については,本体ボックスの左右両側面板(縁部)によって被覆されている態様であるのに対して,
引用意匠は,
(i)厚みのある本体ボックスの前方略1/3に,操作パネルを被せ蓋状に嵌合させた構成であって,
(ii)操作パネルの被せ蓋状の細幅の四周面を,後方に向けて僅かに広がる傾斜面とした態様である点,

(イ)表示部の具体的態様について,
本願意匠は,
全体が平坦な極薄パネルであって,その厚みの半分程度を操作パネルに嵌め込んでおり,表示部前面は操作パネル前面からごく僅かに突出した態様としたのに対して,
引用意匠は,
中央は,縦長長方形状の平坦面で,左右両側端は,操作パネル両側の傾斜面部に沿って折り曲げられた屈曲面であり,中央の平坦面の中央に,外周部を余地部として一回り小さな縦長長方形状部を設けて画面表示部とし,外周部裏面に印刷を施し,表示部の厚み全体を操作パネルに嵌め込んでいて,表示部前面は操作パネル前面と面一の態様とした点,

(ウ)操作ボタンの具体的態様について,
本願意匠は,
(i)正面視円形で,ボタン枠をボタン基部周囲の操作パネルとの境界部位に外嵌した態様であって,ボタン基部は,操作パネル表面と略面一(つらいち)をなす面に位置する平坦面であり,矢印部とボタン枠は,ボタン基部から前方正面側に突出した凸条を形成しており,それぞれの凸条部の具体的形態は,矢印部が,その幅中央部を細幅平坦面とし,外周縁部を極細幅の切り面とした,端面略等脚台形状であり,ボタン枠は,その凸条の両側をほぼ垂直に,角部を直角とした端面略長方形状であり,矢印部はボタン枠よりごく僅かに高く突出した態様であり,
(ii)透光性を有する部位は,略ゴシック体様で細幅の矢印部全体とボタン枠であるのに対して,
引用意匠は,
(i)正面視角丸正方形で,ボタン枠をボタン基部外周縁部位に外嵌した態様であって,ボタン基部,矢印部,ボタン枠の前方正面側に現れる頂面は,同じ高さで面一の平坦面をなしており,ボタン枠の外周縁部片側のみが極細幅の切り面を形成して操作ボタン全体の端面を略等脚台形状として,操作ボタン部全体が操作パネル表面からごく僅かに前方正面側に突出している態様であり,
(ii)透光性を有する部位は,略細字ゴシック体様の矢印部の幅中央部を除いて中抜きに表した極細幅の輪郭線の部位とボタン枠全体である点,

(エ)操作ボタンの配置位置について,
本願意匠は,操作部の正面中央やや下方に配置したのに対して,
引用意匠は,操作部の正面略中央に配置している点がある。

2.類否判断
両意匠に係るエレベーター用操作盤は,エレベーターのかごを呼ぶための操作を行うための操作盤であって,一般的には,エレベーター乗り場の,開閉ドアのすぐ脇の壁面に設置されるものである。
操作盤に設けられた表示部には,当該エレベーターのその時点での運行状況等が表示され,また,かごを呼ぶ操作は,使用者が,上あるいは下の行き先方向を示す矢印を表示した操作ボタンを押したり,タッチしたりして行われることが一般的である。

これらの事を踏まえて,両意匠の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

両意匠の共通点(A)は,両意匠の基本的構成に関する共通点である。
しかし,この種物品の設置場所や,使用者は操作盤の前に立った状態で操作を行うことを考慮すれば,全体の基本形状を正面視略縦長長方形の板状とすることは自然であって,この基本形状は,従来よりこの種物品において多数採用されてきた形状である。また,表示部を,使用者の立位における目の高さにあわせて,縦長長方形操作盤の上方に余地を設けて配置し,操作部を,使用者の立位における手の高さ近辺にあわせて,縦長長方形操作盤の下方に配置することも,同様にごく自然なことで,この態様は,従来よりこの種物品の表示部と操作部の配置位置として採用されており,両意匠の表示部と操作部の操作盤全体における比率も,ありふれた比率の範囲内のものである。
したがって,共通点(A)は,両意匠の基本的構成態様についての共通点ではあるが。類否判断に及ぼす影響は,一定程度に止まるものといえる。

基盤についての共通点(B),すなわち,基盤は,後方背面側を本体ボックスとして,前方を操作パネルで被覆した構成としたという点については,本体ボックスを操作パネルで被覆した構成であるという概念的な共通点にすぎず,具体的な形態についての共通点ではないから,共通点(B)が類否判断に及ぼす影響は,小さい。

表示部についての共通点(C)は,両意匠の具体的な形態に関する共通点であり,また,表示部は目の高さにあって,目に付きやすい部位であることを考慮すると,表示部が,横幅を操作パネルの横幅と同幅とする正面視縦長長方形状である点は,表示部全域が透光性を有する素材のものである点と相俟って,類否判断において,一定の影響を及ぼすものといえる。
しかし,両意匠が共に,表示部の横幅を操作パネルの横幅と同幅としているとしても,正面形状を縦長長方形とした点,表示部全域を透光性を有する素材とした点については,この種物品の表示部の形態として広く知られているから,共通点(C)を全体として大きく評価することはできず,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度に止まると言える。

操作ボタンについての共通点(D),すなわち,操作ボタンは,ボタン基部中央に,略細字ゴシック体様の矢印部を内嵌し,ボタン基部周囲に,細幅のボタン枠を外嵌した構成で,矢印部とボタン枠に透光性を有する部分を設けた態様とした点については,この種物品の操作ボタンにおいて,ボタン基部中央に矢印部,ボタン基部周囲に枠を配した構成,及び,矢印部とボタン枠に透光性を有する部分を設け,該部を点灯させて視認性を高めることは,本願出願前より行われており,また,両意匠の矢印部が,共に略ゴシック体様の細幅のものであるとしても,その略ゴシック体様の細幅矢印自体はごく普通の態様であるから,共通点(D)が類否判断に及ぼす影響は,一定程度に止まるものであって,影響が大きいとはいえない。

操作ボタンの配置態様についての共通点(E)については,この配置態様は,この種エレベーター用操作盤における操作ボタン及び鍵部の配置態様としてありふれたいくつかの配置態様のうちのひとつを選択して表しているにすぎないものであるから,共通点(E)が類否判断に及ぼす影響は,小さいといえる。

すると,各共通点が類否判断に及ぼす影響は,いずれも小さいか,あるいは一定程度に止まるものであり,共通点全体として相俟った効果を勘案しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至っていない。

一方,相違点は,いずれも両意匠の目に付き易い部位における具体的構成態様に係るものであり,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。具体的には,次のとおりである。

基盤の態様についての相違点(ア)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,非常に大きい。
すなわち,基盤は,意匠全体の大部分を占める目に付く部位であるところ,この基盤の態様について,本願意匠の基盤は,薄い本体ボックスに操作パネルをスライド蓋状に嵌合させた構成で,本体ボックスの内側に操作パネルを段落ち面状に落とし込む造形としており,その際,操作パネルの前面,左右両側木口面,及び上下木口面を,本体ボックスから僅かに内側に控えた位置として,基盤全体をシンプルな縦長長方形薄板形状として視認できる造形としているものである。
これに対して,引用意匠の基盤は,厚みのある本体ボックスの前方略1/3に,操作パネルを被せ蓋状に嵌合させた構成で,操作パネルで被覆した基盤前方の四周面が傾斜面をなしている造形である。この引用意匠の傾斜面部分の造形は,引用意匠の使用時に,建物の壁内に本体ボックス部が埋め込まれても,該部は埋め込まれることなく視認できる部位であって,操作パネルの前面の縦長長方形状の平坦面を,あたかも額縁のごとく囲むという,引用意匠の特徴的な造形の根幹をなしている。
このように,両意匠のそれぞれの基盤が見る者に与える視覚的効果は全く異なるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,非常に大きい。

表示部の具体的態様についての相違点(イ)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響も,大きい。
両意匠の表示部は,正面から見るときには,どちらも縦長長方形として視認されるが,斜めから見た場合には,異なる視覚的効果を与えるものと言える。
すなわち,本願意匠の表示部は,全体が平坦な極薄パネルで,表示部前面が操作パネル前面からごく僅かに突出していると視認されるものである。
一方,引用意匠の表示部は,操作パネル前面と面一で,その左右両側端が,操作パネル両側の傾斜面に沿って折り曲げられた状態の屈曲面として視認されるものである。加えて,引用意匠にあっては,表示部中央部に,表示部より一回り小さな縦長長方形表示区画が表れるものであり,両意匠の表示部が,看る者に与える視覚的効果は,全く異なるから,相違点(イ)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいといえる。

操作ボタンの具体的態様についての相違点(ウ)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響も,大きい。
すなわち,操作ボタンは,操作するにあたり,使用者が必ず一旦は直視する部位であり,その具体的態様の相違は,看る者の視覚に少なからぬ影響を及ぼすといえる。
両意匠のボタンの外形状の違いは,円形か隅丸正方形かのいずれもありふれた形状同士の相違であるから,それのみでは両意匠の類否判断に及ぼす影響はほとんどないものといえるが,本願意匠の,矢印部とボタン枠がそれぞれボタン基部から突出した凸条部を形成している態様は,引用意匠の,ボタン基部,矢印部,ボタン枠の頂面が,同じ高さで面一な平坦面をなしている態様とは大きく異なっており,さらに,本願意匠の二つの凸条は形状が異なるものとし,またその高さを変えるなど,視覚による認識が困難な使用者に対して知覚によって認識できるような造形処理がなされるとともに,凸条部すべてを透光性材質のものとして視認性のあるものとしているのに対して,引用意匠にあっては,透光性を有する部位が,ボタン枠は全体であるが,矢印部においては略ゴシック体様の矢印の極細幅の輪郭線の部位としており,前記の凸条部の有無と透光部の相違が正面視の外形状の相違とも相俟って,両意匠の操作ボタン部は,該部を看る者に,異なる視覚的効果を与える。
したがって,相違点(ウ)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいといえる。

操作ボタン等の配置態様についての相違点(エ)が,類否判断に及ぼす影響は,小さい。
すなわち,両意匠の上下矢印の配置位置の相違は,極めて僅かであって,いずれも操作盤全体としては,下方寄りに位置しているから,相違点(エ)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,ほとんどない。

このように,相違点(エ)を除き,他の相違点(ア)ないし(ウ)が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点全体が相俟った視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,もはや共通点の印象を凌駕しており,両意匠が,意匠全体として看る者に与える視覚的印象は,異なるというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2016-03-23 
出願番号 意願2014-23713(D2014-23713) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 渡邉 久美
本多 誠一
登録日 2016-04-22 
登録番号 意匠登録第1550705号(D1550705) 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 村上 加奈子 
代理人 松井 重明 
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